「呼ばれたのは百十三年振りじゃ
割り切れぬ数字…不吉な丁 奇数!! 怖ろしい怖ろしい…」*1
漫画『鬼滅の刃』の登場人物。名前の読みは「はんてんぐ」。
アニメの担当声優は
古川登志夫
氏。
鬼舞辻無惨に仕える
鬼の中でも無惨直属の大幹部である十二鬼月「上弦の肆」。
真っ赤な両目、額の大きなコブ、舌に浮かぶ「怯」の文字が特徴的な老人の姿をしている。
何かにつけて怯える臆病な性格で一見すると
下弦より弱そうだが、
その本質は
「この世の自分より可哀想な者はいない」と考えるエゴイスティックな思考の持ち主で、
不都合な状況や自分の非を指摘する相手を全て
「自分を虐めている」のだと解釈し、
逆に自分の加害行動は全て虐められた報復・防衛と称して正当化する他責思考と被害者意識の権化のような存在。
十二鬼月の上弦に登り詰めて数百年に渡りその地位にいるという事は、数えきれない程の人間を食い殺してきた証明でありながら、
炭治郎に自分の罪を糾弾された際には怯えつつも「この儂に脅しだと?」とイラつきながら逆ギレするなど、
鬼に喰われ犠牲になった者など一切気にも留めない身勝手な被害者気取りなのは明白であり、
大抵の鬼は無惨の犠牲者と見なす炭治郎も分身の
憎珀天を介してその身勝手極まりない思想を聞き、
「性根のねじ曲がった悪鬼」と評して憤り、一切の情け容赦なく殲滅対象と見なした程。
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戦闘能力 |
「大丈夫じゃ 儂は見つからぬ 大丈夫じゃ」
「悪いやつらは喜怒哀楽が倒してくれる…」
血鬼術「分身」の使い手で、それぞれ若い頃の自分を模した固有の血鬼術を持つ分身を複数生み出せる。
分身は鬼に共通する高速再生能力を全員有している上に、本体が健在である限り頸を切られても死なず、
おまけに分裂体が斬られてもそこからさらに新たな分裂体となり増えて復活して攻撃してくる。
よって分裂体への攻撃は全て無駄であり、本体を探し出して倒さない限り消耗させられるだけである。
また、本体が攻撃を受けるなどして強い精神的負荷を受けた場合にその際の感情に比例して分身が強力になる特性があり、
自らの命が危険に晒される程に己の身を守ってくれるより強く都合の良い分裂体を具現化できる。
その上、 本体は野ネズミ程度のサイズなので物理的に小さすぎて見つけ辛いだけでなく、
戦線から離れた場所に潜み、発見されても鬼殺隊士でも驚く程の速度で逃げるため、探知能力持ちでもない限り発見・追跡するのは至難の業。
おまけに本体の硬度はかなり頑丈で生半可な攻撃は通用しない上に、分身達の全力の妨害も掻い潜らなければならないため、
討伐は柱級の戦闘力を持つ剣士が複数人いて個々の役割を分担しなければ、まず絶対に不可能。
総じて、半天狗の恐ろしさは単純な直接戦闘力の高さでなく、とにかく「倒し辛い」事にあり、
手の内を正しく見抜いて攻略しないと、強引に消耗戦に持ち込まれた末にやがて疲弊させられて潰されてしまう。
更に、追い詰めたと思ったら巨大化して反撃に出る…と見せかけて実はそれも分裂体で、本体はその心臓の中に隠れるという戦法もとる。
強いて欠点を挙げるなら、攻撃のリソースは全て他の分裂体に割り振っているのか、
本体の攻撃力は皆無で逃げ隠れしかできない事が挙げられる(劇中で人間を襲おうとした際も分身越しであった)。
また、エネルギーはあくまで本体から供給される分に依存しており、血鬼術や再生に分裂体が力を使いすぎれば本体の消耗を招き、
その上分裂体は本体とは別の人格があるせいなのか本体の都合もお構いなしに力を使っており、
無惨がするようにテレパシー的な形で意思や情報を常時共有、互いの状況を交換して効率よく消耗を管理する事はできないらしい。
一応、分身が戦っている間に本体が人を喰う事でエネルギーを供給し続けるという方法は可能。
同時にエネルギーを分身と本体で共有しているが故の欠点もあり、作中では 甘露寺蜜璃と交戦中の憎珀天が後先考えずに力を使うせいで、
本体に擬態した「恨の鬼」の両腕の回復が遅くなる描写があった。
