炸裂弾(るろうに剣心)

登録日:2021/10/05 Tue 05:43:58
更新日:2025/03/15 Sat 16:08:27
所要時間:約 10 分で読めます





赤報隊で培った鉄砲火器の知識を元に造った

炸裂弾だ


『炸裂弾』とは、漫画・アニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』に登場する道具/兵器であり、作中でも最強候補の破壊力を持つ。



●目次

餞別の概要だ、護身用に見ていけ

東京編

制作者は、かつて赤報隊で相楽左之助と共に活動していた絵師(後に新聞屋へ転向)の月岡津南
曰く「得意な火薬と爆弾製造技術を活かして制作した」小型の手榴弾である。

最初に作られたものは砲丸ほどの大きさの球形で、よくある「導火線が付いた丸い爆弾」であり、これが自宅である長屋の押し入れに山の様に詰め込まれていた*1
元赤報隊とはいえ一介の絵師が多数の爆弾を溜め込んでいたという衝撃的なシーンを経て、親友の左之助に「共に明治政府への復讐をしよう」と持ちかける。

左之助としても、政府によって赤報隊や仲間たちを「ニセ官軍」呼ばわりされた挙げ句、リーダーであり恩師である人を処刑され、晒し首にされた姿を目撃しているわけで、
津南の気持ちは痛いほど理解しており、彼は復讐に賛同。計画に協力することになる。
とはいえ心の奥底では失敗を確信しており、ある意味では親友に現実を知らしめる為に協力している形となっている。

そして新月の夜に内務省の敷地に侵入、テロは途中までは上手くいったものの、それを良しとしない緋村剣心が立ちふさがる。
圧倒的な実力で剣心は津南が投げる炸裂弾を無力化し、左之助も恨みはありながらも既に新しい時代への希望を手に入れていたので、津南を腹パンで気絶させてテロは結果的に失敗に終わった。
そして津南の所持していた炸裂弾も全て回収され、剣心の手によってどこか人目の付かない所に埋められた
た、多分事細かに説明してないだけでちゃんと水に浸しておいたんだよ!うん!
そもそも水没させないと不発弾や地雷になるし、纏めて埋めてたら開拓で爆発しちゃうしね。

津南はそれでも政府への復讐心を抱いていたが、左之助の言葉により自分が間違っていたことを自覚した。だが、赤報隊の扱いを始めとした政府も正しいとは思えない。
そこで彼は武力による報復ではなく、もう一つの特技「絵」を使って風刺の新聞屋として政府を糾弾し、改革を促す道を選んだのだった。
余談だが、新アニメ版のOPではレギュラー4人の絵を彼が書いたことになっている。普通にアニメの描き方なので「先生デジタルに目覚めたんスか」等とネタにされているが。

旧アニメ版ではこのくだりの展開がだいぶ変わっており、テロ中に剣心と左之助が対決し、敗れた左之助の呟きと自分の罵声に対しても動じない剣心の姿に津南が自ら改心して炸裂弾を埋めている。
新アニメ版では『原作が本来4話予定だったのが3話に短縮された』ために消化不良に終わったという事情があったためか、
終盤まで原作と同じ展開だったのが、上記の左之助に諭される場面から展開が変わり、納得できない津南が今度は政府の前で切腹すると言い出して飛び出し、
それを追いかけた左之助と殴り合いになるという、ある意味では旧アニメとは真逆の展開になった。
煙幕弾を使って左之助や警官を撒く姿は「忍者かコイツは…」と言いたくなる事請け合い
その中で、津南は左之助が赤報隊の悲劇を目の当たりにしながら「それなりに楽しくやっている」とそれを忘れたかのような人生を送っている事を非難するが、
逆に左之助は津南のやろうとしている事が不幸な境遇を背負いながら新時代を幸せに生きようとしている人々にとっては迷惑でしかないと指摘し、
テロの直前に開かれた宴会で左之助の呼びかけに身分に関係なく集まって交流した*2人々の姿こそが相楽隊長の目指した四民平等ではないのかと諭されて戦意を喪失。*3
かつて相楽隊長に言われた「自分のやり方で戦え」という教えを思い出して新聞屋として政府と戦う道へと進む流れになった。
えっちらほっちら炸裂弾を埋める剣心の姿も描かれたが、最後に炸裂弾を一つ花火代わりに爆発させていた
あと明治政府からは志々雄一派のテロじゃね?と勘違いされかけた
なお、宴会の中で剣心の似顔絵を描いているのだが、「見たものを感じたままに描く」という考えからその似顔絵の剣心はのっぺらぼう
そして、「この男は笑ってはいるが、心の奥底で何を考えているかわからない」と剣心の心の迷いを突くコメントをしている。何気に旧アニメED『Tactics』にも同様の歌詞がある


