俺「おおぉおおおおオオオオオオオ!!!!」バゴォ!
眼にこびりつく深紅を無理矢理に追い出し、攻撃対象を俺に切り替えたネウロイに踵を落とす。
装甲がひしゃげバチバチと火花が散るが、ネウロイはこちらを押し返そうと四肢を踏ん張る。
だが、所詮微々たる力だ。
俺「粋がってんじゃねえぞぉおお!!!」ガンッ!!
思いっ切りネウロイの上部を踏みつけ、ネウロイの半分程を砂に埋める。
脚をガリガリと動かし抜けようともがくが、それすらも見ずに俺は駆ける。
俺「中尉!!」
目が霞む、息が苦しい、だがそんなもの知ったことか
頼む、無事であってくれ。どうして見越せなかったあの程度!なんであんなに気を抜いた!?
中尉の位置を気付かれる程に気を抜いたとは…一生の不覚!!
そしてあの量は……考えたくもない…
中尉も守れずに…この力は、何の為に有る!!
離れたキューベルワーゲンが見えてくる。もう一足で―――!
キィイイイイイイアアアアアア!!!
半壊の埋まったはずのネウロイが最後の意地とばかりに俺に襲い来る
全身に火花を帯び、動くたびに金属の体が砕けて行く。
予期する行動はたった一つ。俺を巻き込んでの自爆
俺「っくしょぉがあ!!」
ぐるりと体の向きを無理矢理変え、拳を握る。
だが砕こうとも距離が近すぎる。ネウロイの赤い光が俺の顔を染める。
ニタリと笑ったように見えたのは気のせいか…
ズタボロのネウロイは耳触りな金属音で勝利を綴った
ドッゴオオオオオオオオ!!
轟音が砂漠を砕く。ネウロイもろとも俺は吹き飛ばされる…だが
遅れて届いた銃声を、俺は逃がさなかった
銃声が大気を引き裂く
そして耳に残る大気の悲鳴
爆風と砂煙に俺は吹き飛ばされる。
そのまま熱く焼けた砂に突っ込み、転がる。眩しさに負けて目を開くと、突き抜けるような青空が広がっていた。
乾ききった
アフリカの空はどこまでも静かだった。
雲は無く、空を泳ぐ鳥も、その上に満ちる天の光までもが俺の目に映る。
俺「……ハハッ、もちっと心臓に良いやり方はなかったのか?」
「ふふん、私は手厳しいんだろ?…それよりも」
俺「なんだァ?―――中尉!」
マルセイユ「背中は私に任せろ…と言ったはずなんだが?」
ひょこりと耳羽を生やした女神が腰に手を当て俺を覗き込んだ。
はらり、と薄く尾を引く巻雲のような髪が零れ落ち、仰向けの俺に影を掛ける
零れた髪が凪ぐ風にさらわれ、きらきらと太陽の光を反射し飴細工の如く煌めいている
とっぷりと落ちた逆光の中でもその瞳は爛々と輝き、夜明けの地中海を思わせる
天に残る明星の輝き、暁に煌めく海、きゃらきゃらと燐光を放つ大気、
夜の帳から朝の帳に変わる瞬間をそのガラス玉のような両眼に閉じ込めて、にっと白い歯を見せて愉快そうに笑みをこぼした
マルセイユ「なんて腑抜けた顔をしてるんだ俺。私の友なら、もっと堂々としろ!」
マルセイユが声を上げる。太陽のようなその笑顔に、俺は目を見開いた。
―――――何だ、答えはこんなに簡単だったじゃないか――――――
自然と口元に笑みが浮かぶ。隠そうとして唇を噛むが隠せない。目頭が熱くなって行く。…そうか、こいつの前で隠すのは無用か
俺「ははっ……そうだな…その通りだ!!」ガバッ!
ぐっと腹に力を入れて起き上がる。そしてマルセイユの額ギリギリに俺は額を寄せた。
マルセイユ「まったく、女切れか?俺。やっぱりヘタレのロマーニャだったじゃないか」
俺「うるせぇやい。ったく、こんな事にウジウジ悩むなんてなァ……中尉、弾は?」
マルセイユ「売るほどあるさ。まあ、魔法力はほとんど無いみたいだがな」チャキ
右手に握られたマテバから零れる金色は淡く、今にも霧と散りそうな程の光だった。
そして俺の方はすでに光を纏っておらず、もふもふしているだけだ。
俺「ハッハー!当然だな、もって数秒だ!!」
マルセイユ「なっ、飛べないのか!?車じゃ追いつけないぞ!ほら!」ビシッ
マルセイユがネウロイの方向を指し示すが残念。俺の目には遠すぎて映らない。
俺「こんなこともあろうかと!」
マルセイユ「ふわぁ!?」
中尉を抱えて跳び、キューベルワーゲンの助手席に座らせる。
そのまま助手席を飛び越えて運転席に着地し、エンジンを噴かす。この間僅か3秒。
俺「すでにコイツは車は改造済みだッ!!」ガォオン!
キューベルワーゲンのエンジンからは、軍用車から聞こえるはずのない、獣の咆哮のような排気音。
そういえば行きの時も微かにこの音が響いたような…マルセイユの顔が待ってましたと言わんばかりに輝き、俺に詰め寄る。
マルセイユ「まさか…いつやった!?」
俺「ハァッハー!昨日整備班達と一緒にやったのさ!!
