――午前5時、ロマーニャ基地周辺にて――
俺「はっ……はっ……」タッタッタッ
俺は基地の周りを走っていた。
朝は早く起きて、作業が始まる前にランニングをすることを日課にしている。
この世界に来て、そして再結成された501に配属されてから約一週間が経った。
あの日出会ったおじさんの紹介で軍に入ったものの、俺のここでの役割といえば、男性兵達のために掃除洗濯その他雑用諸々をこなすこと。
あのウィッチ達に会えることを期待していたが、配属時に見かけたミーナ中佐一人を除いては、挨拶どころか、間近で見ることさえも出来ない。
男性との交流が極力避けられているためであろう。ご飯を運んだときの整備兵の自慢話ぐらいが唯一の情報だった。
帰る方法が分からずに、ただただ時間が流れていく。このままどうなってしまうのだろう。
「…はッ!…はッ!」ブンッブンッ
どこからか声と棒を振るような音が聞こえてきた。こんな朝からここにいるような人は、あの人しかいない。
今日はいつもと違う所を走って正解だったと思い、俺は期待をしながら音の聞こえる方向へ走っていった。
木々を抜け、海岸に出たとき、木刀を握っている女性を見かけた。
ガサガサ 坂本「んっ……誰だ」 木刀を構えつつ、振り返って俺の方を見る。
やっぱりもっさんだ。
俺「…は、はっ!一週間ほどまうぇにこの基地に配属されました、俺…二等兵であります!」
緊張して上手く言葉が発せない。ついに俺もっさんに話しかけちゃったよと心の中で喜ぶ。
坂本「そうか…知っていると思うが、私は坂本美緒少佐だ。ところで、お前はこんなところで何をしているんだ?」
俺「えっと…身体を鍛えるために、毎朝走ることを日課にしておりまして…」
本当はウィッチの誰かと偶然出会うかもしれないという理由もあるが…
坂本「おぉ、朝練か!それは良いことだな。宮藤達にも見習って欲しいものだ。」
俺「(宮藤……)ありがとうございます。あの…坂本少佐も朝練を?」
坂本「ん?まぁ、そんなところだ。ところで…一週間前と言ったな?ちょうど『彼』と同じ時期に配属か…。見た限り歳も近そうだな。」
俺「は…はい…。」
俺がこの基地に配属して、一番気になったのは「彼」の存在だ。
この世界に来て、あの忘れられない体験をした日はどうやら、
トラヤヌス作戦が失敗した日であるらしい。
501が再結成され、完全にアニメ2期の舞台とそっくりであるはずが、彼が、男がウィッチーズの12番目の隊員としてに登場する。
原作者も股間督も、男は出さないと言っていたはずだが…。
俺がこの世界に来たため、本来あるはずの世界に影響が出て、変わってしまったのではないか。
というより、この世界自体、すべて幻想で、俺自身がおかしくなっているだけとも思ったが、さすがに一週間以上リアルな暮らしをしているため、ただの夢とはとても言い難い。
それにしても、なぜ彼には魔力があり、ウィッチなのだろうか。
坂本「あいつは男なのに相当な魔力がある。しかも宮藤以上だ。訓練も熱心にする奴だから、鍛え甲斐があるな。
模擬戦でもなかなかの腕前だったぞ。」
俺「そうですか……彼少尉は他のウィッチの皆様とはもうお知り合いに?」
坂本「あぁ、大分仲良くしているな。ただ、なぜこの基地に男の彼が配属になったか……まぁ、話はここまでにしようか。そろそろお前も作業の時間が近いだろうし、ウィッチ以外の交流はミーナから極力避けるよう言われているからな。」
俺「……はい。お話ができて光栄です。」
――ハンガーにて――
俺「朝食をお持ちいたしました。」
おじさん「おぅ、すまねぇな。」カチャカチャ
俺「…やっぱり、また徹夜ですか…。」
おじさん「んまぁ、あいつ(彼)専用のストライカーを整備するのには時間がかかるのよ。相当な魔力を持っているしな。」
おじさんはこの基地に配属されていたベテラン整備士だった。俺と出会った日は、どうやら買い出しでロマーニャに訪れていたらしい。
俺「あまり無理はしないようにしてくださいよ。」
近くにある机に朝食を乗せたおぼんを置く。なにやら複雑なストライカーの設計図のようなものがそばに置かれていた。
おじさん「お前があの時にあんなことしなけりゃ、俺はここにいないわけだが…その分頑張ってるってわけよ。」
俺「……ま、まぁ、いいじゃないですか…生き……ていたわけだし。」
「生きていた」と話すのに戸惑った。俺はこの人を殺そうとしたし、あの時もし救助が来なかったら……。
火の海と化した街と、あのネウロイの怖さが頭に焼き付いて忘れられない。
おじさん「…そうだな。あぁ、そこに洗濯物があるから持ってってくれ。もう二日も風呂に入れない状況なんだよ。」
びしょ濡れで山道を走った時の、泥と汗が混じった靴と同じ臭いがした。
俺「りょ……了解……。」
――基地内、洗濯物干し場にて――
俺「……よし、全部干し終えたぞ。」
男性兵の全ての洗濯物を干し終わった。男共の服は洗濯しても臭いはなかなか落ちない。
今日は洗濯物が多いせいか、時間もかかった。どうせなら、俺はウィッチ達の洗濯物が干したい。
洗濯のカゴを持って、中に戻ろうとしたとき、向こう側に干されている物が気になった。
男用の干し竿から少し離れて、ウィッチーズ用の干し竿が設置されており、何人かの服とズボンが干されていた。
俺(しかし…本当に同じ服しか持ってきてないんだな…ん、これは誰のだろう?)
