Episode 22 『バーン・マイ・ドレッド』

1939年。1917年の大戦から20年の沈黙を破り、再び現れた異形の敵、ネウロイ。

そのネウロイの突然の侵攻により、人類は多くの領土を失い、故郷を追われ、そして大切なものを悉く奪われてきた。

しかし、1947年1月31日。

この日、第501統合戦闘航空団。通称、『ストライクウィッチーズ』の手によって、長きにわたる人類とネウロイの戦いに遂に終止符が打たれた。

ネウロイの危機は去った。もうネウロイに苦しめられることも、恐怖することもない。

誰もがこの勝利を喜び、明日への希望を信じていた。

そして、戦いを終えたウィッチたちは、それぞれの母艦へと帰還する。

---航空母艦ライオン内:救護室---

サーニャ「・・・グスッ・・・ヒグッ・・・」

俺「え、えっと・・・わ、悪かったっス・・・無茶して・・・」

サーニャ「・・・よかった・・・生きてて・・・本当に・・・グスッ・・・」

エイラ「オマエ、サーニャを泣かせた罪は重いからナ。」

ペリーヌ「この殿方は・・・全く・・・」

シャーリー「この女泣かせ~」

エーリカ「あ~あ、サーニャかわいそ~」

ルッキーニ「かわいそ~」

ゲルト「お前も無茶が過ぎるというか・・・」

坂本「止めても全く聞かんかったからな。困ったものだ。」

ミーナ「やっぱり・・・あなたも扶桑人なのね・・・」

救護室には、戦いを終えたウィッチたちが俺を見舞うために集まっていた。

が、絶対安静の言葉を無視して参戦したことが余計にサーニャに心配をかけることになってしまい、俺は皆から責められる羽目になった。

リーネ「で、でも、俺さんが来てくれなかったら今頃は・・・」

芳佳「うん・・・きっと、ネウロイに倒されちゃってたと思います・・・」

ミーナ「そうね・・・今回ばっかりは、あなたの加勢がなければ確実に全滅していたわ。その点は感謝しなければならないわ。本当に、ありがとう。」

俺「い、いえ・・・」

ミーナ「た・だ・し!サーニャさんを泣かせたことは、感心しないわね。」

俺「うっ・・・」

ミーナ「ですから、罰として・・・基地に戻ったら、みんなにお菓子を振る舞う事。」

俺「へ?」

ミーナ「隊長命令です。いいですね。」

俺「り、了解っス!」

エイラ「ワタシはそんなんじゃ許さないゾ~!」グニィ

俺「ふぇ・・・ほっへたひっはんないでふらはいほぉ・・・」ビヨンビヨン

シャーリー「あっはっは!なんだその顔!」

エーリカ「にゃはは!俺、変な顔~」

ルッキーニ「きゃはははは~!」

サーニャ「・・・クスッ・・・」

エイラ「あ、サーニャが笑った。よ~し、まだやってやるからナ~!それ!」グニョーン

俺「いふぇふぇふぇふぇ!ひっはりふぎっふよ~!」

エーリカ「じゃああたしも、えい!」ビヨーン

ゲルト「な!?ほら!はるほまんやへろー!!」

シャーリー「だーっはっはっは!!」

ペリーヌ「・・・ふふっ・・・」

ルッキーニ「すきありっ!」

ペリーヌ「! は!はにをふるんへふの~!」

ルッキーニ「にひひ~。ペリーヌも変な顔~」

坂本「こらこら。全く、勝って兜の緒を締めよというのに・・・」

ミーナ「いいんじゃない、みんならしくて。フフ・・・」

アハハ ナンダツンツンメガネソノカオ~ ニャハハハハ ダーッハッハハ 

しばし救護室に笑い声がこだまする。

肩の荷が下り、和やかな雰囲気がその場を包んでいた。

そんな中、ふとシャーリーがあることに気付く。

シャーリー「あれ・・・そういえば、誰も俺のこと忘れてないよな?」

ペリーヌ「そういえば・・・そうですわね。」

エーリカ「やっぱり、心配のしすぎだったんだよ。きっと。」

全員の記憶からこれまでのアルカナネウロイと母なるものに関する一連の記憶が消えるという、僕からの宣告。

