将官

登録日:2023/07/07 Fri 19:15:07
更新日:2025/02/18 Tue 08:01:21
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将官とは、軍隊の階級の区分の一つ。
佐官の上に位置する、元帥を除いて軍隊における最高位の階級であり、一般的には「少将」「中将」「大将」の3つを指す。

なおこれは「将官3階級制」を採用している場合であり、国によっては少将の下に准将が置かれたり、上級中将・上級大将が置かれることもある。(准将は佐官待遇として扱うところもある)
陸軍の師団長や海軍の艦隊司令と言った現場のトップや、後方で司令部の幹部格、国防省等の幹部に就く。





説明

「軍隊」という組織にあって、将官とは上級幹部、いわゆる「軍上層部」「お偉いさん」と言える存在である。
通例として陸軍の編成は、
  • 最小編成(組・班・分隊etc...)
  • 小隊
  • 中隊
  • 大隊
  • 連隊
  • 旅団
  • 師団
  • 軍団またはそれ以上(軍、方面軍、作戦軍etc...)
という風なものが規模に応じて存在するが、将官は基本的に旅団以上の長を務める
例外も少なからずあるが、大雑把には
「准将なら旅団長」
「少将なら旅団~師団長」
「中将なら師団~軍団長」
「大将なら軍団長」
と考えてよい。
数字で言えば、数千人~1万人前後で構成される大部隊指揮官や、十数の艦船を率いる艦隊司令官といった所。
つまり「歩兵の部隊」「兵器に乗って戦う部隊」「補給を担う部隊」等々を複数取り纏める地位である。

民間企業で例えるなら、社長から下に取締役、部長、課長…と階級の「階段」が構成されているが、
社員が10人の会社と10000人の会社で階段の段数が同じだと、人数の多い会社は処理しきれずに困ってしまう。
同様に軍隊でもその規模や状態によって適切な階段の数は異なるのだが、
「うちは小さい軍なので中佐が最高階級なんです」なんてしてしまうと諸外国軍の会議で他国は大将や中将が出てるのに自国は中佐が出るなんてことになり、かなりの非礼になる。
なので調整するなら将官の位の数からいじる国が多い。

さらに将官の上に「元帥」などの最高位の階級を持つ軍もあるが、こればかりは国によってまちまちで、
元帥が無かったり特殊な場合にだけ任じられる名誉階級扱いなことも多い。
第二次大戦中のアメリカでは通常よりも格段に「業務」の難易度や量が増えたので、大将より上の階級を定めて就かせる必要があり、
これにより時限立法で元帥位を定めたが、現在は終了したので新たに法律を定めなければ米軍の最高位は大将である。

多くの国では階級章には星が使用されている。
尚、英語圏では陸·空軍大将はgeneral(ジェネラル、ゼネラル)、海軍大将はadmiral(アドミラル)となっている。


海軍

海軍に於いて『艦隊司令官』の意味で用いられる「提督(Admiral)」は軍の階級とは直接関係していない呼称だが、
海軍の単位としての『艦隊』の司令官は基本的に将官クラスが務めるため、「提督ならば将官、司令官の将官なら提督」と考えて概ね構わない。
余程の緊急時でもなければ新米少佐が提督になる事はまず無い

因みに、日本史上初めて「提督」と呼ばれたのは、黒船で浦賀と下田に来た事でお馴染みのマシュー・C・ペリーとされる。
当時「代将*1」であったペリーの階級を日本語で表現するに当たり、
そのまま「将軍」と翻訳すると江戸時代の日本に於いてそれは「征夷大将軍」「軍総司令官と国家元首代行を兼ねる地位」を意味してしまうため、
別の呼び名を付ける必要が求められた末、清朝に於ける水軍の司令官の呼び名を借用する形で「提督」と呼ばれ、
以降そのまま「海軍の指揮官クラス」の意味で定着したとされている。


空軍

各空軍の総司令とも言える将官は「ほぼ現役のパイロット」だったりする。
パイロットたちを束ねる長が年老いたからといって飛行資格を喪失するのは恥だから操縦士手当がなくなると将官でも手取りが激減するからである。


