---連合国軍本部:応接室---

ミーナは再び連合国軍最高司令官に呼び出されていた。

司令が年輪のように刻まれた皺を一箇所に集め、厳かな口調で話し始める。

司令「それで、結局ネウロイは消えなかったわけだ・・・」

ミーナ「はい・・・」

視線少し下へ向け、ミーナが答える。

司令「滅びを呼ぶ者・・・『デス』・・・」

司令「実は君から報告を受けた後、こちらでも少し調べてみたんだよ。」

司令「そのデスについて・・・そしてグレゴリと名乗る2人組みの言う研究についてね。」

少し驚いた表情でミーナは司令を見る。

ミーナ「それで・・・何か手がかりは?」

司令「その事に関して知る人物を一人つかんだ・・・それもその人物は・・・君も、君の部隊のウィッチ達もよく知る人物だ。」

ミーナ「私達が知る人物・・・」

司令「この名前を覚えているかな?」

司令の口から告げられた人物の名はミーナの脳に刻まれた記憶を一気に呼び戻す事になる。

司令「『トレヴァー・マロニー元ブリタニア空軍大将』」

司令「以前、ブリタニアでのガリア開放作戦の際、君達第501統合戦闘航空団の上層部にいた人間だ。」

ミーナ「っ!!」

その名前に、思わず声を上げそうになる。

『トレヴァー・マロニー』。確かに司令はそう言った。

去るガリア開放の際の501の上層部の人間にして、ウィッチたちの活躍を目の敵にしていた人物。

世界の主導権を得るためには手段を選ばない男。ミーナはその男をそういう人物だと認識していた。

司令「彼はどうやらウォーロックの開発が知れ渡った後、軍法会議にかけられ、ブリタニアの刑務所に入れられているようだ。」

司令「君達が望むならば、ブリタニア本国と彼との面会を取り合ってみようと思うのだが・・・どうかな?」

考えるまでも無く、彼女はこう即答した。

ミーナ「是非、よろしくお願いします・・・」

司令「わかった。では日時が決まり次第、追ってそちらに連絡しよう。」

ミーナ「はい。」

司令「それと、宮藤軍曹についての件だが・・・」

ミーナ「彼女が・・・何か・・・?」

ミーナの表情が少し強張る。宮藤がネウロイの力を有している事は上層部にもまだ報告していなかった。

報告すれば、宮藤がどうされるか分かったものではない。

司令「彼女はネウロイの力が使えるそうだね。」

しかし隠すまでも無く既にバレていた。上層部の情報網も舐めたものではなかった。

ミーナ「はい・・・」

司令「いや、勘違いしないでくれ。彼女の事について黙っていた事を咎める気は無い。寧ろ君がそれを黙って気苦労をしていないか気になってね。」

ミーナ「え・・・?」

司令「宮藤軍曹には引き続き君の部隊で頑張ってもらう。だからそのことについてもう隠す必要は無いよ。」ニコ

と父親のような微笑を浮かべて司令はそう言った。

ミーナ「閣下・・・ありがとうございます・・・」

一方・・・

残されたメンバー達はミーナが不在かつ、ネウロイ出現の気配も無かったためこの日は非番とされた。

俺はエーリカの運転で僕を連れ、僕の記憶の手がかりを探すために買出しついでに町へと繰り出していた。

---街中---

キィッ

エーリカ「とうちゃーく。運んであげたんだから約束、守ってよね~」ニシシ

約束とは彼女にお菓子を満足ゆくまで振舞うというものだ。

俺「うぇっぷ・・・了解っス・・・」

三人が車を降りる。

僕「それにしても、綺麗なところだね・・・」

エーリカ「ってことは、この景色見ても思い出すことはなしか~」

僕「うん・・・でも、少なくともこの景色ははじめてみたよ。」

俺「そっか・・・」

エーリカ「ま、もうちょと景色見ればなんか分かるかもしんないし、ちょっと歩いてみない?あたしも付き合ったげるからさ。」

僕「ありがとう、エーリカさん。」

俺「あれ・・・?」

僕「どうしたんだい?」

ふと目を向けた俺の視線の先に1人の男性。しかし、どうも様子がおかしい。

奇妙な男「あ・・・ああ・・・あ・・・・・」

俺「どうしたんですか!?」タッタッタ

男性の元へと急いで駆け寄る。

奇妙な男「うあ・・・ああぁぁ・・・あ・・・ああ・・・」

男性はただ一点を見つめ呻き声を上げている。

俺「大丈夫っスか?しっかりするっス!」

エーリカ「ちょっと診せて!」

エーリカが男性の状態を確認する。

医師を目指していた彼女は、それなりにも医学に通じていた。だが・・・

エーリカ「私・・・こんな病気、知らない・・・」

僕「一体・・・どうしたんだろう・・・?」

俺「わからない・・・」

女性の声「きゃああああああぁぁぁ!!」

俺&エーリカ&僕「!?」

町の平穏な雰囲気を切り裂く悲鳴。叫びが聞こえたほうへと視線を移す。

そこには地を這う黒い塊。

バスケットボール程の大きさで、球に腕を生やしたような少々グロテスクな姿のネウロイがいた。

エーリカ「あれって・・・」

俺「ネウロイ!!」ダッ!

急いで女性の元へと走り出す。

僕「俺くん!!」

女性「いや・・・こないで・・・!」

小型ネウロイは女性へとゆっくり近づく。

俺「このッ!」ガンッ!

女性が襲われる直前で俺は小型ネウロイを蹴り飛ばす。

グガッ!

ネウロイは衝撃で少し遠くへ吹き飛ばされる。

俺「大丈夫っスか!?」

女性「は・・・はい・・・」

俺「よかった。僕、この人を連れてどこか安全な場所へ!」

僕「わかった!さあ、こちらへ。」

僕は女性を連れそこから走り去る。

ギチギチ…

金属を擦り合わせたような音を発しながら、ネウロイが今度は俺へとゆっくり近づいてくる。

俺「クソ・・・丸腰じゃ・・・」

俺「いや・・・こいつがあったな。」

俺は腰のホルスターからハンドガンを取り出す。

この前手に入れたペルソナの召喚器だ。

俺(大丈夫だ・・・もう暴走したりは・・・しない・・・!)

次第にネウロイが近づいてくる。俺は目を瞑り銃口をこめかみに当てる。

俺「集中・・・」

一度呼吸をおいて集中する。

ギギギギギギ!!

そうこうしている内にネウロイが襲い掛かってきた。が・・・

カッ!と、目を見開き、もう1人の自分の名を叫び、トリガーを引き絞る。

俺「オルフェウス!!」バァン!

俺の頭に衝撃が走ると同時に、背後から機械人形のような姿をしたペルソナ、オルフェウスが現われる。

俺「いけぇ!」ガツッ!!

俺の意思に呼応し、オルフェウスが背負っていた琴でネウロイを殴りつける。

ギュオオオオオ!!

