サンダ


東宝の特撮映画『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』に登場する怪獣(写真左)。
別名「フランケンシュタインの怪獣」。身長30m、体重1万5千t。
クリスマスの風物詩ではない。
名前の由来は「Thunder(雷)」ではなく「山(さん)」で後述のガイラ共々山幸彦と海幸彦*1の神話がモチーフとの事だが、
海幸彦に相当するガイラとは兄弟の立場が逆転している。

子供時代には京都のスチュアート研究所で保護されていたが、脱走して富士山麓で死亡したと思われていた。
しかし、実は生き延びており日本アルプスの山奥に潜んでいた(そして道中で琵琶湖を通過した時に剥離した細胞から誕生したのがガイラ)。
おどろおどろしい見た目とは裏腹に性質は温和であり知能も高く、人間に育てられたことから感情、知性、社会性を身に付けており、
人間には友好的で、自分を敵視する相手に対しても威嚇行為を行うことはあっても危害を加える意思は持たない。
怪力が武器の他、左足を負傷するというハンデを負った状態でも寝技を巧みに使い立ち回るなど、上記の通り知能の高さから機転が利く。
成長速度や治癒能力も高く、脱走してから1年で人間大のサイズから怪獣サイズまで成長したのだが、
流石に瞬時に大きな傷が癒えるほどではないようで、上記の左足の負傷はガイラとの戦闘で大きなハンデとなった。

一部書籍によれば、かつて『フランケンシュタイン地底怪獣』に登場した巨人、
フランケンシュタインの心臓の細胞の一部が増殖・成長して独立した個体とされている。
だが、水野久美女史が演じた女性科学者に懐いていたこと、そして一年前に脱走して琵琶湖を通過し富士山麓で死亡したと思われていた経緯など、
前作のフランケンシュタインに酷似した身の上ながら、研究所にいた回想シーンから全身に体毛がある等かなり容姿が異なるにも拘らず、
登場人物がサンダを「フランケンシュタイン」と呼ぶ場面があるため、「前作のフランケンシュタインのパラレルな存在」とする書籍もある。
実際、前述の女性科学者も容姿は同じだが名前や所属する研究所の位置は異なるので、全くの同一世界観でない事だけは確かである*2

同作に登場する怪獣ガイラは弟とされるが、厳密に言えば「サンダの体細胞から分裂したクローン」と称するのが正しい。
ガイラに対しては当初は仲間と思い、ガイラが人間に攻撃された危機の際に山を下りて助けるも、人を食べると知ると怒り袂を分かつ
(このガイラの捕食シーン、海外版だと犠牲者の衣服を食べかすのように吐き出す描写があり大変怖い)。
人間サイドでサンダの保護管理を主張するスチュワート博士と、両フランケンシュタイン怪獣の徹底消滅を主張する橋本陸将補が対立する中、
餌を求めて東京銀座に現れたガイラを追い、サンダも再び出現。
サンダはガイラに最後の説得を試みるが、拒絶されたため覚悟を決めてガイラを殺すべく最後の決戦を始める。
やがて戦いの場を外海に移した所で海底火山が噴火し、サンダとガイラはこれに巻き込まれて海に消えていったのであった……。

この『サンダ対ガイラ』、実は東宝の怪獣映画で自衛隊や防衛軍が繰り出してくる定番兵器「メーサー殺獣光線車」の初出演作である。
劇中でもそのパラボラから放射する指向誘導されたマイクロ波でガイラ相手にあと一歩まで追い詰める程の大戦果を挙げた上、
ガイラと組み合うサンダに一発も誤射していないという素晴らしい腕前を見せた事で、大きな印象を与えた。
その後の客演は所謂やられ役の一角という役割が多いものの、日本の特撮怪獣映画史において割と大きな存在と言えるかも知れない。

実は車載のパラボラ光線砲としては、本作の5年前公開の『モスラ』終盤、ロリシカ国陸軍に貸与された「原子熱線砲」が存在するが、
動力が小型原子炉なのが拙かったのかこちらは後の客演はない。しかし、かなり後年の作品『ゴジラ×メカゴジラ』で、
「この時の原子熱線砲のデータを基にしてメーサー殺獣光線車が開発された」との設定が約40年越しに明かされた。

