夢を見ていた。

かつての仲間が、楽しく笑いあっていたあの時の日々。

けど、それはもう二度と来なかった・・・。

仲間は皆、あの無機質な黒き怪物によって滅ぼされた。

そして・・・私は隊長を救えず・・・殺した。

場面が変わる。

其処は・・暗い森、卒塔婆と墓と彼岸花の群れ。

地の底から髑髏(しゃれこうべ)達が私の手、足、体を掴んだ。

振り解けば振り解くほど、力が強くなる。

青白い炎が形を造り死装束を纏った女性が、悲しい顔をして血の涙を流していた。

その姿を見て私は呼吸をすることだって忘れ、恐怖に震えた。

その女性は・・・隊長だからだ。

―フフフッ、アハハハハハッ!!

頭からも血が流れており、爪と牙は鋭く伸びていた。

それは、まるで地獄から這い上がってきた鬼。

狂気の笑いと共に鋭い爪を振り下ろし、私の胸を引き裂きいた。体中が鮮血で汚れ出来あがったのは血桜の大輪だった。

―――――――――――――――――――――――私&ハインリーケの部屋

私「・・・・!!」

ガバッと起きる。
呼吸困難の様な感覚で息が乱れる。
汗がダクダクと出ており体が痛むような感覚がした。
時刻的にはまだ深夜だ。ゆっくりと辺りを見渡す、ハインリーケはスヤスヤと寝ていた。

私「夢・・・。」

もう、忘れていたと思われていたあの時の悪夢。
なんとも表現しがたい恐ろしい出来事だった。
カレンダーの日付を見ると・・・その日を思い出した。

私「・・・私がかつて所属していた部隊の命日か・・・。」

明朝。
坂本は海岸で剣術の練習をしていた。
烈風丸から白いオーラが出現し、一気に振り下ろす。

坂本「烈・風・斬ッ!!」

白刃が海を真っ二つに引き裂いた。しかし・・・坂本は納得していない表情だ。

坂本「これでは、駄目だ。烈風斬を越えた、真・烈風斬の完成はまだ、遠い。」

烈風丸を鞘に納め、深呼吸をする。
フッと見ると海岸に私が立っていた。
悲しい顔をして海をずっと遠くの方へと見ていた。

坂本「どうしたんだ、そんな所に立って。」

私「・・・朝の潮風に当たりたい気分だと思いましてね。
  こんなにも蒼く輝く空と海がいつまで、見れるのか解らないですから。」

坂本「・・・我々はいつか命を落すかも知れないな。それは、今日なのか。明日なのか。」

私「いえっ、私達は生き延びなければなりません。そうでないと・・・志半ばで散った同胞たちが悲しみますから。」

坂本は私の悲愴な過去を思い出す。
仲間達がネウロイによって殺され、私とその隊長だけで戦ったが、それでも押されていたのだ。
最後は隊長がネウロイを抑えて、私が止めをさせと命令を下した。
ネウロイは倒せた。だが、同時に隊長までも・・・失った物が大き過ぎたのだ。
坂本は先程、自分の発言に少しばかり後悔していた。

