機動戦士ガンダム(小説版)

登録日:2017/11/09 Thu 22:55:00
更新日:2025/06/29 Sun 19:07:47
所要時間:約 45 分で読めます


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本項目では、1979年にソノラマ文庫から刊行された『機動戦士ガンダム』の小説版について述べる。
後に角川スニーカー文庫から再販。どちらも上・中・下の3巻構成。


概要

いわゆる『ファーストガンダム』の小説版。
舞台は当然一年戦争で、著者はTV版の監督も務めた富野由悠季氏。

ガンダムシリーズの小説版は文字媒体であることを生かし、ジャミトフ・ハイマンの真意などといったように映像作品では描かれなかった裏設定や細かい心理描写を描かれることが少なくない。
作品によっては登場するメカニックに差異があったり、キャラクターの名前や設定が異なっていたりすることもザラである*1
極端な例だとには『08小隊』などのように、大元の展開そのものが変わってすらいたりする。
『ファーストガンダム』の小説版である本作品もご多分に漏れず、TV版・劇場版とは相違点が多い。

で、その映像版との相違点についてだが……





全部である。



全 部 で あ る 。



全 部 で あ る 。





極めて大事なことなので3回言いました。全部だ……全部だ!

そう、この『小説版ガンダム』はTV版・劇場版とは全てが違うのだ。共通点を探す方が難しいぐらいである
誇張抜きで名前ぐらいしか一致しないと言っていい。ベクトルは違うがある意味『冒険王版』といい勝負である。
もちろん小説版の『Zガンダム』に続く内容でもなく、完全なオリジナルストーリーである。

もう「ここが違う」と比較する方がややこしいので一から解説してみよう。

というわけで、ネタバレ注意!!


【ストーリー】

宇宙世紀0079年、地球から最も遠い宇宙都市サイド3は、ジオン公国を名乗り地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。
ジオン公国軍は新型兵器「モビルスーツ(MS)」を用いて連邦艦隊を撃破。
開戦初頭の大虐殺により、地球人口の半数が死に絶えた……*2

しかしこの大敗を受けた連邦軍もまたMSの研究と実用化に乗り出した。
そして9月ごろの現在、サイド7近郊でMS運用母艦・ホワイトベース級ペガサスがコアファイター搭乗員の訓練をしていた。
このペガサスが映像作品のホワイトベースに相当する。

一方、そのサイド7にはジオン公国軍の軽巡洋艦ムサイが迫っていた。
ムサイから発進した2機のMS・ザクは、その指揮官であるシャア・アズナブル少佐の命で密かにサイド7に侵入する……。


【ガンダム大地に立つ!!】

……というところから始まるが、ここで早くも最初の大きな差異が発生。
アムロカイハヤトリュウは最初から連邦軍の士官候補生として登場するのである。
当然、軍人なのでシゴキも食らっており、直属の上官であるラルフ中尉から怒鳴られビンタされる。
アムロも腹を括って軍人になった立場であり、「親父にもぶたれたことないのに!」などと甘ったれたことも言わず、年齢も19歳*3で仲間意識も強い
オリジナルキャラとしてシアン・クランクという同期も登場。

さて、侵入したザク2機は、シャアを「若造の上司」と嫌うデニムの独断*4によりペガサスに納入中の連邦軍MSを攻撃。ジーンも続く。
民間人をも巻き添えにする攻撃に対して連邦軍はコアファイターで迎撃するが*5、コロニーの中で航空機を飛ばすのは自殺行為に他ならず、端から撃墜されていく。
シアンもこの時にコアファイターの破片を受け、腸がはみ出た死体が吹き飛ぶというショッキングな形で戦死。
さらに悪いことに、逆上した連邦軍の防衛隊の攻撃も避難する住民や一部の軍人を巻き添えにしてしまう。
防衛隊の戦力は有線誘導ミサイル搭載のエレカ(電気自動車)と携帯火器程度で練度も低く、ザクの敵ではなかった。

そんな中、リュウたちとともに避難しようとしていたアムロが逆上して、デニムたちが鹵獲用に残していたガンダム2番機に飛び乗り起動。ジーンのザクをうっかり爆発させてしまう
デニムのザクは爆発の余波でコロニーのガラス面を突き破って宇宙に放り出され、ガンダムを放置してそのまま離脱した。
ちなみにスレンダーは最初から影も形もない。


【ガルマ(宇宙に)散る】

ジオン軍の襲撃で正規クルーの大半が死傷し、またアムロの幼なじみであるフラウ・ボゥ軍の通信班にいたセイラ・マスらを収容したペガサス。
ドジっ娘のセイラ*6にアムロが一目惚れしたり*7しながらサイド7を脱出し、ルナツーを目指す。
しかしシャアのムサイの妨害を受け、ジオン軍の宇宙拠点キャリフォルニア・ベース(巨大な人工衛星のようなもの)のガウ部隊に待ち伏せされる。
その指揮官は、ガルマ・ザビ大佐であった。

はい、ここで違和感を覚えた人。
そう、ガルマは宇宙にいるのである。さらにガウは宇宙空母(空爆とも)、ドップ宇宙攻撃機。
さらに連邦軍のフライ・マンタも宇宙戦闘機なのだ。セイバーフィッシュとかじゃダメだったのか?
しかもこの時点でペガサスはルナツーにすら入っていない。だがこんなのは序の口。

正面からは3隻のガウ、背後からはシャアのムサイ。
挟まれたペガサス隊だったが、猛烈な反撃でガウ2隻をあっさり沈める。
逆上したガルマは自らのガウをフルバーストで前進させるが……


「ジオン……公国に……栄光あれ!」

「ガルマ! よせ!」


シャアはガルマを謀殺しない。謀らない。
というか出撃前にはガウからの砲撃に巻き込まれる危険も承知の上でペガサスに肉薄してガンダムと戦い、しかも、


「友情に報いるためには、そんな危険がなんだというのだね? ドレン中尉。
わたしは、一発でも多く木馬にバズーカを撃ち込み、ガルマを助けたい。彼を飾り物にしないためにもな」



上記の「よせ!」という絶叫も本心。
ただし、同時に彼の心の中では、


(あいつだってザビ家の一員だ……むしろ木馬が仇討ちをしてくれるのを、目撃できるだけでも僥倖だ……!)


という思いも同時に沸いてはいたようだが、それでも映像版ほどの悪意は感じられず、無理に自分を納得させようとして出てきた言葉という側面の方が強い。

ガルマの死を見届けたシャアは、その末期の言葉を「……お坊ちゃんらしいよ」と物悲しく受け止め、きっと彼のことだからガウの操縦桿を自分で握るくらいのことはしていたに違いないと想いを馳せ、そして士官学校時代からあった前髪を指でいじる癖は今も変わらず、きっと死んでも直っていないだろうなと親友の死を悼んでいる。
ガルマの国葬におけるギレンの演説に「坊やだからさ……」と呟くのは同じだが、映像版とはまた違った印象を受ける。

そしてこの時点で、もっぱら地の文でだがシャアとセイラの正体が全部明かされている

つまり2人が兄妹で、ジオン・ダイクンの遺児で、ザビ家は仇で、エドワウ・マスとセイラ・マスに名を変えて、ジンバ・ラルに育てられて、
シャアは仇を討つべくジオン軍に入隊して、セイラは復讐させようとするジンバと決裂してサイド7に流れた
ことが、上巻の半分いかないところで全部明かされてしまうのである

そして、宇宙でガルマ部隊を殲滅してムサイも退却させたペガサスは、一路ルナツーに入るのであった。
ここまでが、映像版に最も近かった時期である


【テキサスの攻防】

ルナツーに入ったペガサスは、司令官であるワッケイン大佐と、宇宙軍総司令官であるレビル大将に引き合わされ、賞賛される。
そして、ペガサスはワッケインが指揮する「第13独立戦隊」に組み込まれ、レビルが指揮する主力艦隊の陽動としてテキサスコロニー方面への進行を命じられる。

そう、いきなりテキサスコロニーである
レビルまでルナツーにいるのはともかく、ペガサスは一度も地球に行かないのだ。
すなわちTV版第6話~第30話までの地上編がまるまるカット大気圏突入もしない。
そして一気に第37話相当のテキサスまで飛んでしまう。

ついでにその途中、ガルマの国葬とかデギンドズルキシリアの確執だとか、ザビ家の革命史だとか、さりげなくサスロの言及だとか、ダルシア・バハロ首相の立ち位置だとかが濃密に描かれる。
あとシャアは正真正銘ガルマを守り切れなくて左遷されたが、本作では国葬の時点ですでにキシリアに引き抜かれていて、中佐の階級とザンジバルを拝命する。
しかもサイド6でニュータイプ部隊とエルメスとサイコミュとフラナガン機関まで任され、ララァ・スンまで登場する。
早い……早いよ! 『ソードマスターヤマト』並みに詰め込みまくりである。
ちなみに本作のララァはサイド5「ルウム」出身で、インド出身のアースノイドではない。

その頃、ルナツーを出たペガサスはワッケインの旗艦ハルを中心にテキサスを攻撃。
これはグラナダ艦隊への陽動であり、レビル率いる本隊はグラナダもしくはソロモンを攻撃する作戦。
一方、当のグラナダ艦隊は偵察と迎撃のために艦隊を広く分散させており、その内の1つであるマ・クベ大佐の攻撃中隊はテキサスに派遣されていた。
テキサスコロニーの中にはシャアとララァのザンジバル、そしてエルメスも停泊している。
もちろん、第13独立戦隊もマ・クベ隊も戦況を俯瞰で見れば一部の動きに過ぎない。

そしてこのテキサスでの一連の戦闘により、
  • リュウ、ワッケイン、マ・クベが戦死
  • ペガサス、ザンジバルともに撃沈(クルーは脱出)
  • エルメス撃墜、ララァ戦死
  • シャア専用ザク大破(シャアは脱出)
  • ガンダム大破、アムロはコアファイターで脱出して宇宙漂流
  • テキサスコロニー完全崩壊
  • ついでにフラナガン博士も死亡
と一気に起きる。

一気に起きる。

冗談ではなく、上巻ラストまでにガンダムとシャア専用ザクとエルメスにペガサスやザンジバルだってやられ、ララァが戦死するのである。
当然、アムロとララァの交流は戦場のほんの一瞬のみ。
ペガサスにさっき乗艦したと思ったら短期間ですぐに撃沈。思い出も糞もないので感慨もない。
ちなみに民間人はルナツーに着いた時点で降ろされるため、カツ・レツ・キッカはもとよりフラウもさようなら。ガンダムもさようなら。