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その末路 |
刀鍛冶の里編で 玉壺と共に刀鍛冶の隠れ里に来襲して殺戮を実行するが、
竈門兄妹に加えて玄弥という戦力がいた事から膠着状態に陥り、しかも玉壺は 時透無一郎が相手をした上、
玄弥と禰󠄀豆子も再生持ちだったために、 猗窩座や 妓夫太郎のように欠損を与えて有利な状況にする事ができなかった。
炭治郎も禰󠄀豆子が己の傷も厭わず自身の血を刀に与えて刀を赤く燃える赫色の「爆血刀」にしたことで、
消耗させ続けることはできるようになったものの、致命傷を与えるには至らなかった。
この状態でも消耗は鬼殺隊達の方が上であり、かつ半天狗を滅する手段が無いため炭治郎達が不利かと思われたが、
嗅覚に長けた炭治郎が微かに漂う今まで戦ってきた分裂体とは異なる5体目の濃い鬼の匂いを感知し、
ついに鬼殺隊側にその能力を看破されてしまう。
そして激しい攻防の末に一度は爆血刀で頚を斬られかかるが、その際の恐怖の感情により半天狗は分裂体を更に変質させ、
積怒が空喜、哀絶、可楽の3体を取り込み新たな「憎珀天」へと進化した事で形勢は逆転するが、
恋柱・ 甘露寺蜜璃が戦場に駆け付けた上に痣を発現させた事で憎珀天は完全に足止めされ、
妨害の無くなった炭治郎達が本体に攻撃・追跡を集中できる状態に持ち込まれてしまう。
戦場を離脱して甘露寺が潰れるまで延々と逃げ続けようとする半天狗だったが、
鬼の力で樹を引っこ抜いてはぶん投げまくるという玄弥の豪快な妨害方法で逃走を阻まれる。
さらにぶっつけ本番で 雷の呼吸の加速歩法を模倣した炭治郎に追いつかれてしまうも、
寸前で分身「恨の鬼」を生み出し、炭治郎の日輪刀を受け止めた挙句に呼吸を止めて窒息させようとするが、
今度は禰󠄀豆子と玄弥に阻止されて3人と共に崖下へ落下。
転げ落ちた野原からなおも逃走を図るも、憎珀天がエネルギーを乱用し過ぎたため弱体化し始めて窮地に陥る半天狗だが、
里の人間が三人潜んでいるのを見つけ、彼らを喰らって力を取り戻そうと画策。
時を同じくして朝日が昇り始めるも恨の鬼の身体を一時的な防壁代わりにして里の人間達に迫るも、
寸前で「透き通る世界」を習得した 竈門炭治郎に居場所を看破された事で首を斬られて死亡した。
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『なんじゃこれは』『人間の頃の儂か?これは……』 |
「走 馬 灯 か」
鬼になる前から沢山の名と身分を偽りながら私欲のために窃盗と殺人を繰り返してきており、
老境に入ってからは盲人と偽って当道座(室町時代から江戸時代まで幕府公認で置かれていた盲人の男性による自治組織)に潜り込んでいたが、
自分を告発しようとした同僚を殺害したことで遂に悪事が露見。
お奉行の前に引っ立てられても盲人の自分に犯行は不可能と往生際悪く偽り続けるも「貴様は目が見えているだろう」と看破され、
自分が悪いのではなく手が悪いと言うならその両腕を斬り落とすと言い渡されてしまう。
その後、打ち首刑前夜の牢の中で無惨に鬼にされた彼は、脱獄するなり自分を「いじめた」お奉行を殺害。
「半天狗」として無惨の十二鬼月となった。
これらの情報は、半天狗の今際の際の走馬灯としてわずか見開き2ページで明かされた情報であるが、
たったこれだけで過去の半天狗のどうしようもない性根(本当に盲目なら場面を映像で記憶してる所からおかしい)と、
命の危機を前にしても「貴様が何と言い逃れようと事実は変わらぬ 口封じした所で無駄だ」
「その薄汚い命をもって罪を償う時が必ず来る」と毅然と言い放つお奉行の高潔さが強く印象付けられる名場面である。
この見開き2ページの情報量の多さとネタ度の高さからネットミーム化してコラージュも複数作られた
アニメ版では目が見えていると指摘される場面で半天狗が目を見開く(瞳ははっきりと黒い)描写が追加されており、
盲人と偽っていた事がよりはっきりと描写された。
なお、お奉行はこれ含めてわずかな回想にしか登場しないモブにも拘らず、
第二回人気投票では「半天狗を裁いた奉行」として199票を獲得、38位に輝いた。