タイガーバウムの魔導エンジンの流れを汲んだ奴を造って無理矢理コイツにブチこんだ!」
マルセイユ「すごいぞ…これなら…!!」
俺「ああ、行ける!…今から奴を追走して並ぶ。俺がネウロイ側になるように寄せるからお前はそこで撃て!」
マルセイユ「なっ俺?少しでもずれたら―――」
俺「俺はお前を信じてる!」
マルセイユ「――――ッ!」
俺「だから、俺を信じてくれ。中尉」
俺がギアを切り替え、ぐっとマルセイユの方へと体を向けた。
マルセイユが俺を見上げる。己を見つめ続ける俺にふっと笑いかけ、ずっと胸に秘めていた言葉紡ぐ。
マルセイユ「……当たり前だろ?少尉」
約束する。と俺が言い、前に向き直る。
小さく「すまない」と俺の零した言葉に、「馬鹿虎」と彼女が返す。
俺「…ハッハ!しっかり摑まっとけよ!さあ、アイツを倒せば!!」グッ
マルセイユ「パーティータイムで!」ジャキッ
俺「OKって訳だ!!!」ガォオウッ!!
アクセルペダルを思いっ切りベタ踏みし一気にエンジンを噴かす
マルセイユは銃を構え、フロントガラスの縁を掴みながら俺に方角を知らせる
マルセイユ「俺!南南東に3°!!」
俺「あいよ!!っとォ、あれだな!?」グイッ
クラッチペダルをいっぱいに踏むと同時にアクセルペダルを戻す
セカンドギア、サードギア、トップギア!!
俺「ハァッハーーー!!虎と鷲に狙われて、生きて帰れると思うなよォ!!!」
熱砂の上を駆けて飛ぶ。時々変な浮遊感が襲い来るが気にしない!
轟々と熱風を切り裂き、砂煙を巻き上げて、陸戦型ネウロイの土手っ腹に車体を飛び込ませる。
迫りくる雷鳴にネウロイが気付き、ぐんと速度を上げて襲いかかるキューベルワーゲンを、丁度車一個分程を開けて回避した。
標的を失い、僅かに蛇行する車体に上空の飛行杯共が機銃をばら撒く。
俺「っとお!しっかり掴まってろよ!!!」ギャリギャリギャリ!!
スピードはそのままに、むしろさらにエンジンの回転数を上げて銃弾を左右に避ける!
タイヤが煙をあげ、ゴムの焼ける臭いが肺を満たす。
マルセイユ「っうぇ…けほっ!…俺!そのままだ!!」ジャキ
俺「がってん!行けェ!!」グッ!
ッパン!!
虚空に向けて弾丸を放つ。敵はいない…だが、マルセイユには見えている。
弾丸の射線に上空の三機―つまり全ての飛行杯が吸い寄せられる様に一列に並ぶ
その瞬間、全ての中心を黄金を纏った弾丸が抉り去る!
ドガアアアアアアア!!
爆散する飛行杯を見た俺が口笛を吹き、マルセイユの肩を叩く。
俺「やっぱりお前の射撃はすげえな!」
マルセイユ「ふふん、当然だ!私を誰だと思ってる?」
俺「ハッハー、この世界の果ての砂漠を照らす大鷲!!
連合軍第31戦闘飛行隊『アフリカ』所属カールスラント空軍中尉!
ハンナ・ユスティーナ・ヴァーリア・ロザリンド・ジークリンデ・マルセイユ!!
麗しき『アフリカの星』を、誰が忘れるってんだ!!」
マルセイユ「―――っほら、早く追え少尉!!」
俺「はっはっは!舐めんなよ!女も車も空戦も!テクがねえと、なァッ!!」ッドウッ!!
ぐんぐんネウロイとの差を詰める。止まって見えるほどの早さで追いすがる!
恐れをなしたか。ネウロイが急にターンを掛け、南東にその身を翻す!
だがそれに付いて行けないほど――!
俺「虎は甘くねぇぞ!!」ギュイィッ!!
ドンッ!!
今度こそ時速190kmでネウロイの横に車体をぶつける。ガリガリと車体とネウロイの体が擦れ、表面の塗装が、金属が剥がれ、火花を上げながら散って行く!!
ドガァッ!
ネウロイが渾身の力で押し返す!キューベルが横転しかけ減速し、後退するが、かまわず再度突撃を仕掛ける!
ドゴォッ!!
腕木式方向指示器と左サイドミラー、追加でライトが激突の衝撃で吹き飛ぶ。脆い…否!良く持った!
中尉はさすがに座り、体が飛ばされないよう必死にドアにしがみ付いている。
この不規則な荒々しい揺れがなかなか堪えるのか脂汗を流し、細かに銃を握り締める手が震えている。だがその眼は凛とネウロイを睨み付けたままであった。
俺「そろそろッ!決着なんてどうだァ!?鉄クズ野郎ォオ!!」グイッ!
ぐっと車体をさらにネウロイに当てるギャリギャリと金属の擦れる音が強くなる。たとえ魔導エンジンで出力が上がっていようが、
装甲はそこまで強化していなかった。大体ネウロイと車でぶつかりあうなんて考えていなかったのだ。せめてロケットランチャーに耐えられる位の改造なのだ!