一方、セイラはTV版のようにシャアと再会。
その後、ニュータイプとしての強烈な覚醒で、沈むペガサスや崩壊するテキサスコロニーから仲間たちを脱出させることに成功する
セイラ覚醒の瞬間であった。TV版ではアムロの役割で彼女はロクに覚醒しなかったのに。

この時点で宇宙世紀0080年1月1日。映像版ではすでに終戦しているが、もちろん戦争は終わっていない
途中で全部すっ飛ばした件に目をつぶれば、もうTV版の最終回の様相である。アムロがまだ覚醒していないけど。


【グラナダ陥落、そしてクスコ・アル】

さて、その間に連邦主力艦隊はグラナダに進行。
対するキシリア・ザビは、ワッケインらの陽動にまんまと引っかかって戦力を分散させすぎていた
おかげでレビル主力艦隊が攻め込んでからわずか30分強でグラナダ艦隊は壊滅
一方、ソロモンおよびア・バオア・クーはレビル主力艦隊の動きを陽動だと見なして援軍を送らず、グラナダは映像版のソロモンとは逆に孤立無援に陥ってしまった。
最終的にキシリアは撤退を決意。
しかし、その理由は援軍を出さなかったギレンやドズルへの感情的なヒステリーというのが本当のところである。

かくして連邦主力艦隊はグラナダを占領し、「ファーストステップ」と改名
またファーストステップは月のうちア・バオア・クーに面した位置にあるために危険であるとして、新たに基地を建設。
フォン・ブラウンあたりの反対側に「フロントバック」という基地を設立し、そこに主力艦隊を再編する。

グラナダから脱出したキシリアはア・バオア・クーを目指していたところ、パトロール中のムサイに辛うじて救助されたシャアと再会。
そしてシャアはララァ亡き後のニュータイプ部隊のまとめ役を任される。

一方、テキサスコロニーで離散しかけたペガサス隊は第13独立艦隊の僚艦サフラン・シスコに救助され、フロントバックへ届けられた。
アムロとコアファイターは宇宙を漂流していたが、偶然サイド6の民間船に救助される。

しかし、この民間船は実はジオンの徴用船だった。
そこでアムロはジオンのニュータイプ、クスコ・アルと接触を持つ。
実はこれ以前にニュータイプという発言は連邦側からも出ていたが、アムロはここで初めて本格的に知ったと言うべきか。

ただし、アムロ側の事情もあってクスコとの接触は短時間で終わり、その後は連邦領事館からフロントバックに届けられて仲間たちと再会。
彼らは新しい母艦である「ペガサスジュニア」と、撃破されたガンダムに代わる3番機「G3」を与えられる。
ついでに補充された1機を含むガンキャノン2機とジム2機、護衛艦としてサラミス2隻にボール4機を含めた「第127独立戦隊」として再編成された。
近年のゲームにおいて「G-3は小説版ガンダムで活躍したMSである」と解説されているのはこれが由来である。
ちなみに『トライエイジ』などで触れられた忍者がどうのこうのは『Gの影忍』のネタ。全く別の作品である。

一方、シャアも「第300独立戦隊」の指揮官として、ザンジバル級マダガスカルを受領。
新型MSリック・ドムやそのパイロットであるシャリア・ブルたち、そしてエルメス2番機を揃えて厳しい訓練に勤しんでいた。
そのエルメスのパイロットは、漂流していたアムロと接触したクスコ・アルだった……。

そしてシャアも満を持してゲルググ……ではなく赤く塗装したリック・ドムに乗る
本作ではそもそもジオングどころかゲルググすら登場しないため、彼が最後まで乗るのはこのシャア専用リック・ドムである。

とまあこんな具合で、サイド6以降のエピソードは映像作品と何ひとつ共通しなくなった。
さらにキシリアの拠点であるグラナダは映像作品では一度も戦場にならなかったのに、こちらではソロモンと逆になる形で突破される。
ついでにキシリア単独の采配も披露されたが、ドズルに比べると指揮官としては能力が低かったと言わざるを得ない。

そしてアムロたちだが、テキサスで死線を潜り抜けた結果精神的には大きく成長しており、映像版以上の団結力とさばけっぷりを見せている。
というより、精神的にはア・バオア・クー以降の彼らと言っていいかも知れない。
そして大人っぷりが加速しすぎて……



アムロがセイラを口説き、ベッドシーンを演じたのである
さすがに直接的なシーンはないが、かなり大胆に描かれる。
その少し前にはセイラ自ら自分がシャアの実妹で、ジオン・ダイクンの遺児であることをアムロに明かしている

しかしやはり一連の行動は特にセイラにとってはストレスでもあったらしく、ピロートーク交じりに「シャアを殺してくれ」とこぼし、アムロもついカッとなって「それを頼みたいから僕と寝たんですか!」と叫ぶ……!

このセイラとアムロの葛藤は恐ろしいほど濃密な描写で、何というか「富野~!」という感じ。
そしてこの瞬間から、セイラのヒロイン力は急上昇していく


【コレヒドールの死闘】

その後、シャアの部隊は実戦テストを兼ねてフロントバックを奇襲
迎撃に出たアムロたちと戦いつつも、10数分でサラミス9隻を落とすという十分な戦果を挙げる。
しかしエルメスのクスコは初めての本格的な実戦ということもあって圧倒されてしまい、自信を失う。

あと、シャリア・ブルがものすごく強く、アムロもシャアも「シャア以上のニュータイプ」と直感するほどの腕前を披露。
TV版ではララァの前座に過ぎなかったシャリアが、ここからまさかの超重要キャラになっていく

この後、ペガサスジュニアを中核とする第127独立戦隊は、さらに12機の宇宙戦闘機「トマホーク」からなる戦闘機部隊を補強されるが、「これが正真正銘、最後の補強」になった。
なお、セイラもスレッガーもトマホークには乗らない
しかもその戦闘機部隊の指揮官はマクベリィ少佐で、ブライトよりも階級が高い。

その間にもアムロたちは全員昇進したり、ニュータイプの概念について話し合ったり、ブライトとミライにフラグが立ったり、スレッガーのフラグが折れたり、アムロとセイラがいちゃいちゃしたりしているが割愛。

シャアもシャアで、キシリアの秘書のマリガレーテ・リング・ブレアという女性と男女の関係になる。もちろんベッド行き
どうもこちらのシャアはララァをそれほど引きずっていない。というか派生作品を含めたあらゆるシャアよりも一番平和で幸せなように見えるのは気のせいだろうか。
また鼻っ面を折られて落ち込むクスコをなだめるなど、部下のアフターケアにも余念がない。
映像版よりもいい上司に見える…。

そんなこんなで、連邦艦隊はいよいよ月を発して総攻撃を開始した。
ソロモン司令ドズル(と映像作品を見た読者)は、「グラナダを落としたのだから次はソロモンに来るはずだ」と予想。
だが、連邦軍はソロモンを無視して直接ア・バオア・クーに向かう進路を選択。


「ソロモンは敵でないというのか! レビルめ、必ず相対してくれる!」


一方、キシリアはギレンの要塞のア・バオア・クーが攻められると聞いて密かにほくそ笑んだ
あんたらもうちょっと自分を押さえろよ。

ともあれ、アムロたちを先鋒とする連邦軍は、途上に展開していたジオン艦隊を逐一撃破しながら着実に前進していった。
だが、そのア・バオア・クーに向かう航路にある「コレヒドール」という暗礁区域にはシャアの第300独立戦隊が待ち伏せて展開していた。

この戦いは文字通りの激戦になった。
ララァがややあっさりと戦死した反動なのか、アムロとクスコの戦いはサイコミュの能力とニュータイプの意識が全開の激戦
さらにシャアも飛び込み、艦艇やMS、戦闘機も激しく撃ち合い、とうとうアムロの意識がオーバーフロー。
クスコの人生全てを理解したり、シャアと戦場で交信したりと、TV版のララァ戦以上にすさまじいニュータイプ化をたどった。

そして……アムロがクスコの人生というか存在そのものを理解したのと、G3のビームライフルが彼女を撃ち貫いたのは同時だった。


“止めたら、シャア! あなたを殺す! 俺はアルテイシア・ソム・ダイクンに頼まれているんだ”

“アルテイシアにだと!”


 アムロは、
 罪を、
 犯したと分かった。
 が、
 すでに、クスコ・アルの身体は焼かれていた。


「……マ、マイ フェア レディ…… クスコ・アル……」


“本気なのか、アムロ!”

“嘘が、嘘が伝わるものかっ”


エルメスを失い、ジオン艦隊は退却。
旗艦マダガスカルも中破し、6機いたリック・ドムはシャア機を除くと2機だけになった。
ガトルも3機残ったが、次の作戦には使えない。

一方の連邦艦隊も損害がひどく、マクベリィ少佐を含めてトマホーク隊は壊滅。
アムロの僚機のジム1機とボール4機、サラミス級グレーデンも失われた。

その合間に、アムロはセイラに「伝えた」と言って平手打ちされたりしている。
……重い。あまりにも重すぎる展開である。リア充も楽じゃないとわかるだろうか。


【ギレンの思惑】

この後、レビルが指揮する連邦軍主力艦隊はいよいよコレヒドールからア・バオア・クーへ全軍突撃せよとの信号を下す。

迎え撃つア・バオア・クーはランドルフ・ワイゲルマン中将が指揮をとり、次席指揮官はグラナダから落ち延びたキシリア
さらに、レビル艦隊の後ろからドズル艦隊が猛烈なスピードが追いかけてきた……。


……あれ? ギレンは?