同時にそれは、『デス』と言う存在を宿していた俺のことも忘れると言う事であった。

しかし、それは結局のところ起きることはなく、全員の記憶には確かに俺の存在は残っていた。

俺「ね。やっぱり、忘れなかったでしょ?」

サーニャ「うん・・・」

リーン…ゴーン…

ゲルト「それにしても、この鐘の音はいつ止むんだろうか・・・」

シャーリー「だよなー。いい加減やかましいって言うか・・・」

ネウロイが滅びたにも関わらず、滅びの塔はいまだ北海海上に存在し続け、鐘が鳴り響き続けていた。

俺&サーニャ「!!」ヴン

突然、魔導針が異常な点滅を繰り返す。

エイラ「俺?サーニャ?」

俺「え・・・なんだ・・・これ・・・」

サーニャ「嫌・・・怖い・・・」

エイラ「サーニャ!?」

ミーナ「俺さん、どうしたの!?」

俺「上のほうから・・・何か、とてつもない反応が・・・」

ミーナ「上・・・甲板に行ってみましょう!何か見えるかもしれないわ!俺さんはここで待機よ!いいわね!」

俺「り、了解・・・」

エイラ「大丈夫か、サーニャ・・・?」

サーニャ「うん・・・平気・・・」

ウィッチーズは俺を残して甲板へと急いだ。

俺「・・・・・」

---航空母艦『ライオン』内:甲板---

甲板へと駆け出したウィッチたち。俺が言っていたように空を見上げる。

リーネ「なにも・・・ありませんけど・・・」

ペリーヌ「俺さんのおふざけじゃないんですの?」

エイラ「そんな訳あるカ!サーニャだって反応を捉えてたんダ!」

芳佳「でも、一体どこに・・・」

サーニャ「月・・・」

エーリカ「月・・・?」

全員が月を見上げる。天頂の赤黒い月は相も変わらず不気味に光を発している。

が、

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

突然、地を揺るがすほどの音が鳴り響く。海がその振動を受け波を打ち始め、艦が揺れる。

そして、異変は起こった。

シャーリー「おいおい・・・なんだよ、あれ・・・」

坂本「月が・・・」

彼女たちの目の前には、とても信じがたい異様な光景が広がっていた。

月の表面がみるみる黒ずんでゆく。現れた黒は瞬く間に月を覆い隠し、どす黒い巨大な渦雲を形成する。

それは、今まで人類を苦しめてきた者達の住処。

サーニャ「ネウロイの・・・巣・・・」

巣は、今まで彼女たちが見てきた巣とは比べ物にならないほど巨大で、かつ、とてつもない存在感を放っていた。

「母なるもの」は討ち果たされ、ネウロイは消えたはず。誰もがそう思っていた。

しかしそれは違った。先ほどのネウロイは「母なるもの」ではなかった。

彼女たちは言葉を失う。ネウロイの巣が、確かに目の前に存在しているのだから。

芳佳「そんな・・・」

ゲルト「クソッ・・・クソォ!!」ガンッ!

もはや、彼女たちには飛ぶための魔力も、気力すらも残されてはいなかった。

目の前の光景にただ絶望するしかなかった。

---航空母艦『ライオン』内:救護室---

俺「ネウロイ・・・」

俺の魔導針が、巣の奥に潜む圧倒的な存在を捉える。

俺「・・・・・」

ベッドから抜け出し、軍服に着替えようとする。

俺「痛ッ!・・・」

俺が肩を抑える。丁度、刀で貫かれた場所だ。

肩に巻かれた包帯には血が滲んでいた。先ほどは笑顔を振りまいてはいたものの、実際には傷口が開いており、ずっと痛みをこらえていた。

それでも何とか着替えを終え、外へ出ようとする。

だが・・・

俺「ッッ!!?」ジワッ

バタッ

強烈な激痛を感じ、その場に倒れこむ。腹に受けたビームの傷口まで開きだした。腹に生暖かい感覚が広がり始めた。

俺(やば・・・俺・・・ホントに死ぬかも・・・)

俺(なんだよ・・・まだ・・・守れてないじゃんかよ・・・嫌だ・・・こんなところで・・・)