そんな訳でギチリと俺の方のドアが悲鳴を上げる
俺「んなぁっ!!?」
今だとばかりにネウロイがこちらを弾き飛ばし、機銃を乱射する!
俺「っぐぅ!パンクだけは勘弁!!」ギキィ!
またもタイヤがすさまじい勢いで摩耗される
ハンドルを強引に左右に捌き、ばら撒かれた弾丸を避けて行く。が追いつかない!残った弾丸が襲い来る!!
マルセイユ「任せろ!!」
助手席でうずくまっていたマルセイユが俺の前に飛び出し、シールドを展開する。
…飛び出す?
俺「危ねえ!!」ガシッ
いきなり目の前に飛びだし、シールドを貼ったマルセイユを引き寄せ、抱きかかえた。
タイミングはばっちりだ!
マルセイユ「ふう、助かった」
俺「やっぱりシールドって便利だなァ…なにはともあれ助かった――――――――――あ」
マルセイユ「うん?どうかした―――か」
…咄嗟に左手で抱えたのが悪かった。左で手を出したため引っ掛かる場所がなく、
その、襟を思いっ切り引いてしまった為、ジャケットまでは良いが、ワイシャツまでも巻き込んでいた。
ボタンが数個飛び、そのやわらかくおおきい胸に左手が思いっ切り触れている。
マルセイユ「~~~~ぅ、くぁ」ぽふ
俺「…ぇ、え、え、え、」プルプル
ぽんっと薔薇色に染まる頬、ボタンの飛んだワイシャツから覗く魅力的な胸、ベルベットのように柔らかで上品な手触り、そしてそこに浅く沈む俺の指……!!!!
これぞ、まさに――!!
俺「エクセレントォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」ゴォオオ
底を尽きた魔法力が一気に溢れだす!
すぐさまマルセイユのワイシャツ、ジャケットを整え、助手席に座らせ、ハンドルを握りしめる!
俺「ッフハッハ、ハァーッハッハ!!力が…みなぎって来たぜぇえええええええええ!!!!」ダンッ!
踏み抜くほどの勢いでアクセルを踏む!もちろんそのままベタ踏みで遠く離れたネウロイまでの距離を、風をも切り裂き一気に詰める!
マルセイユ「っの変態!やっぱり変態だったじゃないか少尉!!!」
突然の急加速でもしっかり掴まり、赤くなった顔でうーうー唸り、胸元を抑えながらマルセイユが俺をバシバシ叩いて訴えてくる。
叩かれながらも野獣のような笑みを浮かべた俺はマルセイユの頭を撫でる。
俺「はっはっは!男なんてそんなモンだぜ、中尉!!いやあ…!」
マルセイユ「ぅ~~~っ!!なんだ、もう!」
俺「いいなぁ!!」サワヤカッ!
マルセイユ「な に が いいな、だぁ!!」ドゴッ!
マテバのグリップで虎の頭を殴る。しかしまったく効き目がない…正直泣きたい気持ちでいっぱいだった。
なんでこんな男を信じるなんていったんだろう?マルセイユは顔を真っ赤に茹で上げながらもう一度マテバを振りかぶる。
俺「いでぇ!っはっはっは!触りてぇもんは触りてぇ――――!!」
マルセイユ「言うなぁッ!!」バキィ
―――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――
ああ、やっと倒したか。
鉄の塊は砂漠を疾駆しながら考える。あれ程のモノに出会うなんて思いもしなかった。
…後方からきりきりと風の悲鳴が聞こえる。風がいや、大気が擦れる。これ程の速さで来るモノ…
鉄の塊、ネウロイはさらに速度を上げる。ばきりとどこからか嫌な音がするが気にしてなどいられない!
逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる
逃げろ!!!
有るはずの無い本能が叫び声を上げる!こんなもの知らない、来るな来るな来るな!!
速度を上げ、鉄クズを散らしながら金属の擦れるような叫びを上げる!!
それでも虎は迫り来る
雷のように低く唸りながら
淡い希望を八つ裂きにして
その夢も恥と変わる
俺「どおるぁああああああああああ!!!!」バゴオ!!
ネウロイの右横に今度こそ完全に車体をぶつけながら並走する。
ネウロイがスピードを落として抜け出そうとするが、それすらも許されずに金属片が火花を散らす。
俺「逃がすか、よォ!!」ガンッ!!
俺がマントを引き裂き右掌に巻き付け、ネウロイの装甲に爪を立てる!
そしてそのまま鉄をも引き裂き装甲を握りめ、ネウロイを装甲ごと掴み取り、引き摺る様に車体の横へ付けた。
マルセイユ「少尉!コアは腹部辺り…そのままかち上げろ!!」ジャキッ
マルセイユが銃を構える。激しい揺れと不規則な加減速。
だが、そんなもの問題でも何でもない。
俺「任せとッけぇい!!」グァアッ
マルセイユ「終わりだ…!!」パンッ
ネウロイの体が大地から引き剥がされ、全体が見えた所で俺が手を離す。
―最高のタイミングだ!!―にいっとマルセイユの口角が上がる
俺の親指と人差し指の間の僅かな隙間を弾丸が飛び抜ける
ドッゴオオオオオオオオ!!!