見覚えのないウィッチの服……あぁ、そうか彼の服だ。一緒に干しやがってと嫉妬する。
俺もあの時、もし魔法が使えたら……はぁ…結局この世界でもこんな役回りか…くそっ…。
ため息をつき、振り返って屋内に入るドアを開けようとしたとき…
「きゃぁ!」ドサッ 俺「おぉう!?」
誰かにぶつかって倒れてしまった。謝らなくてはと思ってすぐさま立ち上がる。
俺「す、すいません、あの~大丈夫で…す……み、宮藤芳佳…」
宮藤「痛ってて……あ、すみません!洗濯物を取り込むのに急いでて…」
俺「いえ、こちらこそ…。」
目の前には、あの宮藤がいた。しかも今話している。にやけてしまい、俺はきっと今、気持ち悪い顔をしているだろう。
宮藤「あの…なんでいきなり私の名前を?」
俺「へっ?あぁいや、ほら、有名じゃないですか?大きな戦果も上げているお方ですし…会えてうれしいなぁ…と。」
宮藤「え、えへへ、有名ですかぁ~」
俺「はは………自分は俺二等兵です。一週間ほど前からここに配属されました。」
ここは自己紹介をせねばと思った。
宮藤「俺さん…ですか。一週間と言ったらちょうど彼さんが配属されたときと一緒ですね!」
俺「(また彼か…)…はい。どうやら彼と俺は歳も近いみたいで。」
宮藤「そうなんですかぁ~。あ、洗濯物取り込まなくちゃ。」
俺「…邪魔をしてすみません。それでは…」ガチャ
緊張して、俺はすぐドアの中に入ってしまった。
手の届かない、ウィッチである彼女をあんな間近で見てしまった。しかも会話してしまった。
俺は元から、何でも懸命に取り組む宮藤を気にかけていた。今の出来事で完全に心を打ち抜かれた。
俺「でも……彼、か……」
次の日、彼、宮藤、リーネ、ペリーヌの四人は、アンナさんの元へ箒修行へ向かった。
――数日後、食料庫にて――
俺「じゃがいも…じゃがいも…っと、あったあった。」
夕飯の準備で、俺は食料庫にいた。使う分の食材をカゴに入れる。
すると、ドアの外から女の子達の話す声が近づいてきた。
宮藤「今日は肉じゃがにしようと思うんだよね~。」
リーネ「うん、おいしく作ろうね。」
宮藤とリーネだ。
ガチャ ドアが開いた。俺は思わず、木箱の後ろへ隠れてしまった。
宮藤「じゃがいも…じゃがいも…って、あれ?野菜が沢山入ったカゴがある。」
リーネ「本当…誰かが忘れたのかな…。」
二人が木箱の近くに近づいてくる。隠れるんじゃなかったと思い、ひょっこり顔を出して挨拶しようと思う。
何日ぶりだろう。せっかくまた会えたのだから、今回こそはしっかり会話しようと意気込んだ。が…
ガチャっとまたドアが開く音がした。
彼「おーい。バルクホルン大尉が二人を手伝えって言ったからきたぞ。まったく…配属されてまだ日が浅いからって…。」
宮藤・リーネ「彼さん!」二人が振り返る。俺には気付いていない。
彼が入ってきたのか?俺はまた木箱の裏に隠れ、こっそりと彼の顔を見た。近くで見ても勇敢な顔立ちだ。
リーネ「あ…、あ!私ミーナ隊長に呼ばれていた用事を思い出したから、先に食堂に戻ってるね!」ガチャ
そう言ってリーネは食料庫から出て行った。なんだか嬉しそうな顔で。
宮藤「り、リーネちゃん!?」 バタン
ドアが閉まるとシーンと倉庫内が静まりかえった。
宮藤「……あ、あの…あの時はありがとうございました…」///
彼「ん?…仲間を助けるのは当然だろ?」
なにやら話している。何の話だ?そういえば整備兵から聞いたな。箒修行の時にネウロイと戦闘して、宮藤が危なかった所を彼が救ってお姫様だっこがなんとか。
俺が宮藤の方を見ると、顔を真っ赤にしていることに気がついた。
宮藤「なんていうか、とっても嬉しかったです…彼さんが駆けつけてくれたとき…」
彼「そうか。どういたしまして。」
彼が少し照れながら笑顔で答えた。
宮藤「それじゃあ一緒に…食材運びましょうか…」///
宮藤は赤くなりながらも、ワクワクしている様子だった。
この時、俺はガクンと全身から力が抜ける感じになった。
気付いてはいたが、認めたくなかった。俺にだってわかるよ。この状況を作り出すとは、流石ですねリネット曹長。
あぁ、そうか。
宮藤は彼のことが好きなんだ。
~つづく~
俺はなぜこの世界にいるのか。なぜ俺は俺のままなのか。
悩み、疲れ果てていく日々。
そんなとき、最新型のジェットストライカーが到着する。
襲来する大型ネウロイ。本来なら倒すことが出来るはずが…
無線から聞こえる悲鳴。そこで見たものは、アニメとは違う別の展開だった。
最終更新:2013年02月03日 15:52