ラスト・アクション・ヒーロー(映画)

登録日:2025/04/03 Thu 22:30:24
更新日:2025/04/18 Fri 06:35:02
所要時間:約 24 分で読めます





『ジャック・スレイター3』の衝撃から1年。
この夏、
シュワルツェネッガーが、
四度やる!


俺の映画を見ないなんて……
とんだ、ビッグ・ミステイクだぜ。


『ジャック・スレイター4』は、1993年に公開された米国のアクション映画。
『ジャック・スレイター』シリーズの第4作目。
主演はアーノルド・シュワルツェネッガーで、今作から製作総指揮も務めている。

コロンビア・ピクチャーズ製作・配給。

この歴史に残る大ヒットシリーズを見ないなんて……全くビッグ・ミステイクだぜ。

この項目が面白かったなら……\アイル・ビー・バック/







『T2』から2年。
この夏、
シュワルツェネッガーが、
やる!



俺の項目を気軽に立てようなんて……
とんだ、ビッグ・ミステイクだぜ。


『ラスト・アクション・ヒーロー(原題:Last Action Hero)』*1は、1993年6月18日に公開された米国のクライムアクション/コメディ/ファンタジー/メタフィクション映画。

アーノルド・シュワルツェネッガー主演。
監督は『プレデター』にてシュワルツネッガーと組み、以降も『ダイ・ハード』や『レッド・オクトーバーを追え』といったヒット作を立て続けに送り出して注目を集めていたジョン・マクティアナン。

コロンビア・ピクチャーズ製作・配給。


【概要】

90年の『トータル・リコール』の成功により、一躍ハリウッドのトップアクション俳優へと成り上がり、
続く出演作であり前作の敵役から一転してヒーローを演じると共に歴史的な傑作となった『T2』の大成功によって、その地位を不動のものとしたアーノルド・シュワルツェネッガーの俳優として頂点を極めていた当時の状況をもメタ的に取り込んで描かれた極上のアクション・エンターテインメント作品である。

シュワルツネッガー自身が製作総指揮として加わり、自身の持ち味となっていた“アクション”と“コメディ”を融合させつつ“アクション映画のお約束”に尽くツッコミを入れつつブラックジョークにしていくという、完成度の高い構成も光る組合員も大好物の傑作として名高い。
当時の吹き替え全盛期の映画の一つだけに複数の吹替バージョンが存在するが、組合員に素材にされることが多いのはソフト版か。

……が、劇場公開当時は当時としては破格となる1億ドルを費やしながらも、約半額の5千万ドル程度の興行収入しか得られない爆死作品扱いだったのは秘密。……恐らくはレンタルではそれなりに稼ぎを出して損失を取り戻せたとは思うのだが。

尚、劇場公開時に不振となったのは、配給のコロンビアが此方は歴史的傑作となる『ジュラシック・パーク』と同時公開しやがったせいだと思われる。「全く、ビッグ・ミステイクだぜ」
そりゃあ、如何にシュワちゃん全盛期でもマニア向けでニッチな方向性のメタネタ映画と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』級の全年齢向けエンターテインメント作品とじゃあ割も食わされるて。「重ね重ねビッグ・ミステイクだぜ」

……実際、本作自体は不振に終わったもののシュワルツネッガーは翌年に送り出した『トゥルーライズ』は大ヒットさせており、いきなりシュワちゃん人気が急落してしまっていたとか、そういうことではない。「アイルビーバック…この台詞知ってる?」

『ラスト・アクション・ヒーロー』に話を戻すと、前述の通りで非常に高度なレベルでアクションとコメディを融合、普通なら“映画のお約束”として流されてしまう荒唐無稽な要素もクドくならない程度に丹念にネタとして取り扱い、映画に詳しい人間程に深みにハマれる内容になっているのが特徴。
また、本国の映画ファンにとっては往年の映画スターが特別出演しまくる更に映画マニア向けの小ネタ満載のリスペクト映画という側面まである。……まぁ、組合員にとっては数ある筋肉映画でしかないのだが。