坂本「すまない。お前には、辛い思い出があったな・・・。」

私「大丈夫ですよ。今度は、失わぬよう・・・護る為に戦っています。」

二人は静かに波打つ、海を見ていた。
太陽が昇り、陽の光りが二人を照らす。

―――――――――――――――――――――――ブリーフィングルーム

ミーナ「皆さんに、緊急の連絡をするわ。今回現れたネウロイについてよ。」

バルクホルン「久々の大物らしいが、そんなに強いのか?」

ミーナ「この画像を見て。」

映し出されたネウロイは異様な姿だった。
円盤を縦にし、数字の様な物が刻まれていた。

シャーリー「面白い形をしているな。」

ペリーヌ「これって、羅針盤ですの?」

ミーナ「観測員の報告によると、このネウロイは軍艦を五隻も破壊したわ。」

エーリカ「五隻も!?そんなにヤバい奴か~。」

私は目を見開いて席を立ち上がる。
他の皆が驚いて、私を見るがそんな事はお構いなしに画像に映し出されたネウロイを見る。
まるで仇敵を見つけた様に・・・。

私「・・・この、ネウロイは・・・」

見間違える筈も無い。忘れる筈も無い。
かつての部隊を滅ぼし、隊長を犠牲にしてまで倒したネウロイ・・・。
そして、今回出現したネウロイは全く同じ物だ。

ハインリーケ「どうしたのだ私・・・?」

私「・・・あのネウロイは、私の仲間を奪ったネウロイと全く同じです・・・。」

サーニャ「えっ!?」

エイラ「マジかよ・・・。」

エーリカ「ネウロイの奴が、新しく生み出したのかな?」

ミーナ「恐らくね。このネウロイは明日の1400にアドリア海へ到達するわ。」

バルクホルン「つまり、決戦は明日というか・・・。」

坂本「今まで以上に強敵となるだろう。明日に備えて置く事だ。解散!!」

―――――――――――――――――――――――海岸

私は一人で崖に立って海の向こうを見ていた。
その表情は覚悟を決めた険しい顔をしていた。

私(あんな、恐ろしい物がこの基地にロマーニャに侵入したら大勢の人たちが悲しむ。)

グググッと拳を強く握る。

私(あんな悲しい出来事は私だけで十分だ。やらせはしない・・・!!)

ハインリーケ「私、こんな所にいたのか。」

私「かつて仲間たちの命を奪ったネウロイの事を考えたんです。アレもまた亡霊となって甦ったモノなのかと思いました。」

ハインリーケ「・・・・・・。」

私「・・・本当ならば、今すぐにでも飛び出してあのネウロイを倒したい。これ以上の悲しい思いはイヤですから。」

ハインリーケ「それはダメだ。そなたが命を落としてしまったら、隊長も仲間達も悲しむ。」

そうだ・・・。
私が死んでしまったら、隊長の約束を破ってしまう事になる。
それに、501の人達にも辛い想いをさせてしまう。

ハインリーケ「だから、勝って生き抜くんだ。それが死んでいった者達のせめての弔いとなる。」

私「・・・はい。」

――そして、決戦の日がやってきた。――

501ストライクウィッチーズは全員出動をし、アドリア海へ急行した。
雲から、あの羅針盤ネウロイの姿を捉えた。
サイズは大型、不気味な声をあげ、ウィッチーズ達に威嚇する。

ミーナ「目標の大型ネウロイ"クロノス"を確認!!」

坂本「行くぞ、皆!!」

13人のウィッチーズVS大型ネウロイのコードネーム:"クロノス"との対決が始まった。
カールスラントのエースウィッチは銃を放ち、ネウロイの装甲を削り取る。
だが、削り取られていた装甲は瞬時に再生する。

バルクホルン「再生力が今までのよりも早い・・・!!」

ハインリーケ「なんとも面妖なネウロイだ・・・!!」

エーリカ「むぅー、面倒な奴だな。」

ネウロイの後方から12本の触手が出現した。
先端はギロチンとなっている。
それらを振りかざして、ウィッチ達を落そうとする。

宮藤「くっ!!」

宮藤がシールドを張ってネウロイの触手を弾く。
その隙にルッキーニ、シャーリー、ペリーヌ、私と反撃とばかりに銃弾を撃つが、先程と同じ結果だった。
しかし・・・、

ハインリーケ「今だ!!撃て!!」

リーネ「はいっ!!」

ハインリーケはタイミングを計って後方に控えていたリーネに指示を出して対戦車ライフルを放つ。
ドォンと大きな炸裂音が響き渡り、クロノスはグラリッと傾く。

エイラ「このー!!」

サーニャ「当たって!!」

追撃に銃撃とロケット弾を一斉に放ち、クロノスに当たる。
爆煙が晴れると1/4に削れただけである。
一番、攻撃力が高いフリーガハマーのロケット弾でもあの程度しか破壊できないのだ。