もはや立ち上がる力すらない。朦朧とする意識の中、ポツリとつぶやいた。

俺「サー・・・ニャ・・・」

そこで、俺の意識は完全に失われた。


---ベルベットルーム---

♪The poem everyone's souls

俺「あ・・・あれ・・・?」

次に目蓋を開くと、目の前の光景は救護室から、いつしか夢の中で見た青い部屋の中へと変わっていた。

丸い卓を挟んだ向かい側には、前のように鼻の長い老人が座っていた。部屋は相変わらず、昇降機のように延々と上へと登り続けている。

長鼻の老人「再び、お目にかかりましたな。」

俺「あなたはいつかの・・・もしかして俺・・・死んだ・・・?」

長鼻の老人「フッフッフ・・・ご心配召されるな。あなたはまだ生きていらっしゃる。ただ、ほとんど生死の境をさまよっている状態のようですが・・・」

俺「・・・・・」

老人は卓に並べられたタロットをペラペラとめくる。

長鼻の老人「フム・・・なるほど。どうやら、貴方の世界には今、とてつもない危機が迫っているご様子。」

俺「はいっス・・・このままだと・・・俺の大切な人たちが・・・」

長鼻の老人「・・・貴方は、この現状をどうされたいですかな?」

俺「助けたいです、みんなを、俺の大切な人たちを・・・何としてでも・・・」

長鼻の老人「結構。では、貴方が紡がれた絆を、ここで今一度確認いたしましょう。」

俺「絆・・・?」

長鼻の老人「貴方は、ペルソナの力がいか様なものか、ご存知ですかな?」

俺「俺の中にいるもう一人の自分・・・抗うべき試練に立ち向かうための力・・・でしたっけ・・・?」

長鼻の老人「おっしゃる通り。しかし、この力の本分はそれだけではない。」

長鼻の老人「ペルソナ能力とは心を御する力。ペルソナはあなたの心や精神そのものと言ってもいい。そしてそれは他人と関わり合うことによって育まれ、成長してゆく。」

長鼻の老人「貴方も、多くの時間を過ごす中で様々な方と出会い、心を育まれてきた。そして同時に、多くの絆を手に入れたはず。」

長鼻の老人「絆は、そんな貴方により大きな力を与えてくれる。大切なものを守るための力を。」

俺「守る力・・・」

長鼻の老人「これから、私はその力を手に入れるためのお力添えをいたします。ただし、それには対価が伴いますがよろしいですかな?」

俺「対価・・・っスか・・・?」

長鼻の老人「左様。この先何が起ころうとも、あなたが自らの手で選び取った運命を受け入れること。それだけでございます。出来ますかな?」

俺「・・・もちろんっス。」

長鼻の老人「よろしい。では、目を閉じ、耳をお澄ましなさい。微かだが、聞こえてくるでしょう?貴方が絆を結んだ者達の声が・・・」

ゆっくりと目を閉じ、耳を澄ます。

――・・・れ・・・俺・・・――


覚えのある声が聞こえてくる。

俺(これは・・・宮藤さんの声・・・)

芳佳『俺さん・・・また居なくなっちゃうんですか・・・?そんなの駄目です・・・みんなで帰るって約束したのに・・・』

芳佳『お願いです・・・生きてください・・・みんなで一緒に桜、見に行きましょうよ・・・』


リーネ『俺さん・・・』

俺(リーネさん・・・)

リーネ『俺さんが、ずっと前に、私が居れば心強いって言ってくれた時、すごくうれしかったです。私でも、ちゃんと役に立ててるんだって・・・凄く自信が持てました・・・』

リーネ『お願い・・・死んじゃダメです、俺さん・・・サーニャちゃんが悲しんじゃいます・・・それに、私も、きっとみんなも・・・』


ペリーヌ『だらしないですわね、いつまで倒れてるんですの?』

俺(これは・・・ペリーヌさん・・・)

ペリーヌ『正直、初めはあなたを受け入れられませんでしたわ。女所帯の部隊に男が入るなんて、しかもヅケヅケと少佐に近づいて・・・』

ペリーヌ『・・・でも、今はそうは思いませんわ・・・あなたも【ストライクウィッチーズ】の一人、それは絶対ですわ。』

ペリーヌ『・・・で、ですから!とっとと立ち上がってその顔を見せなさいって言ってるんですのっ!』


坂本『いつまでそうしてるつもりだ、俺よ。』

俺「少佐・・・」

坂本『無理もない、無茶が祟ったんだろう。全く、私もお前もどこか似ているな。はっはっは!』

坂本『だが、ここで倒れては扶桑男児の名が廃るだろう。お前にもその血が流れているのなら、がんばって立ち上がってみろ。私は、待っているからな。』


ミーナ『俺一等兵。』

俺(ミーナ中佐・・・)

ミーナ『ここで死んでは命令違反よ。あなたには、基地に戻ってから皆にお菓子を振る舞う命令があるんですから。』

ミーナ『お願い。立ち上がって・・・これ以上、大切な人を失いたくないの・・・』


ゲルト『死ぬな・・・俺・・・』

俺(バルクホルン大尉・・・)

ゲルト『魔力の衰退がはじまって、正直戦い続けられるか不安だった・・・でも、お前やみんながいて・・・支えてくれたからここまでこれたんだ。』

ゲルト『分かるだろう・・・誰一人欠けてもダメなんだ・・・全員で、必ず帰るんだ・・・俺・・・』


エーリカ『俺。』

俺(エーリカさん・・・)

エーリカ「クリスマスに言ったこと、俺のこと好きって・・・あれ、半分は冗談だけど、半分は・・・本気だよ・・・?」

エーリカ『でも、俺はサーニャが好きなんだよね・・・なんとなく、分かってたけどさ・・・でも、やっぱり・・・まだ好きだよ・・・』

エーリカ「だから・・・消えないでよ・・・俺・・・」


シャーリー『なぁ、俺・・・』

俺(シャーリーさん・・・)

シャーリー『ストライカーのスピード勝負はあたしが勝ったけどさ、足の速さじゃ負けちゃったんだよな・・・』

シャーリー『お互い、一勝一敗のままじゃ後味悪いだろ?だからさ、戻ったらもう一度勝負しようよ・・・それに、お前がいないとさ・・・やっぱり寂しいよ・・・』


ルッキーニ『俺ぇ・・・』

俺(ルッキーニさん・・・)

