JR西日本221系電車

登録日:2025/09/03 Wed 11:48:40
更新日:2025/09/03 Wed 16:26:31NEW!
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221系は、JR西日本が保有する近郊型電車の一つである。

概要

導入経緯

関西地区は旧来より、大手私鉄各社と旧国鉄が激しい旅客シェア争いを行う地域であった。国鉄は1970年に「新快速」の、1973年に大阪環状線と関西本線(現大和路線区間)の直通快速電車の運行を開始した。
国鉄民営化後もその様子は変わらず、JR西日本は前述の2系統の花形となる快速列車へのテコ入れとして、新型車両を導入することとなった。

車両概説

車体は鋼製、車体長は20mで片側3扉の近郊型電車としては標準的な規格である。側面は大型の連続窓と戸袋窓が連なり、まるでドア以外の大部分が窓で占められているかのような外見である。前面も後退角と大型の前面ガラスが目立ち、それまでの国鉄型の通勤・近郊型電車とはまるで違う外観であった。
国鉄時代末期の時点で205系や211系などで既に軽量ステンレス車体が普及していたが、本形式では大型の窓を採用した車体の強度や生産コストの観点から、鋼製車体を採用している。*1

車体塗装は白色をベースに、ベージュ、茶色、青色を混ぜた地味シックなものであり、東海道・山陽本線系統で運用される次世代以降の223系・225系にも引き継がれている。2010年以降、JR西日本では鋼製車の単色化を進めており、本形式も単色化が検討されたが、体質改善工事を控えていたほか、新型車両導入による廃車が当面発生しないことや、ブランドイメージの観点からか行われなかった。

落成当時の車内は車端部はボックスシート、ドア間はドアすぐ横は固定クロスシート、それ以外は転換クロスシートが計6列並び、下り方先頭車であるクハ221・クハ220には和式トイレが設置されていた。また、各車両の妻面にLED式車内案内表示装置が設置されていた。

足回りは界磁添加励磁制御に211系のMT61・213系のMT64をベースにしたWMT61S・WMT64Sといった直流直巻電動機を使用。外観こそ大幅に違えど、JR黎明期の211系電車の血を引いた形式の一つである。なお、211系ベースのモーターと213系ベースのモーターの両方を本形式は搭載しているが、本形式では2両単位での編成組成を行うことを前提とし、どの編成長の時でもMT比が1:1になるよう、2両の動力車をユニット構成にした車両と、単独の動力車と付随車1両でペアを組む車両に分かれている。車両形式で見分けることが可能で、前者は221形、後者は220形と割り振られている。編成組成の考え方としては、開発上関係はないものの、東武鉄道の8000系や10000系と近い設計思想である。 2・4・6・8両編成の組成経験がある。本形式のMT比1:1厳守の方針は、1両編成で運行可能な125系や、本形式の後継形式の一つである225系などで採用されている0.5M構造にも引き継がれている。
最高運転速度は120km/h。なお、1990年には湖西線で本形式を改造の上で使用した160km/h走行試験が行われ、このフィードバックが特急用の681系電車になされた。
床下機器類は東海道・山陽本線内での海風の影響を考慮し、同線走行時の海側に空気系統、内陸側に電気系統の装備を艤装するようにしており、この艤装方法は後発のJR西日本車両にも踏襲されている。

関西の大手私鉄、近鉄の子会社である近畿車両が本形式の開発に携わり、1988年に登場した、瀬戸大橋線の快速「マリンライナー」で使用されている213系のパノラマグリーン車をベースにした車体に、1988年に近鉄で運行開始をした、本形式と同じく3扉転換クロスシートの5200系の設計を参考にする形で車体が開発された。そのためか、近鉄サイドとしては「競合他社に脅威となる車両を生み出してしまった」といわれたり、JR利用者の中で221系にいい感情を持たないユーザーからは「近鉄5200系の劣化コピー」と呼ばれていたりする。