日本

旧日本軍、自衛隊一貫して3階級制である。

日本軍

階級は少将、中将、大将。
特筆すべきは、これらは勅命(天皇直々の命令)によって任ぜられることであり、敬称は「閣下」であったことぐらい。
他は大体諸外国と同じだが、准将に値する階級が設けられていない。
因みに普通の大学卒*2の将官は中将止まりで、士官学校を卒業していないと大将にはなれなかった。

自衛隊

階級は将補(少将相当)、将(中将相当)、幕僚長(大将相当、各自衛隊1人ずつ+統合幕僚長の計4人)。珍しく変わった名前をしている。佐官、尉官なんかは一部除いて三等とか二等とか一等なのに。大体の国で言えることだが、防大や東大みたいな超エリート校&各種幹部候補生学校&幹部学校などで上位の成績を取った出世コースに乗らなければ、余程の功績を挙げない限り昇級することはない。···多分。
判りにくいので改名する声も上がっているが、そんなことすると軍として判断されかねない為か見送られている。尤も、英語では陸軍幕僚長らはgeneral等米軍に準ずる単語が使用されているのだが。

アメリカ軍

階級は准将、少将、中将、大将。
海軍では直訳では下級少将、上級少将となるが、別に准将でちゃんと通じる。
世界の模範と言っても過言ではないのでこれと言った特徴はない。



ゲームにおける将官

軍隊をモチーフとしたボードゲーム、「軍人将棋」に於いて将官は歩兵としては最も強い駒である。
王将に当たる「司令部」は将官か佐官でなければ取れず、また「スパイ」以外の全ての駒に勝てる大将は最も司令部の防衛に向いている。
また地雷と大将・中将以外に負けず、動いた駒に負ければそれを大将と見抜ける事から、中将を切り込み隊長にするのが定石である。
将官の扱いとしては珍しい状況と言えよう。

また、プレイヤーが戦争の趨勢を決定する戦略ゲームの類なども、プレイヤーが将官クラスとなる例が見られる。



フィクションにおける将官

階級の観点からすると、創作において将官がどの位置にいるべきかといったルールは特に無い。
「創作だから」「舞台や時代が違うから」など、必ずしも現実と同じにする必要はないからだ(ぶっちゃけそういう組織体系だからで済む)。
前線で真っ先に先陣を突っ走る将官や、小隊長みたいな事しかしてない将官といったものが登場しても何ら問題はない。
とはいえ、現実の階級制度にはそのようになった運用の歴史と根拠があり、リアルさを追求する意味で現実のそれに準拠するのは有用である。


指揮官を統括する将官

前述の通り、将官とはいわゆる上層部であり、万単位の人間を指揮し、更に部下に「指揮官クラス」が数十から数百人もいる存在である。
これはつまり、将官は抱えている部下の数がとてつもなく多いという事を意味する。
直属や子飼いでもなければ配下の人員それぞれにかまけている余裕などないし、司令部に鎮座して広い戦略眼をもって仕事に当たらなければならない。

従って、軍隊を描く作品でメインとなるであろう陸軍の前線を描写する場合、そこで登場するのはよっぽど階級が高くても佐官であり、前線で暴れるなんて事は緊急時以外はない。
その佐官ですら中佐以上ともなれば普通は部隊の指揮や司令部勤務と考えてよいレベルなので、
現実で両軍の司令官である中将同士が相討ちの形で戦死した沖縄戦が如何に激戦であったかが分かるというものである。

歴史的にも、有名なクーデターを指揮しているのは大佐が多い事が参考になる
歯に衣着せぬ言い方をすると、部下の掌握・行動の自由度・戦略単位の運用をバランス良く行える最上位階級が大佐という地位であり、
将官になると大きな戦略単位でしか指揮をとれなくなってしまうのだ。

こうした理由から、主人公が実働部隊の一員として戦う、もしくはそれらと対峙するのが主になるなら、
主人公やそのチームが将官と関わる、ましてや主人公が将官という例は少なくなる。