実はこの時、ギレンはサイド3にいた。ア・バオア・クーには赴かないのである
代わりに一番の側近であるランドルフ中将を置いたわけだが、ギレン自身はチャップマン・ジロム大将が管理するソーラ・レイのある本国にいながら、腹心のランバ・ラル大尉より報告を聞いていた。

さりげなくこんなところでランバ・ラルのお出ましである。
この人も映像版とは全然キャラが違う。グフ自体出ないしそもそもMSにすら乗らず、ドズルではなくギレンの部下であるなど共通要素は皆無。

ギレンは密かにとある計画を練って、ランバ・ラルやチャップマンにほのめかしていた。
それはともかく、レビル艦隊はついにア・バオア・クーに攻め込んだ。

映像版ではア・バオア・クー戦の前にソーラ・レイ照射が起こるが、本作ではデギンは和平に動かないし、レビルはまだしもドズルすらまだ生存しているし、そもそもギレンはキシリアと同じ場所にいないしで、もう何ひとつ合致しない。
「グレートデギン、どこに配備なされたのです?」「出てこんよ。話の都合でな」
共通するのはギレンとキシリアの不仲、そしてギレンがデギンを「汚物」と評するまで嫌っていることぐらいである。


【宇宙要塞ア・バオア・クー】

そういうわけで始まったア・バオア・クーの戦いは、
  • 正面のア・バオア・クー防衛線
  • そこに攻め込むレビル艦隊
  • それを追いかけるドズル艦隊
の三つ巴になり、混沌を極めていた。


背後からのドズル艦隊は出撃時のトラブルで彼が直卒するグワジン級ガンドワを旗艦とする艦隊とドロス級空母ミドロを中核とする艦隊の二手に分かれた。
このうちミドロ艦隊はレビル艦隊左翼の背後を、ガンドワ艦隊は右翼の背後を突くことになる。
もちろん正面にはア・バオア・クーの防衛線があるわけで、前後から討たれた連邦軍、特に左翼は大苦戦する羽目に陥った。
実はレビルは諜報でソーラ・レイのことを知っており、攻略を焦ったのが背後の備えを怠る結果になったのである。

だが、右翼部隊にいたアムロたちは、圧倒的な力量でドズルの部隊を撃破してしまった

アムロのG3、カイ(C108)とハヤト(C109)のガンキャノン2機がニュータイプ(ちから)で圧倒。
それに加えて、キリア・マハのジム325が完璧な連携で片っ端からドズルの艦隊を蹴散らしたのである。

ドズルは虎の子のビグ・ザムをガンドワに曳航していたが、そのビグ・ザムさえ大苦戦。
なんとジムの一撃で片足を失ってしまう

突撃してきたガンドワとの一斉攻撃によって、キリアのジムをどうにか撃墜。
だがガンキャノン2機の攻撃でガンドワもあっさり沈み、ビグ・ザムも信じられないほどのあっけなさで撃沈してしまった
ドズルだけはTV版と同じようなオーラを放っていたが、どうなるわけでもなく爆砕


「こんな奴がいるから、戦争は終わらんのだよ!」


残ったミドロ艦隊はまだ連邦軍を圧倒し続けていた。
だがレビルが「戦力を固めて、ア・バオア・クーの一転に集中して切り込もう」と提案したのを、幕僚が「いったん後退して立て直す」と勘違いして全軍に発信してしまう。
映像版でキシリアがギレンを暗殺したレベルの大ポカだが、レビルは指揮系統を混乱させないためにあえて「ミドロ艦隊を殲滅して立て直す」と再命令。
前後に敵を迎えて劣勢気味だった司令部に活気を呼び戻す
他方で全軍に襲われたミドロ艦隊は全滅し、ア・バオア・クー守備隊や本国のギレンたちは「ドズルをたやすく殲滅するほどの連邦軍が、なぜ後退したのか」と悩んで追撃を中止。
アムロたちも一息ついた上で、あらためて攻め込むことになった。

実はこの「一息」のミーティングで、ブライトが「いっそ直接本国に攻め込んでギレンを討つか?」ととんでもない提案をかます。
しかしこの冗談のような話は徐々に発展して、アムロは「協力者がいればできるかもしれない。例えば、シャア・アズナブルとか」とさらにものすごいことを言い出した。

一方、シャアもシャリアたちと同じようなミーティングをして、同じような結論を出していた

話は少々前後するが、ギレンの最終目標は「ソーラ・レイで連邦軍に勝つ」のではなく、戦後を見据えて「連邦軍はもとよりキシリアとドズルをも葬り去ること」こと。
つまりソーラ・レイの最終目標はキシリアでもあった(ドズルが純粋に戦死したのはギレンにとって予想外だった節もある)。

しかし、その目標は実は思わぬところから漏れていた。
ギレンの腹心であるランバ・ラルの恋人(本作では籍は入れてない)のクラウレ・ハモンである。

ハモンの正体はなんとのデギン公王とバハロ首相のエージェント
さらにこの2人は密かにギレンを排除しようと目論んでおり、ギレンがソーラ・レイで何を狙っているのかを、ハモンを通してキシリアに漏らしていた。
キシリアはそれをシャアに伝え、シャアは信頼するシャリアたちに相談。
結論として、「一足飛びにギレンを倒し、革命を起こそう。そのためにアムロと協力できるならなおよし」という結論を導き出していたのである。
さらにはこのあたりでキシリアがシャアの正体を見破るエピソードも加わる。

ともかく、アムロとシャアはお互い関わらない場所にいながら「独裁するザビ家を討ち、腐敗した連邦を切り捨てて、新しい『ニュータイプの時代』を作る」という同じ青写真を描いたのである
ところが、そういう話がうまく運ぶわけがないのが富野ワールドの常であり……。


【光る宇宙】

再編成と補給を終えた連邦軍が再びSフィールドより攻め込み、ア・バオア・クーの防衛部隊も再び激しい迎撃を展開した。
攻撃はやがて連邦軍の特攻に近い形になる。
その激戦の中で、アムロはドズルの猛烈なオーラを見た経験から「人々の意識の核」を見つけて、その核=ギレンを討とうと、ニュータイプ力を磨ぎ澄ましていた。

一方、アムロたちと協調し、新しい世界を作るべきと考えたシャリアは、ニュータイプ用MAブラウ・ブロを起動。
そのサイコミュを使ってアムロの脳波を探し、交信しようとしていた
TV版ではララァとエルメスの前座に過ぎず、劇場版では「いらない」と言われて出番そのものをカットされたシャリア・ブルとブラウ・ブロ。
彼らがまさかの「ストーリーの肝」になった瞬間である。

だが、その乱戦の中、突如サイド3からテストを兼ねたソーラ・レイの第1射が放たれた。
映像版では遠くにいたアムロでさえ異変を感じて「憎しみの光だ」と戦慄したソーラ・レイが、戦場で、アムロたちの目の前で炸裂したのである。
その一撃はレビル艦隊を補佐するカラル中将の支援艦隊を消し去った

間近であっただけにその衝撃は映像版よりもすさまじく、呑み込まれたカラル艦隊のクルーたち数万人の「断末魔の意識」が戦場に炸裂。
アムロのようなニュータイプの意識に目覚め始めていた人たちに「強烈なプレッシャー」となって襲いかかった。
文中では「宇宙をも震わせる憎悪」「真空をも揺るがす」「ありえない圧力、ありえない振動。強いて言えば空震」「阿鼻叫喚そのものの奔流」と禍々しい言葉が羅列されている。
アムロ、カイ、ハヤト、セイラ、ミライ、レビルたち連邦側のニュータイプだけでなく、事前に来ると知っていたはずのシャアやシャリア、果てには遠くルナツーにいたはずのフラウ・ボウまで意識が吹っ飛んでしまった。
シャリアに至っては「死んだほうがましだ!」「この恐怖は、死んでも魂に残る……」と内心で絶叫するほどだった。

そんな混乱の折に、辛うじて正気を取り戻したシャリアがアムロと接触を図る。
ショック状態で動かないG3に、シャリアは早速ブラウ・ブロのサイコミュを利用しアムロと交信。
この近辺はギレンのソーラ・レイに狙われている」「ギレンの独裁を打倒し、新しい社会を作るために協力してほしい」「一緒に脱出してほしい」と必死になって訴えた。
それはある意味でアムロたちも考えていたことだが、シャリアは大きなミスを犯していた。

ソーラ・レイによる阿鼻叫喚の意識の渦に飲み込まれて動揺していたアムロ。
そこになまじ誰も経験した事のない「サイコミュからの精神波」で訴えたために、かえってアムロの混乱を増長させてしまった

錯乱したアムロはバズーカを乱射して抵抗する。
シャリアもシャリアで、次のソーラ・レイ発射まであと20分もないことから焦っていた。
撃墜されないように精神波を送りながら有線式サイコミュ端末のビームで抵抗。
これが「動揺させて討つつもりだろうが! 下衆が!」とますますアムロを本気にさせてしまう
加えて、事情を知りえないカイやハヤトはシャリアや続くシャアを撃破しようと猛攻をかける。

訴えながらも迎撃するシャリア、冷静なようでパニックに陥っているアムロ、失敗したのかと焦るシャア、必死に迎撃するカイとハヤト。
全員が混乱に陥っている状態の中、アムロのビームライフルがブラウ・ブロのコクピットを狙撃してしまった。


「情緒不安定なパイロットが!」


断末魔の叫びをあげながらシャリアが戦死。しかしその死の瞬間、彼の意識がアムロを直撃したことで全てを察した。
つまりシャリアを殺して初めて、アムロはシャリアの言いたかったことを理解したのである
クスコに続いてこのパターンは2度目である。もっとも「わかりあった時には時すでに遅し」なのは御大のガンダムではたまによく出てくるネタではあるが。
このショックでアムロは意識を失ってしまう。

一方シャアはシャリアの死に驚愕し、その隙をカイとハヤトに突かれて撃墜されかける。
冗談ではなく、本当にシャアは殺されそうになった。
しかし間一髪で反撃し、ガンキャノンC109を撃破。ハヤトが戦死する
彼の死に際の絶叫を聞いたアムロは覚醒し、シャリアの死の波動を呑み込み、ハヤトの死の波動をこらえて、カイを制止。
さらにペガサスジュニアに飛んで「シャアと協力して、ア・バオア・クーを脱出しろ」と伝えた。


そのために気を逸らした瞬間、シャアの部下ルロイ・ギリアムのリック・ドムが、背後からアムロを撃ってしまった


「ルロイ!」

「ガンダムは気付いてくれたのだぞ!」


アムロが、主人公であるアムロ・レイが、まさかの戦死を遂げてしまった
しかもそれはシャアが決して望まない形で。


「将たる器でない己をいう身が将たらんとする…これは誤ちと言ってすむものではない」


だが死によって飛び散ったアムロの意識は、ララァやクスコの意識とともに戦場に波紋のように広がっていく。
残ったペガサスクルーやシャア、ルロイ、戦場にいてそれを感じ取れたわずかな人たちへ全てが伝わった。
それは戦場を離れたルナツーのフラウの下へも、広く伝播していった。


(俺のように惨めに死んでゆく人のいない世界をめざしてくれ…ギレン・ザビを討つのは人の歴史の必然だ)