大きく悲鳴を上げた後、ネウロイは白い破片を散らし消滅した。

俺「ふぅ・・・終わったか・・・」

オルフェウスも役目を終え、次第にその姿を霞ませてゆく。

エーリカ「うっそ・・・何あれ・・・」

オルフェウスの姿をまだ見ていなかったエーリカは驚きを隠せない様子だった。

男性を診ていたエーリカの元へ俺が戻ってくる。

俺「大丈夫っスか、中尉?」

エーリカ「う、うん。ねぇ俺、今の・・・」

俺「あ、そっか。中尉はまだ見たことなかったんスよね。」

俺は自身のペルソナの力について説明した。

エーリカ「そうなんだ・・・やるじゃん、俺~」

俺「あはは・・・光栄っス。」

僕「おーい!2人ともー。」

女性を避難させた僕が戻ってくる。

俺「僕、あの女の人は?」

僕「大丈夫。ちゃんと安全な場所まで連れて行ったよ。近くに居た人も避難してたみたいだね。」

俺「そっか、サンキューな。」

エーリカ「ねぇ、とりあえずこの男の人病院へ運ぼう?」

俺「そうっスね。僕、手伝ってくれ。」

僕「うん。」

その後男性を病院へつれて行き、三人は基地へと戻った。

夕方

---基地内ラウンジ---

基地へ戻った後、俺は早速バウムクーヘンを焼いて皆に振舞った。

エイラ「ふーん・・・街中にネウロイカ・・・」モグモグ

ルッキーニ「そのネウロイは倒せたの?」アムッ

俺「はいっス。ただ・・・」

シャーリー「ただ?」モグモグ

俺「なんだか変になっちゃった男の人がいて・・・えっと・・・なんて説明すればいいか・・・」

エーリカ「そうそう。なんかね、その人の目に光を感じられなかったんだ。」

エーリカ「それでずっと呻き声をあげてて、その場から動こうとしないんだよ。なんだか、生気が無くなちゃったみたいにさ。」

坂本「ふむ・・・瘴気にあてられたのかもしれんな・・・」

俺「はいっス。それで、その後ボールみたいなちっこいネウロイが現われて・・・もしかしたら、あのネウロイが原因で変になっちゃったんじゃないかって。」

ペリーヌ「なんだか信じがたい話ですわね・・・」

話しているところへ宮藤がやって来た。

芳佳「あ、みなさんこんなところに・・・ !!」ピコッピコッ

宮藤は突然使い魔の耳と尾を発現させ、同時に左目を赤く染める。

僕「やぁ、宮藤さん。こんにちは。」

芳佳「ダメ・・・」ボソッ…

僕「え?」

芳佳「ごめんなさい!!」タッタッタ…

宮藤はそのままどこかへ走り去った。

坂本「宮藤!」ガタッ!