ルッキーニ『俺・・・死んじゃやだよ・・・もっと俺と遊びたい・・・俺のお菓子食べたい・・・俺とお昼寝したい・・・』

ルッキーニ『いなくならないで・・・俺・・・』


エイラ『おい・・・俺・・・』

俺(エイラ・・・)

エイラ『こんなとこで死ぬなヨ・・・約束したじゃんカ・・・一緒に、サーニャのお父さんとお母さんを探しに行くって・・・』

エイラ『サーニャさ、オマエが来て哨戒が交代制になったから、みんなと話す時間が増えて、みんなとたくさん笑うようになったんダ・・・』

エイラ『オマエと話してる時もすごく楽しそうでさ、一緒にいるワタシも、すごく楽しかったよ・・・オマエには、感謝してる・・・』

エイラ『だから、死ぬなヨ・・・オマエが死んだら・・・サーニャも・・・ワタシも・・・悲しいんだからナ・・・』


サーニャ『俺・・・』

俺(サーニャ・・・)

サーニャ『はじめて会った時の事、覚えてる?魔導針でお話しした、あの時・・・』

俺(覚えてる・・・今でも、はっきりと・・・)

サーニャ『あの時に、いつか会おうって約束して・・・そうしたら本当に会えて・・・遠くのお友達に合えたのが本当に、うれしかった・・・』

サーニャ『それから一緒にいるうちに・・・いつの間にか・・・俺を・・・好きになって・・・それから・・・こ、恋人にも・・・なってて・・・』

サーニャ『俺・・・大好き・・・だからお願い・・・戻ってきて・・・また・・・声を聞かせて・・・』

俺(・・・・・)


『俺!』 『少年。』 『銀獅子!』『俺くん。』『おにいちゃん!』


他にも、絆を結んだたくさんの人たちの声が次々に聞こえる。

長鼻の老人「なるほど・・・これは素晴らしい!これほど多くの者と絆を結ばれるとは・・・」

閉じていた目蓋を開くと、老人の目の前に大きな光の玉が浮遊していた。

俺「これは・・・」

長鼻の老人「これは、貴方と絆を結ばれた方々の、貴方への想いの集まり。一つ一つは小さいながらも、全て、貴方の力にならんとする願いです。」

長鼻の老人「さぁ、お目にかけましょう。あなたの絆の真価を!」

老人は絵柄の書かれていないタロットカードを取り出すと、それを光の玉の中へと投げ入れた。

光の玉からより大きな光が拡散し、部屋全体を眩い光が覆う。あまりの眩しさに、老人も俺も目を瞑る。

次に目蓋を開いた時には、光の玉は消え、タロットが一枚浮遊していた。

長鼻の老人「なんと!よもやこのカードを再び見ることができるとは・・・」

俺「?」

長鼻の老人「これは『世界』のアルカナ・・・完成、成就を意味するカード・・・この力をもってすれば、もはや何事の実現もあなたにとっては奇跡ではない・・・」

俺「じゃあ、この力があれば・・・」

俺がカードへと手を伸ばす。しかし、それを老人の言葉が制止した。

長鼻の老人「お待ちなさい。いかに強大な力と言えど、あなたに起こすことのできる奇跡には限りがある・・・そして大きな力には相応の代償が伴う・・・」

俺「それで大切なものを守れるなら・・・どんな代償だって受け入れるっス・・・」

長鼻の老人「左様でございますか・・・では最後にもう一つ、これは決してあなた一人の力ではない。あなたと、あなたと絆を結んだ者たち全ての力の集まりであることを、どうか、お忘れなきよう・・・」

