1週間後

坂本「やぁっ!!」ヒュン!

俺「おおおぉッ!!」シャン!

キィン!

俺「くっ・・・」ゼェゼェ

坂本「どうした、腰が引けているぞ。それとも、真剣では恐いか?」

来たるべき戦いに備え、俺は坂本と稽古に打ち込んでいた。

何故二人が真剣で打ち合っているか。事は5日前にさかのぼる。

~5日前~

---基地内ラウンジ---

それはラジオへ耳を傾けていた時であった。

ラジオの声《・・・依然、絶望病患者数は増加の一途を辿っており、政府も対応に追われています。》

ラジオの声《現在、世界規模で地上型の超小型ネウロイの出現が多数確認されています。》

ラジオの声《それに伴い、現在、連合国軍総司令部から緊急外出禁止令が発令されおります。》

ラジオの声《該当のネウロイ出現地域にお住まいの方はくれぐれも外出は控えるようにしてください。》

ミーナ「これも・・・彼の言っていた母なるものの影響かしらね・・・」

坂本「ああ・・・それに、その話にかこつけて妙な思想も出てきたそうじゃないか・・・」

ゲルト「終末思想とかいう話か・・・それなら私も新聞で見たな。」

エーリカ「バッカみたい。そんな事あたしらがさせないっての。」

シャーリー「ま、わからない気はしないけどな・・・こんだけおかしな事が起きてりゃ、そりゃ不安にもなるって・・・」

ミーナ「そうね。一般の人たちはこの事を知らないものね・・・」

その時だった。

ラジオの声「では、次のニュー・・・ザザ…ザザザ…」

突然ラジオの声にノイズが混ざり始める。

坂本「どうした?故障か?」

ゲルト「妙だな・・・」

ラジオの声《ザザ…皆様、ごきげんよう。》

俺「この声!?」

芳佳「確か、イヴって人の・・・」

ラジオからは突然、グレゴリの1人であるイヴの声が聞こえてきた。

ラジオの声《人間は今、憎悪の連鎖と将来の不安とが循環する目に見えない牢獄の囚われとなっています。》

ラジオの声《しかし、今世界は私たちを新たなステージへと引き上げる存在が訪れようとしている。》

ラジオの声《私は、その力・・・ネウロイの力とその真実に触れ、一足先にその力の一部を獲得しました。》

エイラ「コイツら・・・何言ってるんダ・・・?」

ラジオの声《そして、その力を得て私は確信しました。ネウロイの訪れは、全ての人間、いや、生きとし生ける者は全てにとっての救いであると。》

リーネ「ネウロイが救いだなんて・・・」

ペリーヌ「全くの真逆ですわ!」

ラジオの声《私はこれより、ネウロイの母たる存在の来訪を、より確かなものとするため、約束の地へと赴きます。》

ラジオの声《彼の者が訪れれば、全てのものが皆等しく救済されます。今は来るべき時に思いを馳せ、その日を待つだけでいい・・・》

ラジオの声《何も心配する事はありません、待つ事のみが、唯一の正しい選択なのだから。》

ラジオの声《同士諸氏よ、私と共にその日を待とうではありませんか!》

ラジオの声「ザザ・・・ザザ・・・ザー・・・」

ミーナ「・・・・・」

ゲルト「どうやら、妙な思想の原因はこいつらのようだな・・・」

ルッキーニ「シャーリー・・・」

シャーリー「大丈夫だ、ルッキーニ。みんなが居るんだからさ。」

坂本「しかし・・・なかなか尻尾を出さないと思ったらこんなところで出てくるとはな・・・」

サーニャ「あの人たちとも・・・戦わなくちゃいけないんでしょうか・・・」

ミーナ「そうね・・・彼女たちにとって私たちは障害でしかないわ。・・・最悪、彼女達とも戦わなきゃいけなくなるわね・・・」

全員が押し黙る。

俺「その時は・・・」

その沈黙を、俺の言葉が破った。

俺「その時は、俺があいつらを倒します。」

・・・ ・・・ ・・・

~現在~

俺「・・・・・」チキッ…

坂本「はぁっ!」ブン!

俺「おおおお!!」シャン!