タッタッタ…

坂本も宮藤を追いかけてラウンジから出て行った。

ペリーヌ「お茶の変え、持ってきますわ。」ツカツカ…

リーネ「わ・・・私も行きます!」タッタッタ

ペリーヌとリーネの二人も出て行ってしまった。

エイラ「どうしたんだろうナ、ミヤフジのヤツ。」

僕「・・・・・」

俺「そう気を落とすなって、ほら、まだお菓子あるからさ。これ食って元気出せよ。」

僕「うん・・・ありがとう。俺くん。」

---基地内バルコニー---

坂本「一体どうしたんだ、宮藤?」

芳佳「坂本さん・・・」

坂本「さっきのお前の焦り方、尋常じゃなかったぞ。何があったか話してみろ。」

芳佳「・・・・・」

だが、宮藤はは黙りこくったまま何も話そうとしない

坂本「宮藤。」

芳佳「はい・・・」

坂本は宮藤の両肩に手を置く。

坂本「私はいつだってお前の味方だ。これまでも、そしてこれからも。」

坂本「だから私を信じて、どうか話してくれないか?お前が悩んでいる事を。」

芳佳「・・・・・」

観念したのか宮藤が口を開く。

芳佳「・・・怖いんです。」

目を伏せながら宮藤がそう呟いた。

坂本「?」

芳佳「よく分からないんですけど・・・怖いんです、あの人が・・・」

坂本「怖い・・・?」

宮藤は肩を小刻みに震わせている。坂本はそれを手で感じ取った。

芳佳「・・・あの人の近くに行くと、私の中のネウロイが急に苦しむみたいで・・・」

芳佳「あの子・・・きっと怖がってるんです、彼を。それで私まで怖くなっちゃって・・・」

芳佳「私・・・きっと傷つけちゃってますよね・・・僕さんのこと・・・」

宮藤はぐっと唇を噛んだ。

坂本「そうか・・・よく話してくれたな、宮藤。」

坂本は肩に乗せていた手の片方を彼女の頭の上に乗せ、撫でる。

芳佳「坂本さん・・・」

坂本「何もお前1人で抱え込むことはない。私達は仲間・・・いや、家族なんだからな。」

芳佳「・・・ありがとうございます・・・坂本さん・・・」

その様子を見守る影が二つ・・・

ペリーヌ「・・・・・」

ツカツカ…

リーネ「ま、待ってくださいペリーヌさん!」コソコソ

---ブリーフィングルーム---

僕は軍事関係者ではないためこの時間は部屋で待機させている。

本部から戻ってきたミーナが話を始める。

ミーナ「今日は皆さんに大切なお話があります。」

ミーナが真面目な表情で口を開く。

シャーリー「もしかして、デスのこと?」

ミーナ「ええ、そしてグレゴリの2人が施された研究について・・・」

ミーナ「それを知る人物と、近々面会をすることになりました。」

坂本「なんだと!?」

ゲルト「一体誰なんだ!」

驚きを隠せない2人が声を上げる。

しかし、ミーナはそれを冷静に諫める。

ミーナ「落ち着いて2人とも。」

坂本「あ・・・ああ・・・」

ゲルト「すまない。」

2人が平常心に戻ったのを確認し、説明を続ける。

ミーナ「その方は、以前私達とも面識の有る人物・・・」

ミーナ「トレヴァー・マロニー元空軍大将よ。」

全員「!?」

全員の表情が瞬時に強張る・・・ただ一人を除いて。

俺「へ?誰?」

ミーナ「そうね・・・俺さんは知らなかったわね・・・」

芳佳「マロニーさんってブリタニアの時の・・・」

リーネ「うん・・・私の国の大将の人だよ・・・」

エーリカ「どうして今更あいつの名前が出てくるのさ。」

ミーナ「私も詳しくは分からないわ。ただ、彼が人工ウィッチと人工ネウロイに何かしら関わっていたのは確かなようね。」

ゲルト「終わっても尚私達の邪魔をするのか・・・」

ゲルトの拳に力が入る。

ミーナ「ともかく、話を聞かなければなにも分からないわね。」

ミーナ「面会にはウィッチーズ全員・・・と言うわけには行かないので代表して私を含めた3人で行きたいと思います。」