「この空域を脱出する。目的はジオン!」

「シャアとの回線を開け! 情報を確認しつつレビル本隊にこの空域からの脱出を示唆しろ!」


ブライトの絶叫により、ペガサスジュニアはシャアのマダガスカルとキシリアのズワメルに続きながら、一斉にア・バオア・クーから離れていった

しかし、まさに部下たちを抱えてア・バオア・クーに上陸しようとしていたレビル艦隊は今さら進路変換もできなかった。
また、要塞守備を命じられていたランドルフ中将らの守備隊には何も知らされておらず、退避もせず、レビルにもさせなかった*8
レビルはさすがに「ギレンは味方に被害が出てもソーラ・レイを撃てる。そういう男だ」とは見抜いていた。
だが、この状態でできることはア・バオア・クーに取り付き、その陰に隠れて盾にし撃たせなくする、ということだけだった*9

だが、「キシリアをレビルもろとも殺す」と考えていたギレンにとって、レビルの決断は最悪の悪手だった。
そうして、ついに発射されたソーラ・レイは射線をずらしつつ掃射され、ア・バオア・クーの「柄」の部分を直撃
レビルとア・バオア・クー要塞の下半分を、自軍の将兵もろともに蒸発させた。
もちろん、直撃しなかった「傘」の部分も下半分を吹き飛ばされたことによる衝撃で激しく振動。
無重力ゆえに資材が高速で右往左往したため、内外にいたほとんどの将兵が壁や物資に叩き付けられ圧死した
映像版でギレンがいた総司令部では、ランドルフ中将が一瞬で床と天井を10数往復して戦死した。

さらに、本国ではギレンがランバ・ラルをソーラ・レイのコントロール艦に派遣。
ギレンの密命を受けてソーラ・レイの斜角をア・バオア・クーに向けるよう工作していた司令官チャップマン大将を射殺させた。
言うまでもなく口封じである*10

連邦軍艦隊は壊滅し、ジオン軍も半身不随に陥った。
戦争は事実上、終結したのである。

口封じもなされ、ギレンの計画はすべて完了した……と思われた


【終戦】

だが、すでにハモンの密告とアムロの死によってキシリアとシャア、ペガサスジュニアは連携してア・バオア・クーを脱出し、しかもジオン本国へと全速力で迫っていた
当然、双方の乗組員たちはギレンに殺されかけたことを理解しており、キシリアの「ギレンを討つ」というクーデター宣言にも団結して賛成した。

ペガサスクルーもシャアと会見。双方の語り合いを経て、奇跡的な和解がなされた
ちなみにシャアは彼らの前で簡単にマスクを外した


「あ……これはファッションでな。プロパガンダ用の……」

「申し訳ないが癖というのは外すのを忘れさせる」←言いながら照れる


セイラとも再会し、和解と、互いとの精神的な決別を果たしている。
やっぱりどう見てもTV版より成熟している……。

かくして団結したペガサスジュニアとキシリア・シャアたちは、間違いなく「味方」であることを利用してズム・シティに入港。
ギレンが完全に油断しきっていたこともあって、コロニーの港を砲撃で突破。
ズワメルとペガサスジュニア、リック・ドム4機とザク3機、そしてパイロットでは最後まで生き残ったカイのガンキャノンがコロニー内部に飛び込んだ。
また、シャア専用リック・ドムの予備シートにはキシリア自身も乗り込む
ギレンを自らの手で討ちたいという執念である。


「よろしいのですか?」

「よい。心配はいらぬ」



そしてアムロ並みにニュータイプに覚醒していたカイが、いち早くギレンの「気」をつかんだ
事態を悟ったギレンが脱出しようと乗り込んでいた車が見つかったのである。


「判るぞ! 俺にも! アムロ! 間違いないんだな?」

“見事だな。カイ”

「総帥! 出ませい!」


ついに包囲されるギレン。
キシリアはリック・ドムの左手に乗り移り、シャアに中空まで移動させて、手にしたビームライフルを放った。
ギレン・ザビはあっけなく戦死した。


「では……」


そして次の瞬間、リック・ドムの手首が回転した


「シ……シャアァ!」


キシリアはよりによってギレンの肉片の上に墜ちた。それだけだった。

ギレンとキシリアが戦死し、さらに統合本部もシャアたちの手で制圧された。
その後はデギンが退位し、ダルシアを中心として「ジオン共和国」が復活
そのジオン共和国と地球連邦政府が講和条約を締結することで戦争は終結した。
ルナツーもジオン共和国の管理下に置かれ、地球連邦は完全に「地球だけの政府」になった
ペガサスジュニアと僚艦2隻も共和国に鹵獲扱いとなり、そのクルーたちも半数はジオン国籍を与えられ、さらに一部は共和国再建のために共和国軍に参加した

だが、演説を始めるシャアの背中を、足元に散らばったギレンとキシリアの遺体を見ながらカイは考える。
シャアという男は目的のためなら簡単に人を裏切り、そして簡単に人を殺す人間なのだ。


「なあ……アムロ……これでいいのか……?」


カイ・シデンはシャア・アズナブルのことが嫌いになっていた。


こうして、『小説版ガンダム』のストーリーは終局する。
最後は、ジオンからもシャアからも離れ、1人で泳げるようになったセイラが全裸で地中海に飛び込むあたりで物語は幕を閉じる。


というわけで、以上が徹頭徹尾、最初から最後まで映像版の面影が欠片もない『小説版ガンダム』である。
他にも一部キャラクターの内面の掘り下げや来歴の披露などが頻繁に言及されている上、映像作品以上にSF小説としての科学考証が随所に炸裂している。


【登場人物】

+ 地球連邦軍
「生きるも死ぬも、早いか遅いかの違いなら! ……神様!」

ご存じ主人公だが、本作では後発のシロー・アマダコウ・ウラキのように最初から正規軍人として登場。年齢も19歳に引き上げられていることもあって映像版よりもずっと大人。
しかしそれは映像版と比較しての話であり、セイラからの扱いを見てもまだまだ子どもではある。ウブなネンネ。
やや惚れっぽくフラウとの恋、セイラへのサイド7時代からの一目惚れ、クスコへの欲情なども見せるが、ララァに対しては「戦う道具として戦争で使い潰された可愛そうな女の子」という認識で、恋愛感情らしきものはない。
最終的にはフラウを大切にする気持ちを抱いたまま、セイラへの愛を抱くようになる。
映像版ではいまいち曖昧だった「ニュータイプ」についてかなり深くまで理解するようになっている。
過酷な戦闘を潜り抜け、曹長から中尉まで順調に出世。「第127独立戦隊」のMS隊長になり、カイやハヤトたちを率いる。
セイラを口説いてヤり、彼女がシャアの妹である事を知ってしまう。
最後はまさかの事故死のような形で戦死。

「てめえだけ好き勝手に死にやがってよ! そんなやっかいな事が出来るとおもっているのかい!」



「みせて欲しい。人の光明を……!」

正真正銘、まごうことなきヒロイン。
不慣れなオペレーターで兵士たちに媚びも売らないせいで言うことを聞いてもらえずに「ドジ」呼ばわりされているが、サイド7の「金髪さん」だと気付いたアムロと仲よくなっていったことで、徐々に周囲からも認められるようになる。
アムロとは何回もベッドにもつれ込んだり父ジオン・ダイクンの遺志を解説したりと大活躍。
本作ではパイロットにはならないので活躍はむしろ減っているはずだが、とてもそうは思えない。
もともと陰のあるキャラクターだが、小説版ではそのあたりも深く踏み込まれている。
アムロ曰く「なぜ、そんなに怯えて生きてきたのです」。
しかし、最後はシャアに対して「わたしの男を殺した男!」と意識し、兄への決別という成長を果たす。
最後は彼女のサービスシーンで締められる。
ちなみに物語開始時点で20歳であり、アムロより歳上。



「今はお互いにマシンだと思え! 考えるな! ただ前を見て操艦しろ!」

安定の艦長。違いしかない小説版としては珍しく、概ね映像版通りの貴重な存在。意外に順調にミライとのフラグを立てる。
「ヒステリーのブライト」呼ばわりされているが、これは緊急の新米艦長で指示を出すことで落ち着こうとするため。
激戦を潜り抜けて落ち着きを身に着けたことで、映像版に比べると「十年ぐらい年を取ったのではないかと思うほどさばけている」。
映像版通り彼自身にニュータイプの素質はないが、アムロやセイラといった仲間たちがその素質を開花させはじめ、かつそれによって自分たちが救われていたり戦局が左右されつつあったりするということを素直に認め、受け入れる態度にはセイラから「ペガサスのクルーで良かった」とさえ評価されている。



「艦長、アルコールてのはないスかね」

本作では最初からアムロの同僚として登場。もちろん軍人なので軟弱者ではない。それどころかニュータイプとして覚醒し、アムロの死後は代わって物語を牽引した。
主要パイロットの中ではただ1人、最初から最後まで生き残ったが、彼の胸に去来するものは……。

「なあ……アムロ……これでいいのか?」

ちなみにアムロがセイラの出征守りをもらってないと聞いた際には、「おいおい冗談やめなよ。お守りなしで今日まで生き延びたのかよ。相変わらずドジセイラってとこだな。よし、俺が頼んできてやる、待ってろ」と、作戦行動中にブライトにセイラをブリーフィングルームへ下ろすように申告した。
ブライトもブライトで「ドジが! 貰ってこい」とアムロに怒鳴っている。えぇ……。



「ぼくはニュータイプって存在自体、どういうことなのか良く判りませんし……」

彼もまた最初から軍人。出番は多いはずだがカイよりも印象が薄い。
しかし、テーマとして据えられているニュータイプについて「突然変異の怪物じゃないのか?」と疑念を抱くなど、重要な立ち位置ではある。
そういう彼もまたニュータイプとして覚醒していくが、ア・バオア・クーの乱戦の中でまさかの戦死。



「……あ、あいつ……ニュータイプかも知れねえな……」

今回はアムロたちと同期なので完全に対等な口調。最年長ということでリーダーのような立場だった。
しかしながらTV版で見せた包容力も、みんなが成熟している本作ではいまいち地味。
最後は「乱戦の中、気付いたら撃墜されていた」という形で、アムロたちに戦場の厳しさと現実のあっけなさを淡々と刻みつけた。



「ひょっとしたら俺は、ジャブローの密偵かも知れんぜや」

ルナツーに合流してからの補充要因だが、本作では戦闘機に乗らずに砲兵の指揮官で終わる。要は信じられないほど空気
素行不良にもかかわらず戦闘に関しての評価が高いことからジャブローからのスパイではとさえ見られているが、何だかんだでクルーたちとは打ち解けることができた……がいかんせん砲兵のために出番が少ない。
戦死こそしないが、ミライやセイラにアプローチをかけるもののことごとく相手にされなかったのだからいいのか悪いのか。
一方、ニュータイプが危険視されることの懸念を抱くペガサスクルーたちに対して、アムロとセイラの恋愛模様を指しての

