夜廻シリーズに登場する神様一覧

登録日:2020/08/16 Sun 12:19:03
更新日:2025/04/17 Thu 11:49:36
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日本一ソフトウェア製作のホラーゲーム夜廻シリーズは、夜の町におどろおどろしいおばけがはびこっているが、そのおばけの中にとも称される存在が混じっている。
残念ながら神々たちは主人公である少女たちの味方とは言い難く、全員少女たちに襲いかかってくる上に、内三柱に至ってはラスボスとして少女たちの前に立ちはだかる。

だが、下記の神々の内、邪悪極まりないのは一柱のみで、残りは人間から信仰してもらえなくなったり、人間の悪意や傲慢さに振り回された結果ああなってしまった可能性が本編や小説版で示唆されている。
小説版では「神様は人間の接し方ひとつで、性格が変わる」と表現され、少女たちも「こんな扱いをされたら、私だってうんざりする」と同情していた。

以下、ゲーム本編と小説版のネタバレ注意。


□神様

ムカデ

『夜廻』に登場。主人公が住む町にある商店街に隣接する神社にて祭られている、ムカデの姿をした神様。
商店街を覆いつくす程の巨体を持つので、ムカデが苦手じゃない人でも閲覧注意。
下記の面々と違いある程度信仰を保てているためか、最初こそ主人公に襲いかかるものの、比較的人間に重きを置いていて、彼女が盛り塩のお使いを成し遂げるとお守りを授けている。
『深夜廻』でも間接的に登場。商店街の再開発に伴い神社を取り壊されてしまったが、それでも十分な神格を保っており、バックベアード様群霊に追いかけられていたハルを神社跡まで導き、保護した。

元々ムカデはその多脚から「客足が多い」ことに繋がり、商売繁盛の神様としても扱われ、ネズミとともに毘沙門天の眷属にもなっている縁起のいい生き物である。夜廻シリーズのムカデもその類いなのだろう。

小説版『夜廻』でも概ねゲームと同じ行動をしているが、攻撃のタイミングが「主人公が商店街から出ようとした時」に限定されている。
主人公が盛り塩のお使いを達成すると、夜空へ飛び立ち、ポロの亡骸の在処を示した。
また、主人公と姉が何度もムカデの神社に初詣に訪れていたことが明かされている。そのお守りは他のおばけやよまわりさんは愚か、山の神(夜廻)も苦手なようだ。
小説版『深夜廻』ではムカデの神社にハルを導いたのは主人公になっており、あれから主人公に姿を見せたことは無いという。ここでようやく商売繁盛とか町の繁栄を願うためにあった神社であったことが明かされる。
主人公は「商店街と一緒に神社も取り壊されてしまったから、力が弱くなってしまったのかもしれない」と推測しているが、それでも群霊はムカデに怯えて逃げていったようである。
また、ユイとハルは図工の授業で栞を作るために、材料である紅葉の葉っぱを拾いに何度かムカデの神社を訪れたことがあると明かされた。


山の神(夜廻)

『夜廻』のラスボス。プロローグで主人公が愛犬ポロと共に訪れたトンネルの向こうにある神社に祭られている神様。
無数の人間が折り重なってできたような顔と、大量の左目が特徴的。
その他詳細はこちらを参照。

小説版では「自分が神様であることすら忘れてしまう程に信仰を失い、自身を保てなくなった神様」という考察が主人公によってなされており、それを埋めるために生け贄を求めているという。過去にその一環で配下を使って主人公の母親を強引に連れ去り、生け贄としている*1
神としての力自体は健在で、他人の願いや祈りを覗き見し、それに応えようとする姿も見せた。
しかしそれは所詮、落ちぶれたモノの誘惑に過ぎず、声に流されてしまえば後で必ず苦しむことになると主人公は判断している*2
主人公の左目を奪ったのは、元々捧げられた生け贄の片方の目を、お供えものとして抉り出す風習があったからのようだ*3
また、これが原因で主人公は常におばけが見えるようになってしまった模様。