サーニャ「そんな・・・。」

エイラ「なんて、固さダヨ・・・。」

その時、クロノスの正面部分の6つの外殻が花の様に開いた。
中にはコアがグルグルと回転し不気味な脈動を討つ。
バチバチッと赤い閃光が走る。

ミーナ「これは・・・全員、避難して!!」

ウィッチーズたちは一斉に非難する。
次の瞬間・・・。
クロノスから赤い巨大な光線が、空を走る。
海に吸い込まれる様に着弾して巨大な水柱が出来上がる。
着弾した海面は地響きの如く渦を巻く

坂本「なんという破壊力だ・・・。」

私「あの一撃の光線で私の基地は全滅し、仲間たちも・・・。」

ルッキーニ「ねぇ!!あれ見てー!!」

指さす方向には、外殻の奥にコアがある。
恐らくあの破壊力を出すには相当なエネルギーをチャージして一気に放出するという仕組みだ。
外殻がゆっくりと閉じようとしている。
ここで、倒すチャンスを逃してしまえば次が無い!!
しかし、距離だってかなりある。間に合わないかと思われたその時だった。
ハインリーケがエンジンを全開にして、クロノスへと向かう。
危険を感じたのか触手が迫りハインリーケの銃の先端部が切り落とされた。これでは、撃てない。

ハインリーケ「くっ!!」

閉じようとした外殻を使えない銃でつっかえ棒代わりにし、手足で残りの外殻が塞ぐのを阻止した。

ミーナ「ハインリーケさん、貴女何を!?」

ハインリーケ「今のうちに、わらわ諸共このネウロイを討つのだ!!」

バルクホルン「なっ!?」

エーリカ「そんな・・・。」

私「・・・。」

私が脳裏に過ぎったのは・・・あの時と・・・あの時と同じ光景だった。
隊長はネウロイを押さえてネウロイ諸共、撃墜しろと私に言った。
殺す事なんて出来ない。だが、隊長は【お前は我が隊の意志を受け継げ。】と最後の命令を下した。
私は・・・滅界を発動させて・・・ネウロイ諸共、隊長を斬った・・・。
あの時と今、同じ状況が生まれてしまった。

ハインリーケ「早く!!ネウロイを倒すのだ!!」

リーネ「そんな・・・そんな事、できません!!」

宮藤「ハインリーケさんを撃つ事なんて!!」

ハインリーケ「バカモノ!!
       ここで、取り逃がしたら多くの悲劇が生み出されるのだ!!
       わらわはとうに死の覚悟はしておる!!だから、わらわ諸共・・・討つのだ!!」

倒す為ならば、何かを犠牲にしなければならない。
誰もが躊躇って撃てず諦めかけていた中、一人の男は諦めていなかった。

私「・・・そんな事、できません・・・。
  私達ストライクウィッチーズは誰ひとりとして、欠ける訳には行きません!!
  ハインリーケさん・・・貴女を助けて見せます!!」

ハインリーケ「私・・・、お前・・・。」

しかし、問題はどうやって助けるかだ。
あのネウロイを倒すにしても滅界で倒すしかない。
だが・・・それだと、ハインリーケを殺してしまう。

私(いやっ・・・助ける方法が一つだけある!!)

桜花蝶を使えば均衡なバランスを保ちつつ、あの触手を掻い潜り助ける事が出来る筈だ。
だが・・・これは、ぶつけ本番だ。成功するかどうかも解らない。

イメージBGM

私(今の私にできるのか・・・。失敗したらハインリーケさんを死なせてしまうかもしれない・・・。)

それでも、それでもやるしかない!!
あの時の悲劇と後悔をこれ以上繰り返したくない!!

私(隊長、皆・・・!!私に・・・私に力を貸して下さい・・・!!)