「でもね、俺は遅れた人だけど、ここの人たちが化物だとは思えんのだがな?」

「恋の一つもするってのは人間として信憑性は充分あるんでないの?」

という発言は、ニュータイプというテーマに対するある種の回答とも言える至言になっている。
映像版ではありえなかったリュウとの共演が実現しているが、絡みはない。


◇キリア・マハ、サーカス・マグガバン

キリア「一週間に二つも三つも戦場を跳びまわるなんて事にはならんでしょうね」

小説版オリジナルキャラクター。ペガサスジュニアに補充されたジムのパイロット。サーカスが324番機、キリアが325番機を担当。
サーカスはこれといった活躍もなくコレヒドールの戦いで戦死するが、キリアはア・バオア・クーまで奮闘。
最初は心もとなかった彼も急速に腕を挙げ、ドズルとの戦いではアムロたちとともに多数のMSを撃破
アムロも両翼をカイとハヤト、後方をキリアに任せることで安心して戦えるといった感想を抱いている。
さらにビグ・ザムにも直撃弾を当てるが、ガンドワとビグ・ザムの一斉攻撃を捌き切れずに戦死。「優秀なパイロットを失った」と全員からその死を悼まれた。


◇マクベリィ

「ラフな神経ではトマホークは勤まらんよ」

小説版オリジナルキャラクター。ペガサスジュニアに加えられたトマホーク宇宙戦闘機部隊の指揮官で階級は少佐。
アムロたちがどこか生温いのに対して軍人らしい規律とプライドを持った人物だが、彼の男らしい力量や器の大きさはかなり心地よい好漢。
当初やMSやニュータイプといったものに懐疑的だったが、アムロの実力を認めたこと、彼の部隊に仲間を救われたことで態度を改めている。
しかしアムロたちを援護すると請け負ってくれた直後の激戦で戦死してしまう。
というか人物像は映像版のスレッガーそのもの。彼の出番を喰ったのは間違いなくこの人。



「私は信じたいのだ。ニュータイプの存在を。そして、それを諸君ら自らが試してもらいたい」

おなじみ連邦軍の総司令官。意外と出番がなかった映像版とは違って常に最前線で指揮をとる。
映像版では穏やかな初老の人物だったが、本作では意外と興奮しやすい性格であることが示されており、初等教育から士官学校までの全課程を首席で卒業した生粋のエリートであることも判明。
また「ジオンに兵なし」の演説が記載されているが、その文章はかなり過激でアジテーターっぽい。
一方、ニュータイプの存在意義やペガサスクルーたちの事を考え、地上ジャブローの官僚たちと激しくやりあい、政治的な後ろ盾となってくれている面はより強調されている。
ちなみにセイラの正体を調べ上げてペガサスクルーに明かしたのは彼。
ソーラ・レイの光によって戦死するのは映像版と同じだが、死の直前には「たとえジオンに敗れたとしてもザビ家の独裁に人類が永遠に屈するはずがなく、むしろジャブローのモグラ達が粛清されるだけマシかもしれない」と独白している。



「待たせた。諸君」

ご存じルナツー司令官。本作では最初から大佐として登場。
厳格でぶっきらぼうな性格は変わらないが、実は「ルナツーニュース」という新聞で詩の評論を行うなど詩人という一面も。
映像版とは違ってアムロたちが正規軍人として活動していることもあり、ペガサスクルーへの人当たりは良好。
テキサスコロニーで戦死するのはTV版と同じだが、あちらではバロムのチベを倒したのに対してこちらではマ・クベのチベに撃破されてしまった。


◇ラルフ

「ボッとしてるわりには、ご機嫌にかわしてくれたな。歯ぁ食いしばれ! 左右の者、アムロ曹長を固定しろ!」

小説版オリジナルキャラクター。7人いたペガサスの正規パイロットの1人で階級は中尉。左手が義手になっている。
いかにも職業軍人らしいスパルタ上司で、アムロたち5人のパイロット候補生を厳しく教育していた。
6機のMSを24時間運用するにはパイロット12人でも足りないため、早く若造どもを叩き上げないと自分たちも楽ができないのである。
残念ながらアムロがガンダムに乗る前に戦死してしまうが、彼ら正規パイロットはいずれも空母トラファルガーにて実戦を経験している猛者ばかり。
コアファイター離着艦も3回の訓練で吞み込んでおり、その最期もザクを迎撃するためにあえてコロニー内での自殺的な戦闘を選んだ結果である。
アムロも厳しい上官として苦手意識はあったようだが嫌ってはおらず、コアファイターで脱出する際には彼の言葉を思い出している。


マチルダ・アジャン、ウッディ・マルデン

「じゃ、私を愛してくれて妻という名前をくださるということ?」

「当たり前だろ!」

映像版ではアムロに大きな影響を与えた大人のカップルだが、本作では完全に後方担当で戦死しないことから結婚できたらしく、結婚式への招待などといった描写がある。
マチルダはわざとアムロを話題に出すことでウッディの嫉妬心を煽ってプロポーズに追い込んだらしい。トラウマブレイカーと同時に思い出ブレイカーにもなった。
アムロとの関係も彼が遠目に眺めてぼんやり憧憬を抱く女性兵士の1人に過ぎず、直接絡むような場面は全くない。

ウッディは本作でフルネームが判明。こちらではフロントバックでペガサスジュニアを整備しており、アムロは一目で「人として男としての格差がある」「歴戦の勇士の風格」と感じている。


◇フラウ・ボウ、カツ・ハウイン、レツ・コ・ファン、キッカ・キタモト

「体を大事にしてね……でも、兵隊さんにこんなこというの変かしらね」

映像版では何かと活躍した民間人たちも本作では全員ルナツーで下船するので出番が激減。
フラウはアムロが軍に入隊するまでの幼なじみといった間柄で、彼との関係も「恋」と描写されており、孤児たち3人を養うためにルナツーで整備工として働き出してからも彼を一途に思い続けている。
そのせいかアムロがニュータイプとして覚醒してセイラがメインヒロインになってからも折に触れて様子が語られ、終盤で戦死したアムロの精神が、セイラ以外にあえて会いに行く相手として選ばれている。
ちなみにチビたちは本作でフルネームが設定されている。


◇テム・レイ、カマリア・レイ
アムロの父テムは著名なコロニー建設者であり、宇宙開拓の偉人であった。
しかし母のカマリアはそれをいいことに「特権階級として」地球の居住権を勝ち取り、しかも愛人を抱え込んでいた
仕事人間のテムはそれを知った上で放置しており、夫はもとより息子であるアムロにさえ愛情を持っておらず、むしろ邪魔だと疎んでいた
そうした経緯でアムロは「僕は一人で大きくなったんだ!」「不潔だ!」と叫んでいる
テムは戦前かないし開戦直後に死亡しているとのこと。


+ ジオン公国軍
「神のみぞ知る、だな?」

ご存じ赤い彗星。ある意味アムロ以上に映像版から変わった人物であり、実質主人公。
養父ジンバ・ラルの歪んだ教育を頭から信じ、ザビ家への復讐を志していた。
しかし年を重ねるごとにその思いは薄れ、ララァとの交流を経て彼の意識は「新しい世作り」へとシフトしていく。
本当の意味で大人であり、映像版のようなヘタレ要素は少ないしララァやセイラを意識しすぎて道を踏み外すようなこともない。
むしろララァの死もあっさりと乗り越えるし、心からの恋人もできる。その人の前ではしどろもどろになったり、子どもを産んでほしいと願ったりする普通の不器用な青年。
仮面は元々正体を隠すためだったが、やがて「赤い彗星」という偶像のためのプロパガンダ、ファッションと割り切って着用するようになる。
額には自らつけたとも、士官学校時代にフェンシングの試合でガルマにつけられたとも言われる醜い傷跡がある。
ガルマは謀殺しないし、アムロの死を本気で悔しがるし、マザコン・ロリコン・シスコン要素は一切ないしでもう完全な別人
だが、どの作品のシャアよりも生き生きとしていて幸せそうなのがどこか切ない。


◇ドレン、デニム、ジーン、ハマン・トラッム(ムサイ艦長)

ジーン「デニム中尉。蜘蛛の巣です」「降りて触ってみたいものであります」

初期のシャアの部下たち。映像版と比較してジーンは少尉、ドレンとデニムは中尉に階級が引き上げられている。
ドレンはあくまでシャアの副官であり、ムサイの指揮はオリジナルキャラクターであるハマンがとっている。
割と忠実で信頼関係もあった映像版とは逆に、若くして出世したシャアを露骨に嫌っているらしく*11、デニムが飛び出したのもその対抗心からだった。
ハマン艦長は事なかれ主義の臆病な側面が強調されており、シャアからは内心「赤鼻野郎」と言われて互いに嫌いあっている。アッガイの赤鼻との関係は不明。

映像版とは違って攻撃を仕掛けたのはデニムであり、ジーンはガンダムとの戦闘で正面からザクを袈裟斬りにされて戦死。デニムはジーンを瞬く間に撃墜したガンダムの性能に驚いてサイド7を脱出した後、ガンダムと戦闘するシャアを援護しようとしたところをビームライフルで撃ち抜かれて戦死しており、TV版でのジーンとスレンダーの役割をまとめたかのような役どころになっている。



「あの少年、ア、ム、ロ、何せが遅すぎたのではない。私が、早すぎたのだ」

本作ではサイド5「ルウム」出身の戦災孤児で、上巻で退場してしまうというのは上記の通り。
彼女との関わりがシャアに復讐以上の志を抱かせることにが、何せ出番が短すぎる。
おまけにアムロも含めてそれほど彼女の死を引きずっておらず、むしろ自らの成長の糧としていることから映像版ほどの存在感はなく、異常なまでに影が薄い。
もちろん「ソロモンの亡霊」になんてならないし「永遠の女」としてトラウマになることもない。