キィン トサッ

刀が宙を舞い、地面へと突き刺さる。

坂本「勝負ありだな。」フォン

俺の喉元に刀を突きたてる坂本。

坂本「やはり、死闘の場において相手を殺さずに勝利を得ることなど不可能だ。わかっただろう?」

俺「分かってます、そんなこと・・・それでも・・・」

坂本「・・・?」

俺「それでも、俺はやります。たとえそれで、俺が死んだとしても。必ず。」

坂本に真剣な眼差しを向ける俺。

坂本「・・・お前の覚悟は分かった。私も最後まで付き合おう。だが、二度と死ぬという言葉は口にするなよ。いいな。」

俺「はいっス。」

坂本「では、もう一度だ。」

俺「よろしくお願いします!」

それから相次ぐネウロイの侵攻と、訓練の日々を経て決戦の前日を迎える。


決戦前夜

---ブリーフィングルーム---

ミーナ「それでは、明日の最終作戦についてのブリーフィングを行います。」

ミーナ「明日、我々人類連合側は全ての統合戦闘団と各国の主力艦隊を結集し、北海海上に現れたあの塔で、ネウロイの元凶・・・母なるものを迎え撃ちます。」

ペリーヌ「全てって・・・その間、空いた場所の防衛はどうするんですの!?」

ミーナ「ええ・・・その間、苦しいでしょうけれど、各国が保有するウィッチの総力を持って防衛に当たるよう連合国側からの命令が出ているわ。」

エーリカ「そうしなきゃ、本当に世界がなくなっちゃうもんね・・・」

ペリーヌ「・・・・・」

坂本「大丈夫だペリーヌ。お前の祖国のウィッチたちは強い。それとも、お前は仲間を信じられないのか?」

ペリーヌ「! そう、ですわね・・・少佐のおっしゃる通りですわ。ありがとうございます、少佐。」

坂本「うむ。では、続けてくれ、ミーナ。」

ミーナ「ええ。先ほど言ったように全統合戦闘団と、各国の主力艦隊が今、北海へと進路を向けてすでに集まろうとしています。」

ミーナ「我々も明日、この基地からブリタニア連邦の航空戦艦、『ライオン』へ搭乗。そのまま例の塔へと向かいます。」

ミーナ「その後はストライカーで塔の頂上へと行き、そこで母なるものが現れるまで待機。母なるものの出現後、可能な限りの戦力を用い、これの討伐に当たります。」

ミーナ「これが明日決行される最終作戦、オペレーション『ラグナロク』です。」

ミーナ「決して失敗の許されない作戦です。失敗すれば、世界が滅びます。」

シャーリー「ガリアやロマーニャの時よりも規模が大きいな・・・」

ゲルト「どうしたリベリアン?今頃怖くなったか?」

シャーリー「怖いっちゃ、怖いな。でも、もう引き下がる気はないよ!」

ゲルト「当然だ!」

ミーナ「何があっても、明日で全てに決着がつきます。」

ミーナ「必ず・・・必ず勝つわよ!」

全員「了解!!」

芳佳「あ、あの!一ついいですか!」

ルッキーニ「どしたの芳佳?」

芳佳「みんなに渡したいものがあるんです。これなんですけど・・・」

そう言って宮藤は机にそれを並べる。

俺「リボン・・・?」

それはピンク色のリボンであった。数はしっかり12人分ある。

芳佳「あの時、僕さんが言ってましたよね、もし勝ったとしてもこの一年間の記憶は消えちゃうかもしれないって・・・」

リーネ「そっか・・・そういえば・・・」

芳佳「だから、坂本さんと考えたんです。この一年間の事を思い出せるきっかけが、何かあればなって。」

エイラ「それでこのリボンってわけカ。」

芳佳「はい。これを体のどこかにつけておけば、それを見たときに思い出せるんじゃないかって思うんです。」

ミーナ「いい考えね。みんなもどうかしら?」

ルッキーニ「さんせー!」

