大型甲鉄艦煉獄

登録日:2021/05/23 Wed 22:35:40
更新日:2025/03/15 Sat 15:23:30
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ま、この大型甲鉄艦”煉獄”には 全財力の五分の三をつぎ込んだんだ

もっと驚いてくれなきゃハリが()えがな


大型甲鉄艦煉獄(おおがたこうてつかんれんごく)』とは、漫画・アニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』に登場する戦艦である。

そして、志々雄真実一派が国盗りの為に用意した最強の切り札(笑)である。

+ 目次

概要には全財力の五分の三を注ぎ込んだ

正式名称『戦艦Purgato-Rium(プルーガートリウム)
一ヶ瀬鮫男率いる引原海鮫兵団を下して取引相手に成り替わった志々雄真実と配下の佐渡島方治が、雪代縁率いる上海マフィアから購入した最新の装甲艦である。
なお売買交渉時の会話からして、「煉獄」という呼称は縁の側が名付けていたものであった様子。
ちなみに"煉獄"という言葉には「(カトリック教義における)天国と地獄の狭間に存在している、天国行きの死者の霊をによって浄化する場所および浄化中の期間」という意味合いがある。
更に言えば、この艦の正式名称に使用されている単語「Purgatorium」はそもそも「煉獄」を意味するラテン語だったりする。

値段は言い値で現金一括払い*1、組織の総予算の6割に当たる全財力の五分の三なる大枚をはたいて購入するという縁にとってはホクホク顔にならざるを得ないような内容の取引で購入され、武装は対人想定のガトリングガンからアームストロング砲まで装備されており圧倒的な攻撃力を誇る。

アニメ新京都編では駒形由美がガトリングガンをノリノリで斎藤一にぶっ放し、実写映画版ではその砲撃で街を破壊するなど圧倒的な強さを見せた。


惚れてくれるか?

作戦前から木造の外装を纏いボロ船に偽造することでまんまと大阪湾に停泊しており、
ボロ船に不安になった由美に志々雄は意気揚々と中身を見せて「惚れてくれるか?」と語りかけ由美も「ええ」と答えている。

京都大火が起きたら出港しようとのんびり待っていたが、志々雄の思考と作戦を読んだ緋村剣心たちが到着。

せっかくなのなので彼らの目の前で偽装を爆破して真の姿を現し、黒船の恐怖を煽るための不明船の役割だけの存在だと考えていた緋村剣心らを驚愕させ、
個人がこのような甲鉄艦を所持していたという事実は斎藤一をして「明治政府も長くないな」と愚痴を零させた。


さすがに煉獄一つだけで国盗りができるとは思っておらず、
十本刀及び数百の兵隊による放火及び大規模な破壊活動を目的とした京都大火により東京の注意が逸れたところでの奇襲的東京侵攻と攻撃による民衆の混乱と政府機能の麻痺が目的。

新月村などでの様々な反政府活動や、志々雄対策を行おうとした大久保利通を瀬田宗次郎に暗殺させるなど、史実以上に日本政府や国内の秩序を堂々と乱していたのもこの布石だったわけである。
この作戦は大半の十本刀にも極秘で、更には囮にするために京都の方の情報はわざと漏れやすくもしていた。


餞別の末路だ護身用に見ていけ


本来であれば剣心達など無視して東京へ向かうことも出来たが、「逃げるみたいで癪だから、まずは圧倒的な力を見せ付けてからおさらばしてやろう」という志々雄の考えで彼らと相対することになる。ぶっちゃけこの時点でフラグは立っていた。

しかし、志々雄が取るに足らない雑魚と見ていた相楽左之助が月岡津南から渡されていた*2小型炸裂弾3発を「っらぁ!!」した大爆発により、機関部大破スクリューシャフトが完全に折れる船尾に手に負えない火災発生であと十分で弾薬庫に引火船底に塞げない勢いの浸水と致命傷複数のオーバーキルを受け、その威力を発揮することも無いまま呆気なく全財力の五分の三(笑)は沈没。お魚のお家となってしまうのであった。
志々雄達はその後、脱出用の舟で避難して辛くも窮地を免れる。