この頃には、他ならぬジョン・マクティアナンが送り出した『ダイ・ハード』のヒットによってアクション映画にも複雑で本格的なシナリオや構成が盛り込まれるのが普通になっていたが、方向性こそ違えど本作もまたその一つであり、解説や情報を踏まえたり、見返す度に新たなる発見があることだろう。(『ダイ・ハード』自体もセルフオマージュとして作中にて言及されている。)
当時の娯楽映画では常識だった無闇矢鱈のバイオレンス&お色気路線もネタにされており、モブの女性の殆どがスタイル抜群のモデル体型の美女というのも、昨今の何かと“配慮”を叫ばれる風潮からは懸け離れつつも潔いというか。

また、シュワちゃんと縁や関連のある人物としてロバート・パトリック(『T2』のT-1000)やシャロン・ストーン(『氷の微笑』のキャサリン・トラメル*2)、ジャン・クロード・ヴァンダム(本人役)、マリア・シュライバー(リアル奥さん。本人役)、ダニー・デヴィート(声のみの出演)、シルヴェスター・スタローン(姿と名前のみ。)……etc.が出演したり、言及されている。


尚、本作のアイディアと物語の構造が明らかに児童文学の傑作として名高く、84年に映画化されて大ヒットを記録した『ネバーエンディングストーリー(果てしない物語)』に似ているというのは否定できない部分であり、明言こそされていないものの大きな影響を受けたであろうことはファンから指摘されている所である。つまり、スレイター=マッチョ・ファルコン…QED。
また、厳密に言えば物語の前後で入れ替わりが生じるのだが、現在の視点だといわゆる“なろう系”に分類されることもある。

何れにせよ、本作のように役者と役者が演じるキャラクターが交流したり、現実と虚構の物語が交錯する物語というものは当時としても決して珍しいアイディアでは無かったものの、それをバリバリ陽性のハリウッド製筋肉アクションに収めてしまっている点に於いては、唯一無二の存在感を放っているタイトルであると言える。


【物語】

母子家庭で貧しい暮らしを強いられているダニーは、小学生ながら場末の映画館“パンドラ会館”に通い詰める程の映画好き。

自分でも薄々は映画にハマっているのは現実逃避の結果だと理解しつつも毎日のように顔を見せているダニーだったが、変わり者として有名な映写技師のニックといった老いた従業員達が何となく受け入れてしまってくれていたこともあり、
遂にはダニーも学校に行っている時間にも映画館に入り浸るまでになってしまっていたのだった。

そんなダニーが現在ハマっているのは、今をときめくアーノルド・シュワルツェネッガー主演の規律無視のタフガイ警官を主役とした『ジャック・スレイター』シリーズ。
ある雨の日のこと、学校にも行かずに6度目ともなる『ジャック・スレイター3』に夢中になっていたダニーだったが、肝心な所でピンボケが発生してしまう。
そのことで文句を言いに来たダニーに起こされたニックはダニーに詫びつつ、今日の深夜に“パンドラ会館”に届けられる『ジャック・スレイター4』のフィルムチェックに来ないかと誘いつつ、それとなくダニーに4時間遅れでも学校に行くことを勧めるのだった。

ニックと約束を交わし学校へ向かったダニーは、古臭い映画(『ハムレット』)に学ぶ演技(演出)論の講義に欠伸をしながらシュワルツネッガーが演じるハムレットなら無駄に冗長な復讐劇が『コマンドー』ぱりの殲滅アクションになるのに……と、想像を膨らまさせつつニヤニヤと今夜の楽しみを待つのだった。

……が、そんな身勝手なことをしていればしわ寄せが来るのは当然のことで、遅刻を見咎めた教師から叱られ、帰ってからは学校から連絡を受けたママ(アイリーン)に叱られ、挙げ句には深夜に家を抜け出そうとした所でまんまと強盗に押し入れられてしまうも、家に盗むものがないとして罵られるという屈辱的な体験をすることに……。
その後で警察に通報し、被害(出なかった)報告で更に時間を奪われてからやっと“パンドラ会館”へと辿り着いたダニー。

