Mission 02

マルセイユ「新人の着任を祝って、カンパーイ!」 

ガヤ ガヤ 

彼女がそう始まりを告げると場が一気に盛り上がりを見せる。 
現在、オレとリトヤの着任パーティが行われている。 

オレは取り敢えずビールを飲むことに 

俺 (意外とイケるな) 

異世界の物と思って少しばかり躊躇していたが、食文化はそこまで変わらないらしい。 

俺 (しかし…男はオレだけなのか、少し形見の狭さを感じるな) 
そう思っていると… 

「おーーーーれっ!楽しんでるか?」 
マルセイユが俺の隣に座ってくる。 

マルセイユは気さくな奴だったので、あの後すぐに仲良くなる事ができた。 

俺「なんだ、お前か」 

マルセイユ「なんだとは失礼だな、私がせっかく声をかけてやったというのに」 

俺「悪い悪い」

マルセイユ「しかし珍しいな 男のウィッチなんて」 

俺「らしいな」 

マルセイユ「何か変わった固有魔法でも持っていたりするのか?」

俺「固有魔法?なんだそれは」 

マルセイユ「知らないのか?そのウィッチが持つ特殊な魔法の事だ。まぁその様子なら持っていない様だな」 

俺「なるほど…お前は持っているのか?」 

マルセイユ「内緒だ」ニヤリ 

俺「何だそれ」

マルセイユ「勝負する相手には普通手の内は見せないだろ?」 

俺「勝負?もしかしてオレとお前がか?」 

マルセイユ「ああそうだ、どうだ明日私と模擬戦でもしないか?」

俺「模擬戦ねぇ……まぁ別に構わないが」 

マルセイユ「ふっ…なら楽しみにしておくよ」 
そう言ってマルセイユは席を立ち去った。 

俺 (しかし模擬戦か…) 

その後、マルセイユの二番機であるペットゲンや、ちびっこの稲垣、それにリトヤとも話すことができた。

それぞれの第一印象は……そうだな。

稲垣は身長が低すぎて、確か130台とかなんとかだっけか?実際の年齢を聞いた時にはそのギャップに驚いたな。
ケイがお人形さんみたいだといっていたが、まさにそんな感じだったよ。

ペットゲンは……少し子どもっぽいけど家庭的な女の子といったところか。
言動もしっかりしていてとても真面目だと感じたよ。
ただマルセイユの話ばかりしていたのが気になったな。そんなに彼女の事が好きなのだろうか?
まぁそれはいいや、明日はアフリカの星と呼ばれる彼女の実力を、身をもって経験できるだろうからな。

リトヤは……こっちが心配になるほどのドジっ子だった。
彼女はスオムスのエースであるエイらなんたらかんたらユーティラーネン?の話をしていたな。なんでも未来予知の魔法が使えるとか。というかほとんど反則じゃないか?ソレ。


翌朝 

ペットゲン「あっおはよう、俺」

俺「あぁ、おはよう」 

俺「なぁペットゲン。朝飯はどこで食べれば良いのかな?」 

ペットゲン「それなら私もこれから朝食だからついて来て」 

俺「ありがとう、助かるよ」 



朝食後……

俺「ふぅ…美味しかったな」 

俺「オレは居候の身なんだ。今度からは手伝うとするか…」 

朝食をとった後マルセイユがオレに声をかけてくる。 

マルセイユ「俺、忘れてないだろうな?」  もぐもぐ

俺「模擬戦だろ?わかってるよ、だけど食べたばかりだしもう少したってからにしよう」



1時間後… 

マルセイユ「さぁ俺!時間だ」 

俺「楽しそうだな」 

マルセイユ「アフリカにはあまり新人はやってこないからな。新入りと戦うのは私の楽しみなんだ」

俺「へぇ、そうなのか」 

マルセイユ「ああ、じゃあまたハンガーで会おう」 


ハンガーに着き、ストライカーの準備をする。リトヤがよって来て、色々と用意をしてくれる。 

リトヤ「はい、俺さん 訓練用の銃です」

俺 (銃……だと?) 
オレはその言葉に動揺する。 

俺 (てっきりストライカーからミサイルでも出るのかと思っていたが……ただの銃?) 

