ヴェネツィア上空 元ネウロイの巣

俺(同胞…ガリアで俺を助け同化した小さなネウロイの事を言ってるのか?)

ネウロイ<<降って来たか…>>

灰色の曇り空から小雨が降り始めた中
目の前に迫っていた戦闘機型のネウロイは今までのネウロイとも従来のウィッチの航空機よりも早く俺に近づき
発射したビームを俺はロケットブースターの推進力と左ひねりの反転急降下しての重力を利用してすれすれで回避する

『魔法力蓄積炉残り魔力2% 魔法力蓄積炉直結ロケットブースター残り点火時間約20秒』

非情な情報を特別に改造されたFw190A0のストライカーオペレーションシステムが俺に声色を変えること無く教えてくれる

俺「くそっ、魔法力も残り少ない上にこっちの武装はロケット弾…下手したら振り切られるな…」

敵ネウロイは下へ向かった俺へ反転降下を行い、その機動力ですぐに俺を射程内に収める

俺「嘘だろ…早すぎ…っ!」

ネウロイ<<不死身のエースってのは戦場に長く生き続けた奴の過信だ、お前達の事だよ同胞>>

俺と敵ネウロイの距離の差が俺の予想を大きく裏切るほどに縮んでおり、既に急降下から右に流れながら水平に体を建て直す姿勢に入っていた俺を
戦闘機型ネウロイはその予想地点を向いて赤い熱線を放射した

俺「シールドも張れねぇのに…くそったれ…!」

持っていたフリーガーシュレックを盾にしようと、右腕を迫り来るビームとは真横に向けて衝撃に備えるが
ビームは俺の目の前で反れて、海へ落ち大きな水しぶきを上げる

俺「紫のシールド…」

俺の目の前にはウルスラの銃弾を防いだのと同じ『紫』のシールドを展開しており、複数のビームを弾く
その様子をみた戦闘機型ネウロイは俺を正面からすれ違い反転する
その無防備に背後を見せた敵にフリーガーシュレックを向けて残り少ないロケット弾を放つも
背後を向けていた敵ネウロイは機体を上に向けて機体後方のブースターらしき物から赤いエーテルを大量に噴射し一気に上昇してロケット弾を回避する

俺「冗談じゃねぇ…あんな早いのは無理…なっ!?」

敵ネウロイが旋回を開始したと同時に持っていたフリーガーシュレック2機が分解し始め、分解した破片が俺へと取り付き
簡易型のロケットブースターの魔法力が切れてその場に留まり、ネウロイの黒にその体を染め上げてゆく

俺(最後の最後でネウロイに取り込まれちまうのか…もう抵抗する魔力も無いって言うのに…悪いなトゥルーデ…)

ストライカーも、そして俺の体もネウロイの黒の装甲に覆われたが首の所まで黒く染め上げた所でその進行は終わり
頭の中に『ミヤフジヨシカ』のイメージが流れ、俺の体は従来の推進力を取り戻し反射条件で回避行動を取り、敵の攻撃を回避する

ネウロイ<<同胞 何故お前が人間の味方をするかは分からない>>

攻撃を回避された敵ネウロイは攻撃をするために下げていた機体を上に向け、上昇しながら再び俺の頭の中に直接語りかけた


      ◆


赤城型空母二番艦『天城』 後部甲板

ウルスラ「なんで…」

最終作戦成功の船員の歓喜の声でウルスラは俺が帰ってくるのを見るために小雨の降っている後部甲板に出たが
その目に映ったのは空を多い尽くす灰色の雲にネウロイの巣ほどの大穴が開いた円状の空の下、敵である漆黒の悪魔同士が戦い合う姿だった

ウルスラ「俺さんは…っ!」

もう俺には魔法力は残ってない…あれだけの魔法力蓄積炉でも計算ではギリギリだった事を彼女が一番良く知っている
あの2機のネウロイに撃墜された、そんな予想が頭を過ぎる