虎の子の煉獄があっさり破壊された事に対して方治は激怒し、志々雄は「煉獄は高い代償になったが、剣心らを直接葬る必要がある事がわかってよかった」と冷静に状況を分析しつつ、「こいつらを甘くてみていたこの俺 志々雄真実の隙が最大の原因だ!」と煉獄沈没の原因となった己の傲慢さを認め、煉獄を奪った左之助の対戦相手の悠久山安慈には


こいつは首じゃあ済まさねェ!頭蓋骨を引き抜いて俺の所へ持って来い!


と凄まじい剣幕で要求している。
そう考えると、仮に改めて殺すつもりだったにせよ直接対決で志々雄が左之助の相手をした際にはパンチ一発で済ませてやった辺り、彼なりにかなり温情ある対応を取っていたと言えるかもしれない。
…なんてことがあるわけなく、左之助を一切舐めプしていなかったからパンチで沈めたというのがおそらく正しい
何せ、志々雄からすれば左之助が炸裂弾を持っている可能性は十分有り得るのだから。*3


津南印の炸裂弾最強説

この様に煉獄さんは片手で複数持てるサイズの小型炸裂弾で三個で撃沈したが、作中の常識でも現実の常識でも小型炸裂弾程度でそんなことは常識的に考えて不可能である。
方治の「たかが手投げ式の炸裂弾だ外装は壊せても内部まで破損はせん!」という叫びが 常識で考えて当然の判断 と言える。
だが実際にとんでもない爆発描写も結果も描かれているので仕方がない(投げた左之助も「こんな危険物俺に持たせたのかよ」とあまりの威力に呆気にとられていた)。
100円ライターの火を突きつけられて「たかが100円ライターの火力では軽い火傷はしても致命傷にならん!」と思っていたら
そのライターの火が身体に触れた瞬間 全身が燃え上がって骨まで灰になった くらいありえない効果である。
そのため制作者の津南は現代の技術力から見ても再現不可能なオーパーツレベルの規格外な逸品を生み出せる超技術者としてネタにもされる。
最終決戦のアジトで志々雄の待っている闘技場の中にドアの隙間から炸裂弾を投げ込めばいいとか。

後に縁がその気になれば煉獄と同型の艦十隻を東京湾に並べて東京を火の海に出来ると豪語していたが、「なら炸裂弾30個で終わりじゃね?」と一部ファンからネタ的に言われたりする。
作中における煉獄の顛末のせいで彼の渾身の脅し文句が完全にギャグになってしまっているのも含めて、どこまでも罪深い艦である。もしくは、罪深いのは炸裂弾の方だという見方も出来ようか。


逆に志々雄と方治は縁に廃棄予定の欠陥品を掴まされ詐欺に遭っただけではといった説もある。
とはいえ、偽装を解除する時には自ら偽装全体を爆破しまったく傷がない描写もあるため、普通の小型炸裂弾の爆発程度であのような重大な被害が出る欠陥品という解釈するのはかなり無理があるだろう。爆発からして作中でも異常であることは左之助のセリフからも明らかである。


煉獄入手の経緯が描かれている『るろうに剣心 裏幕-炎を統べる-』小説版では津南が煉獄を破壊する為に炸裂弾を作成したと後付けされてはいる。
煉獄を破壊するための参考用の資料として海外の文献を取り寄せた事になっている。
……つまり、この世界には小型炸裂弾で煉獄程度破壊できるオーパーツな火薬の文献がホイホイ存在する事になる

まぁ、和月世界のこの時代は色々カオスだし、実際に繋がっているので。
とりあえず縁は武器商人としてまずその文献を押さえるべきであった。
そして志々雄はこの文献を入手するか、あるいは津南がまだ明治政府の崩壊を狙っていた頃に彼をスカウトしておけば、刈羽蝙也の飛空発破とのシナジーも相まって、国盗りなど余裕で成し遂げられたことであろう。