ネウロイが砕け散る。爆風にあおられ、横転しそうになるがぐっとハンドルを切りブレーキを踏む。
大量の砂煙を巻き上げながらキューベルワーゲンは停止した。
俺「っぶはあ!!…どんなもんだァ!!」
マルセイユ「…っく、はは!なんだ、本当に勝ったのか?」
俺「ハァッハッハッハ!!当たり前だ!な?信じろっていったろ?」ニシシ
マルセイユ「ふふん、私は最初っから信じてたんだぞ?」ニヤ
俺「うぐっ、…それよりだ!ほんとに怪我は…?」
マルセイユ「ああ、そんなことか」
俺「そんなって…俺はなァ…」スッ
マルセイユの左頬に手をやる。確かこちらの方に弾が行ったように見えたのだ。
ぺたぺたと左手で体を触るが痛がる様子はないし、鼻を寄せても血の匂いはなく、微かに花の香りが漂うだけ…
マルセイユ「…ほら、これだ」
すっと彼女か手を差し出す。「早く」と急かされながら、ゆっくりと手を差し出せばその上に落ちる花弁…
俺「…なるほどな。お守りは効いたんだな」グッ
俺の手には落ちたのは、深紅のばらの花弁。
ぐっと花弁を握りしめ、俺が目を閉じた。ふふんと笑い、マテバをコツンと指ではじく。
マルセイユ「こいつがなかなか癖が強くてな、私の魔法力と混ぜて制御しながら撃ってたんだ。
だからシールドも張れなかったし、避けられなかった。
それにあの機会を逃せば、もう攻撃のチャンスは無かっただろうしな」
俺「…コイツに弾が当たって、それを俺とネウロイはお前の血と勘違い…騙されたってことか…
ハッハ、でも無事でよかった…」ハフウ
マルセイユ「まったく、任せろと言ったのに。こっちに攻撃が向いたら一人飛び出して。
……でも、あの時お前が弾の軌道を逸らさなかったらどうなっていたか」
言いながら次第に声が小さくなり、うつむく。
解け始めた虎の姿で俺がぽんぽんとマルセイユの頭を撫でる。
俺「ハッハー、さすが俺だろ?」ニイ
マルセイユ「…ばか。それに、こんな世界の果てで死んでたまるか」
俺「ハッハ、やっぱり良い女だな。お前は」ナデナデ
マルセイユ「…本気にするぞ?」
俺「ハッハッハ!それ――――――うおっ!?」
「虎ぁああああああああああああああああ!!!!」ドキャアッ!
突然の来訪者を両手で受け止める。超高速で飛び蹴りをかましてきたそれは約6時間ぶりに出会う連合軍第31戦闘飛行隊指揮官―!
俺「…いーい蹴りだな、カトー!!」
加東「この馬鹿虎!何勝手な事してんのよ!!」
俺「いやー俺も長く戦ってるがなァ…ストライカーで蹴り入れる奴は
初めてだぜ?」
加東「私も結構戦って来たけど、これで蹴りたいと思ったのはあんたが初めてよ!!」
さっと体勢を戻しながら加東は叫ぶ。しかし、これでひるむ程相手は弱くなかった。
マルセイユ「ふふん、ケイ見てたか?全部倒した!」ドヤッ
俺「おう!派手に決めてやったぜ!!」ドヤッ
加東「無茶ばっかりして…!――でも、良くやった!!」
加東が笑みを浮かべながら言い放つ。まったく予想出来なかった発言に、俺とマルセイユは顔を見合わせる
俺・マルセ「……っく…」プルプル
加東「あ、こら!笑うな!!」
マルセイユ「あっはっはっはっは!!駄目だ、限界!」
俺「はっはっは!さっすがカトーだ!器のでかさが段違いだぜ!!」
加東「はぁ…もうごちゃごちゃ悩んでたのが馬鹿みたいだわ…あなた達怪我はない?」
俺「ハッハ、怪我はないよな?中尉」
マルセイユ「…お前、ネウロイの銃弾を受け止めたよな?」
俺「この位かすり傷だぜ…っと」フラ
マルセイユ「ほら、瘴気が回ってきてるじゃないか」ガシ
加東「受け止めた!?なんて事を…早く手をだす!」
俺「平気だ。ほれ」ポイポイ
加東「そんなに荒っぽく取らない!ああ、もう消毒よ」ダバァ
俺「っふぐぅッ!!?」
マルセイユ「うわぁ…ほら包帯」
俺「ありがとよ…っと完成だな!」グルングルン
マルセイユ「…ところでケイ。一人で―――」
「虎あぁあああああああああああああああ!!!」ヒュォオ! クロスチョップ!