一方、海軍などの一つの兵器に多数の兵士が同乗する戦力では話が変わってくる。
これには艦隊規模のぶつかり合いが主な作品や大河に近い性格の作品など宇宙戦も含まれる。
海戦では旗艦と其処に乗っている将官に総攻撃を加えると言う戦法も多用される上に、現実でさえ戦艦が主力の時代は重防御の旗艦が先陣を切る、囮になって敵の攻撃を吸引するという状況も多かったので、戦死者・重傷者も結構記録されている。
有名な例としては
  • 日露戦争で日本軍の機雷戦に引っかかって爆死したステパン・マカロフ中将
  • マカロフ中将の後任としてロシア艦隊を率いたが、戦闘中に日本軍の旗艦・三笠の主砲弾が艦橋に直撃・戦死したヴィリゲリム・ヴィトゲフト少将
  • 敗軍の将として新鋭戦艦と運命を共にしたトーマス・フィリップス大将
  • 乗艦諸共に戦艦と駆逐艦の集中攻撃を受けて爆沈した西村祥治中将
  • 乗艦フッド諸共爆砕されたランスロット・ホランド中将
  • そのホランド中将を倒したものの乗艦ビスマルクへの集中攻撃で壮絶な爆死を遂げたギュンター・リュッチェンス大将
  • 北岬沖で機関室を撃ち抜かれた末に戦艦と駆逐艦の集中攻撃を受けて戦死したエーリヒ・バイ少将
  • ユトランド沖海戦で乗艦の弾薬庫を爆砕されて乗組員諸共に爆死したホレース・フッド少将
と著名な戦死者が多い。
すなわちこれらのジャンルでは打って変わって将官と関わる機会が増えるわけだ。
当然、主人公が将官のケースも有り得るだろう。


その他の軍組織内の将官

話が前後するが、階級はあくまで階級であって、指揮官と直接イコールで結びついているわけではない
現実でも国によって軍組織図はそれはもう多種多様(バラバラ)であり、共通認識と言えるようなものはほとんどないが、
それゆえにフィクションでも自由があり正誤については埒外である。
…というか軍組織系統図を「全て」まるごと公開しているような国はなかなかないので確かめようがないといった方が正しいか。

例えば軍隊は戦うだけが組織の全てではなく、様々な機関・省が考えられる。
  • 参謀(戦略)
  • 補給(兵站)
  • 軍学校
  • 兵科ごとの管理
  • 軍医
  • 軍法会議や査問会議
  • 軍内の保安・規律
  • 兵器工廠や技術研究
  • 経理
  • 法務
などなどざっくり挙げただけで多数の仕事が考えられるが、これらを司令部一つで賄えるわけがない。
なので担当する各省を作り、仕事を分けたりする。
この辺はそれぞれの作者の腕の見せ所なので、作品ごとに実に様々な機関が存在することだろう。
各省の局長や部長は当然ながら偉い人でなければならないので、充てられるのが将官というわけである。
軍の規模が大きくなればなるほど、下部機関の長は(軍閥的にも)将官のケースが多くなっていく。
そこへさらに人事に佐官・将官で使い分けることで、作中で重視されている省や規模、組織図の力関係を匂わせる事もできる。
局長として就いた将官はそもそも役職が違うので、軍戦力に対する指揮権を持っていないし、それらの各司令部とも関係はない。

他に、佐官や尉官にも言えるが、少将や中将は補佐や副官としても充てられる。
最もイメージしやすいのは参謀職だろう。司令部で大将と共に行動し、戦略上のご意見番となる。
いかに将官であろうと参謀職の部下以外に指揮権をもたないが、職務ゆえ大将にあれこれ口出しができるのだ。


作品に見られる将官

現実的には矢面に立つ事は少ない身分だが、中にはその軍の切り札や主力として扱われる例、戦闘力=階級となっている組織も複数ある。
但し、主人公側が軍である作品は、パワーバランスや組織の内部関係を描く必要が出てくるため、やはり作品の数は少ない。
特徴としては
  • 無論、その組織における最高戦力
  • 自らの能力を最大限活用し、主人公をあの手この手で苦しめる
  • 中将クラス以上になると、卓越した指揮能力で味方やレジスタンスを蜂の巣にする
  • 自分の艦を手足のように動かす
  • 戦況をほぼ100%直感等で理解している
と言った特徴があり、作中の強キャラ(時にチートキャラ)として登場する。他、退役軍人等、元々少将や中将であったキャラが年齢により弱体化した状態で登場することもある。
時々佐官が最高階級の軍が登場したりする。