━━何と、ただでさえ深夜な上に何時間も遅刻したのに待っていてくれたニックは、小言を言いつつもダニーを中に入れてくれたのであった。
見ると、ニックはいつものヨレヨレのシャツではなくピッシリとした制服を着込んでいた。
それは、ニックが元々は興行部屋であった“パンドラ会館”で働き始めた時の“もぎり(案内役)”の制服であり、ニックは恭しく構えつつ、かの魔術師フーディーニ*3から貰ったという持つ者の願いを叶える魔術の込められた黄金のチケットをダニーに渡すのだった。
ニック曰く、フーディーニはこのチケットをインド一の魔術師からチベット一の魔術師を経て手に入れたと言っていたというが、ニックは勇気が出なくて使うことがなかったのだという。

そして、いよいよ開始されるダニーの為に用意された『ジャック・スレイター4』の上映会……今回も期待通りの内容にたちまちに夢中になるダニーだったが、何と悪党共とスレーターの追跡シーンに夢中になる余りに映画の中に行きたいと願ったダニーの意識を受けて魔法のチケットが活性化。
そうして、スレーターが迎撃したダイナマイトが魔力によってスクリーンを飛び越えてダニーの足下に。
慌ててポップコーンで消火しようとしたが当然のように無駄で、慌ててニックに助けを求めて走り出したダニーの真後ろでダイナマイトは爆発。

普通なら四肢が吹き飛び爆死する所をフィクション補正で吹き飛ばされただけで済んだダニーは、気づくとさっきまでスクリーン越しに見ていた悪党共とチェイスの真っ最中のスレイターのボンティアックの後部座席に転がっていたのであった。

【主要登場人物】

※ここからは盛大なネタバレも含む。知らずに読み進めるなんてのは、ビッグ・ミステイクだぜ。
吹替はソフト版/フジテレビ版/テレビ朝日版の順番。

【現実世界の登場人物】


  • ダニー・マディガン
演:オースティン・オブライエン
吹替:亀井芳子/野沢雅子/浅野まゆみ
本作の事実上の主人公。つまりはバスチアン枠。
小学校の高学年くらい。
貧しい母子家庭で治安の悪いニューヨークの下町に住まなければいけないなど鬱屈した生活を強いられた結果、小学生ながら既に人生を悲観した末に大好きな映画に救いを求めて現実逃避をしており、学校の授業で『ハムレット』を観ていた際には名シーンを「喋ってないで速くやれよ」と茶化し、挙げ句ハムレットをシュワルツェネッガーを演じている妄想をしていたことも。普段は学校をサボって寂れた映画館“パンドラ会館”に入り浸っている。
尚、筋肉映画にハマっているような奴だが映画好きというのは伊達ではないようで『ジャック・スレイター』シリーズに詳しいのはともかく、この年齢で1984年製作で子供向けでもない『アマデウス』にも詳しかった。(“パンドラ会館”以外にも名画座か何かにでも通っているのだろうか。)
当初は映画の世界に来れたことにはしゃぎまくっており、本来の映画の展開を無視してベネディクト達とスレイターが敵対するのを早めてしまうなどKYで軽率な行動を頻発させていたものの、自身にも危険が及ぶ中で映画を通して知っていたスレイターの心の傷(息子のアンディが殺されたこと)や、付き合いを深める中でスレイターの抱えていた本当の悩みをも知ったこともあってか、真摯にスレイターの相棒たらんとするようになる。
映画の世界ではウザいながらも映画で得た知識や、メタ的に“自分が恐らくは死なないこと”を理解しているらしく、小賢しさを発揮して悪人共を翻弄する場面もあり、色々と理解してきたスレイターからも普通に頼りにされるようになっていった。

……が、自分から黄金のチケットを奪ったベネディクトが逃げ込んだ現実世界へと帰還した後は一転して散々に思い知ってきた現実の糞さからスレイターすら信じられなくなってしまいネガティブ発言を連発してしまう。
しかし、そんな状況でも全く怯まないスレイターの姿に奮起して傷つきながらも立ち向かう勇気を見せる。

  • アイリーン・マディガン
演:マーデセス・ルール
吹替:小宮和枝/金野恵子/宮寺智子
真面目で良識的なダニーの母親。
40前に夫に先立たれ、深夜帯に出勤しなければならない職に就いていながらもPTAの役員をやっているのに、ダニーがろくに学校にも行かなくなっていることを悩んでいる。
ダニーが夢中になっているシュワルツネッガーのことは嫌っていたようだが、本質的には正義感に溢れる高潔な精神性を持つスレイターのことは気に入ったらしく、一晩もお喋りしていた。映画の中ではキャラ付けとして百発百中のナンパ男みたいに描かれていたスレイターだが、曰く「女性と話したのは初めて」とのことで、初めて“人間”として向き合ってくれた異性だったのだろう。