俺「おおっと!!…アフリカ式の挨拶ってのは随分過激だなァ、ペットゲン少尉!!」ガシッ
ペットゲン「っく、何を馬鹿な事を…!ティナに何もしてないでしょうね!?」
大気を切り裂いて現れたペットゲンの上空からのクロスチョップをこれまた左手一本で受け止める。
エンジンの出力が上がり、ぎちぎちと左手がストライカーに食い込んで行く。
マルセイユ「おっ、ライーサじゃないか!今日は大丈夫だったか?」
ペットゲン「ええ、いつも通りだったわ」ギリギリ
加東「ま、今日はもう来ないでしょ。ほら、ライーサ出力を上げない」
ペットゲン「…今日の所はこれ位で勘弁してあげるわ…ケイ!ネウロイは!?」ハッ
マルセイユ「ふふん、その事なら」チラ
俺「おう!任務完了だ!」
ペットゲン「嘘よ!だって相手は6―――」
加東「信じられないだろうけど本当なのよ…ライーサ」
ペットゲン「…陸戦型が6体よ?こいつはあの虎なのよ…?」
マルセイユ「まあ、私が一緒だったからな!」エッヘン
俺「ああ!一緒じゃなかったら出来なかったな!」
ペットゲン「…怪我は?」
俺「安心しろ。中尉にはカケラ一つも触らせてねぇさ…少尉」
窺わし気にペットゲンが俺を睨み付ける。
その視線に俺はニカッと笑い、彼女の問いに答えた。
その問いに、ペットゲンが驚くと共に、呟く様に名前を零した。
ペットゲン「……ライーサ」
俺「あん?」
ペットゲン「虎、良く覚えておきなさい。アフリカの星が二番機、カールスラント空軍少尉
ライーサ・ペットゲンよ。ライーサでいいわ、俺」ニコ
俺「…にしし、よろしくな、ライーサ!」
ペットゲン「あと、ちゃんとマミの事も名前で呼んでいいのよ?」
加東「ああ、そういえば自己紹介してなかったわね」
マルセイユ「それもそうだったな…これから合流する奴と一緒にするか?」
加東「名案ね、それで行きましょう。俺、撤退よ。ちゃんと着いてきなさい」ブーン
俺「おう!了解だ!」
―――――――――――――――
――――――
―――――――――――――――
「うぅ…早すぎですよう圭さん…」
「ルコ、もうむり…」
北野「ひゃああ!シャーロットちゃん駄目です!まだ戦闘が残ってるよ!」
シャーロット「アツい…う?見えた!ケイさーん!!」パタパタ
加東「あら、結構置いてきたみたいね…」
ペットゲン「だってケイ『待ってろ馬鹿虎!マルセイユ!!』って叫んだと思ったらもういないんだもの」
俺「ハッハー!カトー、心配だったんなら言えって!」
加東「…あんたの頭の中には何が詰まってるのかしら?」ピキピキ
俺「女と酒とパスタ…あとは浪漫!」
マルセイユ「っく、ははは!最高だ!!」ハッハッハ
加東「はぁ…見直したと思えばこれよ…」ボソ
ペットゲン「…もう諦めるしかないんじゃない?」ボソソ
俺「おうおう、こんなに来るんだったのか?ちと多過ぎやしないか?」
マルセイユ「……武器も積んでなかったしな。もしもの為だろ?ケイ」
加東「そんな感じね。マイルズが三人もよこしてくれたし(あれ?あの時はあんな距離でも聞き取った癖に…)」
ペットゲン「ま、まあ今日はもうネウロイ来ないみたいだったし(聞かれなかったのかな…危ない危ない)」
北野「ケイさん!ネウロイは!?」
加東「もう撃破済みよ。このまま撤退」
マイルズ隊隊員1「へっ?航空ウィッチだけでやっちゃったんですか?」
加東「あー…俺とマルセイユが倒した。うん、嘘は無いわ」
向こう側全員「………え?」
マルセイユ「なんでいちいち驚くんだ?」
シャーロット「え、ええ?だって二人だけでしょう?武器も無いって言うからもう…」
俺「おいおいカトー、なんでしっかり伝えなかったんだよ」マッタク
加東「はいはい私だってマルセイユの証言とあんたの怪我が無ければ信じられなかったわよ
それよりみんな!俺に自己紹介するの忘れてたから帰りながらやるわよ!質問は後!」
ムチャクチャナ… ダレカラヤルー? アンタカラデイイゼ?フソーノマジョサン? エエエエ!?ワタシデスカ!
――――――――――――――――――
北野「ええっと、私からですか…北野古子と申します。出身は扶桑で階級は軍曹です。よろしくお願いします俺少尉」ニコ
シャーロット「私はシャーロット。出身はカールスラントで階級はルコと一緒よ、虎」
マイルズ隊1「私はマイルズ隊の1です。ふふ、変な事したらアハトアハトで吹き飛んでもらいますからね」
マイルズ隊2「同じくマイルズ隊。2です。噂は聞いてますよ?」
マイルズ隊3「上に同じく3と言います。頑張りましょうね!」
ペットゲン「さっきも言った通り、カールスラント空軍少尉ライーサ・ペットゲンよ。忘れたら撃つから覚悟しといてよね」ニッ
マルセイユ「ふふん、それは私の仕事だな。
カールスラント空軍中尉ハンナ・ユスティーナ・マルセイユだ。私が勝つからな。覚悟しておけよ、俺」
加東「まったくあなた達は…ああ、私ね
扶桑皇国陸軍少佐、加東圭子よ。ここでは指揮官をしてるわ。私から言う事は一つ。あまり無茶をしないように」
夕暮れの砂漠に高く、心地よい声が次々と響く。
皆一様に笑い、俺によろしくと声をかける。
それがあまりにも久しぶりで、懐かしくて、少し涙が出たのは秘密だ。
俺「…ハッハ、俺の名前は俺。
前部隊はロマーニャ空軍第3航空団所属特殊戦略飛行隊…いや、一匹支援隊か?今日から世話になる。よろしく頼むぜ、お嬢さん方!」
俺が全員に届くように吠える。
その返答に8人の魔女は微笑み、歌うように口をそろえた
『ようこそ!アフリカへ!!』
―――――――――――――――――――
――――――基地
整備兵1「ああ!中尉が帰って来たぞ!!」
整備兵2「無事か!?怪我はどこにもないか!!?」
整備班長「馬鹿野郎!逃げろォオオオオ!!!」
俺「どありゃあああああああ!!ここだぁぁああああ!!!」ギキィイイ!!