愛称は「アメニティライナー」。ただし、本形式の導入時点で新快速の知名度が高かったこと、および関西本線直通快速列車に「大和路快速」の名称がついたことより、この愛称名は影が薄いものとなり、207系以降の通勤・近郊型電車にはこのような車両愛称は設定されていない。

運用

2025年9月時点での運用区間

  • 大阪環状線・関西本線(大和路線と称される区間で運用)・奈良線・和歌山線・桜井線
1989年4月より奈良所属車は、大阪環状線・関西本線の直通快速列車を「大和路快速」に改称する形で運用開始。その後、運用を拡大し、奈良近辺を中心としたローカル運用でも使用されるようになる。
2000年3月より新設された「みやこ路快速」で運用開始。103系の老朽化に伴い、2017年以降それまで快速系統専属であった本形式の普通運用も増加した。
中には、JR難波~京都間を関西本線・奈良線経由で直通する本形式によるロングラン運用も存在する。なお、この運用は全区間で各駅に止まる普通列車である。難波発は京都行の表示が出るが、京都発は運行管理システムの都合上、奈良駅を境に別列車扱いである。

  • おおさか東線
奈良所属の201系の老朽化に伴い、2022年3月より運行開始。この時点で新大阪~放出間の延伸が完了していたが、JR東西線直通時代の名残より、2023年までは207系・321系の4扉車が直通快速、221系が普通運用についているという、JR西日本では珍しい事象が起きていたが、2023年3月の大阪駅延伸に伴うダイヤ改正により、同線の普通・快速運用はすべて221系での運用となった。なお、東西線直通時代の2011年3月に東西線内に4扉車用ホームドアがつくまでは、直通快速運用は223系6000番台が運用されていたため、12年ぶりにおおさか東線に3扉車の快速が帰ってきたこととなる。

  • 東海道・草津・湖西線
後述する東海道・山陽本線系統の快速列車系統の延長名目で、網干所属車による1990年3月に湖西線、その翌年に草津線への東海道線からの直通運用が開始され、前者は2006年10月、後者は2007年3月まで行われた。
その後、113・117系の老朽置き換えのために、京都所属車によって2008年に湖西線、2013年に草津線でのローカル運用が開始された。
2021~2022年に京都に転入した223系2500番台、6000番台と共通運用を組み、混結して運用されることもある。

  • 山陰本線(嵯峨野線と称される区間で運用)
京都所属車により、京都~園部間で運用。2008年2月より運用開始。2019年まで福知山駅まで乗り入れる運用が存在。
223系との混結は、上述の2500・6000番台との併結のほか、園部以遠でも運用される5500番台との併結も行われる。

過去の運用区間

  • 北陸・東海道・山陽本線・赤穂線(主に琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線と称される区間で運用)
網干所属車により、1989年3月~2024年3月まで運用。223系の増備が進行した2000年3月のダイヤ改正まで新快速で運用、運用期間を通して快速・普通運用で使用された。
2004年10月から2016年3月まで、東海道線でもJR東海管内の大垣~米原間に直通する運用に充当された。なお、1991年の臨時運用で同じくJR東海管内の岐阜駅まで乗り入れた経歴もあるほか、1997年の臨時運用で山陽本線の福山駅まで乗り入れたこともある。

  • 播但線
網干所属車が姫路~寺前間にて、2003年12月から2025年3月まで運行された。この運用終了に伴い、網干所属の221系はすべて奈良または京都へ転出した。

  • 福知山線(JR宝塚線と呼称される区間での運用)
網干所属車が1999年5月より運用開始、翌年3月より同線の愛称付き快速列車となる「丹波路快速」にて運用開始。2012年3月までに223系6000番台、225系6000番台に運用を置き換えられる形で撤退。

  • 阪和線・紀勢本線(きのくに線と呼称される区間での運用)
奈良所属車が天王寺発着の快速列車で2000年3月から、225系5000番台が導入された2010年12月まで運行された。送り込みは和歌山線経由で送り込まれた。
天王寺~和歌山間が主な運用区間だが、一部列車は紀伊田辺まで乗り入れた。