◇クスコ・アル

「性分は直せない……いえ、直したくはないわね。私は自分が好きだから……」

小説版オリジナルキャラクター。サイド6船籍の貨物船「カセッタIII」の乗組員だが、実はジオンのニュータイプ研究所の訓練兵。後にエルメスのパイロットとして編入される。栗色の髪が特徴。
かなりの自信家で、ぐいぐい押し込んでいくタイプ。中巻の実質ヒロイン。
ララァよりもパイロットとして優秀でニュータイプ能力も高い。模擬戦ではリック・ドム6機を一瞬のうちに殲滅し、初陣でもサラミス9隻を撃沈する戦果を挙げた*12。G3に乗ったアムロと戦ってもかすり傷だけでサラミス2隻を撃沈している。
ただしアムロの攻撃を受けた時は自分を上回るニュータイプである彼の存在に衝撃を受け、精神的にかなり不安定になっていた。
コレヒドールでの戦いではアムロが自分とおせっせしたかったのをニュータイプの力で見抜くものの、それに激怒したアムロによって戦死。
死の間際、アムロは彼女の歩んできた人生そのものを理解してしまう。これが「ニュータイプの交流」「人を理解すること」だった。
ちなみに『Gジェネレーション』にレンタルキャラで出てきたこともあるが、そちらだとピンク色の髪として登場。
連邦軍の兵士に父を撲殺され、自らも穢されたという凄惨な過去を持つ。キキかよ。



「我々が屈折しすぎているのです。中佐……いえ、キャスバル・ダイクン」

シャアの部下のニュータイプ。TV版ではララァの前座扱いで、劇場版では「いらない」などという理由でカットされた悲劇のナイスミドル。
だが本作ではなんとシャアの右腕としてアムロとシャアを和解させようとする超重要人物で、ニュータイプの素質やパイロットとしての力量はシャアをも上回る。
天涯孤独の身の上らしく、それだけにいっそうシャアの理想実現のために意欲を燃やす。
ちなみに年齢は驚愕の28歳。ありえん(TV版での彼の見た目はヒゲも眉も総白髪というロマンスグレーのナイスミドル風)。
前述の通り彼自身も強力なニュータイプだったが、アムロのようなニュータイプ同士の交信を行える領域には達しておらず、ただ一方的に和解の意志を浴びせかけ、さらにアムロに反撃してしまったことが「騙し討」と取られて激昂されてしまう。
結果、アムロのビームライフルの直撃で灼熱した粒子によって蒸発するように戦死。


◇ルロイ・ギリアム

「第三のルネッサンスを人類は迎えつつあると考えて良いわけですね」

小説版オリジナルキャラクター。シャアの部下のニュータイプパイロットで、若いがすでに軍艦2隻を沈めた腕利き。
ア・バオア・クーの死闘でペガサスを牽制していたところ、アムロがペガサスにシャアの意志を説明しようと飛び出したために間違えて撃ってしまう。
これは事前にシャア・シャリアとの打ち合わせで「シャリアの説得が失敗した場合、自分がガンダムを撃ち落とす」と約束していたためでもあり、シャア、そしてルロイそれぞれにとっての取り返しのつかない過ちとなってしまった。
『Gジェネレーション』では、なぜか同作オリジナルキャラクターの名前に使われていたことがある*13
シャア専用リック・ドムが最初期から出てきたゲームとはいえ、なぜオリジナルキャラの名に?
能力がやや低めだがニュータイプLv/覚醒値は高いことが多く、ニュータイプLv/覚醒値が高いと能力が低くてもフォローが利くこのシリーズでは作品にもよるが普通に使っていける。
1作目ではあの閣下と同じ台詞パターンの軽すぎるノリのキャラだったが、以後の作品では真面目な性格に。
さすがに細かすぎて伝わらなかったか、『SPIRITS』以降はなぜか名前が「ルーク・ルザート」に変わった。

『君も俺と同じだ、急ぐなよ。俺の犯した誤ちを繰り返しちゃならない』

「俺は……とりかえしのつかぬことをしてしまった……」


◇マルガレーテ・リング・ブレア

「決して偽名ではありませんよ」

小説版オリジナルキャラクター。キシリアの秘書官だが後にシャアの恋人になり、出番こそ少ないものの彼に「平凡で人間らしい幸せ」を教える。



「それが終われば私は隠居しよう」「私は権勢欲だけで動いているのではない」

ご存じジオン公国総帥でヒトラーの尻尾。しかし本作では彼なりに清廉かつ真面目な政治家であることが描写されている。
銀河の流れを眺め、宇宙の不気味さと美しさを感じるのが好きという彼の様子は哲学者のようでさえある。
ジオン・ダイクンの革命からジオン公国建国に至るまでの20年の過去や、そこで感じた思いなども点描されている。
彼の思想は根本的に古く、その結果が史上類を見ない計画的虐殺であった。
本作では結婚していることが判明しているが、妻のことを「家政婦のような存在」「能力のない女」と見下しており、秘書のセシリアやハモンを愛人として囲う。


◇サスロ・ザビ
ギレンの弟。故人。
文官としての資質を持ち、ギレンも彼に行政府の要職を任せるつもりだった。
だがダイクン派との抗争のさなかに暗殺されてしまったという。『THE ORIGIN』ではキシリアによるものと匂わされていた。
過去の解説で軽く触れられるのみではあるが、何気に彼の存在が語られたのは本作が初である。



「参ったな……妙な士官とは思っていたのだが、キャスバル坊やか……」

ご存じザビ家の長女の紫ババア鉄の女。本作ではなんとソロモンではなくグラナダが狙われる関係での司令官として采配を振るう。
……が、結果は見事な惨敗。映像版でもギレンの指揮を引き継いでから一気に戦況を悪化させたぐらいなのでむしろ当然か。
ただし、ニュータイプに関する理解は映像版よりもある模様。
それでも結局はシャアから見限られていたらしく、隙を見せたために文字通り「掌を返される」結果に。
ギレンはキシリアとシャアがクーデターを起こしたと知って「体制の変革そのものが起きている」と理解すると同時に「キシリアも埒外ではないな」と直感していたが、的中する形になった。
ちなみに「幼い頃のキャスバル坊やと遊んであげた」仲なのは変わらないが、その頃はあまりにかわいい金髪の子どもたちを見て「自分も金髪の男性と巡り会って、こんな子供を生みたい」とか考えていたらしい。ドン引きである。



「ニュータイプが存在するなどという戯言はきけん! パイロットなぞパイロット・スーツに小便を垂らすのが仕事よ!」

おなじみザビ家の三男。本作ではキシリアの弟という設定。
ソロモンの司令官というのは変わらないが、今回はそのソロモンが戦場にならない。
また、映像版ではグラナダからもア・バオア・クーからも援軍を回してもらえずに*14孤立無援のまま戦っていた。
しかし本作では逆にキシリアからの援軍要請を「グラナダ方面は囮」と見なして黙殺してしまう。
しかもレビルに「無視」されたという理由で意地になって追撃をかけるなど、戦略性や協調性は薄い。
幸運にも攻撃のタイミングとしてはほぼベストに近く、連邦軍の背後を突いて大きなダメージを与えることに成功している。
彼に唯一誤算があったとすれば、ドズルとぶつかったアムロたちが映像版よりさらにできるようになっていたことだろう。
ちなみに本作のビグ・ザムによる撃墜スコアはジム1機オーラを出したがどうってことなかったぜ!
なお、ルウム戦役ではザクに乗って自ら最前線に飛び出したという。この時ギレンはたしなめながらも、珍しく苦笑したとか。
一応、彼が出したオーラがきっかけでアムロが人の情念(気)を意識し捉えられるようにはなる。



「さすが、首席でいた男だ。私に華をもたせてくれるというのか?」

ご存じザビ家の末っ子。シャアが若くして少佐にまで出世できたのは彼の引き立てがあったかららしい。
シャアからは「坊ちゃん」「ガルマがあんなのだからジオンは戦争に勝てない」などと散々に言われているが、映像版以上に友情は本物で、シャアも彼を謀殺せず、あくまで純粋にペガサスとの戦闘で戦死する。
後にセイラの口から「ガルマと友情を育むことで、復讐心が薄れたようだった」とコメントされていたり、ガルマ戦を振り返ったアムロから「あの時のシャアはガウへの介入などはできない立場だった」と振り返ったりしており、映像版以上にシャアの悪意は薄かったようである。
彼がシャアにソーラ・レイの存在を教えていたことも示唆されており、よく言えばフランク、悪く言えばやや口が軽かったことも描かれている。


デギン・ソド・ザビ、ダルシア・バハロ

「あやつは、儂の汚点だ。好きにやってよい」

映像版とは逆にギレンとキシリアを死に追い込んだジオン公国の首脳陣。しかもデギンはザビ家で唯一生き残った
デギンは理論家だったダイクンの理想を具現化させる役割を果たしてきたという。
ダルシアは「若手の秀才」「ニュータイプというなら彼のような人間」と高く評価される。



「ザクは、ロアム大尉とゼリュロス大尉だったな?」「二人の働きを有り難いと思うのだ、私は!」

映像版通りキシリアに拾われたシャアを快く思っておらず、「男妾」「尻で成り上がった」などと陰湿な陰口を流したらしい*15
ただし戦場では私情を持ち込みはしないともされ、テキサスの激戦ではTV版とは逆にシャアに対して出撃を要請するが、なんと無視されてしまう
辛うじてワッケインのハルを撃沈するものの、自らのチベも大破。直後にハヤトのガンキャノンによって撃破された。
壺だけでなく観音菩薩の像もコレクションしているらしい。
ギャン? 何のことですかね?