シャーリー「いいな、それ!」

満場一致で、宮藤の提案通り、皆リボンをつけることになった。

ゲルト「こ、こんな感じか?」

エーリカ「うん。トゥルーデ似合ってるぅ~」

シャーリー「ここをこうしてっと・・・どうだ、ルッキーニ?」キュッ

ルッキーニ「ばっちし!にひー!」ニッコリ

各々がリボンをつけ終わる。

坂本「そうだ、前に果たせなかった約束をもう一度しよう。」

ペリーヌ「約束・・・ですか?」

坂本「ああ、花見だ。戦いが終わったら扶桑でみんなで花見をしよう。このリボンがあれば、この約束もきっと思い出せるはずだ。」

芳佳「そうですね!今度こそ約束です!」

坂本「日にちも決めなければな・・・桜が咲くころだと・・・4月の初めあたりか・・・」

ミーナ「あら、素敵ね。みんなは大丈夫そうかしら?問題がなかったら、私がみんなで一緒に扶桑へ行けるよう戦いが終わった後に連絡を入れておくけど・・・」

エイラ「どうする、サーニャ?」

サーニャ「うん。桜、見てみたいし、私も行くわ。」

エイラ「でも、お父さんとお母さんのことはどうするんダヨ?」

サーニャ「扶桑とオラーシャはそれなりに近いし、お父様とお母様もきっと生きてるから・・・だから、大丈夫。」

エイラ「そ、そっか・・・」

ミーナ「特にないみたいね。じゃあ、連絡しておくわね。」

坂本「すまんな、ミーナ。苦労を掛ける。」

ミーナ「前も言ったでしょう。もう慣れっこよ。」ニコ

芳佳「あの、それで場所はどうするんですか?」

坂本「横須賀でいいだろう。近くに花見に最適の場所がある。」

ミーナ「それじゃあ、このリボンは常につけていましょう。何があっても、絶対にはずす事の無いように。」

皆、一様に頷く。誓いのリボンが、より一層、皆の絆を深めた。


---エイラ&サーニャの部屋---

俺、エイラ、サーニャの3人はインディアンポーカーに興じていた。ハートやダイヤなどのマークや色を使用しない、数字だけで勝負する簡単な形式だ。

俺「エイラ、かえた方がいいんじゃないっスか?その札、多分今日一番で最弱っスよ。」

エイラ「ヘン!お前なんかに騙されるかヨ!私は変えないかんナ。」

サーニャ「私も、かえた方がいいと思う。」

エイラ「さ、サーニャが言うならしょーがねーナ・・・」

渋々カードを捨てるエイラ。

エイラ「キング・・・ってやっぱり一番強かったじゃないカー!!」

俺「ははは!!これで勝ちはいただきっス。」

サーニャ「ごめんね、エイラ・・・」

エイラ「うぅ・・・くそぉ・・・」ペラッ

エイラはもう一度カードを引き直し、カードを見ないようにしながら額へ当てる。

サーニャ「俺も、かえた方がいいと思う。」

俺「あはは、残念、俺はその手には引っかからないっス。このまま勝負するっスよ。」

エイラ「後悔すんなよナー」

俺「じゃあいくっスよ・・・せーの!」

三人が同時にカードを見せる。

俺【A】 エイラ【8】 サーニャ【Q】

俺「」

サーニャ「だから言ったのに・・・」

エイラ「ヘヘーン!ザマー見ろ!サーニャを信じないからこうなるんだゾ!」

俺「ぐぬぬ・・・ま、いっか・・・と言うより、こんなことできんのも今日で最後なんスかね・・・」

エイラ「何辛気臭いこと言ってんダヨ。明日も、その先もずっとできるに決まってんダロ。」

サーニャ「俺のそういうところ、良くないわ。」

俺「あはは・・・そっスね、ごめんなさい。」

エイラ「・・・あのさ、俺。オマエ、戦いが終わったらどうするんダ?」

俺「それ、もしかして俺に死亡フラグ立てさせようとしてんスか?」

エイラ「は?ふらぐ?」