京都編

京都編に入り再登場し、京都に向かう左之助に京都までの返金に期待はしてない路銀とより小型サイズとなった新型の炸裂弾を4個プレゼントする。
炸裂弾をまだ作ってた事に怒鳴る左之助だが、津南は「心配するな、護身用だ」と返している。
デザインは着火作業が要らないので導火線が無いシンプルな代物となっており、見た目的にはまんまこれである→目
新アニメ版ではデザインが変更されたが、ぶっちゃけ「ヘアブラシ型手榴弾M1915」や「M24型柄付手榴弾」のようである。
どうせ人造人間錬金術も存在しているから気にしないで。

だが見た目に反してこの新型炸裂弾、充分にオーパーツの類であった。
活躍の場は志々雄自慢の「大型甲鉄艦煉獄」が登場したシーンで、出番は左之助が持っていた3個の新型炸裂弾である。1個消えた?聞こえんなぁ
剣心と斎藤が敵の目を引いている間、左之助は煉獄が偽装の為に纏っていた海に浮かぶ残骸を足場にして煉獄に向かう。
剣心たちの目論見を読んでいた志々雄が準備させていたガトリングガンの攻撃を二重の極みの応用で防ぎ、新型炸裂弾を剣心から指示された煉獄の後方である機関部付近に投げつける。
それを見た志々雄一派の参謀である方治は「うろたえるな!たかが手投げ式の炸裂弾だ!外装は壊せても内部までは破損せん!」とたった一コマで高速でめっちゃフラグを立てて言い放つが、新型炸裂弾は着弾後に爆発して煉獄の装甲をぶち抜いた
そして狙いである機関部を大破し、スクリューシャフトが折れる、大規模な浸水と弾薬庫から火災が発生という多重オーバーキルを受け、手のつけようがなくそのまま煉獄は沈んだ。
僅か3個の小型爆弾で大型軍艦を撃沈させるという大金星を挙げたのだ。


(カツ)のヤロウ
こんな危険物俺に持たせてたのかよ
どこが護身用だオイ


爆発の衝撃は使った左之助もドン引きするほど激しかったが、離れた場所にいた左之助はひっくり返り海に沈んだものの無傷であった。丈夫な男である。
この煉獄に全財力の5分の3をつぎ込んだと豪語する志々雄は寸前まで左之助本人の事をそこまで意識しておらず*4 、方治ですら「剣心や斎藤に比べると遥かに劣る戦力」と軽視していた。*5
そんな志々雄にとって取るに足らない筈だった男に大事な煉獄を沈められた為か、ちょっと激おこぷんぷん丸な感じで安慈「そいつは首じゃあ済まさねえ!頭蓋骨を引き抜いて俺の所へ持って来い!!」と要求する程だった。
方治も自らが苦心の果てにようやく手にした煉獄をどこぞの馬の骨とも知れない男にあっさり産廃にされた事に凄まじい憤りを抱き、旧アニメ版では志々雄との決闘時で左之助に「煉獄焼失の張本人、相楽左之助!貴様もこの闘場より生きては返さんぞ!!」と言い放っている。


ツッコミ所

おわかりだろうか?この新型炸裂弾、凄過ぎである。
まず片手の手のひらで3個掴んで放り投げられるサイズと重量にもかかわらず威力と爆発範囲が桁外れであり、無造作に投げ渡したり適当に保管していても故障せず暴発しないという近代兵器も真っ青なシロモノでもある。
この時代に着火作業がいらないだけでもオーパーツ気味だが、見た感じも取り扱い的にも安全ピンすらなさそうなのに着弾時に狙ったところで爆発するしでもう本当に意味不明。

