妓夫太郎


「取り立てるぜ俺はなぁ
 やられた分は必ず取り立てる 死ぬときグルグル巡らせろ」

「俺の名は妓夫太郎だからなああ」

漫画『鬼滅の刃』の登場人物。名前の読みは「ぎゅうたろう」。
アニメの担当声優は 逢坂良太 氏。
爽やかなキャラが多い氏では珍しく、後述のように不気味さが際立つキャラとなっており、
非常に低くくぐもった感じの声による怪演もあって放送後は話題になった。

の首魁・鬼舞辻無惨の直属の配下である「十二鬼月」の一角であり、
6人存在する「上弦」のNo6である「上弦の陸」の階位を持つ最高幹部の鬼。
普段は妹の堕姫と融合しており、彼女が危機的状況になった時のみ分離して出てくる。

「そうだなぁ そうだなぁ そりゃあ許せねぇなぁ」
「俺の可愛い妹が足りねぇ頭で
  一生懸命やっているのをいじめるような奴らは皆殺しだ」

非常に根暗かつ陰気な性格で、自分よりも恵まれていると判断した相手へは強烈な嫉妬と殺意を向け、
「自分が不幸だった分は幸せな奴からその分の幸せを取り立てる」事に異常なまでに貪欲な姿勢を見せる。
鬼になる前の生い立ちから酷く歪んでいたかのような言動を見せているが、
妹への愛だけは本物で、彼女を泣かせる者はたとえ堕姫に100%非があった場合でも決して許さない
それ故に、妹を泣かせた上に上背があり肉付きが良く顔も端正で女房が3人も居て才能もある宇髄天元に対しては殊更強い殺意を向けていた
(このうち、自身の才能に関してだけは宇髄は他のと比較して否定しているが)。

+ 来歴(ネタバレ注意)
吉原の最下層である羅城門河岸出身で、父はおらず、梅毒に罹った遊女の母親の下で共に育った。
生まれつき醜い姿をしていた彼は美貌を重視する吉原の価値観から疎まれ、母からは無駄飯ぐらいとしてネグレクトを受けており、
名前すら付けられず、遊女屋の客引きやツケの取り立てを行う下働きを指す「妓夫」を名前代わりに使い、
腹が減ればそこらで虫やネズミを捕らえて食べるという、最早人間とも呼べない扱いを受けて暮らしていた。

しかし妹の梅(堕姫の本当の名前で、母の死因となった梅毒が由来らしい)誕生が転機となり、彼は「妹を守ること」に生き甲斐を見出すようになる。
母親は純白の髪と青い眼という人間離れした容姿を持つ梅を気味悪がり兄と同じように扱おうとしたが、
これに逆上した彼が大暴れした事件をキッカケに彼ら兄妹に怯えて近付かなくなり、
この一件で自分の腕っぷしの強さと不気味な容姿が仕事に活用できると自覚した彼は本格的に妓夫として働くようになった。
梅もまた、年端もいかない内に自らの美しさを自覚した立ち回りを覚えた事で周囲の反応もやや改善。
遊女としての働き口も得て食い扶持が確保できる目途が立ち、苦難ばかりの兄妹の人生に多少の希望が見えたかと思われていた。

しかし、ある日妹が癇癪を起し客の侍を簪で突いて片目を失明させ(妓夫太郎は知らないが兄を侮辱されて激怒したための行動)、
報復として縛り上げられた後に生きながら焼かれるという事態が起き、
さらに彼も取り立ての仕事で客を大怪我させるほどの凶暴さを疎んだ遊郭の女将に売られる形で、
瀕死の妹を前に錯乱した隙を突かれて、片目を潰された侍に殺されかかった。


「わあああああああ!!やめろやめろやめろ!俺から取り立てるな!」

「何も与えなかったくせに取り立てるのか!許さねえ!許さねえ!」

「元に戻せ俺の妹を!でなけりゃ神も仏も皆殺してやる!」

かくして忍耐が完全に決壊した彼は侍と女将を返り討ちにして殺害。
そのまま瀕死の妹を連れて、雪が積もる冬の遊郭を当てども無く歩き回るが、
当然都合よく妹を救う手立てなど見つかるはずもなく、先の侍から受けた傷が祟りやがて彼も倒れてしまう。
無論、普段からそうであったように、幼き兄妹に手を差し伸べる人間などいなかった……「人間」は

「どうしたどうした 可哀想に 俺は優しいから放っておけないぜ」

「お前らに血をやるよ。二人共だ。“あの方”に選ばれれば鬼となれる」

そこに通りかかったのは、幸か不幸か当時から既に上弦の鬼として活動していた童磨であった。
上弦のみの特権として鬼の勧誘を許可されていた童磨の誘いに乗り、兄は妹と共に人の身を捨てる形で生き延びたのであった。