余談だが、アメリカの有名な俳優ブラッド・ピット氏が子供の頃に最初に見た映画作品が同作であり、
アカデミー賞にノミネートされた際、授賞式で自身が俳優を志す由来となった作品として名を挙げている。
また、同じく俳優の斎藤工氏や映画監督のティム・バートン氏など、同作に影響を受けたと公言しているクリエイターは国内外にかなり多い
(ガイラの記事も参照)。

他作品では、1972~1973年に『おはよう!こどもショー』内で放送された『行け!ゴッドマン』でゲスト出演している。
こちらの個体は遊んでいる子供達の前に突如現れ、ゴッドマンとの5日間に渡るグダグダした戦闘の末にゴッドマン超音波で爆殺された。
しかし、設定上は子供達と遊びたかっただけの善良な怪獣だった模様。

『行け!グリーンマン』にもゲスト出演しており、この個体は完全に悪役で毒ガスを吐く能力を備えていた他、
グリーンマンの飛び道具であるブレスターやアローを食べてしまう悪食ぶりを見せた。


MUGENにおけるサンダ

カーベィ氏の製作したキャラが公開中。
同氏が製作したフランケンシュタインとは性能面や自動ライフ回復持ちの仕様も酷似しているが、
サンダは設置技を持たない代わりに近接技「必殺パンチ」を持つ点などが異なる。
超必殺技はいずれも1ゲージ消費で飛び道具の「タンカー」と「毒ガス」、無敵突進技の「突撃」の3つ。
AIもデフォルトで搭載されている。
参考動画

出場大会

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*1
要約すると、その昔釣りが得意な海幸彦という兄と狩りが得意な山幸彦という弟の兄弟の神がいた。
ある日、釣りに興味を持った山幸彦は渋る海幸彦を説き伏せて釣り用具を借りて釣りに出かけるが、
兄が大切にしていた釣り針を失くしたため海幸彦を激怒させてしまい、
償いに大切な剣を材料に代わりの1000の釣針を作ったものの「元の釣針でなければ許さん」と受け取ってもらえず、
あまりにも落ち込む山幸彦の様子を見て哀れんだ潮の神が海の宮殿へ彼を導き、
そこで出会った海の神と結婚し、彼女の協力で海幸彦の釣り針を発見。

とはいえ、自業自得ながら兄の怒り様では返したところで許してもらえる保証は無いと考える山幸彦に、
海の神は潮満玉と潮干玉という宝を渡して釣り針に釣れなくなる呪いの掛け方を教えつつ、
釣り針を兄に返した後、兄が高い所に田を作ったら自分は低い所に、兄が低い所に作ったら自分は高い所に作りなさい、
山幸彦は豊かになり海幸彦は貧しくなるからもし兄が恨んで攻めてきたらこの潮満玉の力で出して溺れさせ、
兄が助けを求めたら潮干玉の力で海の水を引かせなさいと助言した。
山幸彦が言われた通りにすると海の神が水を掌っているので海幸彦は海の神が言った通り貧しくなっていき、
恨みを募らせて山幸彦にカチコミを仕掛けたが、山幸彦は塩満珠と塩乾珠を使って兄を溺れさせ、そして助けた。
この一件ですっかり懲りて弟に服従した海幸彦は山幸彦に仕えることを誓った、という伝承。
  • 温厚で出会いに恵まれた山幸彦=サンダ
  • 一方的な被害者ではないが自分の感情に忠実故に加害者と化した海幸彦=ガイラ
  • 海幸彦の獲物の海の生物や山幸彦の力になった海の神=人間サイド
『サンダ対ガイラ』では上記の通り兄と弟の立ち位置こそ異なるが、大体このような構図となる。

余談になるが、この二柱の逸話は後の浦島太郎の原型になったという説もある。

*2
メタ的な話をすると、前作を観ていない観客に配慮して厳密な続編にしなかったというのが真相らしい。
当時は過去作映画を今ほど気軽に観られる環境では無かったことも考慮するべきだろう。


最終更新:2025年03月10日 06:55
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