ガンダムシリーズ

軍隊と深く関わる作品群にして数十年の歴史を持つガンダムシリーズだが、名あり将官キャラというのはそう多くない。
「単独行動する一隻の艦とそのパイロットたち」が主人公チームになる事が多いガンダムシリーズに於いて、
主人公らが将官と関わる機会自体が少なく、精々「何等かの理由で最高司令部を訪れた際の対談」「大規模作戦に当たり、指揮官となる者への挨拶」程度である。
中には主人公が将官という例もあるにはあるが、「国家元首の親族故の特例」「将官に任ぜられた時点で既に中年、かつ主人公の座を息子に譲っている」という事情があり、例外中の例外と言って良い。
機動戦士ガンダム オレら連邦愚連隊』は、戦後を見据えた連邦・ジオンの将官が戦争の早期終結、或いは利権を巡った陰謀劇を繰り広げ、
特に主人公サイドである連邦軍には複数回の出番・台詞があるものに限っても名有り将官キャラが数名登場し、
また主人公らの見えない所でコソコソするだけでなく、直接主人公チームと絡みを見せる事もあるという稀な作品である。

ONE PIECE

海軍の階級として准将~大将が存在する。
海軍支部には准将までは確認されたが、支部少将~大将については描写が無く扱いは不明。

大将は「海軍本部最高戦力」と称され、四皇やその最高幹部クラスとも互角に立ち回る世界最高峰の実力者を持つ。
中将以下とは隔絶された圧倒的強者のみが大将に昇進できるという感があり、実質的には中将が出世の最高到達点といった所。
そのため一口に中将と言っても実力にはかなりバラつきがあり、王下七武海と互角に戦える者も居れば、
七武海幹部クラス相手に全く歯が立たない者、実力者とはいえルーキーに瞬殺される程度の者も居る。
とはいえ昇格条件が「覇気の習得」であり、六式を使える者も散見されるため、木っ端海賊にどうこうできる様な相手ではないのも確かである。

中将は現場レベルに於ける最高指揮官クラスであり、『偉大なる航路』や『新世界』での大事件となれば中将自ら出撃する事も多くなる。

鋼の錬金術師

中央では腐敗の温床としていかにもな「腐り切った軍人」が多数登場しており、密かに陰謀を進めていた。
詳しくは軍の高官(鋼の錬金術師)を参照。

一方で中央の高官共に限らなければ真っ当な将官も少なからず存在している。
(原作では)自ら真っ先に最前線に出るなど気骨あり、部下からも慕われている高潔な軍人であったグラン准将
性格は苛烈であるが部下思いであり、やはり部下からも信頼の篤い北方司令部指揮官アームストロング少将
飄々として見えて実はかなりの切れ者であり、野心家ながらも悪行には手を出さないグラマン中将……
辺りが代表的である。

銀河英雄伝説

主人公含め、主要登場人物の多くが将官という稀有な作品。
「数万隻規模の宇宙艦隊同士のぶつかり合い」が主に描かれるスペースオペラという事で、主要キャラにそれぞれの艦隊を指揮する「提督」が何人もいる。
数字がデカ過ぎるお陰でトンでもない事態が起きている様な印象を受けるが、
史実に於いても大規模海戦には将官クラスが複数名投入される事は実際にあったため*3
それを宇宙規模にスケールアップさせたと考えれば丸っきりフィクション故の大袈裟、という訳では必ずしもない。



実在した将官

都合上、最終階級が元帥の方も入れてます。

余談

小国では、必然的に軍は縮小され、規模が小さくなるので、少将や中将止まりの国家も多くある。
事実、あのアメリカも独立直後は中将が最高階級であり、自衛隊も将は中将相当とは言え、幕僚長が定員一名であるから実質大将みたいなものである。
例えばニュージーランドは中将の上は元帥であったり、イスラエルは中将が最高階級であり、定員は一名であったりする。




追記・修正は将官、佐官の方々にお願いします。

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最終更新:2025年02月18日 08:01

*1 大雑把に言えば「大佐より上の大佐」「リーダーを務める大佐」「艦隊司令官を務める大佐」と言うべき存在。役割・扱いとしては准将とも似る

*2 と言っても、主に旧帝国大学卒の医師、科学者、専門家で現代の一般的な大卒と比べるとエリートだが

*3 例えばミッドウェー海戦では両軍合わせて20人近い将官が参加している。