JR西日本221系電車

登録日:2025/09/03 Wed 11:48:40
更新日:2025/09/14 Sun 10:30:38
所要時間:約 9 分で終点に到着しまっせ



221系電車とは、JR西日本の近郊形電車である。
1989年春からJR京都線・琵琶湖線JR神戸線大和路線で営業運転を開始した。


概要

JR西日本のお膝元である近畿地区は国鉄時代から並行私鉄との競合が激しく、1970年の「新快速」運行開始を皮切りに各線で快速電車による速達サービスが実施されていた。
当時使用されていたのは快速用の113系、新快速用の117系だったが
  • 117系は内外装とも私鉄と遜色ないレベルだが、2ドアクロスシートのためラッシュ時の乗降に難があった。
  • 113系は(順次改良はされていたものの)基本設計は1960年代なので私鉄どころか現在のサービスレベルにも適合せず、おまけにかなりの数の非冷房車が残されていた。
という問題点もあった。
この2形式の置き換え*1とサービスレベルの大幅向上を目的に開発されたのが221系である。

JR西日本発足後最初に新規設計・開発された車両であり、他のJR各社が発足初の新形式として特急形車両を導入する中、敢えて近郊形を設計・導入した点からも、お膝元である近畿地区(アーバンネットワーク)で着実に収益を出すという同社の経営方針が伺えよう。
これ以降、JR各社には221系と同じ内装・車体構造の近郊形電車が導入されたこともあり、そうした意味では平成期の近郊形のスタンダードを築いた形式と言える。
また、本形式で採用した新機軸はその後JR西日本に登場する各形式にも引き継がれ車両設計の基礎を築いた。

導入当初は前身の153系・113系「ブルーライナー」、117系「シティライナー」に続いて「アメニティライナー」の愛称がついた。ただしあまり浸透しなかったらしく、これ以降の快速用車両は愛称の設定が無くなっている。

1990年鉄道友の会ローレル賞受賞。

車両解説

車体

従来の近郊形電車同様20m片側3ドアの構造だが、側面は大型の連続窓と戸袋窓を並べ、明るさを確保したものとなった。前面は「く」の字を描いた半流線形で、中央部に非常用のプラグドアが設置された。
この設計は前年に登場した213系のパノラマグリーン車をベースとしており、それに同じく前年に登場した近鉄5200系の構造を参考にまとめられた。
それゆえ、設計を担当した近畿車両では近鉄から「競合他社に脅威となる車両を生み出してしまった」と嫌味を言われたとかなんとか。
車体はすでに各地でステンレス車体が普及していた中、普通鋼製となった。これは大型の窓を採用した車体の強度や生産コストの観点から敢えて普通鋼製にしたという。
側面方向幕は種別を字幕式、行先を三色LED式の二種類を設置。この表示形式は2010年代までの新車まで一貫して採用された。

塗装は白色をベースとし、窓下に関西急電の伝統カラーであるベージュと茶色・そしてJR西日本のコーポレートカラーである青色の帯を巻く。このカラーリングは後継車種の223系・225系に引き継がれた。
前述のように本形式は普通鋼製だが、2010年から実施された車体単色化(末期色)の対象外となっている。
緑一色の221を見てみたかったという人もいるとかいないとか

車内

前述した近鉄5200系同様、車内には転換クロスシートが設置されている(車端部はボックス)。車端部には車内案内表示装置と時計が設置されており、これもJR西日本の車両では初採用となった。末期の頃にはよくバグっていたが
下り方先頭車であるクハ221・クハ220には和式トイレが設置されていた。
また、乗降扉には車内保温用の半自動式のドアボタンが設置されており、これ以降同社の通勤・近郊形各形式にも採用されている。
運転台には関西私鉄の車両で見られる横軸ツインレバー式マスコンを採用。関西の鉄道事業者では発車時にもブレーキを少し入れながらマスコンを入れるという操作方式が主流だったため、これに倣って採用となった。

機器類

211系・213系と同じ界磁添加励磁制御を採用しており、主電動機は両形式のものをベースにした直流直巻式のWMT61S・WMT64Sを採用した。
本形式は短編成から長編成まで自在な編成が組めるよう、どの編成長でもMT比が1:1になるよう2両の動力車をユニット構成にした車両と、単独の動力車と付随車1両でペアを組む車両に分かれており、形式は前者は「221」、後者は「220」が割り振られている。
床下機器類は東海道・山陽本線内での海風の影響を考慮し、同線走行時の海側に空気系統、内陸側に電気系統の装備を艤装するようにした。
編成は2両・4両・6両・8両が用意されたが、2両編成は2011年までにすべて4両編成化されている。
223系との併結が可能で、JR京都・神戸線や嵯峨野線湖西線で併結運用が行われている。

運用

JR西日本の近畿地区の電化路線全般。

…と言っても過言ではない程幅広く使用されており、これまで運用実績がないのはJR東西線関西空港線和田岬線加古川線ぐらい。
路線を選ばない点は、前述した自在な編成を組める構造が存分に発揮されたと言えよう。
最初に導入されたJR京都・神戸線系統は2020年から225系の導入に伴い徐々に置き換えが始まり、2024年3月改正で撤退。
捻出された編成は大和路線・おおさか東線の201系置き換えに廻されており、奈良へ転属した6両編成には本形式では初となる女性専用車両が設定された(但し奈良線では設定されない)。