コトワリ様

『深夜廻』に登場。ユイとハルが住む町のはずれにある神社に祭られている、縁切りの神様。心の底からの「もういやだ」という言葉に反応する。
手に包まれた口のある球体の姿で、巨大なハサミを持っている。
ハルの行く先々に現れ、彼女をハサミで切り刻もうとするその姿はまさにシザーマン
「人型のなにか」を切断する対価に対象の悪縁を断ち切ってくれる縁切りの神であり、石碑によれば元々は慈悲深い性格だったらしいが、神社の近辺は一部ダムで水没、参拝客は悪意のこもった願いばかり持ちかけ、境内はゴミだらけという扱いから現在のようになってしまったようだ。
特に対価の身代わりとなる神社境内の「人型の結界」がゴミの投棄で崩されて機能しなくなったのは致命的だったらしく、作中では人型でさえない無関係な怪異にさえハサミで襲いかかる有り様である。
終盤では結界を修復したハルの願いに呼応するかのように行動。最終的に、彼女が"一番切るべき縁"を見事断ち切るというダークヒーロー的な活躍を見せた。
ちなみにクリア後、神社へコトワリさまの鋏を返還しに行くこともできるが、
  • 縁切りの対価となる切断用の藁人形がないと出現しない
  • わざわざハルが 藁人形を取り出し、地面に置いて離れたのを確認 してから切断を始める
  • 返却したはずの鋏をハルに残して姿を消す
という結果になるため、元の「慈悲深い神」としての性質を取り戻すことができたようである。

ちなみに、実在の縁切りの神社では、怪談で有名な橋姫やお岩さんを神として祭っている場所もあったりする。というか、日本の歴史的に女性からの離婚が難しかったためか、複数の女神を縁切りのために祭っている神社もある。
…もしかして、コトワリ様も♀?

小説版では「学校の怖い噂」としても語られており、ハルは以前からコトワリ様の存在を知っていたことになった。また、漢字表記が「理様」であることが明かされている。
その一方で出番が大幅に削られており、追跡者のような印象は薄くなった。
また、以前にユイの父親から「家族の縁」を切ったことが明らかにされ……詳しくは後述。


山の神(深夜廻)

『深夜廻』のラスボス。プロローグでユイが歩いていた道にある、お地蔵様の像の奥にある洞窟に潜む邪神。
画面に上半身のみが映るほどの巨体で、通常の手の他、「手のひらに目玉がある手」と「手の甲に大量の目玉がついた手」を持つ。
この内、「手の甲に大量の目玉がついた手」で顔の上半分を覆っていて、「手のひらに目玉がついた手*4」を耳のように顔の横につけている。
どうやら第四の壁が見えているようで、メニュー画面を切り替えるタイミングで姿を現したり、プレイヤーさえも利用して少女たちを苦しめる狡猾さの持ち主。
その他詳細はこちらを参照。

小説版ではその姿を《蜘蛛のようなもの》と表現されている。以前から人を言葉巧みにそそのかして死に誘っていたことはゲーム本編でも断片的に読み取れたが、それどころかユイの家庭をめちゃめちゃにした張本人であったことも判明した。
民族学者であったユイの父親は、調査を進めていくうちに山の神(深夜廻)の声が聞こえるようになり、やがてそれは彼の家族さえも毒牙にかけようとしていた。ユイの父親は、家族を守るためにコトワリ様に家族との縁を切ってもらい、一人山の神(深夜廻)の声に従って自殺していたのである。しかし、父親の失踪で母親は精神を病んでしまった。
このことから、山の神(深夜廻)がいる限り、どの道ユイに明日は無かったとも言える。
ハルは「人間の言葉や心、命なんて、この存在にとってはなんの意味も持たない」「呼んで、死なせて、遊んでいる」と推測しており、ユイも遊び道具にするつもりかと激しい怒りを抱く。
これだけでも飛びきりの醜悪さだが、コトワリ様から頂いたハサミでハルが反撃に出ると、彼女に糸を切るのをやめるよう懇願してくる始末。最終的にハルは山の神(深夜廻)に対して怒りを通り越して呆れを感じてしまっていた。
また、こちらでも読者に語りかけるというメタ行為を行った疑惑が浮上している。

ヒトデ

夜廻三』に登場。港町のステージボスで、そこにある洞窟付近にある青い鳥居の神社で祭られている神様。
大量の目玉を内包した巨大なヒトデという、シリーズ屈指のグロテスクな外見の持ち主。SAN値直葬しそう。
港町のプリントによると「災い食べる外来の神」で、「タッソク参り」と呼ばれる祭事が行われているのだが、本編ではなぜか機嫌が悪くなっており、その危険性から「タッソク参りを行うための手順を一晩で行うことは、いかなる理由があっても禁止」という調査報告書が出されている。