尤も、この小説版では津南は元々文字の力で政府を正そうとする新聞屋だったが、錦絵を描いてみたら売れに売れたのでテロリストに転向した事が明かされており、
本編で再度新聞屋になってからそんなに経ってないのに志々雄の事を知っていた事や、炸裂弾を剣心に捨てられて考えを改めた後も新たに作っていた事、そしてそれを護身用だと言って左之助に渡した事を考えると、
津南は元から志々雄の事も煉獄が志々雄の手に渡った事も知っていて、志々雄は仮想敵だったとも考えられるので多分津南が志々雄側に着く事はなかったと思われる。
逆に言うと「左之助と錦絵」の際には津南は「全ての計画が整った」と言いつつこの炸裂弾は使われなかったので、威力が過剰すぎる事は自覚していたと思われる。それくらいのモラルがあって本当に良かったと言わざるを得ない


モデル

漫画・アニメ版の外観モデルは新政府軍→大日本帝国海軍が所有していた1864年進水の装甲艦「甲鉄」(後に「(あずま)」と名を改める)。
南北戦争時にアメリカ連合国(南軍)がフランスに発注した軍艦「ストーンウォール」が前身で、南北戦争終結後に徳川幕府が購入を取引したのだが、引き渡し時には幕府はすでに失脚状態であったため新政府軍が購入・受領した。
世界的にも木造艦が多かった戊辰戦争当時としては当時の並の大砲の砲弾を弾き返せる「甲鉄」はかなりの有力艦で、戊辰戦争では旧幕府軍が宮古湾に停泊する「甲鉄」を奪取しようと接舷攻撃(アボルタージ)を決行した「宮古湾海戦」がよく知られている。
明治に入ってから「東」と改名し、佐賀の乱、台湾出兵、西南戦争などに参加。1888年に除籍解体された。

なお、るろうに剣心の舞台である明治11年(1878年)は、強力なクルップ後装砲を備えた当時東洋最大の装甲艦「扶桑(初代)」や、非装甲ながら「東」よりも大型かつ快速のコルベット「金剛(初代)」「比叡(初代)」など当時最新鋭の有力艦が揃って帝国海軍に就役していた時期である。
なので
  • 「当時最新の武装でなく戊辰戦争期の武装*4で固めた型遅れの煉獄一隻程度では、間違いなく横須賀から迎撃に向かうだろう帝国海軍の主力を相手するのは難しかったんじゃないか」
  • 「縁に丸め込まれて欧州で艦籍抹消済みの老朽艦を買わされたんじゃないか」
  • 「と言うか縁の煉獄級10隻の脅しも、当時の帝国海軍の戦力考えたら実はあんまり大した脅しになってないような」
と言う声もよく上がっている。*5
そのためもあってか実写映画版では戦艦「三笠」(1900年進水)をCG加工した、作中の時代ではありえないほど強力な装甲艦となっている。
その甲斐あって砲撃シーンは実に迫力満点だが、結局剣心と志々雄の戦いに決着が付く頃になって始まった陸地からの砲撃によって海の藻屑と化してしまうのであった。
原作より進んだ時代の戦艦に魔改造してこの有様なんだから、オーパーツ炸裂弾がなかったとしてもやはり原作の煉獄で東京をどうこうするのは無理だったのでは……。


余談

煉獄がいきなり出オチの残念な末路となったのは本来なら最終決戦の場として用意されていたものの、作者とアシスタントが煉獄の絵を描くのが途中で面倒になった為、出したはいいが急遽沈められることとなったという経緯がある。
そして、都合よく左之助に「どっかで使う事があるだろう」と炸裂弾を持たせていたため、煉獄はたった3個の炸裂弾で沈められる事になってしまった。
なおその当時のアシスタントは、後に『ONE PIECE』の作者となる尾田栄一郎氏を始め錚々たる顔触れだったらしい。尾田氏がその後、自らの作品の中で様々な船をたくさん描くことになるなどこの時には本人以外誰も夢にも思っていなかったことだろう。
この辺の事情があるため、ジャンプ掲載つながりで煉獄さんは誰も死なせなかった!(しかし殺すこともなかった)とか炎柱(になった)とか称するのは勘弁してあげてほしい…。

