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更新日:2025/07/12 Sat 02:45:09
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「ソーラシステム集光後、各艦隊は各個に敵を殲滅する。最大戦速に入れ!」
マクファティ・ティアンム(Mcfati Tianem)とは、
機動戦士ガンダムの登場人物。
【概要】
CV:永井一郎(テレビ版)
藤城裕士(劇場版III)
大山高男(特別版)
大川透(THE ORIGIN・第5章)
高塚正也(THE ORIGIN・第6章)
地球連邦軍の将校。宇宙軍に所属し、階級は中将。
一年戦争を開戦期から主導的な立場で戦い続けた提督であり、
連邦における名将のひとり。
見た目は恰幅のいい中年男性で、毛髪の色は黒。肌が浅黒く描かれている。
一年戦争開始以前から連邦宇宙軍における重職の座にあった。
【来歴】
◆前歴
メキシコ系とのことだが、メキシコ出身なのか、それともメキシコ系のコロニー移民者なのかは不明。
また「提督」と呼ばれていることなどから、海軍出身であったとされる。
連邦宇宙軍設立はU.C.0060年代以降であり、それも「
ルナツーの軍事要塞化」から始めねばならないレベルだったため、U.C.0079時点で五十代ぐらいと推測されるティアンムは宇宙軍設立に当たって海軍から抜擢されたと考えられる。
(ちなみにレビルは陸軍出身らしい)
◆一年戦争初期
「現状の戦力でも、戦線を支えるくらいはできます!」
開戦劈頭、ジオンは
「ブリティッシュ作戦」を発動して、軍艦のみならず民間非武装のコロニーにまでメガ粒子砲や核ミサイルを打ち込み、MSに蹂躙させて、空前の大虐殺を開始。
さらに
毒ガスを流し込んだ「無傷の」コロニーに核パルスエンジンをつけて、地球に落とすコースを取らせた。目標は南アメリカ・アマゾン川流域の連邦本部基
ジャブローである。
これに対して、ティアンムは虐殺を免れた艦艇を束ねて、コロニー落としをなんとしてでも阻止するべく、
ジオン艦隊に立ちはばかる。
しかしジオン軍の「
ミノフスキー粒子」によるレーダーシステムの破綻と、「
モビルスーツ」の機動力、「
核バズーカ」の破壊力によって、ティアンム艦隊は大きな損害を出す。
また連邦宇宙軍は、「70年代軍備増強計画」で戦艦は
マゼラン級・巡洋艦は
サラミス級への完全更新と、戦闘機の開発こそ果たしたものの、
航空母艦ペガサス級の完成が遅れており、またザクに対抗しうる性能を持った戦闘機
セイバーフィッシュの数が揃っていなかった。
ただ、それでもティアンム艦隊は激しい抵抗を続け、コロニーの落下軌道を大きくずらすことには成功する。
コロニー落としそのものは抑えきれなかったものの、そのコロニーで連邦本部が壊滅するという最悪の事態だけは避けられたのである。
その意味ではこの戦い、多大な損害こそ出したが、戦略面ではティアンム艦隊の勝利といえる。
その後のルウム戦役では、ティアンムは残存戦力を再編するため後方に待機。
この戦いでも連邦軍は、艦隊に多くの損害を出し、司令官であった
レビル中将も捕虜となるなど大苦戦したが、最終的なジオンのコロニー落としは阻止した。
一方、ジオン側も二度の作戦で多くのMSやパイロットを喪失していた。
それでも、その後の「南極条約」を巡る外交交渉で強気な態度を取って「連邦の降伏・ジオンの勝利」を得ようとするが、これも捕虜となったレビルが帰還して、ジオン軍の内情を暴露したことで頓挫。
ジオンは「地球降下作戦」を行い連邦制圧に挑むが、事前の準備も地球環境の研究すらも全くできていない降下作戦はいたずらに戦力の分散・戦線の膠着という事態になった。
そしてそれは、連邦にとっては待ち望んでいた展開、「軍備再建の時間稼ぎ」が可能になったことを意味する。
◆一年戦争中期
「焦ることはありません。待ちましょう。攻勢の時を!」