しかし、遊郭編の戦いでは元忍の経歴が幸いして毒が効き辛い体質の天元を中心に戦闘が長期化。
劣勢となる度に鬼殺隊側のメンバーが間を繋ぎ機会を作って兄妹の攻撃を凌ぎ続けて戦いが長引いたことで、
鬼殺隊側が兄妹の攻撃に慣れ始め、さらに天元独自の戦闘計算式「譜面」が完成したことに伴い動きを読み切られて堕姫と完全に分断され、
おまけに善逸が温存していた最後の切り札「霹靂一閃・神速」による超速度の斬撃に堕姫が対処しきれず、
更に妓夫太郎によって心臓を打ち抜かれたかと思われた伊之助が持ち前の柔軟性で「臓器をずらす」という荒業で耐え切り戦線復帰
(ついでに野生育ちの伊之助は毒物に耐性があったため毒の進行も遅かった)。
妓夫太郎は捨て身の天元に身動きを封じられ、彼の血鎌に下顎を貫かれてなお怯まなかった炭治郎の渾身の斬撃により、
善逸と伊之助の斬撃を前後から受けた堕姫共々、同時に頚を切り落とされてついに討伐された。
しかし、首を落とされてもなお最後の足掻きで炭治郎達を町ごと消し飛ばそうとしたが失敗に終った
(アニメ版では目を覚ました禰󠄀豆子の「爆血」で被害を抑えるシーンが追加された)。

死後に無惨の呪縛が解けた状態で、鬼となり人を殺したことを悔やみながら地獄への道に到る者が多い中にあって、
妓夫太郎は死してなお鬼の姿を保つ程にこの生き方に執着していた。
鬼になった事に後悔は無く、生まれ変わっても(取り立てる側であった)鬼になるとまで考えた程だったが、
妹は別の未来も有り得たかもしれなかった事が唯一の心残りだった。
死後の世界で人間の姿に戻った梅と再会するが、敢えて突き放して一人で地獄の道へ踏み出す。
しかし、梅は泣きながらしがみつき「絶対に離れない」「何度生まれ変わっても私はお兄ちゃんの妹になる」という言葉に、
幼い頃の約束を思い出した妓夫太郎は妹を背負い直すと共に地獄へ…
(この時、姿が鬼から人だった頃へと変わっている)。

上記の通り、妓夫太郎の来歴は偶然にも竈門炭治郎と鏡合わせのようにそっくりで正反対なものである。
このため、妓夫太郎は敵でありながら炭治郎にシンパシーを感じた旨の発言をしていた。
一方の炭治郎も彼の境遇こそ知る機会は無かったが、この際の「のためにも」という発言などから、
妓夫太郎が鬼になった経緯や兄妹間の感情を漠然と察したようで、鬼となった事や人を殺した事は否定し、
討伐にこそ迷いは無かったものの、どこか物憂げな様子を見せていた。逆だったかもしれねェ…
炭治郎もまた、妹のためであればどれほど過酷で困難な道程を歩む事を厭わない人物であったが故に。
何か一つでも違っていれば、自分達も彼らと同じようになっていたのかもしれない、と。

上弦の鬼が討ち取られたのは約百年ぶりの出来事で、鬼殺隊と鬼の両陣営に大きな余波をもたらしており、
妓夫太郎の敗死は物語が一気に加速する大きなターニングポイントとなっている。

戦闘能力

最大の特徴として、妓夫太郎と堕姫で命を共有しており、
「兄妹の頚を両方とも斬り落とさなければ死なない」点が挙げられる。
ただし、頚を切るタイミングは必ずしも「同時」ではなくても良く、両名の頚が繋がっていない状態にすれば良い。
そこで炭治郎達は各自分担してまず堕姫の頚を落として再生させずに持ち逃げして逃げ回り、後で妓夫太郎の頚を落とすという手段で対処しようとした。

また、自身の血と骨で作られた草刈り鎌のような二振りの片手鎌「血鎌」を生み出す血鬼術を使う。
この鎌は高い攻撃力を持つだけでなく血の斬撃を飛ばす技も使用できる他、
刃には致死性の強い人間にとって未知の猛毒が付与されており掠っただけでも致命傷となる。
因みに、人間だった頃には誰かの忘れ物だった古びた鎌を遊び道具にしており、これを「仕事」の際には刀の代わりに使っていた。

上記2つだけでも事前情報がなければまず対処できず致命傷を受けかねない初見殺しだが、
これらはあくまで副産物に過ぎず、妓夫太郎の強さの中で最も厄介なのは、
彼が生まれながらに持つ天性の優れた戦闘技術・センスである。
本人の回想によれば生前、子供の頃からろくに食事も口にできないような暮らしでありながら、
こと喧嘩などの荒事には滅法強かったらしく、素の戦闘技量だけでも(不意打ちで毒を食らわせ、体の自由を奪っていたとはいえ)宇髄天元を圧倒できる程。
劇中ではさらに堕姫と視覚を共有しながら乱戦の中でも妹から得た情報を的確に処理し、
時には自分が戦うのと並行しながら堕姫の身体を遠隔操作して戦闘を補助する等、非凡な情報処理能力を披露した他、
その状態でも相手の行動や目的を即座に見抜けるほどの高い観察眼を見せている。

こういった実力もさることながら、境遇と貪欲な性格も相まって、
無惨の評価も「お気に入り」と高評価(逆に堕姫の事は「頭の悪い子供」と内心では思っていた)。


MUGENにおける妓夫太郎

Mr Gray氏の製作した『JUS』風ドットを用いたMUGEN1.0以降専用のちびキャラが存在する。
近接戦では血鎌を用いたコンボ攻撃や飛距離・スピードが優秀な突進技が強く、
遠距離戦では広範囲の斬撃の飛び道具が優秀な性能をしている。
AIもデフォルトで搭載されている。
紹介動画(DLリンクあり)

出場大会

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最終更新:2023年08月26日 19:19