体質改善工事

2012年から2020年にかけて、「古い車両を大切に末永く使いましょう計画」でおなじみの体質改善工事が本系列でも行われた。主な変更点として、以下の点があげられる。
  • 前照灯のHID化、フォグランプの増設
  • 車内案内LEDの乗降扉上への設置及びドアチャイム設置
  • トイレのバリアフリー対応洋式化
  • ドア間座席の撤去による立ち席スペースの拡大
  • 前面への行先表示機の追加設置
  • 転落防止幌の追加設置

余談

  • JR西日本としては初めて新開発した形式であるが、実はJR西日本発足後最初の新形式ではない。JR西日本最初の新形式はクモハ84形であり、なんと’’民営化後に生まれた唯一の旧型国電形式’’である。

  • 国鉄民営化から間もない1980年代末期は、JR北海道でのキハ183の再増備も含め、JR各社で在来線特急車両の増備が盛んであったにもかかわらず、JR西日本は本形式の増備に専念し、在来線特急の増備は1992年の681系まで待つこととなった。上述の通り、稼ぎ頭となるはずの関西地区は同じく近郊輸送を担う大手私鉄各社との競合が激しく、221系の増備が特急車両よりも急務であった。

  • 京都鉄道博物館にある本形式のモックアップは、大阪府に所在した交通科学博物館時代は運転シミュレーターとして設置されていた。当初は福知山線を運転できたが、2005年4月に同線で発生した事故を受け、休止された。しかし、2007年にシミュレーターを再開したときに運転できるようになった路線は、どういうわけだかJR東日本の中央東線であった。

  • ここまでお読みの方ならお察しいただけただろうが、本形式は2025年9月時点で1両たりとも廃車になっていない。本形式と前後して製造された205系や213系が転用時の短編成化で余剰車を廃車、207系は試作要素の多い量産先行車が編成単位で廃車となる中、221系はそういった「運用上都合の悪い車両」が上述の編成組成の自由度からか出にくく、末永く使うには好条件であることがうかがえる。

  • 本形式は同時期に登場したJR東日本・JR四国を除く3社の721系、311系、811系とともに、JRグループでの3扉転換クロスシート車両の始祖として、鉄道に乗り旅をする愛好家からは非常に高く評価され、平成期の鉄道趣味者の間での「クロスシート賛美・ロングシート批判」の風潮を作った形式とも言える。しかし、221系が運用範囲を拡大されると、体質改善での立ち席スペース拡大をもってしてもオールクロスシートでの収容性の悪さによる混雑に対する批判が上がり、日常利用者を中心に当初の評価から一変し、JR西日本の近郊型にみられる転換クロスシート前提の座席配置を批判する槍玉に挙がっている。

関連作品

第1作より、「2-3000番台」、「プロフェッショナル仕様」、「3 通勤編」、「プロフェッショナル2」、「FINAL」の6作で登場。運転できる路線は東海道本線(1、2-3k、プロ1、プロ2、FINAL)、大阪環状線(プロ1、FINAL)、山陽本線(3)、湖西線(プロ2)。

新快速や大和路快速といった速達列車はもちろん、各駅停車(初代隠し)や臨時の嵯峨野ホリデー(プロ1)といった変わり種まで様々な運転に対応。
難易度も楽に完走できるものから、かなり難しいものまで様々。
収録作の多さや多彩さから、シリーズを代表する形式と言えるだろう。

急行系の車両が一新された『12』から急行の車両として採用されている。
その後は特急の281系、新幹線のE2系、のぞみの500系共々『2017』まで定番化していた。新型車両の登場に伴いこれはほぼ全て『令和』で別の車両に置き換えられたが、221系だけはまだ主力車両なためか続投している。


追記・修正は大和路快速用の新型車両を予想してからお願いします。

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最終更新:2025年09月03日 16:26

*1 そもそも、関西地区の鉄道事業者では塗装によるブランドイメージの形成を行っていると考えられ、無塗装で済むステンレス車の導入を敬遠する会社が少なくはないため、221系もそれに倣ったとも考えられる。