  • ニック
演:ロバート・プロスキー
吹替:石森達幸/富田耕生/阪脩
“パンドラ会館”が興行部屋(見世物小屋)の頃から働いている古参の映写師。
学校に行かずに映画館に来るようにまでなったダニーを困ったやつと思いつつも、何だかんだで世話を焼いてくれていた。
本作での騒動のタネとなる黄金のチケットの持ち主だったのだが、勇気が出なくて使うことが出来なかった。
映写室にはかつて魔法のチケットをもらったフーディーニの興行ポスターが今でも貼られている。

【ジャック・スレイター4の登場人物】


  • ジャック・スレイター
演:アーノルド・シュワルツェネッガー
吹替:玄田哲章大塚明夫/玄田哲章
本作の主人公で、この世界でのシュワちゃんの大ヒットシリーズ『ジャック・スレイター』シリーズの主人公であるロサンゼルスの刑事(デカ)。決め台詞は「そいつは大間違いだ(ビッグ・ミステイク)」と「戻って来るぞ(アイルビーバック)」。
こう見えてもベトナム帰りという設定その割には全く病んだ様子がない。
映画(フィクション)であることを前提としたキャラ付けのためか、実は歴代のシュワ映画の中でも特にめちゃくちゃな強さに設定されているキャラクター。だいたい、メイトリクス+1位。確実にダッチは超え、ギャグ補正を考えるとT-800にすら勝てるかもしれない。
いつもの怪力、タフネスに加えて取り繕う必要などないとばかりのご都合主義の塊であり、十数メートルの高さからデカい図体で新体操選手のような動きで飛び降りたり、殴れば相手を壁にめり込ませるのなんて当たり前。
勿論、何かにぶち当たったり殴れば壊れるのは向こうで僅かに痛みを感じることもないし、撃たれてもご都合主義で直前に着込んでいたとは思えない大きさと厚さの防弾チョッキが出現するなど生存能力も高い。
愛銃はシルバーのデザートイーグル
無論性能は現実と比べて大幅に誇張されており撃てば自動車如きは大爆発(もちろん、狙いは百発百中)なのは当たり前……というか、片手保持が基本で反動も感じずに連射可能。
装弾数?なにそれ?と言わんばかりにガンガン撃ちまくり、武装ヘリをも真正面から撃墜するなど冗談としか思えないほどの威力を誇る。
自動車もスレイターが運転すれば補正が付きまくりで、後ろ向きで運転しても事故とは無縁*4、坂道を利用すれば大ジャンプが可能で、高所からの飛び降りや壁への激突でも壊れることがなく、乗っているのがボンティアックだからか、形状的に水(石)切りの要領で多少の水場なら渡ることも可能である。
男らしさの象徴からか葉巻を愛飲し、茶色の革ジャンに赤シャツ、ジーンズが基本のスタイルであり、シティハンターの如く各部に武器を隠し持つ用意周到さも兼ね備えている。
捜査や戦闘中にも彼なりに推論や計算を重ねているらしく、破天荒な印象に反してただ何も考えずに暴れている男でもないようだ。

ありがちな黒人の上司からは常に被害報告の件で激怒されているが、実は(展開上、観客にしか知られることはないはずの秘密を打ち明けられる位の)親友同士である。
しかし、その陰ではメタ的に“自分が死なないこと”に疑問を感じていたり、普通の生活がしたいと思っているのに大きな事件に巻き込まれ、それをド派手な方法でしか解決できなかったり、
裏設定的なものなのか別れた妻からしつこい復縁の電話がかかってくるのを録音で乗り切っているというお約束の描写が実はスレイターの偽装だったり、娘が自分のような性格に育っていることに実は悩んでいたりといったことが明らかになっていく。

