絵馬に願ひを!

登録日:2021/05/14 Fri 22:46:49
更新日:2021/06/09 Wed 14:06:23
所要時間:約8分で読めます









絵馬に願ひを!」とは、Sound Horizonがポニーキャニオンから発売した7.5th or 8.5th Story BDである。物語音楽を作り続けてきたこれまでのサンホラにはなかった、Blu-ray Discでの映像展開となった。
読めない歌詞ならぬ動く歌詞、歌詞につけられた色の変化、チャプターの選択肢、チャプターのランダム分岐といった特性を活かした新しい物語が紡がれる。
そのギミックを存分に体感してもらうためか、ブックレットが廃止されスタッフクレジットも映像を見ないと確認できない仕様になっている。
舞台は「現代日本風の世界*1であり、2014年の『ヴァニシング・スターライト』に次いで2作目の日本風世界作品となる。
作中で「輪廻の始まりへと」と謳われているため、未だ世に出ぬ第八の地平線『Rinne』に何らかの形で関連する作品と思われるが、ナンバリング的に『Marchen』の後(輪廻の始まり)か『Nein』の前(否定へと繋がる物語)かは意図的にぼかされている。
初版時点で展開されているのは2021年1月13日発売の「Prologue Edition」のみであるが、今後フルエディションが発売されるとのこと。
ちなみに、2021年3月31日から曲間の台詞を外した歌のみの電子配信もスタートしている。




以下、内容のネタバレを含みます。




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◆曲目(Prologue Edition)

●星空へと続く坂道
【佐久夜姫子】
「気づけば…駈けだしていた…」
初出は2019年のサンホラ15周年記念サイト。トップページの15周年ロゴをクリックすれば聴くことができる。
低確率で姫子が神社に至らず、刺されてしまう。

●狼欒神社
「何刻かキミを《否定する》為に」
アルバムのメインテーマナンバー。ナレーション、ソロ回しの差異を含めて4パターン存在する
唯一サブスク配信でも聴くことができるが、どのパターンが聴けるかはサービスによって異なる。
ちなみに冒頭はガチの神社宮司監修(スタッフクレジットより)による神社関係者の祝詞ソングとなっており、語りには『Roman』へのオマージュ演出が存在する。。

●夜の因業が見せた夢
【伊坂那美】
いにさえ似た唯一の願ひを」
身体があまり丈夫でない母が、今度こそ赤ちゃんを産むために、切なる願ひを込めて神社に走る。
低確率で足を滑らせ、坂道から転落してしまう。

また、この曲には分岐が存在し、選択によって今後の曲順が変わる。

+母は死んでしまうが、赤ちゃんを産ませた場合
●贖罪と《焔》の息吹
「幾千の夜を越えてきた痛みはこの日の為に」
那美が命をかけてんだ赤子の名はーー
イザナミが子を産みかつ曲名に「焔」が付くのは親子双方共に縁起でもない。ライブ版では毎回違う子どもがまれることに…。

(ランダム曲)

●恋は果てまで止まらない
【天野宮比】
「本当の気持ちにもう気付いちゃったから」
男の子と女の子の幼馴染と仲良く過ごしてきた彼女は、意を決して告白することにする。
どちらの幼馴染に告白するかは、フルエディションを待とう。
ちなみに選択によってまず本命の相手から別の人になってしまう事から、絵馬に具体的な願いの指定をしないといい加減な解釈をされてしまうのかも知れない。
低確率で心臓が早鐘を打ち、止まってしまう。



  • ランダム曲
那美の願いの果てを見る曲と、その選択から繋がる曲の間に挟まる歌。BDでは再生時にランダムでどっちが再生されるかが決まるが、配信版では両方とも購入可能。

●私の生まれた《地線》
【佐久夜姫子】
「この人達は何を演じているのだろう」
姫子が参詣する以前の人生を振り返る。別名・少女ルート。
まるでNeinを思わせる演出も見どころ。

●生きているのはボクだけなんだろ?
【???】
「楽しいフリも愛するフリも演じるだけの《操り人形》」
別名・少年ルート。那美曲の後で少女ルートが再生されるが、低確率でこちらが出現する。
「愛の実存」を信じられない様な暗い人生を送って来た子どもの声が重なる大人の声と共に、愉快にに手をかけていく。
そういえば、サンホラにはかつて少女の訴えと少年のダークな語りが入る地平線があったが…。