◇ランドルフ・ワイゲルマン

「両雄、という言い方はあいませんが、キシリア様は鋭利すぎます」

小説版オリジナルキャラクター。ギレンの腹心の将校で階級は中将。映像版とは違ってギレンが赴かないア・バオア・クー戦では彼が全軍の指揮をとっている。
裏表のない若い将校だが、秀才。
ギレンは自分の増長を諫める意味も兼ねて彼を重用しており、曰く「諌言を得る友として信頼し、置いてある」とのこと。
ギレンがキシリアを殺すと決意したのも、上記の通り彼の発言がきっかけ*16
しかしそれによって彼もまた戦死することになってしまった。



「総帥から直命を受けております」

ギレン直属の親衛隊長。主に内地の統率と情報収集、監察業務を行う政治的な将校で、シャアの素性も調べ上げてギレンに密告していた。
「ギレンがシャアを殺せと命じるなら従うしかあるまい」と考えるなど、ギレンに絶対の忠誠心を抱く一方、恋人であるハモンについて内心で劣等感も抱いており、忠誠と嫌悪の狭間で葛藤する。
そのためにハモンのある行動を見逃しており、それが巡り巡ってギレンとキシリアの死を招いた。

以上のことから分かる通り、映像版からは180度違うキャラ付けがなされた別人になっている。
一応父ジンバがダイクン派だったことは同じだが、本作ではドズルではなくギレンに忠誠を尽くしている様子が描かれている。
アムロとの絡みは本当にゼロ。そもそもMSにすら乗らず、戦闘シーンはギレンに唆されてフレンドリーファイアをかました時のみ。
グフ? はて、何のことやら。


◇クラウレ・ハモン

「とにかくこれをキシリア閣下に渡すようにと命じられたのです」

映像版ではラルの内縁の妻だったが、本作では元ジオン・ダイクンの愛人として登場。
後にギレンの愛人に移され、あげくランバ・ラルに「与えられた」というとんでもない経歴になっている。
だが、彼女の本当の正体はダルシア首相のスパイ
そんなこんなでギレンに憎悪があったらしく、ランバから漏れた話(ギレンは彼の前で口を滑らせてしまった)をダルシアに伝えた。
さらにその後、デギンとダルシアの画策によってキシリアの元に派遣され、彼女がア・バオア・クーから脱出してギレンを殺す直接的な原因になる。
ある意味、終盤の展開を作り上げたキーパーソンと言える。ラルとは戦後結婚できたのだろうか。


◇セシリア・アイリーン

「いつもより……雄弁でいらっしゃいます。好きではありません」

ギレンの秘書兼愛人。彼に対して破滅願望スレスレの競争心と忠誠心を抱いており、磨き抜いた才能と技量で寵愛を受けるに至っている。
彼からは「キシリアのいうニュータイプかも知れん」といわれていたが、最終盤に本当にニュータイプ的な覚醒を果たし、キシリアの襲来を察知してしまう。
彼女は「ギレンが破滅するときは自分が生きる目標を失うときだ」と思っていたが……。


ジオン・ズム・ダイクン、ジンバ・ラル

「宇宙の民よ。今こそ、己の眠れる力を宇宙という環境の中で目覚めさせよ。その時に、人は革新する!」

ジオン共和国建設の功労者たち。
ダイクンについてギレンは「スターであった。二枚目であって情熱家。若い女性に一目惚れさせる」と晩年のシャアに似た評価を下している。
ダイクンのかつての演説も一部載せられており、宇宙移民者への希望、すなわち彼の言う「新しい社会の人類」としてのニュータイプ論の一端もうかがい知れる。
この演説やテーゼを聞いた若き日のギレンは感激し、ダイクンの理想を資金面・政治面で実現しようとする父デギンを心から尊敬し、その運動に全身全霊を尽くした。
しかし、ギレンとデギンはやがて「ダイクンはアジテーター*17でしかなかった」と気づいて幻滅してしまう。ダイクンの死もそのあたりが遠因らしい。

ダイクン死後、残された遺児2人を預かったのがランバ・ラルの父ジンバだが、その人格はかなり偏執的だった。
幼い2人に復讐を説き続けたためにセイラから嫌われており、シャアも復讐に虚しさを感じている
このあたりは後の『THE ORIGIN』にも反映されている。ちなみにジンバはア・バオア・クー戦の時期になっても地球で生きているらしい。


【メカニック】

人物もストーリーも違うと、当然メカも違ってくる。
ほとんどのモビルスーツに共通する変更点として、本作で登場するものは頭頂高16m前後であることが語られており、20m級の映像作品よりもひと回り小さいことになる。

+ 地球連邦軍
◇ガンダム
2番機3番機が登場。
アムロが最初に乗った2番機はテキサスコロニー内部でのエルメス・シャアザクとの戦いで失われ、以後はマグネット・コーティングを施された3番機、すなわち深いグレーに塗装された「G3」に乗る。
最終的にはア・バオア・クーの乱戦の中で撃墜されてしまう。
ちなみに1番機のプロトタイプガンダムは未登場。当初はガンダムタイプとキャノンタイプを3機ずつペガサスに納入するはずだったため、サイド7襲撃の際に破壊されたのかもしれない。

本作では核爆発が直撃し、山を吹き飛ばすほどの爆風を至近距離で受け、2メートル吹っ飛んで家を押し潰しても無傷で済むというとんでもない堅牢性を持つ。こんな機体を破壊できるMSの戦闘とは一体……。
とはいえザクマシンガンの斉射に2発は耐えられるが、同じ場所に連射を食らったら貫通されるなど映像版より貧弱な面もある。
頭部は「人型巨大ロボットの頭なのだから人に似せねばいけない」という開発者の思い込みでツインカメラ型になったようで、ガンキャノンやジムに比べるとやや照準がつけづらいなどの難点がある一方、のっぺりした両機に比べて「自分の意思が発揮されてる感じがする」とアムロはガンダムの顔立ちを気に入っている。


ガンキャノン
全部で3機が登場。
本作ではガンタンクが出てこないため、ハヤトも最初から搭乗する。大きな変更点としてガンダム・シールドを持っているのが特徴。
装甲も厚く生存性が高そうに見えるので、アムロも最初はこちらに乗りたがっていた。そしてハヤトはガンダムに乗りたがっていた。
当初は残った2機にリュウ・カイ・ハヤトが交代で乗っていたが、テキサスコロニーでリュウもろとも撃墜されて1機が喪失。
その後もう1機が補充され、「C108」「C109」コードを与えられる。
ハヤトの109は撃墜されたが、カイの108は最後まで生き延びた。


ペガサス/ペガサスジュニア
最初の母艦だったペガサスはテキサスコロニーでザンジバルと相討ちになり、代わりに2番艦「ペガサスジュニア」が配備される。
ちなみに「ホワイトベース・タイプ」と言われているが、ネームシップのはずのホワイトベースは登場しない
上記のように地上には一度も降りることなく終わる。アースノイドとの確執なんてなかった。


ジム
連邦軍の主力量産機。
ペガサスジュニアにもサーカス・マグガバンの324とキリア・マハの325が配備され、アムロたちとチームを組んだ。
本作ではガンダムとは平行して開発されていたらしく、サイド7を出たペガサスがルナツーに到着した時にはすでに実戦配備されていた。
よく「小説版のジムはガンダムよりも強い正当な量産機」という情報が出ているが、実際はそうでもない。
「カメラが単眼だから、近接戦ではジムのほうが照準をつけやすい」「ビームライフルを運用できるので攻撃力はガンダムと互角」という程度。それ以外の長所は特になく、推進力はガンダムが上
もちろん基本性能もガンダムやガンキャノンにおよばず、むしろブライトから「ひどい出来」呼ばわりされている。
とはいえやはりパイロットの腕次第ではあり、キリアのジムはアムロたちとともに多数のMSを撃破し、「天敵」のビグ・ザムにも痛撃を与えた。


ミスター・ボール
ネタでも何でもなく「ミスター」付きで公式
上の主砲はハイパーバズーカで、マニピュレーターは完全なモビルスーツ向きなのでビームライフルを運用できる。
その上やろうと思えば殴りつけることもできる、とんだ魔改造ボール。
でも所詮はボール。活躍する場面は本当にない。


◇コスモファイター「トマホーク」
本作オリジナルの宇宙戦闘機。トマホークは斧だが「槍のような形」らしい。
「ミノフスキー粒子の時代にいまさら戦闘機か」とか言われるシーンもあるが、艦隊支援にはMSよりも有効。
特に直進スピードに関してはMSよりずっと上で、機動力に関するMSのアドバンテージは小回りが利くことぐらいらしい。


◇ミデア、フライ・マンタ
映像版では地上用だが、上記の通り地球が舞台にならない本作では宇宙用に転用。
でもマチルダは途中からコロンブスに乗艦するので影は薄い。そもそもマチルダの影自体も薄い。


+ ジオン公国軍
地球が舞台にならない本作ではグフ・ドム水陸両用MS・ギャン・ゲルググなどが軒並み登場しない。『冒険王版』のように宇宙用に転用されているわけでもない。

ザク
ジオン軍の量産MS。白褐色に塗装されている点以外はあまり変わらない。
上記の通り本作のジオン軍のMSはザクとリック・ドムしか登場しないため、終始かなり活躍する。
アムロも油断した隙に苦戦することが多く、例え名無しパイロットであっても「角付き」は割と手強い。
シャア専用機はテキサスコロニーまで続投してガンダムと戦ったが、機体性能に格差がありすぎて防戦一方になってしまった。
ちなみにシャア曰く「ビームサーベルに対してヒートホークはオモチャ同然」らしく、実際にビームサーベルを受け止めるもヒートホークごと叩き斬られたザクもいる。
また、ザクに限った話ではないが、指の先には低出力ながらレーザー・バーナーが仕込まれている。
劇中では溶接されたシャッターを焼き切ったり、格闘戦でガンダムの顔面を焼いたりした。
有重力下でバックパックのスラスターを使用してジャンプした場合、その最高高度は800mほどと設定されている。


リック・ドム
ザクの後継機。映像版通り「スカートつき」と呼ばれるが、こちらではビームバズーカとビームサーベルを装備するなどジオン軍初のビーム兵器搭載機であるとされ、実質的には映像版のゲルググ相当として位置付けられる。
大出力バーニアによるスピードはザクの2倍を誇り、ビームバズーカの威力はムサイの主砲並み。しかし機体本体のジェネレータが低出力すぎる上にエネルギーCAP方式も実用化できなかったため、バズーカ本体に専用のジェネレーターを搭載して大型化せざるを得なかった。挿絵の関係で外観もジャイアントバズーカと同じである。
ビームサーベルも連邦軍よりビーム集束性能が劣っており、ガンダムほど細く鋭い刃を形成できない。
装甲の厚さも映像版以上だが、完成して間もないために生産数は少なく、ニュータイプ部隊に優先的に回された。
それでも映像版のやられっぷりからは考えられないほどの高性能機で、アムロも初見では驚愕するほどだった。というか不本意とはいえアムロを討ち取ったMS


エルメス
2機が登場。3番機以降も作ろうとはしていたようだが間に合わなかった。
パイロットはララァ・スンとクスコ・アル。
本作のビットはビームの他に爆雷を搭載しているものもあり、ガンダムに直接ぶつけるなど後のファンネルミサイルを思わせる運用も行われた。
中巻までに全滅してしまうが、サイコミュの干渉はアムロやシャアを成長させていった。


ビグ・ザム
映像版とは逆にドズル主導の元にソロモンで開発されていた。
しかしながら本作ではメガ粒子砲の数が16門に減らされており、Iフィールドもないのでビームライフルで簡単に穴が空く。
特攻ですらないジムの攻撃で足を失うなど、本当にいいところなしのまま簡単に宇宙の星屑と消えた。