思えば旧型の炸裂弾も、左之助に見せるために襖を開けた際幾つか床に転げ落ちるくらい雑な扱われ方をしていた。
保管していた期間は不明だが、津南の台詞から年単位は経っているものも多くあると見て良いだろう。
危険物取扱者なんかを勉強したならよく分かると思うが、普通そんな事したら湿気でオジャンになるか、材質によっては自然発火して長屋もろともふっ飛ぶおそれすらある。
津南曰くアシがつかないよう慎重に作ったとの事なので、大っぴらに保存設備やらを設けられなかったのかもしれないが、それにしてももう少し丁寧に扱っても良いと思う。
まあるろ剣世界は実際の明治ではなくバーチャル明治なので物理法則も現実とは違うだろうから問題ない

とはいえ煉獄を沈める威力を描写してしまったせいで、後の展開でもファンに「新型炸裂弾があればいいんじゃね?」と言われる事がたまにある。
例えば十本刀の爆弾で飛んで爆弾を落としてくる蝙蝠野郎に持たせたら本人も2度と地上に帰ってこないやばいことになるとか。
雪代縁が「煉獄級の艦隊10隻用意して東京を火の海にしてやる」と脅迫したが「じゃあ新型炸裂弾を30個用意すればいけるな!」とか言われてしまう。
本来は絶望的な台詞である煉獄10隻もなんかギャグに聞こえてしまう弊害が生まれてしまったのである。

もっとも、単体ならまだしも10隻もの艦隊相手となると易々とそんな手段をとれる余裕を与えてくれる訳がなく、そもそも煉獄の件は出航さえせずほぼ接岸状態だった事と偽装の為の木片を踏み台にして渡れる意味不明な人員を直接送り込めたのであって、
艦砲射撃をする距離から艦隊で迫られては近づくことさえ困難である(船で近づいたところで良い的になるだけ)と、冷静に考えればやはり絶望的な宣告なのは間違いではない。
煉獄が撃沈した理由は新型炸裂弾の威力の高さも原因であるが「どこの馬の骨とも分からない男がオーパーツ持って突撃してきた」という最大級の初見殺しが刺さった為という事を忘れてはならない。

ちなみに特に語られてないが、志々雄からすればこんなもんまだ持ってるかもしれない左之助は下手に無限刃で炎を浴びせようものなら新型炸裂弾が爆発して無理心中になりかねないという相性最悪の相手なので、剣心・斎藤・蒼紫に対しては全員無限刃で炎喰らわせてるのに、左之助だけはアニオリ場面含めて拳一つで倒している。
決して左之助が無限刃を使うまでもない如何ともし難い実力差の相手だからというわけでは断じてないのだ*6
とはいえ、原作ではその後余りにもオーバーパワー過ぎるからか使用されなくなったが、アニオリの島原編にて再登場した。
3発以外の残り弾として登場し、左之助からロレンゾ庄三に手渡され、島原編の黒幕である傀王(とその従者)を巻き添えにして爆死して討ち取るというこれまた大金星を上げている。
遂に死人が出てしまった*7

津南自身もその後のアニオリである風水編にて、東京を破壊せんとする風水師一派の陰謀をいち早く見抜いて左之助と行動を起こし、
明治政府の警察庁トップであり薩摩系志士*8でもある川路利良と共闘し、風水師一派の手から東京と市民を護るという、大出世レベルの活躍を果たした。

他の作品でも似たような事例があり、『機動戦士ガンダム』第14話で大型ロボットが使う 口径が120mmの ザク・マシンガンを受けようが、そのザク至近距離で大爆発しようが無傷なガンダムの装甲を、
歩兵が運搬可能なサイズの爆弾を取り付けて破壊しようとしたことがあり、しかも取り付けられたガンダムの側も起爆したらガンダムが破壊されるという認識で解除を試みていた。
つまりこの小型爆弾を着弾したら爆発する設定にして発射すれば 人間が携行できるサイズのランチャーでガンダムを粉砕できる のだが、決死の覚悟で接近して取り付けて逃走していたし、この話以降にこの爆弾をガンダムに使おうとしたことはない。


TVアニメ第二作において

色々とリメイクされた令和のアニメにおいてはあのサイズの炸裂弾で外部からの爆発で煉獄を沈めるのは流石にやりすぎと思われたのか
炸裂弾はサイズアップされ、少し昔の手榴弾くらいの大きさにサイズアップされ、一発だけとなった。
更に外部からではなく機関室を戦艦内部から直接爆破する作戦に。