ウルスラ「…」ブンブンブン

悪い予想を振り払うかのようにウルスラは首を振り、再び2機の漆黒の悪魔を見上げる

ウルスラ「あの機体…それにもう一機は紫のシールド…」

一機は見覚えのある機体、もう一機は見覚えのあるシールド
彼女にとってそれだけで行動を起こすには十分な情報だった

ウルスラ「はぁ…はぁ…」

ウルスラは機材が搬入されたガレージに走り黒い箱状の機材を持って再び走り出した、501の皆が居る場所を探して



      ◆


ヴェネツィア上空

俺「体が…自由に動く?それにこの銃は…」

顔だけを残してストライカーを含むその体にネウロイの黒い装甲を身にまとい、黒に染まってはいるが使い慣れたMG131重機関銃が俺の手に握られている

俺「小さなネウロイ、お前なのか?」

その問いに、再び頭の中に『ミヤフジヨシカ』のイメージ、そしてバルクホルンのイメージが流れる

俺「…全く無茶を言ってくれる、っ!?」バシュン

イメージに気を取られて、再びこちらに向いた戦闘機型のネウロイの攻撃をシールドで防ぎ、俺の下方へすれ違った所で急反転し重力も味方につけて敵を追う

俺(トゥルーデを探している暇すら無い…501の皆を守る為にも、トゥルーデの為にも早く倒さないと…)

ネウロイ<<俺達(ネウロイ)は人類を守る為にここへやってきたはずだ>>

敵の後ろを取った俺は黒いMG131重機関銃状の武器のトリガーを引き、紫の弾丸で戦闘機型ネウロイを攻撃するが左右にバレルロールし
シャンデルと呼ばれる旋回と上昇を行われ、重力の恩恵を失った俺は機動力の差で一気に離される

俺「守る?お前達は人類を、俺達の故郷、カイザーベルクを…カールスラントを奪って何を言う!」

伝わるかも分からず、俺は頭の中に流れる声に叫びながら答え、敵を追わずに上昇をして落ちすぎた高度を回復させる

ネウロイ<<貴様達がイレギュラーさえ起こさなければ俺達は必要以上に進軍する必要は無かった>>

俺「イレギュラーだと?」

距離を離したネウロイは再び旋回して俺へと機体を向ける

ネウロイ<<ミヤフジと呼ばれる奴がストライカーユニットさえ作らなければ俺達はただ管理をするだけで良かった>>

俺「俺達はお前達の管理なんて必要としない!俺達は自分で未来を切り開いて来たんだ!」

機体正面から敵ネウロイはビームを放つも、俺は機体を急降下させ反転 落とした高度と重力を利用して速度を稼ぎつつ敵の背後から再びMG131のトリガーを引く

ネウロイ<<それで未来の人類は何をした?人類同士が戦い、世界を荒廃させただけだ>>

俺「何を…!」

敵機体は再び左右にバレルロールをして回避を行うが、俺はその挙動にしつこく付いていくと
戦闘機型のネウロイは敵の居ない場所へ低速のビームを放ち、機体を左に捻り降下していく

俺「逃がすか…!」

予感
 頭の中に宮藤のイメージが、ネウロイから流されず自分で思い出した宮藤の記憶が一瞬だけ流れ、構えていた体制を崩し敵ネウロイと同じコースを無理やりたどる
 低速のビームは俺が銃を撃っていたら通過していただろうコースとその周辺の空間を太陽のような光と共に爆発させていた

ネウロイ<<全てをやり直す そのために俺達は未来から送られてきた>>

 ネウロイは複数の先ほどと同じ低速なビームを放ち俺との間に光の壁を作るようにそれらを爆発させた


      ◆


ネウロイ<<俺達は人類に適度な脅威となることで、人類同士の戦いを止めさせ人を共存させる為にここに来た
 だがお前達がイレギュラーな力を手に入れた為に俺達の作戦は大きく修正された>>