風変わりな運用としては、1990年代初頭に紀勢本線体のいいぼったくり急行「マリン白浜」に使用されたことがある。
とはいえ、(デッキなしだが)車内は転換クロスであるなど、ぶっちゃけ当時の国鉄急行型よりも車内設備が良かったりしている。
ちなみに運用に際しては中央の扉を締め切り扱いにし、ゴミ箱が設置されたとのこと。

なお、登場から35年以上たつ現在も廃車は1両も出ていない。同世代の転換クロス車はすでに廃車or引退した形式も出始めていることを考えると、「古い車両を大切に末永く使いましょう」というJR西日本のポリシーは今なお引き継がれているといえよう。

体質改善工事

2012年から2020年にかけて実施。
主な改造メニューとして以下があげられる。
  • 前照灯のHID化とフォグランプの増設
  • 運転席側前面窓の縮小
  • 先頭車前面に転落防止幌の設置(一部編成を除く)
  • 前面行先表示器の追設と運行番号表示器の撤去
  • スカートの大型化
  • 車内案内表示器を車端部から側扉上に移設しドアチャイムを設置
  • トイレをバリアフリー対応の洋式化
  • カビ臭さに定評のあったクーラーの更新
  • 車いすスペースの設置
  • ドア間座席の撤去による立ち席スペースの拡大&補助椅子設置

2014年には一連の体質改善にグッドデザイン賞が授与されたことを記念して、本形式の一部に記念プレートが掲示されている。
なお、転落防止幌については体質改善工事前から取り付けが施工されたほか、体質改善工事後に側面行先方向幕のフルカラーLED化を実施した車両も登場している。

余談だが前述した末期色導入のきっかけは経費削減のほか、本形式の体質改善工事が迫っており、単色にして入場期間の短縮を図る目的があったとされている。

余談

  • 2023年からは吹田総合車両所 奈良支所所属のNC604編成が「お茶の京都トレイン」として、茶をイメージした緑色のラッピングを施して運行されている。221系の中ではかなり目立つカラーリングで、運用は他の奈良所属編成と共通で京都を通らない大和路線の運用に就くこともある。但し京都なのに嵯峨野山陰線には入らない
  • 京都鉄道博物館には車掌体験用コーナー用として本形式のモックアップ*2が設置されている。
    これは前身である交通科学博物館時代に運転シミュレーター*3として使用されていたものを再利用し、ドア部分を新たに増設したものである。但し側面方向幕はなぜか字幕式で乗降扉は無塗装となっている
    このモックアップは当たり前だが体質改善工事が実施されていないので、今となっては唯一原型の221系の面影を残す貴重な存在である。
  • 本形式は1990年5月には台車などを改造したうえで湖西線で160km/h対応の走行試験を実施している。これらの試験結果は、後に登場する681系の設計にも生かされた。
  • JR西日本の子会社であるJR西日本テクノスのサイトでは、車両改造の広報用写真として「221系の先頭化車改造」というモックアップが掲載されていたことがある。そのデザインは実際に改造された113系や115系にも引けを取らないインパクトなので、ぜひ画像検索していただきたい。
    何故か有志によるペーパークラフト化もされているぞ!

関連作品

第1作より、「2-3000番台」、「プロフェッショナル仕様」、「3 通勤編」、「プロフェッショナル2」、「FINAL」の6作で登場。運転できる路線は東海道本線(1、2-3k、プロ1、プロ2、FINAL)、大阪環状線(プロ1、FINAL)、山陽本線(3)、湖西線(プロ2)。
新快速や大和路快速といった速達列車はもちろん、各駅停車(初代隠し)や臨時の嵯峨野ホリデー(プロ1)といった変わり種まで様々な運転に対応。
どの作品でも性能は良い方に入り、運転そのものは簡単な方。
難易度も楽に完走できるものから、良い性能を前提とした難しいものまで様々。
収録作の多さやダイヤの多彩さから、シリーズを代表する形式と言えるだろう。

急行系の車両が一新された『12』から急行の車両として採用されている。
その後は特急の281系、新幹線のE2系、のぞみの500系共々『2017』まで定番化していた。新型車両の登場に伴いこれはほぼ全て『令和』で別の車両に置き換えられたが、221系だけはまだ主力車両なためか続投している。


追記・修正は先頭化改造車を見てみたいという人がお願いします。

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最終更新:2025年09月14日 10:30

*1 加えて、当時JR西日本では山陰本線京都口(嵯峨野線)と七尾線の電化開業が控えており、両線で使用する電車をねん出する必要があった。

*2 形式はクハ221-75と、この手のモックアップでは珍しく実在車両と番号が重複している。

*3 路線はJR宝塚線だったが、2005年に起きた脱線事故後休止となり、2007年の再開後はなぜか中央本線に変わっていた。