俺「もちろんっス。」

俺が、浮遊したカードへと手を伸ばす。カードを手に取ると、淡い光を放ちながらカードは霧散し、同時に温かな感覚が俺の全身をつつむ。

長鼻の老人「たった2度の邂逅ながら、貴方にお力添えできたこと、とても誇りに思います。」

長鼻の老人「さあ、お行きなさい。そして、手にしたその力で大切なものを守られるがよろしい。」

長鼻の老人「あなたもまた、最高のお客人だった。」

上昇していた部屋が動きを止め、老人の後方の壁が扉のようにゆっくりと開けてゆく。

俺は椅子から立ち上がり、その扉へと歩きだした・・・


---航空母艦『ライオン』内:甲板---

月は、その光ごと巣で覆い隠され、当り一面を暗闇が覆っていた。

今は母艦のライトのみが、この海上を照らしている。

ルッキーニ「なにもしてこないね・・・」

ドォン! ドォン! バババババババババババババ

戦艦から機銃と主砲が放たれる。砲弾は巣を掠めはするが、まるで影響がない。

ゲルト「あれでは・・・死に弾と変わりないな・・・」

人類に残された術はもうない。後はただ、滅びの時を待つばかりだ。

絶望が人々の心を覆う。もう諦めるしかないのか、そんなことを考え始めていた時だった。

ゴウンゴウンゴウン…

突然、空母から何かが駆動する音が聞こえる。

エーリカ「何の音・・・?」

シャーリー「エレベーターの音か・・・?一体誰が・・・」

ガシャン

しばらくしてその音が止む。

ボォウ…

突然暗闇に灯る、一つの青い灯。



俺≪『俺』、出撃します。≫



サーニャ「えっ・・・?」



程なくしてそれは、天へと舞い上がった。

ミーナ「俺さん・・・?俺さんなの!?」

坂本「何をしている俺!!戻れ!!」

俺≪ごめんなさいみんな。もしかしたら、一緒に帰れないかもしれないっス。≫

ゲルト「何を言っているんだ!俺!!」

エーリカ「どこ行くの・・・?ねぇ・・・何してるのさ・・・俺・・・」

俺≪あいつらを止めます。できるかは・・・分からないけど・・・≫

シャーリー「無理に決まってるだろ!!止めろ!!」

ルッキーニ「俺ぇ・・・おれぇ・・・」

俺≪無理なら・・・その時はごめんなさい。でも、できる限りのことはするつもりっス。≫

芳佳「戻ってください!俺さん!!」

リーネ「そんなことしたら・・・本当に・・・」

ペリーヌ「貴方に何ができるって言うの!?死ぬ気なんですの!?」

俺≪死ぬ気は、無いです。ちゃんと戻って来るつもりっス。だから、どうか信じててください。≫

エイラ「行くな・・・行くなヨ!!バカあああああぁぁ!!!」

俺≪エイラ、俺がいない間サーニャを守ってあげてください・・・って、言わなくてもエイラならやってくれるっスよね。≫

サーニャ「嫌・・・行かないで・・・俺・・・」

俺≪サーニャ・・・また勝手に無茶するの許してくださいっス。でも、これだけは約束します。必ず・・・必ず生きて戻るっス!だからザザッ・・・≫

サーニャ「俺・・・?俺!!」

インカムの声が途切れた。俺はもはや声の届かない高度へと登っていた。

サーニャ「お願い・・・行かないで・・・ずっと一緒だって、言ったのに・・・」

サーニャはまだ見える青い炎へと手を伸ばす。しかしその手は、むなしく虚空を掴むばかりであった。

サーニャ(俺・・・)

やがて炎は、黒い雲の内へと消えて行った・・・

---ネウロイの巣---

俺「ここが、ネウロイの巣・・・」

巣の奥深くへとストライカーを進める俺。

延々と続く黒い空間。その途中途中にポツリ、ポツリと赤い点が見える。

俺「これ・・・コアか・・・?」

そう、紛れもなくそれはコア。ネウロイたちは確かにここで生み落されていた。

やがて、強烈な赤い光が奥から見え出す。俺はそこへと更にストライカーを進めた。

---ネウロイの巣:中枢部---

広い空間へと出る。同時に、目の前の存在に俺は畏怖することとなる。

空間の中心にただ一つ存在する『核』。他のネウロイたちと何ら変わらない形をしたコア。しかし、大きさは普通のネウロイの比ではない。

これこそが『母なるもの』。圧倒的存在感を放つそれは、俺の心を一瞬で粉々にした。

逃げなきゃ・・・

本能がそう訴える。俺の脳はもはや立ち向かう事ではなく、いかにしてこの場から逃れるかを考え始めていた。

存在の暴威。絶対に勝ち得ぬ存在だと一瞬にして悟らせるほどに、母なるものは強大であった。

しきりに逃げろと訴える脳。しかし恐怖のあまり体が動かない。

そんな時であった。

≪ザッ・・・れ・・・ザザッ・・・俺・・・ザッ≫

俺「!!」

もう聞こえないはずのインカムから、誰かの声が聞こえた。ノイズが酷すぎて誰かは分からない。

しかし、それが俺に心を取り戻させた。

俺(そうだ・・・俺は守るんだ・・・俺の大切な人たちを・・・サーニャを・・・)

震える腕をなんとかして動かし、俺は腕に巻いたピンク色のリボンをぐっと握りしめる。

――Burn My Dread――

ふと、いつかどこかで聞いたフレーズが頭に浮かんだ。

俺「バーン・マイ・ドレッド・・・か・・・ははっ・・・」

そのフレーズが、俺に勇気を奮い立たせる。頭の中で何度も繰り返し、自らを鼓舞する。

♪Burn My Dread ~Last Battle~ Reincarnation ver.

Burn My Dread・・・ Burn My Dread・・・繰り返し、繰り返し、体から恐怖を追い出してゆく。

俺(上等・・・恐いからなんだってんだ・・・ビビッてちゃ、なにも守れないじゃんかよッ!)

パンッパンッ!