上記の反省から実写映画版及びアニメ新京都編では街への攻撃用にも使用されており、また最終決戦の場としても使用され主と共に海中へと没している。

テレビアニメにおける登場回は、
第45話【翔ぶが如く!戦艦煉獄 出航を阻止せよ】
第46話【煉獄炎上!志々雄真実の命運】
この二話となっている。……題名で完全にネタバレしてしまっているような・・・。

後、アニメ版では炸裂弾を使い切っていなかった*6ので島原編でまたも艦を沈めるのに使われた
その他、オリジナルキャラクターであるロレンゾ庄三に渡されて、島原編の諸悪の元凶となった悪党・傀王を倒すのにも使われたりした。
元赤報隊士、月岡津南はアニメオリジナルエピソードにおいても悪を打ち砕き日本を守る救世主となったのだ*7
…その代償としてやむを得なかったとはいえ傀王らを爆殺してしまった庄三は敬愛するマグダリア小夜の教えを破ってしまったと後悔し、その生涯を贖罪のために使うと誓う事になってしまったが。


TVアニメ第二作

令和アニメ版では後期OPの「BURN」にて登場。
かっこよく登場したと思ったら「そうBURN!」という歌詞と共に爆散しており、前期OP「いらないもの」の謎のモブ4人と同じくネタにされている。

その後、本編にも登場。
流石に炸裂弾が外部で爆発しただけで沈む流れは変更。
剣心たちが足止めする間に左之助が内部から機関室を炸裂弾で爆破する作戦へと変更される。
そして炸裂弾が炸裂……することはなく方治が自らの血で消火する意地を見せ、炸裂弾はまさかの不発。
最終的に佐之助が二重の極みで機関室の栓を破壊し、浸水から撃沈する流れとなった。


志々雄「追記・修正には全財力の五分の三を注ぎ込んだ(*^_^*)」
左之助「っらぁ(*´ω`*)゚」
志々雄「('・ω・') 」

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最終更新:2025年03月15日 15:23

*1 この条件を言い出したのは意外や方治である。彼としては忠臣として志々雄の威厳を顕示するために敢えて破格すぎる条件を提示したのだろうが、艦船の入念な下見もせずに大盤振る舞いをしたことが後に思わぬ結果を招くことに…。なお志々雄は「嫌ならてめえの命ごと頂く」と脅していたが、縁にとってこの商談を断る理由など当然あるはずも無く笑って受け流していた。

*2 当初は餞別の唯の護身用という触れ込みだった。津南は、左之助と共に赤報隊にいた頃学んだ鉄砲火器の知識を活かしてこれらを作ったとのこと。

*3 左之助が炸裂弾を持っていた場合は当然、相性最悪の炎を使う秘剣なんざ使った日には誘爆を起こし、剣心が抵抗して起こした紅蓮腕の不意の誤爆にも耐える志々雄ですら下手すれば爆死する。

*4 主兵装のアームストロング砲は発射ガス圧に対し尾栓機構が脆く、大口径艦砲としては欠陥品の烙印を押された砲であった。

*5 メタ的な話をすれば和月氏は「甲鉄」の資料を集めるのにも苦労したと語っており、インターネットも普及したばかりの連載当時、19世紀半ばの半端な時期の軍艦や兵器に関する手に入りやすくまとまった資料なんてほとんど無かったことも考えれば、仕方ないっちゃ仕方ないのだが……

*6 実際、原作で津南が左之助に渡した炸裂弾の数より左之助が投げた炸裂弾の数は明らかに少ない。この時左之助は海中に突っ込んでしまったので湿気てしまった可能性も高いが。

*7 なお、アニメ版では『風水編』でも東京府を破壊しようとする風水師一族の野望にいち早く勘付き、明治政府と共闘しながら東京を守る働きを見せている。剣心の過去を掘り下げた原作と違い、活劇性の強かったアニメ版後半のアニオリエピソードは津南との相性が良かったのである