蟇目檀(鉄鍋のジャン)

登録日:2025/10/04 (土曜日) 00:30:00
更新日:2025/10/04 Sat 03:40:18NEW!
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料理は才能だ!

才能が全てなんだ 年なんか関係ねえよ
そうだろ!?総料理長さんよ



蟇目檀とは『鉄鍋のジャン!』に登場する料理人のこと。

概要

秋山醤が入店する2年半前から中国に留学していた五番町飯店の若手料理人。
見た目はタレ目で腰まで届く長髪をオールバックに撫でつけた長身の男。高級感あるスーツに身を包んでおり、見た目はインテリヤクザ感あふれる。

霧子を含めた飯店の皆全員からは「蟇目兄さん」と慕われる兄貴分であったようだが、中国での留学を経て人格が変貌。
傲岸不遜な振る舞いと才能を何より重視する鼻持ちならない人物へと変わり果て、挙句大谷日堂が顧問を務める高級中華料理店「蜃気楼」の料理長への引き抜きを快諾。
結果、五番町飯店の資金援助で留学したのに、中国で学び身に着けた技術や知識を五番町飯店に一切還元せず、独占したまま嬉々として店を出奔する最悪の不義理をしでかしたとんでもない男。

しかし帰国後ジャンに勝負を挑み敗北した後ジャンを蜃気楼に引き抜こうとした行為が大谷の逆鱗に触れ、伍行と入れ替わる形で料理長の座を解任。
憤慨するも、元々大谷に対する悪感情を持っていたこともあって大谷と喧嘩別れする形で物語からフェードアウトしていった。


天才はいつの世も凡人には理解されないもんさ
天才・地動説のガリレオも 白熱電球のエジソンも 初めは一般大衆にはその言動は理解されなかった
料理は「才能」!!

だからお前らバカな凡人はつべこべ言わずオレのやることを見守っていればいいんだ
“龍王”蟇目檀様のな!!
ハハハハハハハハハハ

その後の消息が不明だったが最終回付近にてジャンの祖母・桃明輝が中国で経営している店にて再修業していることが明らかとなり、続編の『R』でスグルグループの食品部門で伍行や尾藤リュウジと働いていることが判明。
再修業により実力を付けたが尊大さも膨れ上がり、結果自らを「龍王」と自称するまでに至った。
他人をバカ扱いするなど態度は相変わらず尊大でアレだが、スグルからは「彼のあの自信満々な所が好きなんだよね~~~」と好感を持たれている。


人物

ジャン以上にプライドの高い、他者を等しく見下す苛烈で尊大な実力至上主義者。
不味い料理を食わせた者や自身の料理を馬鹿にした相手には全く容赦がなく、自分の逆鱗を逆撫でした相手に対して殴る・蹴る・指や利き腕をへし折るなど過剰な暴力行為に走る伍行とは違った意味で作中屈指の危険人物。
「自分の評価基準に満たなかった不味い料理」を提供した相手の経験や年季は全く考慮されず、他店の料理人であろうと躊躇いなく顔面を流血するレベルでブン殴る通り魔めいた行動を取りながら渋々五番町飯店まで戻るというジャンが温く見えるレベルの問題児。
料理の腕前がド素人だった見習い時代の小此木が練習で作った『青椒牛肉絲』を食べた際には、小此木をカスと見下し「(オレの舌をダメにする気か!?)」「(犬のエサにも劣る!)」とブチギレ。周囲の静止すらガン無視して無言で執拗に小此木の顔面を殴り続けるなど、態度は暴君のごとしであった。

とはいえ通り魔めいた態度で東京各地の中華料理店を荒らしていたのは、(自分基準で)味も不味く、料理の技術も成っていないのに堂々と高額な値段で店の看板を掲げている料理人達への失望によるもの。
「東京の中華料理店が一流なのは値段だけかよ!?いつからこんなになっちまったんだ」「カスばっか」と毒づくなど根は高すぎる向上心を持つが故の悪い意味で超意識高い系の人物。
営業時間の過ぎた五番町飯店に無理矢理来店し炒飯を注文してボロカスにこき下ろす辺りジャンと似通った部分もある。

反面自分の眼鏡にかなった実力のある料理人に対しては割と寛容。
特にジャンとは敗北後非常にフレンドリーに接しジャンの事をわざわざ引き抜きに来るなど最大限にその実力を評価。
続編の『R』でもジャンをライバル視していた他、最初期にはマジギレして暴力の嵐を見舞った小此木に対しても、チョコレート回鍋肉を作ったと知った際は評価を改めたのか友好的な態度を見せていた。