本編では地面にヒトデマークを浮かび上がらせることでユズを誘導し、タッソク参りを行わさせることに成功して出現。「宙に浮かぶ細長い足場」という独自の空間にてユズに襲いかかるも、逃げきられてしまった。
ステージクリア後、もう一度港町に行くと、なんと干からびてしまい、ユズでも持ち運び可能なサイズにまで縮こまった状態で発見される。これをかわいそうだと感じたユズがヒトデを海に投げ入れると、お礼として「星のかみかざり」を授けた。
もしかしたら、単に海に帰りたかっただけなのかもしれない。
また、洞窟内でヒトデの石像をもとの位置まで運ぶと「星の石板」をくれるが、こちらは近くにいるとめまいがしてくらくらするらしい。

小説版ではユズに襲いかかった理由が「自分に差し出された生け贄だと勘違いしたから」ということになった。
また、港町の住人はみんな魚みたいな顔をしているらしいので、やはりクトゥルフ神話をモチーフにした神様のようだ。

神様(夜廻三)

夜廻三』のラスボス。廃ビルの屋上にぽつんと立っている緑色の鳥居の祠にて祭られている神様。プレイヤーからは他の神様たちと区別するために「森の神」「空の神」とも呼ばれる。
他の神様たちに比べると無機質な姿をしており、赤と黒が入り交じった球体で、中央が発光している。
「雪の積もった森」という独自の空間を持っており、森にいるカラスはこの神様の配下らしい。赤い鳥居の神社の張り紙によると「いつも空から見ている」とのことだが、「目をあわせてはいけないもの」としても伝わっている模様。
大事な「2つの鈴」を盗まれてしまったことで怒り狂っており、「夕方~夜に廃ビル、もしくは学校の屋上で空を見上げ、目を閉じた者」を森へ引き込み、「朝6時までに鈴を見つけて返却しないと死ぬ」呪いをかけていた。
…どうしてこんなに限定的な呪いなのかというと、カラスたちに鈴を探させていた、つまり人手自体は足りていたからである。鈴を盗んだのは人間なので、怒りの矛先が向いてしまったのだろうか。
この他にも「森から抜け出す際には目を瞑って鳥居を潜り、決して振り返ってはならない」という条件を設けており、とても規律に厳しい性格であることがわかる。鈴への執着や下記の良識的な面など、見た目に反して人間臭い。
最終的に、鈴を盗んだ張本人であるコトリの母は死亡、コトリ当人は鈴の情報を持っていたからか制限時間を過ぎてもユズが鈴を返却するまで人面鳥として一時的に延命、制限時間内に鈴を返却できたユズはお咎めなしとした。

死に至る呪いという、えげつない手段に出てはいるが、積極的に被害者を出そうとはしておらず、条件を満たしたユズを五体満足の状態で帰すなど、山の神たちに比べればまだ良識のある神様と言える。
というか、ユズはチュートリアルの最後でいじめを苦に飛び降り自殺を行おうとしたので、この神様がユズを呪ったのはむしろファインプレーだった。

とまあ、ゲーム本編では擁護点もいくつかある神様だったのだが、小説版では露骨なまでのヘイト稼ぎ要員と化している。
順を追って説明すると、この神様はもともと森に引きこもって地中から空、特に木星を観察することを好んでいた。
だが時たま何かに怒って人間に祟りをもたらすため、困った住人は「ある人物」に助けを求める。この「ある人物」が作ったのが件の2つの鈴であった。神様は鈴の音色をとても気に入り、以後祟りをもたらすことはなかった。