爆風の壁が無くなり、俺との距離をかなり稼いだ戦闘機型ネウロイは旋回しながら続ける

ネウロイ<<ストライカーユニットは危険だ、未来にも無い力だ その力で再び世界を荒廃させないように破壊するべきだと
 命令されたはずだ 同胞>>

俺は旋回する敵ネウロイを追って、空に出来た雲の円卓を通り過ぎ、小雨の降る雲の下に入る
その間ずっと俺の頭の中には『ミヤフジヨシカ』の様々なイメージが同化したネウロイによって流される

俺「…宮藤の皆を守りたいという思いが、彼女の思いが伝わった501にいるメンバーの思いが世界を荒廃なんてさせない!」

同化したネウロイの声を代弁するように声を荒げて返答し、お互い正面から攻撃を仕掛けるが
戦闘機型ネウロイは機用に機体をロールさせて弾丸を回避する

俺「まだまだっ!」バシュン

紫のシールドで敵の攻撃を弾いた俺はその勢いも利用して一気にその場で反転し敵の背後に取り付く

ネウロイ<<それが戦う理由か同胞…だがイレギュラーがイレギュラーを呼んだ結果だ、
 確実な結果ではない以上俺達は同胞を撃ってでも未来の為に戦う 今までそうして来たようにだ>>

俺「俺の中のネウロイが命を賭してでも信じたように、俺もあいつらを信じる…!」

数度目の背後をとった俺は敵の軌道を予測し、機関銃のトリガーを引き紫の弾丸で敵を肉薄する

俺「シールド!?」

敵の軌道が読めてきた所で紫の弾丸が命中軌道に乗るも、戦闘機型ネウロイは背後にシールドを展開してそれを防ぐ

ネウロイ<<…人類は再び力を手に入れてしまった たとえミヤフジの思いが強くとも、もう俺達は止められない>>

戦闘機型ネウロイは距離を離し、ネウロイの巣の跡地であった雲の円卓へと進み、旋回する

ネウロイ<<時間だ>>

その言葉を合図に雲の円卓は光の粒を纏い、ネウロイの巣の外装を徐々に成形して行く


      ◆


赤城型空母二番艦『天城』 甲板

サーニャ「そんな…ネウロイの巣の反応が」

ペリーヌ「巣が再生してますわ…」

エイラ「嘘ダロ…」

宮藤「それにあのネウロイ…」

リーネ「うん…バルクホルンさんが使っていたジェットストライカーみたいに早い…」

小雨の降る灰色の空に舞う2機の漆黒の悪魔の戦いを見ていた501メンバーはコアを破壊したはずのネウロイの巣が再生していくのをただ見上げている
その中でミーナ中佐を坂本少佐が取り押さえていた

ミーナ「離して美緒!トゥルーデが…助けに行かないと!」

坂本「落ち着けミーナ、2機の未確認ネウロイが居るのに魔法力の無い私達が行ったら落とされるぞ!」

ミーナ「でも、トゥルーデ…」ドシャ

シャーリー「…くっ!」ダダダダ…

坂本「シャーリー待て、何処へ行く!」

泣き崩れるミーナを離した坂本少佐は手は、ストライカーが格納されたガレージに向かうシャーリーを掴もうととするが早すぎて止められない

ウルスラ「待ってください!」

彼女達501メンバーの背後に走ってきたウルスラは『バン』という少し強めに甲板に何かを置く音を出し、走っていたシャーリーや501メンバーの視線を釘付けにする

エーリカ「ウルスラ?それに通信機なんか持って…」

ウルスラ「はぁはぁ…ミーナ中佐、お願いがあります」

息を切らせながら少し大きめの箱状の通信機を置いて、泣き崩れていたミーナ中佐に語りかけた


      ◆


ヴェネツィア上空

 破壊したはずのネウロイの巣が黒い装甲を少しずつつなぎ合わせて巨大な黒い球体を再生させていく

俺「ネウロイの巣が…何故再生を…」

ネウロイ<<もう遅いんだ同胞 既に歪んでしまったパズルは一度リセットするべきだ この『巣』でこの体を、『力』を量産し全てをゼロに戻し、次の世代へ未来を託そう>>

 再生して行くネウロイの巣を背後に、スピードを落とした戦闘機型ネウロイが俺を正面に捕らえ、俺も迎撃体制を整えようとした時
ノイズが多少混じった通信がネウロイ化を免れた耳に付いているインカムから流される