「ブリティッシュ作戦」「ルウム戦役」「地球降下作戦」の結果、連邦もジオンも戦力のほとんどを喪失し、両軍ともに軍備の再建に乗り出すことになる。
その軍備再建計画の一環として、ティアンムは「ビンソン計画」と称される宇宙艦隊再建計画を担った。
基本は、マゼラン級・サラミス級といった大型艦艇に、MS搭載能力を付与しつつ、砲戦能力を落とさずに再設計し、かつ迅速に大量生産する、ということにある。
また、こうした計画にペガサス級空母の設計変更(宇宙戦闘機からMSの運用へと設計変更)が含まれていた可能性もある。
ビンソン計画はV作戦(RXシリーズのMS開発計画)と対立していたとする見解があるが、実際は「V作戦で開発したMSをビンソン計画で開発した戦艦が運用する」という流れなので、むしろ協力していたはずである。
ゲームのムービーなどでは、この時期のティアンムが、レビルの右腕として地上で働いている様子が見られる。
この時期は
宇宙軍の再建に尽力しており、各地の戦線は宇宙ではルナツーの
ヴォルフガング・ワッケイン隊、地上では東南アジアの
イーサン・ライヤー隊、オーストラリアの
スタンリー・ホーキンス隊などに支えさせていた。
◆一年戦争後期
「ソーラシステム、目標ソロモン右翼。スペースゲート!」
「迎撃機接近、各艦注意!」
「構うな! 照準合わせ急げ!!」
やがてジオンは、
オデッサ防衛戦・ジャブロー攻略戦に立て続けに敗北し、キャリフォルニアベースも失陥するなど、急速に衰退。さらに
ランバ・ラルや黒い三連星の消耗から、内紛まで露呈する。
時期が到来したとみた連邦軍は、ここに宇宙における一大反抗作戦「チェンバロ作戦」を発動。
ティアンムはその主力たる第二連合艦隊(旗艦:マゼラン級タイタン)の司令長官となり、ホワイトベースを初めとする囮艦隊の陽動で無事にルナツーへと進出。
ルナツー方面軍のワッケイン隊を第三艦隊(旗艦:マゼラン級レナウン)に再編し、これを囮としてソロモンに正面から攻撃を掛けさせる一方、自らは大艦隊を隠して、ひそかにソロモンに接近。
400万枚ものミラーを集結する要塞攻略兵器「ソーラシステム」を展開し、全力の照射に成功して、ソロモン要塞の防衛線を大きく焼き払った。
さらに、ソーラシステムを察知して迎撃に現れた
グワラン艦隊も、MSすら展開せず
砲撃戦のみで撃破。その後MS隊を発進させて、第三艦隊とともにソロモン攻略に参加する。
一方、グワラン艦隊の砲撃で破損したソーラシステムも、ミラーを再編集して再起動に成功。このとき「60%の確率」といわれているが、それでも
見事に達成した。
折しもジオン軍は、残った1/4の艦艇をかき集めて中央突破を図っていたが、そのベストのタイミングで再びソーラシステムを照射。これによってソロモン防衛艦隊は完全に消滅した。
しかしその直後、ドズル・ザビの
ビグ・ザムが特攻をかけてくる。ティアンムは艦隊のメガ粒子砲で一斉射撃を命じたが、ビグ・ザムは強力な磁界でビームを弾きつつ急接近。
ティアンムはミサイルの集中攻撃を命じたが一歩遅れ、ビグ・ザムの放つメガ粒子の奔流が乗艦タイタンを貫いた。
旗艦タイタンが爆発し、連邦の名将は戦場の勝利を確定した直後に、あまりにもあっけなく宇宙に散ってしまった。
【人物】
「破損を免れたソーラシステムで潰せるか?」
「60%の確率ならば……」
「やってみようか」
レビルやワッケインと異なり、映像に移るシーンが少なく、ホワイトベース隊との直接の絡みもほとんどないため、どのような人物なのかを推し量るのは難しい。
ゲームなどでは、謹厳実直で模範的な軍人ながら、必要と思った意見は躊躇なく述べるという風だが、個性が図れるエピソードは少ない。
ただし、軍政手腕と指揮能力は、成果から逆算するとやはり相当なものがある。
◆軍政手腕
ティアンム提督は優れた軍政家であった。
まず、連邦宇宙艦隊を再建したのは彼である。
一説によると連邦艦隊は、ブリティッシュ作戦とルウム戦役の二度にわたり、戦力の八割を失ったという。