頬を二回叩き、気合を入れなおす。

俺「・・・っし!準備完了!!」

ホルスターから召喚器を取り出す。そして、銃口をコアへと向け、告げる。

俺「みんなには手を出すな。今は・・・俺だけ見てろ・・・!」チャキッ

覚悟はできた。

召喚器で頭を撃ちぬき、呼び出す。


Fear not
(恐れるな)

Jump in the fire
(火のなかへ 飛び込め)

Got to burn the dread let my soul inspire
(恐怖を燃やし 魂を奮い立たせろ)


俺「ベルゼブブ!」

現れたベルゼブブは錫杖を掲げる。本来なら力が放たれ、相手を脆くさせるはずだが、力が利かない。

俺「・・・無理か・・・」

仕方なく召喚器をしまい、後ろ腰に据えたM16を構え、突撃する。

俺「!?」

ふと、どこからともなく現れたネウロイ。数は3。核へは近づけさせまいと俺へ向けて光軸を放つ。

相対するビームから遠ざかるため、体を左に反転。回避。

俺「おおおおッ!!」ガガガガガガガガガガガガ

すれ違いざまに、鉛玉を叩き込む。

弾丸は、オーディンの力によって電撃を纏い、飛んでゆく。

被弾し、3機とも砕け散った。

核は目の前。照準を合わせ、トリガーを引き絞る。

ガガガガガガガガガガ

ばら撒かれた弾丸がコアへと被弾する。しかし、コアは傷一つつかない。

俺はそのままコアの頭上へと離脱する。

俺「まだまだ・・・!」


To a higher place
(もっと高いところへ)

In this gaia case
(この星の場合じゃ)

No time to waste
(ぐずぐずしてる暇なんてない)

Never close this case man
(今を打ち切りになんてしないでくれ)


もう一度召喚器を取出し、ペルソナを呼び出す。

俺「ヨシツネ!」

ヨシツネによる身体能力強化。力が体の奥底から湧き上がるのを感じる。

抜刀。刀を蒼炎が覆う。自由落下の勢いを利用してコアへと襲い掛かる。

炎が尾を引き、落下の軌跡を描く。

俺「八艘飛び!!」

振り下ろした刃。しかし、

ガイイイィィィン!

俺「っ!?」

刃越しに振動が伝わる。コアは砕けない。ヒビすらも入らない。

俺「はあッ!」

ガィン! ガィン!

何度打ちつけようとも、微動だにしない。ただ振動が返って来るばかり。

俺「クソ・・・っ!?」

周りを、新たなネウロイが取り囲んでいた。俺は上へと離脱を図るが、ネウロイはそれを追う。

再び抜刀。蒼炎でリーチを伸ばした刀をロールを加えながら振り回す。

取り囲んだネウロイが破片へと姿を変えた。再び納刀。

機関銃を構え、もう一度コアに発砲してみる。

ガガガガガガガガ

やはり利かず。

俺「俺のことは・・・無視っスか・・・?」

問いかけても核は、何も答えない。ただそこに存在し続け、暴威的な存在感を振りまくのみ。


だが、




ビシュッ!



俺「!?」



刹那、俺の体を極細のビームが貫いた。


声を出す間もなく、一瞬で。


いつの間にかコアの一部が、装甲におおわれている。母なるものは自ら発射口を作り出し、俺を攻撃した。

その挙動に、俺は気づけなかった。否、挙動があまりにも速すぎた。俺は落下を始める。

俺(は?え?なんだよこれ・・・もう終わりかよ・・・たったの一撃で?ウソだろ・・・)

たった一発のビームが俺を死へと誘う。他のネウロイが放つものと違い、実に細く、素早く、そして確実に俺の急所を射抜いた。

まるで、お前などとるに足らない存在だとでもいうように。『母なるもの』にとって、俺などただの蠅と変わりなかった。

俺(何もできなかった・・・なんだよ・・・どんだけ強いんだよ・・・こいつ・・・)

全身を急激な虚脱感が襲う。体が冷たくなってゆくようだ。

『死』が、俺を覆い始める。落下する時間は永遠にも感じられた。その間、脳裏を走馬灯のように記憶が駆け巡る。

俺(あれ・・・時間がなんか長いな・・・そっか、俺、死ぬんだ・・・)

俺(たった19年だけど、いろんなことあったよなぁ・・・母さんが死んじゃって・・・親父に育ててもらって・・・)

俺(ウィッチになってからは、いろんな世界もまわったよなぁ・・・それで・・・)



≪ザッ・・・れ・・・≫



俺(その途中で、マルセイユ大尉に会ったり・・・サーニャとも偶然・・・交信して・・・)



≪ザザッ・・・お・・・ザッ≫



俺(それから、501のみんなと会って・・・ほんとの家族みたいだったよな・・・すげぇ嬉しかった・・・もっと、みんなと過ごしたかった・・・)

俺(みんなと・・・一緒に・・・)