精神を統一させて、両腕から桜の花弁が渦を巻き、電撃が走る様に閃光が煌く。

私「狂い咲け桜花よ!!大空に舞え蝶よ!!」


乱れ吹雪く桜花が私を呑み込み背中に集まり、巨大な緋色の蝶の翅が現れる。
桜の花弁が美しく咲き乱れ、その光景は誰もが魅了する。

私「魂魄・蝶化身!!」


ストライカーに魔力を送って飛翔し、蝶の翅を羽ばたかせて愛する人を助けるために向かう。

私「今、貴女を・・・助けに行きます!!」

ネウロイは連射性のビームを撃って撃ち落そうとするが、翼でビームをはじき返す。
蝶の翼には滅界を発動させて一種のバリヤーの役目を果たしているからだ。
ならばと思ったのか、無数の黒い触手を振り翳し私を捕まえようとするが、蝶の翼で迫りくる触手を目にも止まらぬ速さで叩き斬る。
それでも、防ぎきれなく叩き落とされそうになったが、触手がはじけ飛んだ。

宮藤「私さん!!頑張って下さい!!」

リーネ「もう少しだよー!!」

ルッキーニ「頑張れー!!」

バルクホルン「必ず、助けろー!!」

エーリカ「いけいけー!!」

ウィッチーズ達が後方からの援護射撃で道を作っていた。
私は力強く頷き、再び羽ばたく。
二人の距離がドンドン縮まり、手を伸ばせば届く距離だ。

私「ハインリーケさーーーーんッ!!」

ハインリーケ「私ーーーーッ!!」

互いに手を伸ばし、指先が触れ離さない様に絡める。
二人の手が重なり合い、私はハインリーケを引っ張り、抱き寄せる。
緋色の蝶はネウロイの身を削り取り、ボロボロと半壊していた。
コアを護る為の外殻は全て破壊された。

坂本「今だ!!烈・風・斬ッ!!」

この機を逃すまいと、坂本の必殺剣が唸り、ネウロイを真っ二つに叩き斬る。
ネウロイは白い破片となって砕け散った。

ミーナ「私さんとハインリーケさんは!?」

ペリーヌ「あそこですわ!!」

ペリーヌの指さす方向に二人はいた。
私はハインリーケを抱きかかえる。
蝶の翼はパラパラと崩れ落ち、桜の花びらがヒラリッヒラリッと舞う。
私はニコッと優しく微笑む

私「大丈夫ですか・・・?」

ハインリーケ「そなたのおかげだ。・・・ありがとう。」

ギュッと肩を回して抱きしめるハインリーケ。
かつての怨敵を倒し、愛する人を助ける事が出来た。
これで心置き無く過去と決別が出来るかもしれない。

―――――――――――――――――――――――海岸

基地に帰還した。
夕焼けに輝く海面は溜息が出るほど美しかった。
そんな光景が見える崖に私が立っており、ローズマリーの花束を取り出し海へと投げる。

私(ローズマリーの花言葉は"思い出"。貴女と仲間達の過ごした思い出を忘れない為に・・・。)

黙想を終えて基地へと戻ろうとしたその時、

―・・・私。―

懐かしい声が聞こえ、振り返り空を見上げる。
ボンヤリと薄かったが・・・隊長の姿が其処にあった。
隊長はニコッと微笑んで蜃気楼のように消えた。

私(隊長・・・!!)

隊長をその手で殺し、恨んでいなかっただろうかと思っていた。
だけど、あの笑顔を見て隊長は自分を許してくれた。

私(私は護る事が出来ました。これから愛する人を・・・。)

オレンジ色に輝く夕焼けが和服の少年を優しく照らしてくれた。

次回予告

ペリーヌ・クロステルマンですわ。
私大尉にはつくづく驚く様な事がありましたけれど仲間が助かってよかったですわ。
けど、坂本少佐の様子がおかしかったですわ。
少佐・・・一体どうしたのかしら・・・?

次回信念へ続く
最終更新:2013年02月02日 14:35