……そして、物語の後半からは現実世界に逃げ込んだベネディクトを追うためにスレイターも現実世界に、しかし最低でもシュワちゃん級の筋肉モリモリマッチョマンだから尚も現実離れした所はあるものの一転して世の中の常識に捉われてしまい一気に弱体化してしまうことに*5
しかし、物語ではそうなってからがスレイターという男の真骨頂であり、自らが架空の存在と遂に自覚しつつも、愚直にベネディクトを追い詰め本物の“ヒーロー”たる生き様をダニーに証明してみせる。
また、アイリーンからモーツァルトのクラシック音楽を生まれて始めて聞かされ、大感激する一幕も見られた。

  • デッカー警部補
演:フランク・マクレー
吹替:内海賢二/中庸助/池田勝
スレイターの直属の上司。無駄にド派手な映画内のロス市警本部の署長も兼任しているのかもしれない。
被害出しすぎのスレイターに怒鳴るのが仕事で、その大声は周囲のガラスを破壊し、エキサイトし過ぎた時には耳から煙が吹き出る。
スレイター以外でも、人の名前を呼ぶ時には絶叫になることが殆ど。
奥さんにミゼットのピエロのサーカス団員と駆け落ちされてしまっている。
そのことは(映画の中では)スレイターにしか明かしていなかったのだが(映画を見た)ダニーには知られており、そのことから胡散臭いとして訝しんでいたダニーの話を聞く気になり、監視序にスレイターの相棒としてダニーを付ける。

  • ホイットニー・スレイター
演:ブリジット・ウィルソン
吹替:松井菜桜子/水谷優子/石塚理恵
スレイターの離れて暮らす娘。明るく健康的な大学生。
新入生歓迎でパートナーとなるスキージー(演:ジェフリー・ブレア/吹替:石田彰)を待っていたところ、先にスレイターとダニーの訪問を受けてスキージーと間違えてダニーに熱烈な挨拶のキスを見舞った。陰キャでもこういうシチュエーションなら陽キャの美人の先輩にキスしてもらえるのか……昔のアメリカバンザーイ!
一見すると普通の女の子なのだがスレイターの性格を引き継いでおり、休日にはファイヤーパターンのモンスタートラックを乗り回し、パーティーの夜には男の子と出かけずにライフルの分解掃除に勤しみという有様らしい。
ダニーの正体に興味を持ったベネディクトに襲撃された時にも、大袈裟に悲鳴を挙げて暴行されていると見せかけて、反対に部下をKOして銃を奪って反撃していた。
更に、スレイターとダニーが車を失った時にはご都合主義で駆けつけて自分のトラックを提供した。
尚、『4』への登場はサプライズだったらしく、ダニーは(OPで名前が出てなかった)ホイットニーが出てきた時に驚いていた。

  • ウィスカーズ
声:ダニー・デヴィート*6
吹替:立木文彦/田の中勇/大川透
トレンチコートにつば広ハットという、昔の典型的なデカスタイルのアニメの猫のキャラクター。
セクハラ当たり前だが漢らしく勇敢な性格。
スレイターの同僚で、デッカー警部補曰く「本部でも一番の腕利き」とのこと。
スレイターとダニーの窮地にも唯一人(一匹)で駆け付けた。
スレイター同様にやり過ぎた結果、一月程の謹慎を受けていたらしい。
特に元となったキャラクターがいる訳ではないのだが、フジテレビ版では“トムキャット”に名前が変更されている。トムとジェリー』から?

  • 切り裂き魔リッパー
演:トム・ヌーナン
吹替:千田光男/広瀬正志/牛山茂
『ジャック・スレイター3』のメインヴィランで、スレイターに10年もの刑務所送りにされた凶悪犯。 
研ぎ澄まされた手斧を武器にしている。
復讐のために小学生の子供達……狙いはスレイターの息子のアンディを誘拐して戦いを挑んだ。
実は、『3』のラストにてアンディの勇気を振り絞った行動もあってかスレイターに射殺されているのだが、撃たれて屋上から落ちる直前にアンディを掴んで道連れにするというビターエンドを迎えていたらしく、それが元で『4』でのスレイターは大きなトラウマを負うだけでなく一家の離散の原因となってしまっていた。
終盤、黄金のチケットを手に入れたベネディクトにより現実世界に連れてこられて刺客とされる。