ところが、ある日森に入った「何者か」が2つの鈴を盗んでしまう。当然神様は激怒。過去・現在・未来を全て監視し、森に入った者をおばけに変えて鈴を捜索させ、町に呪いを振り撒いた。
一度、1羽のカラスが廃ビルの屋上の社まで鈴を持ってくることに成功したが、鈴を咥えたまま事切れてしまいそれをコトリとユズの母が持っていってしまった。
小説版ではコトリとユズの母やコトリの記憶が消えていく様子や、コトリとユズの体が鳥のおばけに変貌していく様が生々しく描写されており、この神様のえげつなさがより強調されている。
最終的には、「町に大量のおばけが蔓延る」「ユズの両親の離婚」「コトリとユズの母の死」「コトリの人面鳥化」「ムギの死」「ユズが呪われたとして虐めの被害に遭う」といった事象すべてが神様が鈴を諦めなかったせいということになってしまった。
神様は鈴を返却しにきた姉妹に怒りを向けるのだが、ユズは「様なんてつけたくない」「(見た目が)理科の教科書に載ってる微生物みたい」と散々な感想を抱き、神様をにらみ返す。

…確かに、神様のやったことはユズたちにとっては理不尽だ。だが、神様の視点で見れば「人間が自分を鎮めるために用意した鈴を、その人間が盗んでいってしかも返却するまで最低でも2年以上かかった」という状況であり、怒る理由としては十分だろう。
というか、これが前作・前々作だったらユズの手ごと鈴を持っていかれてもおかしくない状況でもあり、そこで「怒るだけ」だったこの神様はやはり有情と言える。

ちなみにユズによると、「ヒトデや海坊主に似ているが、より格上に思える」らしい。となるとモチーフは旧神や外なる神だろうか?
また、「木星を観察する事を好む」、「地中から出現する肉の塊のような目という外見」、「何かがきっかけで一族に悍ましい祟りを齎す荒神」という共通点から、中国の祟り神である太歳星君(太歳信仰)もモチーフになっているかもしれない。

□番外

よまわりさん

厳密には正体不明だが、本編や小説版の描写から他のおばけとは明らかに一線を画する存在のため一応記載する。

『夜廻』から登場する、「夜中に外を出歩くこどもをさらうおばけ」として噂される存在。
自動車ほどの大きさの怪物で、袋を背負った芋虫のような姿と、手足の生えた心臓のような姿を使い分ける。どちらの姿でも横に線が入った白い丸がある。
生命力は高く、高所から転落して鉄柱に串刺しになっても死なない。そもそも生き物なのかも不明だが。

『夜廻』では主人公をさらって廃工場にあるコンテナの中に監禁。彼女が脱出を試みたため妨害に出るも失敗し、逃げられてしまう。
その後、主人公の家に上がり込み、姉が書いたメモを残して消える。
更にその後、トンネルの向こうへと行こうとする主人公を追いかけ、山の神(夜廻)の使いと激突。勝敗は不明だが無事だったようでクリア後にも出現する。
『深夜廻』でもハルをさらって廃工場に連れていくが、コンテナに閉じ込めないなど『夜廻』の頃に比べて若干態度が軟化しているように見える。
夜廻三』では地図の落書きというかたちで登場し、一応皆勤賞を守った。

小説版『夜廻』では「夜を見張るナニカ」とも呼ばれ、横に線が入った白い丸が「仮面のようなもの」と表現された。また、よまわりさんもムカデのお守りや祠の暖かな光を苦手とするものの、他のおばけはよまわりさんを避けるという。
主人公の姉が調べた結果、「他のおばけとはまったく違う基準・別の行動原理で動く」「よまわりさんが現れるところには必ずこどもがいる」「こどもが夜の世界の奥に進もうとすれば阻んでくる」ということだけが判明した。
結局最後まで正体不明のままで終わるが、主人公の姉は「よまわりさんは、怖いことに意味がある」と結論付けている。
小説版『深夜廻』では「灰色の」「歯茎色の肉」と表現されるも、ハルがすぐによまわりさんから逃げきってしまったため、ちょい役感がすごい。
ハルと出会った主人公は、よまわりさんについて「深く考えないほうがいい」「あれは、ああいうもの」と語っている。



追記・修正は神と敵対して左目もしくは左腕か姉という代償が払える方にお願いします。

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最終更新:2025年04月17日 11:49

*1 同時に主人公の姉が母親を助けようとしたが、失敗して逃げてしまっていたことも明かされた。

*2 事実、ゲーム本編に登場した女幽霊を殺害した犯人は、彼女との関係に悩んでいたところを山の神の声に流されて彼女を殺害したことが小説版で明らかにされている。

*3 ただし、以前から目をつけていた主人公の姉ではなく、主人公の左目を奪った理由は不明。

*4 なぜか左手の目玉だけ潰れている。