俺「なんでもないっス・・・そうっスね・・・今はカールスラント空軍預かりってことになってるから、一度原隊復帰するかもしれないっス。まぁ、すぐに引退しますけど。」

エイラ「あのさ、もし、そのあとやることないんだったら一緒に、サーニャの両親を探さないカ?」

俺「え・・・?・・・俺も、一緒についていっていいんスか?」

サーニャ「一緒に来てほしいの・・・お願い・・・」

エイラ「サーニャも言ってるダロ。だから、ナ。」

俺「・・・そっスね・・・じゃあ、一緒に行かせてもらうっス。なおさら負けられないっスね、明日。」

エイラ「ダナ。じゃあ三人だけの約束ダ。必ず、生きて戻って来ようナ。」スッ

サーニャ「うん。」スッ

俺「おうっス!」スッ

三人で手を重ね合う。リボンに新たな誓いが刻まれた。

俺「っと、じゃあ俺はそろそろ部屋戻りますね。」

エイラ「なんダ、もう帰るのカ?」

俺「もうって・・・もうすぐ消灯っス。規則は守らないと。」

エイラ「お前ってヘンなとこ真面目だよナ~」

俺「いや・・・実は、前に抜け出したらバルクホルン大尉にばれちゃって・・・怒られたんスよ・・・」

エイラ「ふーん・・・ま、いいけどサ。」

俺「じゃあ、お邪魔しました。」スクッ

サーニャ「あっ・・・」

サーニャが俺を引き留めようと手を伸ばしかける。

俺「? どうかしたっスか?」

サーニャ「ううん・・・なんでもない・・・おやすみなさい・・・」

俺「はい、おやすみなさいっス。また明日。」ニッ

ガチャ パタン

サーニャ「・・・・・」

サーニャはどこか寂しそうな表情を浮かべている。

エイラ「・・・・・」

---基地内バルコニー---

坂本「すまなかったな宮藤・・・お前を連れてきた上に危険な目に合わせてばかりで・・・」

芳佳「謝らないでください、坂本さん。私、後悔なんかしてないです。」

芳佳「むしろ、ここに来てよかったです。みんなと会うこともできたし、なにより、たくさん、素敵な思い出ができましたから。」

坂本「宮藤・・・」

芳佳「だからこそ、明日は負けられません。坂本さんの分も、私、しっかり戦ってきます。」

坂本「・・・はっはっは!!言うようになったじゃないか宮藤!そうだな、お前には私の分もしっかり戦ってもらわないとな。」

芳佳「はい!」

坂本「必ず、生きて扶桑へ帰ろう、宮藤。」

芳佳「はい。」

---芳佳&リーネ&ペリーヌの部屋---

ペリーヌ「・・・・・」

家宝のレイピアを見つめるペリーヌ。

リーネ「それ、たしかペリーヌさんの家宝の・・・」

ペリーヌ「ええ、大切なレイピアですわ・・・これを見ていると、祖国のことを思い出しますの・・・」

リーネ「ペリーヌさんは、ガリアが本当に大好きなんですね。」

ペリーヌ「もちろんですわ。あなたは、祖国を愛していないのかしら?」

リーネ「いえ・・・私も、ブリタニアは大好きです・・・」

ペリーヌ「そうでしょうね。なら、その愛する祖国を守るためにも、明日は負けられませんこと?」

リーネ「はい・・・絶対に、負けられません・・・勝って、ガリアもブリタニアも、全部平和にしたいです!」

ペリーヌ「ええ。必ず勝って帰りますわよ、私たちの祖国に!」

リーネ「はいっ!」

ペリーヌ「ふふっ・・・さぁ、カモミールを入れて差し上げますわ。よく眠れるように。」

---ゲルト&エーリカの部屋---

コンコン

エーリカ「あ、誰か来た。」

ゲルト「今開ける。」

ガチャ

ゲルト「ミーナ?どうした、こんな時間に?」

ミーナ「今日ぐらいあなたたちと一緒に居たいと思って・・・」

エーリカ「入りなよ~」