ミーナ<俺中尉…聞こえますか?俺中尉…>>ザ…ザザザ…

俺<…ミーナ中佐ですか?聞こえてます俺中尉です>

ミーナ<もう一つの黒い機体は俺中尉だったんですね…>

俺<はい、今事情は話せる余裕は無いですが>

ミーナ<いえ、事情は後にします…俺中尉が交戦している機体の情報をウルスラ中尉が教えてくれました
 あの機体のコードネームは『ウォーロックツヴァイβ』前の実験での失敗を糧に『ダイナモ機関』を搭載するはずだった機体らしいです
 失敗作だった為破棄された所をネウロイに見つけられたのでしょう…>

俺(ウォーロック?ガリア開放時に噂では聞いた事があるが…)

ミーナ<機体の後方と側面には強力なシールドで守られています 唯一の弱点はシールド開発が出来なかった前方のエアインテーク部分です
 正面角度から攻撃を行い撃墜してください…>

ミーナ<あの機体がネウロイの巣を再生させている原因だと考えられます、今そこであれを撃てるのは貴方だけです 『不死身の悪運』幸運を祈ります>

多少涙声の入ったミーナ中佐の交信がそこで途絶えた

俺「…皮肉な物だな、悪運に幸運ってのは」ギイイイイイイイン…

俺は再び正面を向き、再生するネウロイの巣を背後でこちらを向いているネウロイに奪取されたウォーロックツヴァイβに向かい
ネウロイの黒に染まったFw190A0に残り少ない魔法力と与えられたネウロイの力を流し、加速した 


      ◆


ネウロイ<<俺とお前は鏡のようなものだ>>

正面角度から互いに攻撃を仕掛けるも、ウォーロックツヴァイβは弱点を着かせずにロールしながら回避しつつ
俺へのビーム攻撃を着実に当てる

俺「ぐぅ…」バシュン

紫のシールドで敵の攻撃を防ぐも魔力を大量に消費しており、辛そうに左手をかざして耐える

ネウロイ<<向かい合って初めて本当の自分に気がつく>>

シールドを張っていて停止していた俺へ高速で切り返したウォーロックが『低速なビーム』を放つ
そのビームを確認した俺はその場で地面方向へ反転し、一気に地上へ急降下し、巨大な爆発を起こす空間から
ギリギリ切り抜ける

ネウロイ<<人類を救う目的は似ているが、正反対だな>>

俺の急降下の行動を予測してたかのように既に俺の後ろにウォーロックが張り付いている
俺は被弾を覚悟して水平に体を戻し、シールドを展開しつつMG131で反撃を行う

俺「全くその通りだ」ヴウウウウウウウウン…

シールドで敵の攻撃を受け流しつつ、左右に体を振りながら前進しウォーロックに攻撃を続けるが
すぐに漆黒に2機はすれ違い、俺は反転せずに落ちた高度を回復させるために急上昇を行う