俺 (まずい、実にまずい)

俺 (これでは射撃補正もまったく期待出来ない) 

俺 (射撃音痴のオレに銃で戦えと?……厳しいな)

そう、オレは射撃が凄まじく下手なのだ。 
どの位下手かと言うと、昔上官に「お前は100万人に一人の逸材だ」と言われた事がある(もちろん悪い意味でだ)。 

リトヤ「えっ~と、俺さん?」 

俺「ああ…すまない」ガチャ 

俺 (しかし魔法による身体能力の強化は凄いな。こんなに大きい銃なのに、拳銃並みの重さにしか感じないなんて) 

俺「あと、悪いがもう一丁お願い出来ないか?」 

リトヤ「はいっ、分かりました‼」トテトテトテ

オレが二丁銃を持つ事にした理由は至って単純。
「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」  ただそれだけだった。
俺 (まぁそれさえ当たるかはわからないんだが……) 

トテトテトテ 

使い魔を発現させたリトヤが軽々と銃を運んできた。

リトヤ「俺さん、二丁目の銃です」 

俺「ありがとう」ガチャ 

俺 (そういえばこいつも魔法が使えるんだな。だったら何故整備兵に……) 

マルセイユ ≪俺、もう出られるか?≫ 
インカムからマルセイユの声が聴こえてくる。 

俺 ≪あぁ大丈夫だ。今から上がる≫ 

マルセイユ ≪ん?俺は2丁持ちなのか。フッ…どごぞの石頭を思い出すよ≫


ペットゲン「ティナと俺が上がってきたね」 

稲垣「俺さんはどの位の実力なんでしょうか?」 

加東「うーん…正直わからないわ。でも今回が二回目の飛行なのよね」

稲垣「ええっ!?二回って殆ど何もわからない状態ですよね…私なんか何回も練習してようやくまともに飛べる様になりましたから」

加東「そうね。でも彼は一回目の飛行で見事に離着陸をして見せたのよ」 

加東「元々パイロットらしいから、感覚的に共通するモノは多いと思うし、いける限度ってものはわかっていると思うけど……」

加東「それでもやっぱり少し心配ね。勝負っていうのは人を熱させるから、無理して落ちなきゃ良いんだけど……墜落の怖さは私が一番知っているわ」 


マルセイユ ≪ルールは、ペイント弾を相手に当てれば勝利だ。実に単純明快だろ?あと弾切れは負けになるからな、気をつけろよ≫ 

マルセイユ ≪交差した瞬間からスタートだ。いいな?≫ 

俺 ≪ああ≫ 

俺 ≪その前に一つだけ言いたいことがある≫ 

マルセイユ ≪なんだ?≫ 

俺 ≪悪いがオレは空では誰にも負けるつもりは無い≫ 

マルセイユ ≪フッ…それは私もだよ≫ 

数秒後、双方は交差し、戦いの火蓋は切られた。 

マルセイユ (楽しませてもらうぞ) 

俺 (強がってはみたが、正直何処までやれるかはわからないんだ……だが、やれる所までとことんやってやるさ)


加東「さて、始まったわね」 

加東 (俺はマルセイユ相手にどの位持つかしら?) 

加東 (最短は真美の1分だったかな。まぁあの時は真美もまだまだ新人だったから仕方ないけど) 

加東 (でもそれは今の俺も同じ、2分持てば上等ってところかな……ふふっ期待してるわよ俺)

二機はお互いの動きを探り合う様に一定の距離を保っている。 

稲垣「俺さん、とても二回目とは思えない飛び方をしていますね」

ペットゲン「確かに、一つ一つの動きがとても鋭い……」 

 しばらくすると激しい後ろの取り合いに発展した。 

 空に複雑なループが刻まれてゆく。 

ペットゲン「わぁ……綺麗。俺はティナにもまったく遅れをとっていないよ。凄い、凄過ぎるよ」 

そう言ってライーサは目を輝かせながら、二人の戦いを眺めている。

ケイ (驚いたわ……俺はマルセイユの曲芸飛行にも難なく対応している) 

ケイ (私でも対等に渡り合うのは難しい……というより無理ね)


先手を取ったのはマルセイユ 


マルセイユ ≪ここまで粘られたのは久しぶりだ。褒めてやる≫ 

 俺 (……) 

照準を定めトリガーに手を掛けた。 

マルセイユ ≪だけど、これでお終いだ≫ 

 ダダダダ 

だが、放たれた弾丸はまるで俺から逃げる様に外れて行った。 

 マルセイユ「ッ!?」

マルセイユ (なんだと……そこまで曲がるのかっ!?こんなにも速い旋回をする奴は今までに見たことない)

気が付けば立場が逆転し、俺がマルセイユを追う形になる。

俺 (少し危なかった……しかし、すぐにやられてしまうと思っていたが、以外と戦える) 

俺 (それに……ストライカーでの飛び方コツが分かってきた) 

俺 (だがあの弾丸、まるで誘導性でも持っているかの様にオレに向かってきた。注意しなければな……)

俺 (さて、反撃と行こうか) 

マルセイユとの距離は約15M 

ダダダダダ 

しかし、弾は見当違いな方向へ飛んでゆく。


その後、5分間オレはマルセイユの後ろを取り続けていた。 

俺 (戦闘機であれ、ストライカーであれ。基本的なセオリーには変わりはない)

俺 (彼女の後ろを取り続けられている。それが何よりの証明だ)

俺 (しかし、似てるな……マルセイユ)

俺 (昔のオレとそっくりな飛び方だ)

俺 (闘争心ムキ出しの攻撃的なスタイルだ……確かに弱くはないが。自分で思っているほど、強くはないんだぜ)

マルセイユ (何故だ!!…俺を振り切る事が出来ない) 

マルセイユ (敵機を振り切れないなんて事、今まで一度もなかった!)