そして着火されたが、方治が自らの血で消火してしまい、炸裂弾は不発に終わってしまった。
なお、煉獄は機関室で二重の極みが炸裂し、結局沈んだ。


余談

なぜ新型炸裂弾がここまでの威力を発揮したのかといえば、作者の和月と愉快なアシスタント達が煉獄の作画にうんざりしたためである。
早々に煉獄を退場させる為に炸裂弾を使うことを思いつき、煉獄を沈められる威力にまで強化したというのが真相である。*9
ちなみにアシスタントの一人は後に自分の連載作品で艦を大量に描く羽目になるという因果なことになった。

後に出された本編の前日譚にて、煉獄を爆破した新型炸裂弾の威力に後付けであるが理由がつけられた。
絵師としても活躍している津南はある日、とある組織から戦艦の絵を描くように依頼される。
戦艦を持つような組織は明治政府しか考えられない為*10、政府への報復を考える彼は戦艦を破壊するため、海外の文献を参考に新型の炸裂弾を作り上げていたわけである。
「海外の文献」の詳しい内容は不明。アメリカとかイギリス由来かもしれない
身も蓋もない事を言ってしまえば煉獄メタである。

その後も煉獄の所在は津南も気になってた為か、再び炸裂弾を自作する。
津南は作中改心して新聞屋に転向し、ほどなく志々雄の存在を掴んでいたので、煉獄が志々雄の手に渡った事まで把握していた可能性も有り得なくはなく、それならばと対抗手段として製作したとしても不思議ではない。*11
上記の通り、月日を経て左之助に対煉獄用の炸裂弾を渡すシーンにつながるのである。
そしてそんな危険なものをきちんと説明せず左之助の手に落とすように適当に渡す津南は鬼か悪魔か




縁「煉獄級の艦隊10隻で項目を荒らしてやる(*^_^*)」
剣心「ならば拙者達は炸裂弾30個で追記修正するでござる(*´ω`*)゚」
縁「('・ω・') 」

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最終更新:2025年03月15日 16:08

*1 新アニメ版ではアニメスタッフが「時代考証的にあの時代の長屋に押し入れがあるのはありえない」ということで隠し場所が床下に変更されている。

*2 これ自体は原作でもあったが、原作では剣心・薫・弥彦・妙・燕のみの参加だったのに対し、新アニメでは恵や左之助の舎弟も参加している。ちなみに恵は旧アニメでも宴会に来ていた。

*3 同時にかつて四民平等について「嘘っぱち」と非常に辛辣な見解を示していた左之助が四民平等を信じられるようになった事になる。

*4 剣心や斎藤の脇に居る左之助に対して「知らんのが1人混ざってるな」と興味なさげで、方治の説明を聞いても「要するにただの雑魚か」と流してそれっきりであった。

*5 とはいえ囮に引っかからずガトリングガンで迎撃させるなど打てる手は打っている。しかし左之助が二重の極みでガトリングガンを防ぎ、尚且つ煉獄を破壊できる代物を持っていた人間とまではさすがに想定しようもなく、単純に不運だったと言うべきであろう

*6 志々雄も、左之助が安慈の奥義である二重の極みを使ったのを見て『ただの雑魚じゃねぇ!』と見識を改め、アジトに攻め入った精鋭である剣心と斎藤に並んで挑んでいる事からそこまで軽んじてはいない。

*7 やむを得なかったとはいえ、この事実はロレンゾ庄三の心に暗い影を落としてしまい、彼は生涯殺人の罪を償う道を探すと左之助に打ち明ける事になってしまった。

*8 相楽総三のバックでもあり、同時に彼の処刑命令も出した

*9 逆に煉獄が鳴物入りで出したはずなのに作画コストというメタな事情で出オチにさせられてしまったのだが、実写版ではその雪辱と言わんばかりに煉獄の船上・船内が最終決戦の舞台としてド派手に使われる事となった。

*10 実際は別の組織であった

*11 ちなみに前日談小説で津南は改心後に初めて新聞屋を始めたのではなく、新聞屋をやっていたところ片手間に描いた浮世絵が売れに売れたため、その資金を使ってテロリストに転向したとされているので、長い期間かけて志々雄の事を調べていた可能性もある。