+母が生きることを優先して、赤ちゃんを産ませない
●暗闇を照らすヒカリ
「恐ろしい現実に 私達はどう立ち向かえば良い?」
繰り返す流産、知られざる病名。宵の坂からやってくるのはーー
ちなみに、この曲内で「フィクションジャンクション」と読む単語を入れたため、スタッフクレジットのスペシャルサンクスに梶浦由記の名が刻まれている。
ライブ版では日替わりで、選択した者を呪うような追加のセリフが存在した。

(ランダム曲)

●西風のように駆け抜けろッ!
【猿田犬彦】
「愛猫の闘病に全力で《尽力を約束するぜッ!》」
老齢で愛妹の愛猫の闘病にバイク「ゼファー(西風)」*2で駆ける彼は、人事を尽くした上で神頼みにも走る。
愛猫を延命するか、安楽死させるかはフルエディションを待とう。
低確率で単車に乗ったまま事故り、帰らぬ人となる。


◆用語

  • 狼欒神社
本作の主な舞台となる謎の神社。読みは「ろうらんじんじゃ」で配信版での英語表記は「Laurant-Shrine」。「狼」だけに狛犬も狼型をしている。
舞台地平線にある地方都市(名前不明)*3に鎮座していた「陽葦火山神社」を改竄するように、狼欒神群の降臨と共に同じ場所に突然出現。光り輝くエレクトリカル神社の顕現を間近で見た姫子の記憶も直後「元からあった神社」に改竄されていた。

  • 狼欒神群
姫子の祈りを切っ掛けに「この地平」に降臨した狼欒神社の祭神たる「幻想の神々」*4大神(おおかみ)で、本作におけるリスナー(及び記念祭の観客・視聴者)の立ち位置。由来はサンホラファンの通称「ローラン」(Laurant)から。
絵馬に記された願いの叶え方を、姫子らしき口調で記された2つの石碑*5に浮かぶ解釈のどちらかから選ぶことで、物語の行方を左右することが出来る。
神社関係者の祝詞では祝詞のテンプレ表現として「掛けまくも畏き狼欒大神」と謳われているが、本当にそうなれるかはリスナー次第だと思われる。

◆登場人物
現時点でフルネームが判明しているキャラは日本神話を彷彿とさせる名前をしている。

  • 神社関係者
今作の「似て非なる人々」。衣装からエレクトリカル神社狼欒神社の神主と思われるが、声でなく念で話したり縦糸を紡いだりと人間ではない様子がやたら見られる胡散臭いやつ。ちなみに「ぺこぱ」のギャグをも解する(公式インタビューより)。
顔を狼を模した黒い面で覆っており、その髪型はどこか生まれる前に死んだ冬の子(曲内で彼と同じ台詞も呟いている)や聖なる夜に生まれた青年を思わせるが…。
記念祭では仮面繋がりで仮面の男、「願い」繋がりで屍揮者と姫子の手を取る悪魔、「改竄」繋がりで檻の中の猫と過去キャラの役割を担い、ついでに神に祈っても届かなかった男の歌まで披露したが、
Moiraカバーではなぜかバイク乗りの犬彦について行っていた(『遥か地平線の彼方へ』。ちなみに原曲ではショタが担当)。どうしてこうなった。

  • 佐久夜姫子(演:香西愛美)
片目を隠した女子高生。父の病を治すためにやってきた陽葦火山神社で神社関係者と出会い、何かを《否定する》ために陽葦火山神社が改竄され代わりに現れた狼欒神社の巫女として働くことになる。
なんと中の人は発売当時リアルJK。
ちなみに姫子・宮比・犬彦は似た様な系統の制服を着ているが、その関係性は今の所不明。また作中で「神社の子?」と神社関係者から言われているが、その直前「自分は狼欒神社育ちである」と記憶を改竄されているので、改竄前もそうだったのかは謎。
その名は歌内の単語も含めて女神「コノハナサクヤヒメ」を思わせるが*6、それとは思えない程暗い面持ちをしており一部ではサクヤヒメの姉イワナガヒメっぽいとも
神社関係者への対応こそまだノリがいいが、石碑に浮かぶ姫子らしき女性の語りは「生」に対するかなりネガティブな見解で彩られている
記念祭第3部ではかわいかったりかっこよかったりと多彩な歌声を披露した。演技力の高さも必見。