ネウロイ<<同胞 これは終局ではない ここから全てが始まるんだ 解るな?>>

加速力により海面ギリギリで旋回したウォーロックは機首を上に上げて俺へ方向を定めつつ
ジェット状の噴射口から大量のエーテルを噴出しながら上昇する

俺「くそ…そんな事させる訳にも行かないんだよ!」

急上昇を行い再び高度を稼いだ俺は追いつくウォーロックを確認して縦にロール挙動を行い加速していた
敵の底面へ攻撃をしかけるが、シールドであっさりと弾かれる

ネウロイ<<ここで人類が優位に立つか、俺達が優位に立つか全てが決まる!>>

ウォーロックは縦に、俺は水平にすれ違い お互い旋回を始める

俺「終わらせるわけには行かない…大切な人達の為に…!」ヴウウウウン…

ネウロイ<<奮い立つか?ならば俺を落としてみろ>>ギイイイイイイン…

俺は機体を上に、ウォーロックは下に機体を向けてお互い正面角度を取る

ネウロイ<<撃てみろ裏切り者!>>

俺「くそったれええええええええ」ダダダダダダ…

俺はシールドを張りながら正面角度、ウォーロックツヴァイβのエアインテーク部分を打ち抜ぬくコースの弾丸を発射したはずだった
だが、俺の紫の弾丸は弱点だったはずの場所にシールドを張られ全ての攻撃が防がれ
俺のシールドは敵の正面角度からの攻撃に絶えられず貫通し、被弾する

俺「ごほっ…敵も馬鹿じゃないか…弱点を克服してやがる…」バチバチ…

被弾した俺は同化している小さなネウロイによって作られた漆黒の鎧に守られたが、その鎧がいくつか音を立てて剥がれて行く

俺「無理させて悪いな…」

聞いているかどうかも分からない、同化した小さなネウロイ相手に空に呟く
その言葉を聴いていたかのように俺の中にネウロイの巣の外壁を壊した『大和』の艦首のイメージが流れる

俺「…分かった、もう少し付き合ってくれ」

ダメージによりスピードを減少させていた俺の後ろからの攻撃を回避しつつ、高度から落ちているにも関わらず
海に浮いている無人の『大和』へ高度を落としながら真っ直ぐ向かう



      ◆


ネウロイ<<どうした?撃ってみせろ!お前達の望む未来の為に>>

頭の中に響く声を無視して、俺はウォーロックツヴァイβの攻撃を機体を左右に振って回避しつつ大和の艦首を掠め、上昇する

俺「う…なんだコレは…」

俺の左手に握られていた大和の艦首に刺さっていた坂本少佐の刀は俺から数少ない魔力を吸い取り始める

俺「こんなのを使ったら…お前も…くっ!」ヴウウウウウウン…

同じく大和の艦首を掠め飛んで、距離を詰めていたウォーロックは攻撃をするが、俺は反撃をせずに敵とすれ違う間
俺の問いに同化したネウロイは頭の中に迫ってくるウォーロックツヴァイβのイメージを必死で流して答える

俺「…分かった」

一瞬だけ、少女の姿をしたネウロイが感謝をしているように首を横に傾けたイメージが流れる
そしてウォーロックは高高度から旋回して俺へ向きを直し正面から多数のビームを放ちつつ俺へ迫り
俺もまた、敵に対して銃を構えずに上昇し多数のビームを相手に正面から突き進む

ネウロイ<<撃ってみろおおおおおおおおおおお!>>

俺「うおおおおおおおおおおおおおおお!」

多数のビームを最小限で回避するように努める俺だったが、回避しきれずいくつも被弾しながら敵の左側ギリギリを
左手に持っていた刀から紫の衝撃派を出しながら、ウォーロックツヴァイβを二つに切り裂き 互いにすれ違い
ウォーロックは海へと落ちて行く


      ◆


ネウロイ<<…同胞…お前達の望みは未来をも超えているのかもしれない…ありがとう戦友、そして未来を頼む…ミヤフジと…>>

俺の頭の中にそれだけ語りかけ、ジェットの轟音を放ちながら海に着水する前にウォーロックツヴァイβは爆散し
再生していたネウロイの巣は光の粒を大量に撒き散らしながら小雨を降らせていた灰色の雲を大きく吹き飛ばし散って行く

俺(…綺麗だな、こんなのが本当に有害なんて思えないほど)