留学前の元々の性格は不明。
五番町飯店勤務時代からちょくちょく手の出るタイプではあったものの、兄貴分として慕われていた辺りまだ冗談やコミュニケーションの範疇に抑えたレベルであった様だが、帰国後は自分を慕う飯店の料理人たちを笑顔の裏で内心クズ扱いした挙句終始小馬鹿にしていたので、だいぶ猫を被っていた可能性が高い。
とはいえ無印の時点では自分の実力に慢心する若輩者の域は脱しておらず、「総料理長だって三十前からこの店を切り盛りしてたんだから自分に出来ない筈がない(要約)」と豪語していたが、結果は上記の通り。
そしてここまで悪辣な人物になるとは弥一も想定外であったようで、「おまえを中国に留学させたのは間違いだった」「中華料理はおまえが考えているよりずっと深いものだ。三十前の小僧がのぼせるなよ!」と彼を憤慨させている。


料理人として

信念は「料理は才能」
中国留学中に中国全土に広まっている料理レシピ約5万種類以上を極めたと豪語するだけあって技量は文句なしに超一流。
  • 目隠しをしたまま箸で白髪ネギ10gを正確に連続で掴み取る
  • 鉄製のオタマで塩45gを正確無比に掬い続ける
など曲芸じみた行為すら易々こなして見せる域。
ただしこれらの並外れた技巧は両手の指と手が疲労骨折を繰り返しタコまみれかつボロボロになる程の過酷な修練の結果会得したものであり、生まれ持った才能が全てと嘯くも実際は自身の血のにじむ努力の産物。
劇中では全く褒められた行為を行わなかった蟇目も、その修練で培った技術と執念だけは高く評価されていた、

なお『R』では彼の料理スタンスが若干掘り下げられており、「課題はどうクリア―するかが重要なんだ。大事なのはその方法だ」と他者の及びもつかないような発想を閃き、効率よく実行に移せることこそが才能と考えている様子。

制作料理

◆無印

  • 香酥古嚕肉(ヒョンスゥウゥロゥヨッ)(フルーツ入り薬膳酢豚
ジャンとの対決の際、「酢豚」の課題で作った料理。
五番町飯店で作られている酢豚の発展形のような酢豚で、肉以外の具材はマンゴー、パパイヤ、パイン、甘酢漬けのラッキョウ。
糖醋*1には山査子*2を使用して甘酸っぱい味わいと香りを演出。
広東省の伝統的な味を踏まえつつも、蒸して潰した山査子の風味と薬効にツブツブした食感、フルーツの爽やかさ、ラッキョウの歯ごたえで新しさとオリジナリティを出力。
肉は揚げる直前に一度片栗粉をまぶしたことで餡を絡めても尚パリッとした衣になるよう仕上げている。
ジャンが作った「柚子橙香肉」とは新しさも込みで互角の出来栄えではあったが、そのことをジャンに挑発されたことで「オレの料理をバカにしたから」という動機から真顔で腕をへし折りジャンの両腕を再起不能にする暴挙に出た。


  • 三不粘(サンプーチャン)
「卵と粉と油の芸術」とも評される実在する中国伝統料理の一皿。
卵黄・砂糖・緑豆でんぷんをラードで練り上げて作る甘い点心で、「皿にも箸にも歯にもつかない」と言うのが名前の由来。
見た目は卵でできた柔らかいスライムのようで、口に含むと歯の上を滑っていくような独特の舌触りと共に口の中いっぱいに卵の香りと旨味が広がっていく。
作るには極めて高度な技量が必須な料理だが、蟇目は軽々と作って見せた。


  • ユズとオレンジ風味のシメジ入り酢豚(仮称)
中国に旅立つ2年半前、新メニューの提案として弥一に提出したという料理。
豚肉の代わりに牛肉を使った以外はジャンの作った「柚子橙香肉」と全く同じもの。
「ユズには豚肉より牛肉の方がよく合う」という理由で牛肉をチョイスしたが「この時代ではユズは中華料理には早すぎる」という判断を弥一に下され没となったという。
なお「そもそもこれじゃ酢豚ではなく酢牛ではないか」という疑問が湧くが、本編では特に言及されなかった。
なお作中では五番町飯店でまともに新メニューの提案をしている料理人はジャン、霧子、セレーヌ楊を除けば蟇目位しか見受けられないので、そういった向上心の高さと着想の良さを見込まれ留学に送られたのかもしれない。


ジャンとの2戦目「魚料理」のお題で作成。
湖南省の伝統料理の中でも珍品中の珍品とされる料理。
生きた鯉を油で揚げ、その揚げた鯉にエビのむき身・パイナップル・リンゴ・蹄筋*3の角切りを加えて甘酸っぱく味付けした餡をかけた代物。
生きた鯉を暴れさせずにこんがり揚げる高等技術もさることながら、肝となるのは「生きづくり」の名を冠しているだけあって油でしっかり揚げた筈の鯉が生きていること。

肛門を1か所切って内臓を傷付けないよう全て取り出したら脱脂綿で内臓をくるみ油に触れないよう保護。
そして高温の油が鯉の頭に触れないよう濡れタオルで保護しながら揚げるという、卓越した技巧なくしては完成不可能な蟇目の優れた調理技術を存分に発揮させた皿。
楊ですら父から聞いたことがあるだけという珍品料理であり、楊も「あんたホンマたいした技術持っとるんやね!」と憎々し気に評価している。
しかしジャンと小此木が共同で作った「紅龍童魚」の斬新さの後だと「生きてる鯉でも死んでる鯉でも味は変わらない」「中国で修業した料理をここで紹介しただけだろ」とジャンと審査を取りまとめた柏原から苦言を呈され敗北を喫した。