全開ノンブレーキでスピンターンを決めながらハンガーに突っ込む。その間にも5,6人の整備兵を轢きかけて行った。
俺「そいやっとォ、中尉、大丈夫だったか?」スタン!
マルセイユ「ああ、お前のおかげで何とかな」トトン
俺「ハッハ、それはよかっ――――――――」
整備班長「虎ァアアアアアああああ!!!!」ッブン!!
ガキンッ!!
整備班長がオーバースローで投げたスパナを歯で噛み止める。そのままゴムのように噛み締めて吐き出す。
俺「ぺっ、ハッハー、ストライクだ!整備班長!!」
整備班長「てめえ虎この野郎!たった二人でネウロイ6体撃破とか何やってんだ!?
中尉を危険に晒して!俺達の傑作をこんな…廃車寸前まで追いやりやがって!!」ズビシッ
俺「ハッハ、それに良くあるこった!気にすんな!」ダッハッハ
整備班長「そんなに俺のスパナが喰いたいか…!!お前ら!!」
整備兵1「準備は出来てますよ!班長!」(マルセイユ中尉とデート…もし中尉が何かされてたら俺は…俺はッ!!)
整備兵2「ああ!良くやったと言いたいが…我慢ならん!!」(ああ中尉、今日も今日とて美しい…一句!)
整備兵3「買い物とか羨ましかったんだよ!ざまァみやがれ!!」(大丈夫でしたか!?少尉!)
整備兵4「お前ら言動が乱れてるぞ!!…つまり俺達が言いたい事はなァ―――!!」
整備班「「「「「俺達と闘えって事だよ!!!」」」」」
声を揃えて叫ぶ整備班にマルセイユが声を殺して笑う。
地面に買い物袋を下し、固まった筋を伸ばしながら、俺が整備班達の方へと歩み寄る。
マルセイユ「お前どれだけ整備班に嫌われてるんだ?」ププ
俺「はっはっは、これは男の魂の交流だからな!気にすんな!」
マルセイユ「ばかだなぁ…そうだ、言い忘れた」ピョン
そういうとマルセイユは隣に立つ俺の肩に手をやり、ひょいと飛んで耳打ちしてきた。
マルセイユ「俺、夕飯が終わったら私の宮殿に来い」ポソリ
俺「……ハッハ、姫から直々に労いを頂けるのかい?」
マルセイユ「ふふん、そんな所だな。必ず来いよ?」タタッ
これだけ言うとさっさと夕飯を食べに行ってしまった。
マルセイユの通った後に、笑顔が咲き乱れる。誰もが「おかえり」と声をかけ、声をかけられた兵士が喜びすぎて転んでいる。
生き生きとした表情を見て、前線には付き物の絶望がこの基地には無いことに気付いた。
これがアイツの力かと、アフリカの女神を見つめながら、約束を思い出す。
俺「…覚えてたのか」
整備班長「…言い残す事はそれだけか…虎」ギリッ
俺「…さあ中尉もいねえ…全力で相手をしようじゃねか、兄弟!!」
整備2「いーい度胸だな、あれだけ見せつけといてよォ…」ゴキ、ポキ
整備4「中尉は汚させんぞ…虎!!」フシュウウウ
整備3「ああ、そのニヤケっ面ぶっ飛ばしてやるよ!!」ボキボキ
整備1「もう一度言おう…闘え!少尉!!」
俺「ハッハー、まとめて相手にしてやらぁ!かかって来やがれ!!」ガルルルル
ドゴォ!! バタン、ゴッ! セイビ1--! セイビ1、アア、2モヤラレタ!!シキュウオウエンネガイタシ!! ナンテコトダ…コレガウィッチ!? チガウ!コンナモノウィッチジャナイ!…トラダ!!