200票台には物語に印象的に関わるネームドも数多く固まっていた事を考えると、
名前すら定かでない人物にこの票数は快挙であろう。……え、半天狗?たった28票の62位だったよ
(ちなみに、他の分裂体は8票で101位の哀絶を除いてランク外だった)。
「貴様のしたことは
他の誰でもない貴様が責任を取れ」
「この二枚舌の大嘘つきめ」
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猗窩座や 妓夫太郎のように柱を殺害ないし戦線離脱させる事は叶わず、
鍛治の里にも相応の痛手こそ与えたものの壊滅までには到らず、任務には失敗したと言える半天狗だが、
その死の際、 命と引き換えに入手した情報は無惨をして「よくやった」と歓喜させた
(それまでの評価は「普通、たまに うざく感じるけど許容範囲内」というものだった)。
半天狗及び玉壺が刀鍛冶の里を襲撃した際、炭治郎、 時透無一郎、不死川玄弥などの戦力がいたため里の即時壊滅こそ免れたものの、
炭治郎は遊郭での戦いから体調が回復していない上に(更に小鉄との修行の消耗もある)、
先の戦いで刀を破損して 炭治郎担当の鍛冶職人である鋼鐵塚が拗らせていたため間に合わせの代用品を用いるしかなく、
玄弥は特異体質ではあるものの呼吸が使えないため鬼殺隊士としては半端物であり、
この時点で最大戦力の無一郎は早々に分裂体の一人可楽の羽団扇によって吹き飛ばされ戦闘から離脱させられてしまうという
詰んだ状態になっていた。
しかし吹き飛ばされた無一郎はその結果、玉壺と対峙し撃破しているので玉壺討伐の殊勲者は半天狗と言えなくもない。
禰󠄀豆子の血のサポート、たまたま近くにいた蜜璃の救援が間に合ったこと、玄弥の特異体質、
無一郎が玉壺を撃破し鋼鐵塚が研いでいた「三百年以上前の刀」を炭治郎に届けたこと、
太陽に身を焼かれながらも炭治郎に半天狗を討つことを示した禰󠄀豆子の献身がなければ勝てなかったギリギリの戦いではあった。
なお半天狗との戦いには善逸と伊之助は参加していないのだが、聴覚に優れた善逸と皮膚感覚で周囲の状況を察知する伊之助がいれば
半天狗の分裂のからくりや本体の発見などが楽になったのではないかという考察もファンの間でされている。
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(儂は生まれてから一度たりとも嘘など吐いたことがない
善良な弱者だ 此程可哀想なのに誰も同情しない)
MUGENにおける半天狗
分身である
憎珀天の方が先にMUGEN入りしていたが、2024年1月に満を持してXkleitoss氏により本体の方も製作された。
これにより、正式に上弦の鬼が全てMUGEN入りする事になった。
MUGEN1.1専用の
ちびキャラで、pedojoaoestrela氏&kawaibear7氏が手掛けた『
JUS』風
ドットを用いて作られている。
本体は
原作再現でサイズ・判定共にただでさえちびキャラが多い『JUS』風キャラの中でも抜きん出て小さいサイズ(
チビマリオや
スペランカーよりも小さくなる)
で作られており、逃げ回りつつ分身達を
ストライカーとして呼び出しながら攻撃する性能となっている。
AIもデフォルトで搭載されている。
また、Dark Night氏により上記のキャラをベースにした、本体が普通の『JUS』サイズの改変キャラも公開されている。
ストライカーが技のメインな性能はそのままだが、本体の方も攻撃可能などの変更点がある。
「弱い者いじめをォ するなあああああ!!!」
出場大会
*1
割り切れない数字、つまり奇数は「半」(半端の半)なのでこの台詞は実は間違っており、
そのためアニメでは「割り切れぬ数字、不吉な半」に訂正された。
この台詞の前に上弦が百十三年ぶりに集ったのに「九十年ぶり」と言った玉壺を、
「暫く会わぬ内に玉壺は数も数えられなくなっておる」と(いつものように怯えながら)馬鹿にしていたので、
実は自分も半と丁を間違っていたという間抜けなことになっていた。
最終更新:2025年10月01日 17:49