ミーナ「それで誰か2人選ばなければならないのだけれど・・・」

俺「えっと・・・俺、行きたいっス。」

俺が真っ先に手を挙げた。

ミーナ「あら、どうしてかしら?」

俺「いえ・・・ただマロニー大将ってどんな人かなって・・・」

ミーナ「そうね・・・あなただけ知らないというのもアレですし・・・いいでしょう。」

ミーナ「それで、他には?」

サーニャ「あの・・・私も、行きたい・・・です・・・」

サーニャもオドオドしながら手を挙げる。

エイラ「サーニャ!?」

ミーナ「サーニャさん・・・ごめんなさいね。あなたが居なくなってしまうと夜間哨戒に出る人がいなくなってしまうのよ・・・」

サーニャ「っ・・・そう・・・ですね・・・」シュン

ミーナの返答に、サーニャは残念そうな表情を浮かべた。

エイラ「サーニャ・・・中佐、どうしても無理なのカ?」

ミーナ「そうね・・・俺さんがいないとなると代わりが・・・」

俺「だったら俺、辞退するっス。」

サーニャ「え?」

俺「サーニャさんが行きたいなら、俺が残るっス。」

ミーナ(本気で言ってるのかしら・・・それとも・・・)

エーリカ(鈍感だなぁ・・・あ、もしかしてエイラに気使ってんのかな?)

シャーリー(コイツ・・・気づいてないのか?)

ペリーヌ(まったく、この殿方は・・・)

リーネ(俺さんェ・・・)

はぁ・・・と周りの何人かがため息を漏らしジト目で俺を見る。

俺(あれ・・・心なしか一部の視線が冷たい気がする・・・)

ルシフェル ――全くお前は・・・――

スルト ―――愚か者が・・・―――

スカアハ ―――はぁ・・・――

俺(なんなんスかお前らまで!)

ミーナ「俺さんはああ言ってるけれど、サーニャさんはどうしたいかしら?」

サーニャ「いえ・・・私、残ります。俺さん、行って来て下さい。」

俺「え?いや、でも・・・」

エイラ「い、いいのカ?サーニャ?」

サーニャ「うん。いいのよ、エイラ。」

ミーナ「ごめんなさいねサーニャさん。それで、他には・・・」

芳佳「あの・・・じゃあ私、行きたいです!」

ミーナ「宮藤さん?」

芳佳「私・・・あの人には・・・まだ聞きたいことがあるから・・・」

ミーナ「そう・・・分かったわ。ではこの2人で決定しますがいいですね?」

ゲルト「ああ、基地のほうは任せてくれ。」

エーリカ「お菓子よろしく~」

ルッキーニ「おみやげもー!」

シャーリー「おいおいルッキーニ、旅行じゃないんだぞ。」

ゲルト「お前もだ、ハルトマン。」

エーリカ&ルッキーニ「え~」

エイラ「サーニャを差し置いていくんだからきっちり聞いてこいよ、俺、ミヤフジ。」

俺「も、もちろんっス。」

芳佳「あはは・・・」

サーニャ「エイラ・・・」

ミーナ「ごめんなさいねトゥルーデ・・・あなたもクリスと会いたいはずなのに・・・」

快方に向かっているクリスであったが、完全に回復するまでには時間を要するようで、未だブリタニアの病院に預けられていた。

ゲルト「気にするなミーナ。今の副隊長は私だからな。このくらいの事は承知しているさ。それに、戦いが終わりさえすればクリスとはいつでも会える。」

ミーナ「トゥルーデ・・・」

エーリカ「トゥルーデおっとな~」

ゲルト「茶化すな、ハルトマン。」

まったく・・・とため息をつくゲルト。

坂本「なに、いざとなれば私も居る。心配せずに行ってきてくれ。」

ミーナ「そうね・・・よろしくお願いするわ。」

面会へ行く2人が選出された。

面会は都合上ブリタニアにある刑務所で行われることになっている。

そして後日、ミーナ、俺、宮藤の3人はブリタニアへと飛び立った・・・

続き→ペルソナ14
最終更新:2013年01月29日 14:18