≪≪≪俺!!≫≫≫




もう聞こえないはずのインカムから、皆の声が聞こえる。

その声が聞こえると同時に、下方から幾本もの淡く、青い光の帯が現れ、落下する俺を包み込む。

それは、仲間たちの魔力。俺へと向けられた魔力の束であった。

俺(なんだろうこれ・・・凄く暖かい・・・それにみんなの声も聞こえた・・・おかしいな・・・幻聴かな・・・)

ゲルト≪頼む届いてくれっ!俺!!≫

エーリカ≪俺!聞こえる!?ねぇ!≫

ミーナ≪返事をしなさい!俺一等兵!!!≫

リーネ≪俺さん・・・俺さん!!≫

芳佳≪返事してください!俺さん!!≫

坂本≪俺!聞こえるなら返事をしろ!!≫

ペリーヌ≪俺さん!!≫

シャーリー≪俺!≫

ルッキーニ≪返事して!俺!!!≫

エイラ≪俺・・・聞こえてるんダロ!なぁ!!≫


俺(そうだ・・・何してんだよ俺・・・くたばってる場合じゃないだろ・・・みんなを・・・・)



やがて魔力は俺に活力を与え、



サーニャ≪俺!!≫



俺(サーニャを・・・守るんだろ!!!)


俺に再び希望の火をともした。


俺「おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉッッッ!!!!!」


腹の底から、咆哮にも似た雄叫びを上げる。

それから身を翻し、体勢を立て直した。


Whatever you do it's always gonna come back
(やったことは何でも いつでも返ってくる)

So living by the guns gonna get the gun clap
(だから銃に頼って生きれば狙撃音にさらされる)

I ain't giving in hell nah fuck that
(俺は負けない まさか、かまうものか)

If you gotta problem then stand up and say what?
(悩みがあるなら立ちあがって どうした?って言うんだ)


俺(死ぬ訳にはいかないんだ・・・俺の大事な・・・世界よりも大事な家族を守るまで・・・!!)

虚脱感も、全身を満たそうとしていた死の感覚も消え去った。

射抜かれた部分からは血が流れている。それでも、戦闘に支障をきたす痛みではなくなっていた。

俺「スラオシャ!」バァン

スラオシャが現れ、俺に快速の力を与える。

俺は再び、コアへと向かってストライカーを駆る。


Man's gotta do you know
(男はしないといけないだろ)

What a mans gotta do for life
(命懸けで)

The battle yeah
(戦いってのを)


坂本≪聞こえるか俺・・・今、お前へ向けて皆がお前へと魔力を送っている・・・届いているか?≫

芳佳≪俺さん、あなたは一人じゃないです!≫

リーネ≪お願い・・・届いて・・・!俺さんに・・・!≫

ペリーヌ≪あなた一人を・・・死なせたりしませんわ!!≫

彼女たちは、もう残り少ない魔力をなんとかして絞りだし、俺へと飛ばす。大切な仲間を死なせないために。

半ば奇跡としか言えない現象。しかし、それは現実に起こっていた。魔力はさらに俺へと送られ、魔法力により自己治癒能力が促進され、傷が癒えはじめる。

核から再び放たれた3発の光軸。先ほど同様、速い。

しかし、相対スピードではスラオシャの力を得た俺がやや上回っている。ビームを避けるのもギリギリだが可能だ。

一筋目を右に避け、二筋目をあらかじめ構えていた刀を抜き打ち、掻き消す。三筋目は俺の背を少し掠めて通り過ぎて行った。

もう片方の空いた手で、銃を構え、乱射。

俺「おおおおッ!!」ガガガガガガガガガガガガ

力の限り、全弾を撃ち尽くす勢いでコアへと当ててゆく。作り出された発射口は、それによって剥げてゆく。

しかし、肝心のコアは傷つかない。


Got a little robust since we first met
(初めて会ったときから強くなった)

Cuz I am yet to put my fist down
(まだ拳を降ろしてはいないから)

It ain't easy
(簡単なことじゃない)

But never show my weakness
(でも弱みなんか見せない)


俺「スカアハ!!」

スカアハの力で極限まで精神を研ぎ澄まし、

俺「オーディン!」

威力を増して、降り落ちる雷。

俺「スルト!!」

次いで放たれる、燃え盛る爆炎。

しかし、いずれの魔法でも『母なるもの』を打ち倒すことはできない。

シャーリー≪俺!死ぬな!≫

ルッキーニ≪負けないで俺!!≫

エーリカ≪私たちの力・・・届くか分からないけど・・・!!≫

ゲルト≪いや届く!届けてみせる!絶対に!!≫

ミーナ≪お願い・・・私はどうなってもいい・・・だから・・・彼に力を!!≫

次々に届く青い光。それがさらに俺に力を与える。彼女たちは、気力で生まれた魔力を懸命に地上から俺へと送る。

もう虚脱感も、死が体を覆う感覚もない。

俺「みんな・・・ありがとうっス・・・届いてるっスよ。みんなの想いも・・・力も・・・」

弾はすべて撃ち尽くした。刀も、先ほどの様子ではまるで意味がない。魔法も同様だ。

自分は、この祈りに応えなければならない。この力をくれた、大切な人たちを守り抜くために。

エイラ≪オマエは、いつだって私たちと一つダ!こんなところで死なせてたまるカ!!≫

サーニャ≪俺・・・約束して・・・絶対に、帰って来るって・・・!≫

俺「・・・もちろんっス!」


No way out of this so freaking better seize it
(逃げ場はない しっかりしろ)