  • 伊坂那美(演:SAK.)
眼鏡をかけた妊婦。流産を繰り返し、最後の望みを懸けて陽葦火山神社に参詣する。
Prologue Editionでは唯一選択肢によって末路が変わる人物。かつて亡くした子の名や『贖罪と《焔》の息吹』内で伴侶(CV:清水大心)が呟いたギャグ(?)と合わせると、名前の由来はイザナミか。
命をかけて産むか、流してでも彼女の命を守るか?
記念祭第3部では母親役、成熟した女性役を多く務める。意地悪な母、死に逝った母、精神崩壊した母と様々な母親像を演じ分けて見せた。

  • 天野宮比(演:石田彩夏)
金髪ギャルの女子高生。幼馴染への恋心を自覚した勢いで参詣する。
ギャルらしい言葉がとにかく飛び出すが、言い回しはSNSで流行っている言葉遣いのそれそのもの。名前の由来は神社に祀られる神の一つ「宮比神」と同一視されることが多いアメノウズメが有力視されている。
記念祭第3部ではギャル語でBaroqueを披露、生と死を別つ境界の古井戸もギャル語で大胆アレンジ。緋色の風車ではクールにかっこいい歌唱を見せつけた。
ぴえんこえてぱおん。

  • 猿田犬彦(演:廣瀬真平)
赤毛のツーブロ男子高校生。愛猫の治療のために単車でひとっ飛び参詣する。
名の由来は分かりやすく猿田彦命で、「犬」なのに「猫」を可愛がるのは、リアルで京都の猿田彦神社に「狛猫」があるからではないかと言われている。
ヤンキーとかおじさんとか言われがちだが、サンホラでは久しぶりの新規男性メインボーカルとなった、すごいイケメン。
ただし記念祭第3部では男性ボーカルが希少なサンホラのせいで女声を任されることが多かった。違和感なく溶け込む彼のコーラスは一聴の価値あり。
また複数の歌い手が披露してきた『Mother』を神社関係者押しのけて歌ったり、別な作者の犬彦の歌をカバーしたり、『光と闇の童話』を愛猫に歌い聞かせたりしたが、こちらは犬彦らしい暴れっぷり。


  • 少年(演:水野雅和)
ジャケット左上にひっそりといるバットを持った紫の帽子少年。ちなみに帽子には彼の方にある神社の灯篭と同じ三日月の印が記されている。
ライブでもやる気のない態度が見られるが、趣味?は猫をーー
千秋楽では猫が出てきそうな場所に現れては、猫を殺して行った。
ちなみに彼の曲のみ他のキャラには存在する「歌うキャラのシルエット」が存在しないが…?


+以下、ライブ版のネタバレに付き注意!
  • ???(演:ハセガワダイスケ)
「生きているのはボクだけなんだろ?」で少年と一緒に歌っている声…が記念祭千秋楽で謎のスーツの男として参戦。正気を疑うような言動と笑顔でインパクトを与えた。
少年との関係性は今の所不明だが、記念祭の「プレミアム配信」版での主宰Revoの最後の挨拶から少年の「父親」または「兄」説が比較的有力視されている。またプレミアム配信版4公演目の前説も担当した。
唯一第3部で乱入した曲は「食物の連なる世界」。スーツ繋がりで記念祭2公演目で犬彦が演じていた姫子の旦那役を務め、彼女の笑顔を大切にする立派な夫を演じられるわけがない。最初から生まれてこなければ…
中の人はアニメジョジョ4・5部のボーカルで有名。