  • フランク
演:アート・カーニー
吹替:峰恵研/村松康雄/峰恵研
スレイターの又従兄弟で友人付き合いがある。
マフィアの構成員らしく、邪魔者となるであろうスレイターに偽の情報を流すためだけに犠牲にされてしまう。
中の人は俳優であると同時に伝説的なコメディアンとして知られている御方で、本作が俳優としての最後の出演作となった。*7

  • ジョン・プラクティス
演:F・マーリー・エイブラハム
吹替:麦人若本規夫/稲葉実
スレイターの同僚。(厳密にはFBIへ栄転。)
スレイターとはベトナム従軍中からの付き合いで、命を救われたこともあるという仲であり、幾度も重大な仕事をこなしてきた間柄。
しかし、配役を見た初対面のダニーからはスレイターに「モーツァルトを殺した男だから信用するな」と言われしまっており、それを間近で聞いていたプラクティス自身もモーツァルトのことを知らなかったのかキョトンとした顔をしていた。(中の人が代表作である『アマデウス』でアントニオ・サリエリを演じていたことネタ。)
……尚、ダニーの予想通りに配役時点でも解る胡散臭さは事実であり、ビバルディに懐柔されて裏切る準備を進めていた。

  • トニー・ビバルディ
演:アンソニー・クイン
吹替:中庸助/森山周一郎/村松康雄
ロサンゼルスの麻薬取引を仕切る大物マフィアの一人。
……が、何よりも“ファミリー”を大切にする筈のマフィアでありながら血族を売って敵対組織と手を結び、南カリフォルニアでの麻薬売買の全てを取り仕切ろうという大胆な作戦を立てており、そのためにもベネディクトを雇い入れた。
━━そして、そんなだいそれた行動をする大人物……なのは間違いないのだろうが、とにかくオツムが残念であり、諺を引用したたがる割には必ず間違えるというお約束がある。
見た目は貫禄があり、吹替の声も激シブなのだが……。(中の人は長いキャリアを持ち、二度のアカデミー賞獲得経験もある超名優であり、恐らくはそれを込みで狙った演出。)
自身のファミリーを皆殺しにするために、抗争の中で犠牲になった(と見せかけた)“屁っ放りレオ”の大々的な葬式を主催するが、そのレオの遺体自体に爆弾を仕掛けていた……のだがスレイターとダニーに阻止された挙げ句、ベネディクトに裏切られてひっそりと始末される。

  • ビバルディの執事
演:プロフェッサー・トオル・タナカ
吹替:島香裕/亀井三郎/北川勝博
ビバルディに仕える執事……だが、既に主を裏切りベネディクトに鞍替えしている。
中の人は『バトルランナー』のサブゼロ。

  • ミスター・ベネディクト
演:チャールズ・ダンス
吹替:小川真司/江原正士/菅生隆之
『ジャック・スレイター4』のメインヴィラン。愛銃はロングバレルにカスタムされたダン・ウェッソン・リボルバー。さらにナイフと爆弾を愛用する。
ビバルディに雇われた“世界一の殺し屋”で、同じイタリア出身の好でビバルディに雇われたのかもしれないが、余りにもビバルディがおバカなためか既に見限っており、組織の乗っ取りをも済ませてしまっている状態。
文学や芸術にも造詣が深いようだが、それだけにビバルディの諺間違いや下らないジョークには苛つかされていたようで、一々と聞こえないようにしつつもツッコミを入れており、いざ始末する段階に於いては「この歴史的大馬鹿者が」と罵倒しつつ射殺した
隙のない白スーツに身を包んでいる紳士だが、その実は当人曰く「ダニーより賢い何人もの子供達」をも平気で殺してきた外道である。
左眼がガラス製の義眼になっており、ファッション感覚で付け替えている模様。
尚、実用的な義眼として遠距離超精密射撃を可能とする照準付きのものと、超小型ながら邸宅を吹き飛ばせる高性能爆弾がある。どっちも現実では無理だが映画なので。
天才的な頭脳と勘の良さを持つようで、本来のシナリオ上の展開を無視して自分の正体を言い当てたダニーに興味を持ち、スレイターではなくダニー狙いで襲撃して黄金のチケットを奪った。
そして、更にその後のビバルディを始末した後のスレイターとダニーとの対峙にて「ここが映画の中でダニーが異世界(現実)からやって来た」ことを確信して、チケットの魔力で現実世界へと逃げ込み、現実世界なら悪党でも勝てることを知って*8暗躍。
最終的には、どうしても邪魔となるスレイターを抹消するために、プレミアム上映会でのアーノルド・シュワルツェネッガー本人の殺害を計画する。