マルセイユ (戦闘機動が全て見透かされているようだ……くそっ!) 

ダダダダダ 
しかし、放たれた弾丸はマルセイユに擦りもしない。 

俺「ちっ……」

マルセイユ  (俺!何故そんなふざけた撃ち方をする!?この距離なら当てようと思えば何時でも当てられるはずだ) 

俺 (ダメだ。後ろを取ることはできるが、フィニッシュを中々決めきれない) 

俺 (やはりオレが動く物を狙うのは不可能に近い。ならば接射もしくはそれに近い距離で撃つしか無い)

俺 (アイツが反撃を仕掛けてくる時、それを狙い限界まで近付こう)


私達の目の前には、俄かには信じがたい光景が起こっていた。

人類最高とも謳われるマルセイユの放った弾丸を俺は軽やかに、かつ鮮やかに回避していった。

見るもの全てを魅了する、まさに神懸かり的と言うべき飛行で俺はあっという間にマルセイユの後ろをとってしまった。

彼が持つ独特のリズムがマルセイユを翻弄し、彼女の飛行が少しずつ乱れてきているのがわかる。

加東 (戦闘機動を的確に見切り、殺していく。恐ろしい程の判断力…)

加東 (信じたくは無いけれど、アフリカの星が…負ける…!?)


俺 (来いよマルセイユ) 

俺 (おそらくお前に残された手は一つしか無いはずなんだ…) 


マルセイユの十八番は前日ペットゲンが自慢気に語ってくれていたからな。
クルビット、最小半径で旋回し、敵機の後ろに一瞬にして回り込む機動。
何の予兆もなくやられると厄介な機動だが、来ると分かっているのならまた話は別だ。
ここまでそれが出ていないという事は、使うまでも無いと思っていたのだろう。 

 だが、追い詰められた今…それを使わない手は無い。 


俺 (もしオレの読みが正しければ…) 



俺 (オレが……)          マルセイユ (私が……) 





俺 (勝つ!!)        マルセイユ  (勝つ!!)


マルセイユ「今だッ!!」 ギュン!

俺「……やはりな」 ギュン!


マルセイユは機体スピードを落とし限界より小さい半径で旋回をする。 

通常なら、旋回が終われば目の前に敵機がいるはず……だった。 



だが実際にはオレがコブラを行い急減速したため、俺機を中心としてマルセイユ機が旋回する形となり旋回後は俺機の下方のかなり近い位置に出てきてしまう。 


マルセイユ「何だとっ!?俺が消えた!?」 


俺 (パーフェクト。敵機後方4M、この距離なら外さないぜ!) 

マルセイユ「後ろかッ!」
『捉えた』オレがそう確信した瞬間、身体の向きを変えることなく一瞬の内に銃だけをこちらへ向け発砲してきた。

俺「くっ! (そんなのアリかっ!?)」

放たれた弾は俺の腰付近を掠めるように飛び抜けていった。

俺 (だがっ!)

最後の抵抗を回避したところで銃撃、マルセイユのストライカーにペイント弾が命中する。

 俺「悪いなマルセイユ、オレの勝ちだ」



勝敗は決した。


マルセイユ (そんな……私が負けたのか……?)

マルセイユ (始めは適当にからかって終わらせようと思っていたが……全然甘かった)

マルセイユ (私の攻撃はことごとく回避され挙句の果てには後ろを取られ負けてしまった!)

マルセイユ (一体何なんだっていうんだこいつの強さは!?)

マルセイユ「なぁ お前は一体……ってあれ?」

振り返ると俺がいない。
どこに消えた?

稲垣 ≪マルセイユ中尉!俺さんが!!下、下です!≫

マルセイユ「下……だと?」

そう言われ下をみると頭を地面に向け落下していく俺の姿が視界に映る。

マルセイユ (おいおいどういうことだ!?)

急いで落ちていく俺の元へ飛ぶ。
自由落下しているだけなのですぐに追いつくことが出来た。

加東 ≪マルセイユ!?俺は大丈夫なの?≫

マルセイユ ≪大丈夫だケイ。
どうやら魔法力切れで気絶しているだけみたいだ。≫

加東 ≪そう、よかった……≫

マルセイユ ≪今から戻る。念のため医療班に連絡をいれておいてやってくれ≫

加東 ≪ええ、わかったわ。じゃあ俺をよろしくね≫

マルセイユ ≪あぁ、まかせておけ≫

マルセイユ「……」

マルセイユ 「まったく……魔法力切れで気絶するようなド素人のクセに何であんな飛び方ができるんだよ」

マルセイユ「俺……か。つくづく面白い男だ」

マルセイユ「ふっ……次は絶対に負けないからな」





最終更新:2013年02月15日 13:49