その状況から、ティアンムは軍艦の設計変更と再建を行い、しかも半年かそこらですべて果たした。
さらに生産力の余力を駆って、新兵器ソーラシステムまで製作している。
しかもそれら新造艦艇は、当時まだ開発途上だったMSの運用まで果たせた。
当時、ガンダムもジムもボールも、生産しながら設計変更と改修を繰り返すようなありさまだった。
ジムは設計段階からパーツの互換性を重視して作られており、アップデートがしやすいという特徴があるが、
それはジムが常時アップデートが必要だとみられていたこと、すなわちジムの「あるべき姿」が設計者にすら完全に把握できていないことを示唆している。
ティアンムはそんな、ジムやボールがいまだ一定の完成さえしていない状態で、「ジムやボールを運用できる艦隊」を設計し、生産し、実戦で運用して不足がないレベルまで完成させたのである。
◆指揮能力
ティアンム提督は指揮官としても卓越した能力を持っていた。
まず彼は、参加した作戦のほとんどで、目標を達成している。
第一次コロニー落としはその目的地であるジャブロー攻略を断念させている。もちろん味方の損害も大きく、コロニーが墜落して地上に大きな被害が出たのも事実だが、「コロニーがジャブローに落ちて連邦軍が壊滅」「組織的抵抗も出来なくなって敗戦一直線」という最悪の事態だけは避けられた。
また、ジオンはその後もコロニー落としを続けた(ルウム戦役)ように、コロニーを落としてジャブローを一撃破壊することが戦略目標のすべてであった。
その目論見を防ぎ、ジオンの戦略目標を破綻させたことは、実はかなり重要なことである。
そしてティアンムの二度目にして最後の会戦となったソロモン攻略戦では、ティアンムは作戦目標をすべて達成し、ほとんど完封勝利している。
彼は大艦隊を率いながらソロモンの監視網から姿を消し、見つからないまま接近し、目と鼻の先で400万枚ものミラーを並べ、ジオンが気づいた時にはもうすべてが手遅れ、という状態にまで持ってきた。
さらに、グワラン艦隊をMSすら出さずに撃破したり、破損したソーラシステムを短期間で再起動したり、ジオンがやっとの思いで再編した艦隊をいきなり吹き飛ばしたりと、ドズルの打ったあらゆる手をことごとく覆していた。
彼の作戦における唯一の失陥は、ビグ・ザムの特攻によるティアンム自身の死である。
しかし、その唯一の失陥こそが、連邦における致命的な一撃であったともいえる。
もしティアンムがあの時戦死しなかった場合、ア・バオア・クー攻略戦もティアンムが担当したであろう。
その場合も彼はソーラ・レイで戦死したかもしれない。しかしそれでも、連邦軍はア・バオア・クーを突破しただろうし、この場合はレビルが生き残っただろう。
それにティアンムは、率いた大艦隊をジオンの目からくらませたような男である。もしかしたら本当に、ジオンに見つからないまま、即ちソーラ・レイに捕捉されないまま、ア・バオア・クーやサイド3に奇襲をかけられたかもしれない。
もちろん仮定の話で、ギレンは
自分がその場にいなければ、ア・バオア・クーにも味方もろともソーラ・レイを撃ちこむような男だ。ティアンムはどのみち死んだかもしれない。
しかしいずれにせよ、人類の半分が殺された当時において、連邦軍を再建して勝利にまで導いた軍政手腕と指揮能力は、レビルと同様に重要な存在だったといえる。
後年、彼の名誉は
カイラム級機動戦艦「アドミラル・ティアンム」に見ることができる。
【各作品】
なんと登場しない。
そのため、ルナツーから出撃し、月やア・バオア・クーを攻略する連邦軍主力艦隊の総指揮は最初から最後までレビルがとっている。
その関係かソーラシステムも未登場。
ほとんど原作と同じ。強いて言えばグワラン艦隊の接近時にMS隊を発進させている程度か。
やはり優秀な提督として描かれる。
本作ではルウム戦役あたりまでは同格の中将で、派閥も違うためか時に呼び捨てにするなど右腕という感じではなくなっている。