ミーナ「そうね。お邪魔するわ。」

部屋へと足を踏み入れたミーナの眼前には、半分は綺麗に片づけられ、もう半分はゴミ屋敷と化したような不可思議な光景が広がっていた。

ミーナ「それにしてもフラウ・・・これは少し散らかりすぎね・・・」

ゲルト「掃除させようとしてもすぐどこかへ行ってしまうからな、コイツは・・・」

エーリカ「だってメンドくさいじゃん。」

ミーナ「はぁ・・・あなたは明日の戦いが終わった後、この部屋を掃除ね。」

エーリカ「え~!」

ゲルト「え~じゃない!やるんだ!」

エーリカ「ちぇ~・・・わかりましたよ~」

ミーナ「ふふっ・・・」クスクス

ゲルト「? どうした、ミーナ?」

ミーナ「いいえ、フラウに掃除させるためにも、負けられないわね。明日は。」

ゲルト「ははは!そうだな。お前のためにも負けられん。」

エーリカ「え~・・・だったら負けてもいいよ~・・・」

ゲルト「バカをいうなハルトマン!」

エーリカ「冗談だってば・・・それにさ、トゥルーデとも約束したもんね。」

ミーナ「カールスラントの空を、私たちの手で取り戻す。だったわね。」

ゲルト「ああ。むしろうまくいけば世界の空を取り戻せるんだからな。これほどの喜びはない。」

エーリカ「じゃあもっかい約束。あたし達の手で絶対に取り戻そうね。」

ゲルト「ああ!」

ミーナ「ええ、もちろんよ!」

---シャーリー&ルッキーニの部屋---

ルッキーニ「シャーリー・・・」

シャーリー「どうした、ルッキーニ?」

ルッキーニ「あたし、みんなとお別れしたくない・・・」

シャーリー「どうしたんだ突然?」

ルッキーニ「だって・・・戦いが終わったら、今まであった事・・・忘れちゃうんでしょ?そうなったら・・・」

シャーリー「・・・こっちおいで、ルッキーニ。」

シャーリーはひざの上にルッキーニを座らせる。

シャーリー「大丈夫だぞ、ルッキーニ。私たちにはこのリボンがあるんだ。」

そう言ってシャーリーは手首につけたリボンを見せる。

シャーリー「だから、きっと思い出せる。このリボンは私たちの繋がりの証だ。」

シャーリー「どんなに離れていても、このリボンが私たちを繋ぎとめてくれる。」

シャーリー「それに、お前にはこれもあるだろ?」

そう言って、ルッキーニの首にかけられたゴーグルを持ち上げるシャーリー。

誕生日に受け取って以来、ルッキーニはこのゴーグルを肌身離さず、ずっと首にかけている。

シャーリー「それにな、もしルッキーニが思い出せなかった時は、私が教えてやる。だからなにも心配しなくていいんだぞ。」ナデナデ

ルッキーニ「・・・うん。ありがとう、シャーリー。」ギュッ

シャーリー「きっと戻って、また一緒に旅しような。」

ルッキーニ「うん・・・!」

深夜

---エイラ&サーニャの部屋---

すでに消灯時間を迎え、寝床についていた。

エイラ「・・・・・」

サーニャ「・・・・・」

エイラ「・・・なぁ、サーニャ。起きてるカ?」

サーニャ「うん・・・」

エイラ「・・・行かなくていいのか?」

サーニャ「え・・・?」

エイラ「さっき、俺に何か言おうとしてたダロ?伝えに行かなくていいのカ?」

サーニャ「・・・・・」

エイラ「行って来いヨ。モヤモヤしたままだと、眠れないゾ。」

サーニャ「・・・うん。いってくるね・・・」

エイラ「あんま遅くなんなヨ。」

サーニャ「うん。」

ツカツカ カチャ パタン

エイラ「・・・・・」

---俺の部屋---

俺(寝れないな・・・もう少し、2人と話してたかったな・・・)

俺(ちょっと外の空気でも吸うか・・・)