ブラウ・ブロ
シャリア最後の搭乗機で『ゼロ・サイコミュ』を搭載したMA。
開発はエルメスと同時期ながらテストも満足に行われておらず、搭載されたサイコミュもプロトタイプであるらしい。
脳波を有線式サイコミュ端末で直接伝えることができ、ワイヤーの長さは1キロとも2キロとも書いてある。
旧式でありながらこの時点でエルメスとジオングの役割を足して2倍したような活躍を見せたが、あえなく撃墜。
だが、その後もシャリアとブラウ・ブロの遺志はストーリーそのものを終局に導いた。
TV版と同様の脱出機能もあったが、コクピットを狙撃してくるアムロの前では意味がなかった。
シャリアからアムロへの呼びかけを繰り返しながらの戦闘は「UCエンゲージ」のシャリア戦ムービーでもオマージュされた。


ザンジバル
ネームシップの「ザンジバル」はテキサスで撃沈されるが、2番艦「マダガスカル」*18は生き残ったらしい。
ちなみにキシリアの母艦「ズワメル」は最初ザンジバル級として出てくるが、なぜか途中からグワジン級に変わってしまっている。


ムサイ
防御能力には問題はあるが、エンジンが離れているためにフットワークは軽いと評判らしい。


◇ガウ宇宙空母、ドップ宇宙戦闘機
再三言う通り本作は地上が舞台にならないため、なんと宇宙専用機。
ドップのあのすさまじいデザインは映像版では半ばネタ扱いされたが、宇宙ではむしろ小回りの利く優秀な戦闘機扱い。


◇ソーラ・レイ
ギレンの陰謀に利用されて、すさまじく盛大なフレンドリーファイアをかました、戦勝の功労者にして最大の戦略兵器。本作ではシャアですら知ってはならないレベルの最重要機密とされている。
レーザーすなわち光なのでサイド3本国からア・バオア・クーまで一瞬で届き、直径6キロの口径を掃射することで広い範囲を薙ぎ払える。
2射目でア・バオア・クーの下半分を消し飛ばしてしまった。


【余談】

ストーリーも設定も全然違うはずだが、なぜか角川スニーカー文庫版における各巻冒頭の挿絵はTV版の設定をアレンジしたのが描いてあり、完全な挿絵詐偽になっている
巻頭挿絵に出てくるガンタンク・グフ・ドム・ゴッグ・ズゴッグ・ビグロ・ギャン・ゲルググ・ジオングは登場しない
登場人物紹介もかなりいい加減で、ペガサス呼びとホワイトベース呼びが混ざっているなど映像版と小説版の設定が混在してしまっている。
登場人物のほとんども映像版より大人びているのに、挿絵もことごとくTV版の少年風な姿なので違和感が半端ない

一部誤字があり、アムロたちが「チベ二隻、サラミス四隻、ザク三機を撃破した」などと書いてあるシーンもある。
「C108」なども場面によって表記が揺れている。

ジオン・ダイクンやデギン・ギレン親子の革命期のエピソードやルウム戦役の詳細(コロニー落とし作業を兼ねた決戦がザクの運用に不利であった)、レビルの「ジオンに兵なし」の演説など、映像作品では長らく描かれなかった設定も多い。
また「アジテーターに過ぎない」というジオン・ダイクンや「偏執狂」ジンバ・ラル、サスロ・ザビの設定など『THE ORIGIN』に与えた影響も少なくない。

また、クスコの登場、シャリアの活躍、シャアとホワイトベースの共闘、最終決戦でのギレンとの直接対決、アムロの戦死などの要素はTV版が打ち切りにならずに4クールのままだった場合の構想を書いた「トミノメモ」と共通している。
あちらでのクスコはデギン公王の秘書で、連邦軍に投降する彼に付き従ってホワイトベースに乗り込み、そこでブライトとちょっとしたロマンスがあるものの、連邦による木星船団への攻撃を知ってジオンに帰還しようとしたところをブライトに射殺される……という役回りであり、やはり小版版とは全く異なる。

シャアの設定も、いくつかはフル・フロンタルにオマージュされた部分がある。中身は正反対だが。リアリストほどではないものの人間的に成熟している点、「ファッションに過ぎない」として仮面を外すくだりなどは、意味合いはともかくとして上述の通りである。
また、『UC』の原作者である福井晴敏氏のガンダムとのファーストコンタクトは本作であったと語っており、フロンタルの他にアンジェロ・ザウパーマリーダ・クルスにも本作の要素*19が取り入れられたのはこれも大きいのだろう。

アムロの母であるカマリア・レイの名前や、ギレンのもう1人の弟サスロ・ザビ、セシリア・アイリーンの存在などが設定されたのも本作から。カマリアのヤバすぎる設定はさすがに本作のみだが。
もちろん劇場版におけるガンキャノンのコードナンバーも本作由来のものである。

SF考証も随所でなされており、特にビーム兵器はかすめただけでも目に見えない粒子ビームが突き刺さり、装甲やシールドを融解せしめる強力な兵器になっている。
しかし強烈な光を発するので常に移動しながら撃たないと相手の反撃は必至な上、エンジンに直撃させないと爆発しない=手足や頭を撃っても決定打にはなりにくいなどのデメリットもある。

連邦政府は映像版以上に腐敗と堕落の塊とされており、ギレンの次に叩くべき、あるいは宇宙世紀という流れの中で切り捨てるべき組織とされている。とはいえ、作中では地上の様子がほとんど描かれないためにあまりピンと来ないが。
一方、連邦軍は人員のほとんどがコロニー潰しで殺された人々の遺族や生き残りで構成されているため、ジオンに対する猛烈な戦意に満ちているとされる。

どうも科学技術は映像版よりも進歩しているらしく、「産毛まである義手(ただし硬さは金属そのまま)」や「マリリン・モンローそっくりのロボット」なるものもいる。
その一方でルナツーには「インベーダー・ゲーム」が置いてあったり。タイトーすげえ。

『ギレンの野望』のネオ・ジオン軍シナリオ、『GジェネDS』のifルート、『スパロボA』の「あちらの世界」におけるアムロの末路などゲーム作品のシナリオにも影響を与えている。
中には『逆襲のシャア』のアムロに対して「パツキンさんとよろしくやった」とおちょくって困惑させるというのものもあるが(アムロ曰く「一年戦争の時の俺に関するトンデモ本」とのこと)
他にも『旧カードビルダー』にはクスコ・アルが収録されていたし、おまけ参戦的に「小説版出典」としてシャア専用リック・ドムがいる『Gジェネレーション』は多い。
もっともこれはファーストガンダムではないMS・(一応は)小説版出典で正式な映像作品への登場なし・いない宇宙世紀ゲーが考えられない*20機体の存在も考慮するべきではあるが。

ギャグ漫画『トニーたけざきのガンダム漫画』においても、オチで本作のネタが使われたことがある。
というか結構ガンダムエース連載陣のギャグ漫画担当者にも知られているのか、トニー先生以外でも小説版前提のオチが使用されることはまあまああるようだ。
さすがに「『それはそれ、これはこれ』で本気でガルマ戦死を阻止しようとするシャア」などはまだ確認されていない*21

実は小説版『機動戦士ガンダム』は2種類存在する。もう片方は朝日ソノラマから発売され、著者は中根真明氏。
こちらも全3巻だが、内容はTV版とほぼ同じである。



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手前ら、どいつもこいつも節穴だけの穴ぼこつけやがって、よくもWiki籠もりになろうってもんだ」



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最終更新:2025年06月29日 19:07

*1 例えば『逆襲のシャア』を例に挙げると、ギュネイ・ガスがグラーブ・ガスとして登場していたり、チェーン・アギの代わりにベルトーチカ・イルマがアムロの彼女として登場したりする。

*2 なお、TV版のナレーションでは「この1か月あまりの戦いでジオン公国と連邦軍は総人口の半分を死に至らしめた」と言及されており、あくまでも犠牲者は両陣営の半数。コロニー落としによって地球人口23億人とオーストラリア大陸の16%が失われたとされている。

*3 TV版ではサイド6で16歳と発言。

*4 実はドレンやムサイ艦長の赤鼻(アッガイのパイロットではない)も同じ理由でシャアを嫌っている。彼自身も薄々察しており、「俺は信頼されていない」とぼやいている。

*5 この時点ではガンキャノンの上半身しか納入されておらず、起動できるMSは1機もない。

*6 突然軍艦のオペレーターを任されて不慣れなのと、兵士をやる気にさせるための媚びた発言もできなかったため。

*7 軍に志願する前、図書館に通うセイラに一目惚れ。「金髪さん」と内心呼びながら声をかけられずじまいだった。

*8 キシリアがランドルフたちには教えていなかったという面もある。もし相談していたならランドルフなり幕僚の誰かなりがギレンに確認するはずだし、そうなったらそれこそ問答無用で撃たれただろう。

*9THE ORIGIN』でのア・バオア・クー攻防戦に似た選択。

*10 ちなみに何の因果なのか、チャップマンは「額」を「一発の銃弾で」撃ち抜かれている。

*11 ただし、ドレンはシャアの年齢に合わない落ち着きぶりを認めている描写もある。当の彼からは「文官上がり」と評されて反応の鈍さに不満を持たれているが。

*12 ララァでさえ1日で4隻の撃沈であり、それが「空前の壮挙」と扱われたことから見ても彼女の優秀さがうかがえる。

*13 同じく小説版由来のクスコはしっかり原作ありのレンタルキャラクター扱いだった。

*14 本人も突っぱねていたから半分自業自得だが。

*15 もっとも、シャアもシャアで「キシリアの尻を追いかけているのがお似合いだ」などと言っているのでお互い様だが。

*16 それ以前は「妹」以上の感覚はなかったらしい。

*17 世間を扇動するだけして、実行には移さない人のこと。扇動者。

*18 劇場版にてオデッサ作戦に敗れたマ・クベが宇宙へ脱出する際に乗り込んだ艦(TV版ではさらに黒い三連星が地球に降下した際に搭乗した艦)と同名である。

*19 「過去に性的暴行を受けたことがあり、それを主人公のニュータイプ能力によって見抜かれる」という部分がクスコを思わせる。

*20 『ベルトーチカ・チルドレン』内では「あくまでもνガンダムの作画を変更しているだけ」なのでそもそもHi-νで『逆襲のシャア』をリメイクすることもない状態になっている。『ガンプラビルダーズ』のように元々そのへんの整理を必要としないガンプラバトル作品に出てくることは多いが。

*21 ちゃんとした友人時代を描いたものは『機動戦士ガンダムさん』あたりの定番ネタだが、この作品でも原則的に「結局はあっさり殺すことにしてしまった」アニメ版準拠の設定を使用している。