  • 市長
演:ティナ・ターナー(カメオ出演)
吹替:磯部万沙子/津野田なるみ
数々の輝かしい経歴を誇る“ロックンロールの女王”に見えるが、あくまでもロスの市長。
スレイターには頭を悩まされているらしく、わざわざ現場まで“やり過ぎないように”と注意しに来ていたのだが、連れてきたカリフォルニア州副知事を(物理)で黙らされて今回も引き下がった。

  • T-1000
演:ロバート・パトリック(カメオ出演)
『T2』で世界中に記憶された殺人アンドロイド。
ダニーに“サイボーグ”と間違えられていた。
どうやら映画ファンではあるがSFには疎いようだ。

  • キャサリン・トラメル
演:シャロン・ストーン(カメオ出演)
『氷の微笑』で世界中を魅了した謎の美女。
取り調べで例の“履いてない足組み直し”を披露したのだろうか?

  • シルヴェスター・スタローン
演:コラ画像(カメオ出演)
本人は未登場だが、シュワルツネッガーが存在しない『ジャック・スレイター』世界では、彼が唯一無二のアクションヒーローとして君臨して『T2』でも主演をしている。当時の2人は仲が悪かったとか言われるが、本当ならようこのネタやれたな。

【(リアルな方の)現実世界の登場人物】


  • アーノルド・シュワルツェネッガー
吹替:玄田哲章/大塚明夫/玄田哲章
言わずと知れた本作の主演俳優。
スレイターとの対比のためか、異様に能天気で空気を読めない性格として描かれている。何かと自分が経営するレストラン*9の話題にしたがる癖がある。
一方、撮影で慣れているためかスレイターとリッパーの戦いに平気で近づくような場面も。
スレイターを見ても驚かず、サプライズの余興だと思った上にスタントとして雇うからエージェントに連絡するように言うが*10、苦難の人生を歩まされたスレイターからは恨み言を言われていた。

  • マリア・シュライヴァー
吹替:田中敦子/堀越真己/渡辺美佐
シュワちゃんのリアル奥さん*11
マネージャー的な役目もしているという設定で、能天気すぎる夫にインタビューで話していいことを指導していた。

  • トム・ヌーナン
吹替:千田光男/広瀬正志/牛山茂
“リッパー”役の性格俳優。
最初にリッパーが姿を見せていたので、メイクなしのタキシード姿で現れたヌーナン本人を見て驚かれていた。

  • トム・ヌーナンのエージェント
演:リック・ダコマン
吹替:稲葉実/藤本譲/大川透
ヌーナンのエージェント。
リッパーを見て、ヌーナンが勝手にコスプレをして現れたのだと思い込み「役を固定する気か」と言って憤慨していた。ヌーナンさん既に『刑事グラハム(レッドドラゴン)』でも『ロボコップ2』でも強烈すぎる悪役やってますけど今さらでも大丈夫なんですかね……?

  • プレミアム上映会の招待客
MCハマー、リトル・リチャード、チェビー・チェイス、ジェームズ・ベルーシ*12、ジャン・クロード・ヴァンダム*13…等が登場。

【その他の映画のキャラクターと関連ネタ】


  • 死神
演:イアン・マッケラン
吹替:麦人/加藤精三/水野龍司
名画座で公開されていた映画『第七の封印』から黄金のチケットの魔力で抜け出てきてしまった存在。
現実世界でもその力は失われていないどころか、自分達の置かれた状況や世界の理も最初から把握していた、流石は映画界において最も有名な死神の一人といった所か。
状況が状況だけにダニーを焦らせたが、専門外の仕事はしないとして彼らに手を出さない一方で貴重な助言を授けてくれたいい人(?)である。
中の人が実はイアン・マッケランというのは、今ならトリビアになりそうなネタである。*14

  • ハンフリー・ボガート
往年の映画スター。
白黒映像からデジタル加工で復活させられたという設定で、映画世界のロス市警で相棒選びを待っていた。(当時からちょくちょくと話題に挙がるようになったデジタル技術の進歩をネタにしたもの?)