無印時代最後の料理。曰く「原点の味」「原点の材料を使った身も心もとろける料理」
反抗的なジャンを屈服させ蜃気楼に引き入れるために作った料理で、見た目や表向きの材料は四川省の麻婆豆腐と変わらないオーソドックスな麻婆豆腐。
最大の特徴は舌の痺れる四川山椒に大量のケシの実の粉末をブレンドすることにより、一口食べるとケシの粉末の麻薬成分で盛大にトリップしブッ倒れる事。
蟇目によると中国修行中に発見した特別品とのことだが、ジャンもジャンで食べると意識はハイなまま血糖値が急低下してぶっ倒れる特製蔘鶏湯を作っていたため、結果としてドローとなった。

麻薬入り中華料理というとんでもないインパクトの料理であるが、2016年には調味料にケシの粉末を混入させていたレストラン35店が摘発された他、2025年には湖北省で料理の隠し味にケシの実の粉末を混入して客を呼び込んでいたレストランが摘発されている。


◆R頂上決戦

  • 新波外婆熬鍋肉(シンバイワイボアオグオロウ)回鍋肉のヌーベルバーグ*4・お婆ちゃんの回鍋肉オレ流)
続編の『R』で制作した回鍋肉。
「ヨーロッパで米は主菜ではなく野菜として扱われている」という解釈から米を野菜と定義し、豚肉と麦芽米を一緒に炒めた回鍋肉。
見た目は完全に回鍋肉炒飯だが、炒飯として見た場合は米の量が少ない。
ちょっとパサつく麦芽米が豚肉の脂を纏うことでパラパラと食べやすい食感と味に変化し、一口食べるとほっとするような満足感を与えてくれる。
付け合わせは肉の茹で汁をベースにレタス・かき卵・トマトの浮き実を加えた、夏に合った爽やかな味わいのスープ。

本人は「王道すら超えた極道回鍋肉」と自負する一品だが、ジャンと伍行からは「ペテンまがいの米の解釈」「所詮回鍋肉炒飯じゃねえか」と皮肉られた。
ジャンや霧子、弥一、李さん位しか解釈の真価が伝わらず、それ以外の飯店のメンバーからの評価も満場一致で回鍋肉炒飯扱いだったので、一般的にはどうしても米=野菜とはとらえて貰いづらかったかもしれない。


  • 龍飛鳳舞(ロンフェイフェンウ)(レンゲの白いキャンバスで繰り広げる龍と鳳凰の至福の舞い)
「1皿1000円のフカヒレ料理」というお題で作った料理。
「1皿1000円」への回答として1皿1レンゲ盛りに仕上げてある。
  1. ほぐしたアオザメの尾びれのフカヒレをボウルに入れる
  2. タワシを加工して作ったタイヤを装着させたラジコンカーをボウル上で走らせてフカヒレをズタズタに傷付け加工
  3. 煮沸消毒したワンカップ酒の空き瓶に少量のスープと傷だらけのフカヒレを入れ、上にラップをかけて湯煎し真空状態を作ってフカヒレにスープを纏わせ真空調理を再現
  4. ③で作ったフカヒレを金華ハムの極微塵切りを混ぜた鶏茸*5を潜らせ蒸し上げる
という複雑な工程を経て、蒸しあがったフカヒレを1レンゲに3本づつ乗せて完成したシンプル過ぎる皿。
レンゲの底には真空調理時に使ったスープを煮詰めてトロミをつけて餡とし、ラディッシュっぽい野菜をトッピングしている。
一口食べれば強烈なフカヒレの存在感を味わえ、フカヒレに纏わせた鶏茸が味の広がりを演出。餡と合わせて喉越しも良いシンプルイズベストな一品で、伍行が作ったフカヒレ料理と比べて純粋な旨さだけで満足感に満たされていく。
「たった3本なのに今までで一番フカヒレの存在感を感じる料理」と審査員から絶賛されたが、リュウジや伍行共々1000円以内のフカヒレ料理という課題の解釈を誤り*6、3人揃ってジャンに敗北した。




追記修正よろしくお願いします。

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最終更新:2025年10月04日 03:40

*1 甘酸っぱい餡のこと

*2 バラ科の植物を乾燥させた生薬

*3 干した牛や鹿のアキレス腱

*4 1950年代からフランスに起こった映画運動のこと。「ニュー・ウェーブ」とも呼ぶ

*5 卵白を加えた鶏肉のすり身

*6 レンゲ1杯の中にフカヒレ料理を作り、これがおかわりされる事を前提で提供したが、結局おかわりをしてしまうのであれば食べ手の出費は1000円では留まらない(普通に数千円する料理をただ小皿に分割しただけに過ぎない)。ジャンは同じくレンゲ1杯で提供しつつ、その1杯で完成、満足できるよう工夫を凝らしていた