ルウム戦役では彼の艦隊も参加しており、ドズル艦隊を圧倒するもののミノフスキー粒子の影響もあって逃げられる。その結果レビル艦隊がドズル艦隊の奇襲を受ける結果になった。
ソロモン攻略戦では設定変更はほとんどなし。
なおジオンに対して「奴輩」と唾棄する場面あるが、これは非武装の民間人(しかもジオンが「我らの元での独立」を訴えるスペースノイド)を虐殺するジオンへのまっとうな怒りと見るべきだろう。
宇宙世紀0079年2月にはルナツーで指揮をとっている。
ジオン軍の月から地球へのマスドライバー攻撃に対し、いざとなればルナツー艦隊を率いての艦隊特攻をもいとわないとする、剛直な面を見せている。
本作ではレビルと戦略や今後の展望を語り合う場面が多く用意されており、レビル派の軍人として常に敬語で話している。
ステータスは優秀な一方、戦闘時の台詞は「
ルウムの借りを返してくれる」で変わらず、
一年戦争からどれだけ年数が経ってもこの台詞を言い続けることから「いつまで根に持ってるんだ」とよく指摘される。
当然ながら同じ連邦軍であるはずの
エゥーゴや
ティターンズ、果てには当時生まれてすらいないキャラクターに対しても例外ではなく、誰彼構わずルウムの借りを返そうとするというネタキャラが確立してしまっている。
ミラーの準備はあと?
はっ、あと4分であります。
ふむ……ソロモンもそろそろこっちに気づくぞ。
アムロ編「恐怖!機動ビグ・ザム」に登場。原作通りソロモン攻略作戦を指揮しており、ホワイトベース隊を含めた第3艦隊は彼の率いる主力艦隊がソーラシステムを使用するまでの15分間の時間稼ぎに徹することになる。
このミッションは「ビームかく乱幕形成&第2戦闘ライン突破」「第1戦闘ライン突破」「ビグザム戦」の三部構成に分かれており、「第1戦闘ライン突破」の戦闘中に上記のオペレーターとのやりとりが出てくる。
ミラー配置完了。姿勢防御バーニア、連動システムOK。
ソーラーシステム、目標をソロモン、スペースゲート!
軸合わせ10秒前。迎撃接近、各艦注意!
構うな、照準合わせ急げい!
3…2…照準入ります!!
彼の言葉を合図にソーラシステムが照射。チベやムサイを消し去り、ソロモンへ大ダメージを与えることに成功する。
しかし、出撃したドズルのビグザムに対してサラミス3隻とともにメガ粒子砲を発射するもののIフィールドによって防がれ、全周囲メガ粒子砲の直撃を受けて原作通り戦死した。
同じくソロモン戦が舞台の
ガトー編「ソロモン前哨戦」ではミッションクリア時にもこの場面が流れるが、こちらはチベがムサイに差し替えられている。
【余談】
アニメでは「ティアンム提督」とだけ呼ばれ、ファーストネームがわからない。
項目名にもしている「マクファティ・ティアンム」という名前は漫画「アウターガンダム」が初出。
本作は独自設定が多い作品であるが、この「マクファティ」という名前は「ギレンの野望」「エンブレム・オブ・ガンダム」「ガンダムバトルユニバース」などの作品でも引用されている。
「『ページ保存』、数秒前」
「荒らし接近、各員注意!」
「かまうな!! 追記・修正急げ!!」
- ワッケインといいフルネームであんまり見ないからかなんか新鮮 -- 名無しさん (2025-07-10 19:59:33)
- ↑今では公式かどうかも怪しい独自設定だから、無批判に「今まで知らなかった新しい真実」みたいに受け取っていいものでもないけどね -- 名無しさん (2025-07-10 21:40:04)
- 野望だとジオンはもちろんティターンズだろうが同じ連邦軍人だろうがルウムの借りを返そうとする酸素欠乏気味な提督 -- 名無しさん (2025-07-11 12:41:05)
- ↑3むしろ公式でもない名前で項目立てる方がおかしかったりもするんだろうが、ワッケイン然り。 -- 名無しさん (2025-07-11 18:34:05)
最終更新:2025年07月12日 02:45