  • ローレンス・オリヴィエの演じるハムレット
演:ローレンス・オリヴィエ
吹替:田原アルノ/中田和宏
  • 『ハムレット』を取り扱っていた老女教師
演:ジョーン・プロウライト
吹替:竹口安芸子/麻生美代子
ダニーが遅刻した上に退屈だとして欠伸をした授業にて題材とされていたシェイクスピアの文学作品と、その有名な1948年公開の映画作品。
授業をしていた教師は「世界初のアクションヒーローと呼べるかもしれない」としており、映画史に於けるアクション映画の始祖と考えられている模様。ダニーからは「喋ってないで速くやれよが」と茶化された挙句、ハムレット役がシュワルツェネッガーになっており、シュワちゃんがマシンガンをぶっ放す筋肉映画になっている妄想をされる始末だったが。
そして、その授業をしていた老教師を演じているジョーン・プロウライトは、取り扱っているローレンス・オリヴィエの最後の奥さんであり、この時点で二重も三重もネタが仕込まれていたことになる。


【余談】


  • ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントから発売されていた『吹替洋画劇場』シリーズとして吹替全バージョンを収録したBlu-rayが発売されていたが、本作の映像ソフト化の権利がハピネットに移ってしまった事で廃盤となっている。その後は吹替洋画劇場と同じ仕様での再販はされておらず、地上波やCSで放送される時も基本的にソフト版音源が採用されるため、テレビ版音源での視聴が困難になっている。



追記・修正は魔法のチケットで映画の世界に入り込んでからお願いします。

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  • 1993年
最終更新:2025年04月18日 06:35

*1 宣伝ポスターではタイトル前に“Schwarzenegger”が冠されており、日本向けポスターでも“シュワルツネッガー”が冠されている。

*2 厳密にはシュワルツネッガーとの共演作は『トータル・リコール』のローリーなのだが、当時はシャロン・ストーン=『氷の微笑』という位に印象が強かったので。

*3 『脱出王』『不可能を可能にする男』の異名を取った世界的に有名な奇術師。アニヲタ的にはエスパーポケモンフーディンの名前の由来、さらに『仮面ライダーゴースト』では本人の魂を宿したゴースト眼魂が登場する

*4 本人曰く「トレーニングを積んだから」

*5 銃を撃っても中々命中しない上に、命中しても小さな穴が開くだけ。車の窓ガラスを殴ると痛みを感じる、等々………

*6 シュワちゃんとは『ツインズ』と『ジュニア』で共演。

*7 氏は2003年に老衰で死去している。

*8 靴を奪うためだけに殺人事件が起き、街には薄汚い街娼が並び、事件が起きても一向に警察が来ないどころか周囲の人間もそれを無視する現実世界のニューヨークに困惑する描写がある

*9 実際にシュワルツェネッガーが出資していたハリウッド映画をモチーフにしたレストラン『プラネット・ハリウッド』のこと。ちなみにアクション俳優としてはライバル関係だったシルベスター・スタローンも出資者だった

*10 シュワちゃんは全盛期には肉体が凄すぎて『コナン・ザ・グレート』では代役を立てられずにアクションに挑み怪我をしているエピソードがある。

*11 本作が公開された1993年当時の話。ケネディ元大統領の姪という血筋から政界にも顔が利き、2003年にシュワちゃんが州知事に就任した際も多大な助力をしたと言われるが、2021年に不倫問題等が原因で離婚。

*12 シュワちゃんとは『レッドブル』で共演。

*13 シュワちゃんとは『エクスペンダブルズ2』で共演。

*14 が、流石にマッケラン当人は『第七の封印』のオリジナル・キャストではない。本作に関係するネタでは戯曲『アマデウス』のアメリカ初演時にサリエリを演じていたことがあるが、これもプラクティス役のエイブラハムとの対比を狙ったのだろうか。