クラエヤーー! ハンチョォオオオオオ!!!?? ドガバキィグシャッメキィ
加東「あの馬鹿またおっぱじめて…」
「はっはっは!どーだ、少佐!心配なんぞいらんかっただろう!?」
米神を抑える加東に、酒気を纏った将軍たちが危なっかしい足取りで歩み寄る。
この野郎、こんな時に飲みに行きやがって…羨まし……っおおぅ、危ない。
さっと表情を変え、にこやかに返事を返す。
加東「今帰りましたか、パットン少将」
パットン「わっはっは!安心しておけ!奴は馬鹿だが虎だ!!」
モンティ「ぶふっ、何時から冗談なんて言うようになったんだ?ロンメル!」ブフー
従兵1「料金は自分が出しておきました…少佐」ドヨーン
加東「御苦労さま…晩御飯たくさんおかわりして良いからね…」ハァ
従兵1「寛大なお気づかい感謝します…!」(落ち込む少佐も可愛い//)グスッ
俺「おうパットン。推薦の恩は返したぜ!」
加東「あら、もう終わったの」
パットン「なんだお前、こんなもんで返せたとでも思ってるのか?」ニヤニヤ
俺「生憎俺はそんなに小せぇ男じゃないんでな。コイツは俺からの気持ちみたいなモンだ」
パットン「ハンッ餓鬼が。いいか俺、貴様の居場所はアフリカだ。今はそれだけ分かっていればいい」
俺「ハッハ、そうだったな。世話になるぜ」
スッキリしたような顔で俺が笑う。
あれほどまでに嫌っていた『留まる事』をあっさりと受け入れた俺に、ロンメルがぱちくりしながら聞き返す。
ロンメル「何だ?やけに素直じゃないか」
俺「やっと見つけたのさ、仲間って奴をな」
パットン「…餓鬼が。何当たり前の事言ってやがる」
俺「ハッハ、信じられなかった俺の弱さだ。聞き流してくれ!」
静かにパットンが溜息を吐く中、俺は子どもの様に笑った。
ゆったりとお互いを確かめるように睨み合い、パットンが懐から取り出した葉巻を、俺に投げて寄こす。
渡された葉巻を見詰め、くっと笑う俺を尻目にパットンは歩き出した。
パットン「はっ、餓鬼を苛めて楽しむ程落ちぶれちゃいないさ。さっ、晩飯でも食いに行くか」
モンティ「おいパットン足元がぶれてるぞっとっとっと…次も死ぬなよ、俺」
ロンメル「馬鹿どもめ、我が輩も行くぞ!!」
コロブナヨー オットオ!ナニシヤガルロンメル!! ギャーギャー!!
加東「危なっかしいわね…ちゃんと辿り着けるかしら?」
俺「平気だろ、将軍だしな!」
加東「はいはい、じゃ、天幕まで案内するわよ」テクテク
俺「あ?飯の後じゃねえのか?」
加東「大方、マルセイユの天幕で酒盛りでしょ?誰かさんの天幕で寝ないうちに
案内しとかないと何言われるか分かんないでしょうに」マッタク
俺「カトー、あんた策士だな」
加東「阿保か。ほら行くわよ」テクテク
やたら真剣な顔でこちらを見詰める俺の背を叩き、天幕へと向かった。
――――――――――――――――――――――――
辺りに散らばる工具、帽子、そして砂。
誰もいなくなった格納庫に夕飯を告げる声が届く。が、起き上がる者は一人、後は皆倒れたままだった。
整備班長「生きているものは…誰か生きていないのか…?」ググ
整備兵2「…うぅ整備兵2、背中をやられた…!」ウゥ
整備兵1「こちら1、ほっぺが痛いであります…はあ…またか…」
整備兵3「3であります…自分は腰を…班長殿…?」
整備班長「ふぅ、皆生きていたか…まあ当たり前だよな…あ、スパナあったよ…うげ!?」
整備4「どうしました…ってえ゙ぇ゙?」
整備2「なんだ…うえぇえ!!?」
整備班長「スパナに…歯型…?…はははっ、マジかよ…」
――――――――
モンティ「早速命令違反か…アイツに始末書は出さなくていいよな?」
ロンメル「それでいい。もう見る気も起きんわ」ハフゥ
パットン「はっはっは!あんなに反対してた癖にしっかり認めるじゃないか」ニイ
ロンメル「妻との喧嘩を止めてもらった礼だ。…それに奴は本物だ。繋いで飼える程大人しくない」
モンティ「私も同じだ。それにあの娘もそんな感じだしな。これが丁度いいんだろうよ」
パットン「さ、行こうか。飯が冷めちまう」
モンティ「そうだったな。今日は何だ?」
パットン「扶桑料理だ。マミちゃんが作ってくれたようだな!待っててくれー!!」ダダッ
ロンメル「貴様待たんか!!」バキッ
―――――――――――――――
天幕前
俺「でかいな…あ、ハンモック吊っていいか?あの辺良さそう」ビシ
加東「あなた一人しか住まないから別に平気よ。それに中は好きに使っていいわ」
俺「へえ、ベッドにチェストか…なあ、女性陣側と近くねえか?」
加東「はぁ…どうせ変な事もしないでしょ?する気もなさそうだし」
俺「あんたの固有魔法は心まで覗けるのか?」
加東「こういうのは信頼してるって言うのよ…それより、その耳、どうしたの」
俺「あー気付かれちまったか…」
加東「当たり前でしょ。あの時はあんな距離で私の足音を聞きとったのよ?」
俺「…魔法力の話はしたよな、カトー」
加東「まさか、あがり…?」
俺「ハッハ、そんな簡単なモンじゃねえよ。…俺は使い魔を殺したんだ」
加東「っ!?じゃあどうして力が使えるのよ?そもそもなんで――――」
俺「カトー、大丈夫だ。しっかり話す」
加東「…そのこと、いえ、扶桑海での事も話してもらうわよ」
俺「くくっ、こんなに注文を付けるとはなァ…さては―――」
加東「さっさと話す!」
昼間の暑さとは一転、涼しげな風が体を冷やす中、加東の怒号が砂を揺らす。
少しばかり震えた加東に、手に畳んで持っていたマントをかけ、巻きつける。
俺「ハッハッハ!焦るな。俺はこいつを殺して使い魔にしたのさ。扶桑海事変に行く途中にな」
加東「?」
俺「実はあの事変が始まった時、俺はまだウィッチじゃなかったんだよ。まあ、空戦技術は基地の中じゃ頭一つ抜けた位だったがな」
俺「そんで扶桑行く途中、俺は大陸の密林に墜落したんだ。久々に操縦したから勘が鈍ったんだろうな」
加東「久々ってどういう事よ」
俺「中尉にしか言ってなかったな。俺はレーサーやってたんだよ。パイロットがつまんなかったからな。それにお嬢様方との遊びの方が楽しかったし」
加東「…それで良く事変に参戦しようと思ったわね」
俺「無理矢理出撃しようとする俺に少将閣下が下さった命令が『乙女らを救って来い』だからな。色んな権限も頂いたしよ。
それに女の子が戦うってんのに、男は黙って見てろってか?」
威厳たっぷりに俺が笑う。…この男はこんな理由で戦ってきたのか?