ちなみに現状少年(及びスーツ姿の男性)には死亡ルートが存在しないため、担当曲の題名は笑えない別な意味をも孕んでいるかも知れない…。



◆ライブ版
コロナ禍真っ只中の2021年1月から3月にかけて6回行われた『Sound Horizon Around 15周年記念祭』の第1部として、アルバム1周分が披露された。
本編と同様に多数決の選択式で楽曲が分岐したり(多数決にはプレミアムシート購入者が参加できた)セリフが日替わりで変更されたりしていた。
また、千秋楽では少年ルートが解禁されてしまった。
時勢の関係で初めてアーカイブの配信も行われたが、現地再現向けのプレミアム配信では新規の日替わりセリフや前説が配信されたり、突如少年ルートが乱入したりとまた別物のライブと化していたという…。
一方で、従前のソフトのようにMCがカットされた一般配信もあり、こちらは上演当時の内容をそのまま見られると好評だったはずだったのに千秋楽では少年ルートと少女ルートが同時再生された。
また、記念祭と銘打っていただけあってサンホラファンのおじさん音楽ライター3人*7が語り倒す動画の派生『サンホララボ出張版』を第2部、ライブに登場した人々が過去のサンホラ曲をカバーする『Re:Vival Cover Live with A15周年記念祭Members』を第3部に行っていた。
特に話題となったのが第3部。ただのカバーではなく、キャラクターに合わせたアレンジがされたり、ちょっとした改竄要素が取り入れられたりしており、同じ曲でも2回目は別演出になることも。
また、後半3公演にて一部既存曲にも選択分岐が導入され、千秋楽版では少年ルートの2人が改竄に入ったことで解釈が完全に変わってしまうことも…。

ちなみに配信チケットの早期購入特典として「神社関係者のとある日の職務(仮)」なる、プレミアム配信版前説と連動した音声特典が存在(音声特典自体は一般でも視聴可能)。
…だがその内実は神社関係者によりプレミアム配信版前説に呼ばれた一般人の、仮面神職を間近で見た際のリアクションを体感するものであり、しかも中にはBDで存在暗示もされない新キャラもいた。


◆余談
BDでは冒頭から選択が始まっており、本編開始とは違うルートを選ぶと速攻でスタッフロールに突入しタイトル画面へと戻ってしまう
記念祭では5公演目で実際に開始即終了ルートに突入してしまい、神社関係者が慌てて再選択へと戻してことなきを得たそうだが、
プレミアム配信版でその選択を選んでも神社関係者映像が入る事なく即タイトル画面に戻り、一般配信版でもカットされたためそのシーンは幻のものとなった。
+ある可能性
ちなみに本編での選択肢はあくまで2択だが、BDではなぜか選択肢ではないはずの真中にある「狼欒神社の紋章」を押し、そこを赤く光らせる事が出来る
だが『狼欒神社』冒頭で神社関係者は参拝作法時の禁則の一つとして「参道の正中通るべからず」とも呟いており(だが姫子はそれら作法に心急いていたせいで悉く背いてしまっている)、
千秋楽プレミアム配信版『ゆりかご』にて曲中選択が挿入された際、本来ルート・別解釈エンド(コンサート・通常配信版で選択されたルート)の他に真中の第三の選択肢が登場
そしてそれが選ばれたことにより、那美の死亡ルート映像が流され曲が中途で終了したという。はたして真中を「選ぶ」意味とは…?

the Nearer Futureが待てない狼欒神群の追記・修正をお願いします。

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最終更新:2021年06月09日 14:06

*1 地名が現実には存在しない架空のものになっている。

*2 実在するバイク「カワサキ・ゼファー」の事で、記念祭版では実機のゼファーが登場している。

*3 作中では「八雲県杉浦市」・「凪丘県凪丘市純泉区」なる地名が登場しているが、仮にその2県2市が隣接していたとしても現状どちらにあるのか確定可能な情報がない。

*4 『Nein』冒頭でも「ファン」を暗示するような意味で使われている。

*5 記念祭の既存曲別解釈石碑では別な口調になっていたが、その解釈の主が誰かは不明。

*6 彼女が拝みに行った陽葦「火山」神社も、サクヤヒメと「火山」富士山を祀る「浅間神社」を連想させる響きである。

*7 ちなみに2014年の『Sound Horizon メジャーデビュー10周年ファンクラブ祝賀祭』にも登場している。