Deep breath talk to Jesus
(深呼吸して神と対話する)

Pray to God still make my own way
(神に祈って それでも自分の道を作り)

And I preach this
(自分に言い聞かせる)


泉のように無尽蔵に沸き起こる力。溢れる魔力は俺の全身を覆うほどであった。

きっと、今ならできる。皆からもらった『世界』の力で、この強大な存在を退けることが。

俺は召喚器をこめかみへとあてがう。

俺「スー・・・ハー・・・」

ゆっくりと深呼吸。その間にも核に発射口が作り上げられてゆく。



俺「もうこれ以上・・・俺の大切な人たちを・・・」



俺は、引き金に力を込める。絆を結んだ大切な者と、



俺「俺の家族を・・・」



世界よりも大切な、家族同然の仲間と、



俺「サーニャを・・・」



世界よりも大切な、愛する者を守るために



俺「・・・苦しめんなあああああぁぁぁ!!」



全身全霊をもって、引き金を引いた。



俺「おおおおおおおおおおおおッッッ!!!」



バアアァァン!



Burn My Dread
(恐怖を燃やせ)



雄叫びと共にひかれた引き金。俺の周りをガラスの破片のようなものが渦巻き、パズルのピースが合わさるかのように、カチリ、カチリとはまり合い、次第に形を形成してゆく。

現れたのは始まりの力、オルフェウス。そしてそれは、『世界』の力を受け、転生する。

ピシッ…ピシピシ!

オルフェウスの体が、いつかのようにひび割れ、崩れてゆく。

バリィン…

しかし、中からあの時の死神は現れなかった。現れたのは、全身を真白に染めたオルフェウス。背には琴の代わりに、巨大な十字架のようなオブジェを背負う。

その姿はまるで、全ての者に等しく救いを与え、その末に磔刑に処せられた聖人のよう。そのペルソナが、声を発した。

―――我は汝、汝は我―――――我は汝の心の海より出づる者―――

―――全ての始まりの引き金、汝の道行きを照らす導とならん――

―――我は標を示すもの――『メサイア』なり――

『世界』のアルカナを持つペルソナ、『メサイア』。絆を結んだ者達の力の結晶。

核から、何本ものビームが放たれた。素早く、そして確実に俺へと向かってくる。

俺が右腕を横に振るう。メサイアも同様の行動をとった。

その振るわれた腕は、迫っていたビームを一瞬にして掻き消す。

俺「行こう、メサイア。」

メサイアは核へと両手を翳す。空間内では何も起こったようには見えないが、巣の外で、異変は起きていた。


---航空母艦『ライオン』内:甲板---

坂本「あれは・・・」

シャーリー「巣が・・・吸い込まれてる・・・」

突如上空に、巨大な黄金の扉が現れる。メサイアの力によって作り出されたそれは、ネウロイの巣を余裕で飲み込んでしまうほど巨大で、巣はその扉へと引き込まれてゆく。

サーニャ「だめ!まだ・・・中に俺がいるの!!」

巣の中には、まだ俺がいる。そんなことも関係なしに扉は異形の住処を丸ごと飲み込んでゆく。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

やがて巣は、完全に扉の奥へと消え、

ガチャン…

そして無慈悲にも、その扉は閉じられた。

エイラ「俺・・・そんな・・・」

ルッキーニ「俺・・・俺は・・・?」

やがて扉の存在が薄れてゆく。その後ろで、形を失ったはずの月が再び顔を出していた。

ゲルト「くっ・・・うぅ・・・」

エーリカ「俺・・・」

芳佳「嘘・・・嘘ですよね・・・」

ペリーヌ「バカっ・・・」

ミーナ「待って・・・あれは・・・?」

全員がミーナの指を指した方向を見る。

リーネ「天使・・・?」

ミーナの指を指した先、そこに何かが居た。

それは、左右6対の羽を携えた、眩い後光を放つ天使の姿。

芳佳「俺さん・・・俺さんなんですか!?」

しかし、それは俺ではない。俺の力の一つ、『ルシフェル』であった。

そして、





≪リカームドラ。≫




ただ一言、彼女たちの耳に俺の声が届く。

瞬間、ルシフェルから眩い光が放たれ、世界のあまねくを包み込んでゆく。

その光を最後に、彼女たちの意識は手放された。





そして、次に目を覚ました時、彼女たちの記憶からこの一年間の記憶と共に、






『俺』と言う存在が消え去った。







続き→ペルソナ23
最終更新:2013年01月29日 14:29