ロマーニャ人はなんて分かりやすい奴らなんだろうか…
加東「…今確定したわ。ロマーニャ人は大馬鹿だったのね」
俺「ハッハッハ、良く分かってるじゃねえか!」
俺「墜落して、そしたら相棒、エルドラドに会ったのさ。そんでそこから一週間殺し合って――――」
加東「ストップストップ!ちょっと待って、殺し合ったってどういう事よ!?」
俺「そのままの意味だぜ。俺とコイツで殺し合って、この傷を付けられて、そんで最後は相討ちになって。
だが気紛れで誇り高いコイツが、そう簡単に死ぬと思うか?」
謎かけのような声色で問いかける俺に、可能性としての一つの答えが、加東の頭に浮かぶ
加東「まさか…使い魔としてあなたの中に生きている…とか」
俺「ご名答!ハッハ、こんな狭い密林で王として死ぬよりも、俺と一緒に世界を回った方が楽しいだろってなァ」
加東「なんというか…似たもの同士だったって訳ね…」
俺「まあな。それにこの殺し合いの中でサバイバルの方法に戦術、そしてやらなきゃいけないこと、
守るべきもの…沢山見つけたよ。コイツは俺の相棒で師匠みたいなモンだ」
俺「相棒は、俺を生かして楽しむ為に自分の全生命力を注ぎ込み、使い魔となって俺の中に命を繋ぎ止めた。
今は眠って注ぎ込んだ分とあの時の傷とかを回復してるんだ。たまに話したりするけどな。
だから『あがり』じゃない。難しい話なんだが、今使っているのは『俺』の魔法力。
身体の変化と筋力、感覚器官の力が虎に近くなる『観察眼』は『俺』のもの。
そしてあの金色の光が『エルドラド』の魔法力。つまり『攻撃特化』はエルドラドのものなんだ。
だからアレは使い過ぎると俺にも、コイツにも影響が出てくるのさ。」
加東「なるほど。さっきの聴力は初期症状ってことね。本来使い魔と
契約した時に調和して一つになるはずのものが何らかの原因で別々になったままと」
するすると正解を言い当てる加東に、俺が口笛を吹く。そんな俺に、呆れたように加東が続きを催促する。
俺「ようするに魔法力の不調和。力の使い過ぎだ。相性は抜群だがな…まあそのおかげでこの状態を何年も保ててるんだよ」ニシシ
加東「…笑い事じゃないわよ!なんでそこまでして戦うの?つまり十分な休養を取ればいいだけの話でしょ!?そうすればどっちにだって――――!!」
俺「『この力を多くの人を守る為に』」
加東「…!」
おかしい。ここまでして戦うだろうか?第一この男は「女と遊べればそれでいい」と、平気で言い放つような男だ。
反論しようと声を荒げた。しかしそれを遮った言葉に思わず固まる。…この男は何と言った?その言葉は……
言葉が出ず、目を見開いた加東に、俺は続きを話す。
俺「コイツとやり合って扶桑に流れ着いた時に、俺を助けてくれた人の言葉だ。
…名も知らぬ俺を助け、俺のバカみたいな言葉も信じてくれて、俺に戦うための翼をくれた。
いつか恩を返すと言ったら、こう返されたのさ。礼はいらないからってよ」
俺「男はな、誰かの為に強くならなくちゃならねぇ。俺は俺自身の力、イチローから貰った翼、少将閣下から頂いた力…俺は女の子の為だったら惜しむことなく使うぜ」
決意を秘めた瞳が加東を射竦める。なんて馬鹿なんだろうと思った。
自分はこの男の表層しか見ていなかった。最初から真っ直ぐに聞けばよかったのだ。
加東「…俺、一つ聞くわ」
俺「なんだァ、カトー?」
加東「その自信は、決意はどこから?」
俺「…無論、歩んだ道から」
最終更新:2013年02月02日 12:59