扉へと歩み、ドアノブに手を掛け扉を開く。

ガチャ

サーニャ「っ!」

俺「え・・・さ、サーニャ・・・?」

扉の前にサーニャが立っていた。

サーニャ「・・・・・」

ギュッ

俺「!? ど、どうしたんスか、サーニャ・・・?」

サーニャ「・・・・・」ギュゥ…

俺「・・・とりあえず入ってくださいっス。ココア、淹れますから・・・」

サーニャは無言で頷き、俺に連れられ、部屋へと入る。

俺は彼女をベッドへと腰かけさせ、ココアを手渡す。

俺「熱いから気を付けて・・・」スッ

サーニャ「・・・・・」コクリ

一度頷いてからココアを受け取るも、一向に手を付ける様子がない。

俺「だ、大丈夫っスか?熱は・・・」

サーニャの額へ手を当てる。

俺「大丈夫みたいっスね・・・」

その後も手を付ける様子がないので、サーニャからカップを預かり、近くの台の上へ置く。

トサッ

俺「!」

不意にサーニャが俺の肩へ寄りかかった。

サーニャ「俺・・・」

俺「は、はい・・・」

サーニャ「好き・・・」

俺「へ!?あ、いや・・・俺も、大好きっスよ・・・」

サーニャ「お願い・・・いなく・・・ならないで・・・」ギュゥ

そのまま俺の腕にしがみ付く。

俺「・・・俺は、どこにも行かないっスよ。」

サーニャ「でも、俺のこと忘れちゃうかもしれない・・・私の中で俺が、どこか行っちゃう・・・それが、怖い・・・」

俺「・・・あはは。嫌だな・・・まだ忘れるって決まったわけじゃな・・・」

サーニャ「・・・・・」

サーニャが健気な瞳を俺へと投げかける。その翡翠色の眼差しの奥で、涙が揺れ動く。

俺「・・・目、瞑ってください。」

言われた通り、サーニャは瞳を閉じる。

それから数瞬の間を挟み、

サーニャ「っ・・・」

唇に、何かが触れた。

そのまま数秒の沈黙が流れる。

ふと、触れていたそれがゆっくりと離れた。

俺「・・・・・」ニコ

瞳を開けば、俺が微笑んでいた。

俺はサーニャの両頬を包むように手を添え、額を軽く、こつりと合わせる。

俺「今のは、俺を忘れないおまじない。これでサーニャは俺の事、忘れないっス。」

サーニャ「・・・・・」

俺「だから大丈夫。何も、心配することはないっス。」

サーニャ「・・・・・」

それでもサーニャの顔が晴れることはなかった。それどころか、揺らいでいた瞳から今にも涙がこぼれ落ちてしまいそうだった。

俺「・・・・・」

チュッ

彼女を慰める術が俺には分からなかった。

今こうして口づけても、この子はきっと悲しいままなのかもしれない。

こんなにも大好きで愛おしいのに、こうするほかに自分には方法が見つからない。そんな自分が情けくて、悔しい。

しばらくして、頃合いをつけ俺が唇を離そうとする。

刹那、

俺「ん!?」

サーニャの唇が、不意に俺の唇を塞いだ。俺が一瞬息苦しそうな表情を浮かべる。

サーニャ「ん・・・」チュッ…

それでも構わず、キスを続ける。

やがてキスに熱が入り始める。触れ合うだけだった口づけは、いつしか啄ばむようなキスへと変わり、互いに唇を吸いあう。

チュッ…チュゥ…

上唇と下唇をそれぞれをはむように口づける。その間に互いの指は自然に求め合い、絡まる。

サーニャ「んっ・・・は・・・ぁ・・・ちゅっ・・・」

俺「ん・・・ちゅ・・・ちゅっ・・・」

それからサーニャはもう一度俺に唇を押し付け、舌を口内へと滑り込ませる。

俺「っ!」

彼女の柔らかな舌が俺の舌を撫でる。2人は絡め合っていた手を離し、俺は腰へ、サーニャは首の後ろへと手を回す。

サーニャ「れろ・・・ちゅる・・・はぁ・・・ちゅ・・・」

俺「ちゅ・・・んっ・・・んくっ・・・」

ぎこちないながらも、ゆっくりと、お互いを確かめ合うように舌を動かす。

時折サーニャから漏れる甘い吐息と、舌の柔らかくねっとりとした感触が俺を昂ぶらせる。頭の中が蕩けてしまいそうだった。

もう、何も考えられない。

サーニャ「ちゅく・・・んぅ・・・ちゅっ・・・」

今は・・・今だけは・・・

俺「・・・ん・・・ふっ・・・ちゅ・・・」

きみに触れていたい・・・

チュルッ…

唇が離れる。

二人の間に名残を惜しむように銀糸が伸び、切れてからベッドの上に滴り落ちる。

息を乱しながら、再び二人は抱擁を交わす。

サーニャ「はむっ・・・」

俺「っ・・・」

肩に頬を預けていたサーニャが、不意に俺の耳朶を食み、舐る。

俺「さ、サーニャ・・・」

サーニャ「ん・・・ちゅ・・・」チュピッ

しばらくして食んでいた唇が離れ、サーニャは俺の肩へ再び頬を預ける。

そんな彼女を抱きしめながら、俺は右腕で彼女の髪を撫で続ける。

サーニャ「離れ・・・ないで・・・」

震えた声でただ一言、サーニャが耳元でつぶやいた。

俺「・・・・・」

サーニャ「・・・・・」

見つめ合う二人。それから言葉を交わすことなく、

チュッ…

再び口づけ合う。

手を重ね合わせながら、俺はゆっくりとサーニャを押し倒した――

――――――
――――
――

そして、決戦の日を迎える・・・

続き→ペルソナ20
最終更新:2013年01月29日 14:26