敵を討つために上昇していた俺はゆっくりスピードが落ちて、程なくして空中で止まる

俺(もう…シールドも…意識も限界らしい…)

再び顔を覗かせた太陽が差し込む中、俺は持っていた刀を手放し、重力にしたがって墜ちていく


       ◆


「----------------------------!」
俺(なんだ…何かが聞こえる…今度こそあの世からのお迎えかな…)
全てを覚悟して目を俺は目を瞑り、ゆっくりと全身の力を抜いていく
「-れ---さ----------!」
耳に朦朧と届く声が次第に近くなり、はっきりと聞こえてくる

ウルスラ「俺さんーーーーーーーーーーーー!」

シャーリー「俺ええええええええええええ」

かすかに残った俺の意識にウルスラとシャーリーの声が聞こえ、落下していた体を抱きとめられる

俺「…ウーシュ?…それにシャーリー…」

俺の目に幸運の女神のように映ったその二人はずぶ濡れになった服と涙を流した顔で俺を受け止めてくれる

ウルスラ「…生きて…ますよね」ヒックヒック

エーリカのストライカー『Bf109K9』を履いたウルスラは体を震わせながら俺の顔を覗き込んで聞いてくる

俺「ああ…ただ少し疲れた…寝かせてくれ…」

シャーリー「おい、しっかりしろ!?」

ウルスラ「早く天城へ…治療を!」

シャーリー「分かった!」

ひび割れてボロボロになった漆黒の鎧を纏った俺の両脇を抱え、二人は501メンバーが待つ『天城』へと向かった



      ◆


赤城型空母二番艦『天城』 甲板

501メンバーが待つ甲板へボロボロになった俺を担いだウルスラとシャーリーはゆっくりと着艦し
宮藤の元へと運ぶ

ミーナ「これが…俺さんなの…?」

坂本「黒いな…」

エイラ「なンカ…すごいナ」

顔だけを除き俺と同化していたネウロイによって作られたボロボロの漆黒の鎧姿を501メンバーは恐る恐る覗き見ている

シャーリー「宮藤は!?」

宮藤「は、はい!」

船内から出てきた宮藤は慌てるように走って俺の前までたどり着く

宮藤「俺…さん?」

ウルスラ「はい…治療をお願いします…」

その姿に少しだけ確信が持てなかった宮藤もウルスラの言葉を聞き、顔を引き締めて両手をかざすと
俺に纏っていた漆黒の鎧は徐々に剥がれて行き、鎧の破片が宮藤の前に集まり固まってゆく

ペリーヌ「なんですのコレは…っ!」

ペリーヌが言い終わる前に俺から全ての鎧が剥がれ、宮藤の前に少女の形をした人型ネウロイが現れる

宮藤「君は…」

ミーナ「ネウロイ!?」

サーニャ「…でも敵意が無いです」

武装を持たない501メンバーの前に現れた人型ネウロイは自分の胸部を空けて宮藤に己の、ひび割れて崩壊寸前のコアを曝け出す

宮藤「あの時の子なの…?」

ガリアで宮藤は同じ事があった、人の姿をしたネウロイが己のコアを曝け出し何かを伝えたいようにただ待っている
その時と違うのはそのコアは今にも壊れそうなくらい不安定な状態である事だった

その曝け出された少女の姿をしたネウロイのコアに宮藤は手を伸ばし…触れた

<<ごめんなさい…何も出来なくて ありがとう、生き残ってくれて>>

宮藤の頭の中にだけ語りかけ、そのネウロイはコアがゆっくりと崩れ、少女の形から白い粒が潮風の乗りながら形を崩し消えてゆく

宮藤「…ごめんねを言うのは私の方だよ、あの時お話出来なくて…ごめんね ボロボロになっても伝えてくれて…ありがとう」

宮藤はその言葉を風に乗った光の粒に語りかけ、鎧の無くなった俺に向き治り治癒魔法をかけ始めた

最終更新:2013年01月28日 14:47