『言葉と感情。虚構と現実』 その2


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


330 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/25(水) 22:20:44.76 ID:EM1imhoO0
試作じゃねぇか!支援だ支援!


331 :試作な俺-22話 支援感謝です:2011/05/25(水) 22:23:04.52 ID:Ek1KIi6d0


<翌日(三日目)午前・実験部隊専用船「ラオホウ」・内部ダルシム私室>

薄暗い室内。ダルシム大佐が1人、デスク前の椅子に腰掛けてデータのチェックをしている。
机上には大量のデータが置かれ、その隅には写真立てがいつもの場所に収まっていた

やがて一通りのチェックを終えると、背もたれに身を任せて目を閉じ、思考を巡らせ始める


ダルシム(テウルギストは軽い調整作業さえ行えば直ぐに使用が可能になるか。……だが、問題はバスターライフルだ)

ダルシム(無茶な使い方をした事により、銃口が破損してしまっている。このままでは撃てん。修理が必要だ)

ダルシム(……それよりも、最もわからないのは、切り落とされた左腕の再生、か……)

ダルシム(しかし、どういう事だ・・・? 強化ウィッチが持つ能力に、「再生」などと言う機能は無い)

ダルシム(01の固有魔法は「魔力変換」。応用範囲の広い能力だが、研ぎ澄ませた所で「再生」を習得するなんて事は不可能な筈だ)

ダルシム(そもそも01は力を失っている。それどころか、二年前の全盛期にもあのような力は持っていなかった。なのに何故、こんな予想外の能力が……)

ダルシム(・・・・・っ!)

ダルシム(まさか・・・自我が芽生えたとでも言うのか・・・・!!?)

ダルシム(いや、違う。残っていたのか? しかしそれなら、奴らにも知性が───)

ダルシム(・・・いや、この際それはどうでもいい。問題なのは、何故再生というイレギュラーな現象が起きたかだ)

ダルシム(・・・01のインプラント同調率は、過去の02~08と比べれば群を抜いて高い)

ダルシム(よもや再生は・・・インプラント同調率が高かったからこそ、起きた現象だとでも言うのか……?)

333 :試作な俺-22話 すいません最初少しジジィのターンです:2011/05/25(水) 22:28:12.06 ID:Ek1KIi6d0

コンコンッ

?< 失礼します

ダルシム「・・・どうぞ」 カタッ

写真立てを伏せ、入室の許可を出す


ガチャッ


研究者C「大佐。準備が整いました」

ダルシム「ご苦労様です。下がってください」

研究者C「はっ、失礼しました」


……ガチャン!


ダルシム「……さて」



<ラオホウ内部・通信室>

通信先の男『・・・盗聴や傍受の可能性は』

ダルシム「対策は万全です。万に一つもありません」

通信先の男『・・・そうか。実験の進捗状況は?』

ダルシム「定時報告通り順調です。間も無くして、量産に必要なデータが全て揃うでしょう」

334 :試作な俺-22話:2011/05/25(水) 22:33:22.80 ID:Ek1KIi6d0

通信先の男『プロト01はそろそろ限界間際だと聞く。大丈夫なのか?』

ダルシム「問題ありません。最終実験を終えるまで、アレには生きていて貰わねば困りますから」

通信先の男『ふふっ、酷い男だな君は……』

ダルシム「…………」 ギリッ……

通信先の男『”インペラトール”をそちらに送った。本日中にはそちらに着く筈だ』

ダルシム「!  ”インペラトール”……。完成していたのですか?」

通信先の男『ああ。既に調整も万全だ』

ダルシム「……相変わらずの手際の良さで」

通信先の男『アレの最終調整はそちらで行うといい。オペレーション・『エピオン』終了後、行動に移れ』

ダルシム「オペレーション・『エピオン』……?」

通信先の男『明後日に行われる、新たなネウロイに対する大規模な迎撃作戦だ。失敗すればローマの街は……いや、ロマーニャは地図から姿を消す事になるだろう』

ダルシム「そんな作戦が……」 (バスターライフルの修理は間に合いそうに無いか……)

通信先の男『今日中にそちらにも命令が届く筈だ。・・・だがそれも君の復讐劇にとっては、開幕前の最後の余興に過ぎないだろう。躓くわけにはいくまい』

ダルシム「無論、そのつもりです」


335 :試作な俺-22話:2011/05/25(水) 22:38:40.09 ID:Ek1KIi6d0

通信先の男『ならば、オペレーション・『エピオン』完遂後、すぐにインペラトールを使って行動に移れ。この意味が分かるな』

ダルシム「……承知しております」

通信先の男『よし、くれぐれもミスをするな。そちらがしくじれば、こちらに降りかかるのは火の粉では済まん』

通信先の男『近頃私の周りを嗅ぎ回っているネズミが居る。恐らくはガランドの小娘の手の者。奴らに我々の事を感づかれるわけにはいかない』

ダルシム「肝に命じております」

通信先の男『私はトレヴァー・マロニーと違って甘くは無い。不確定要素は徹底的に排除するつもりだ』

ダルシム「・・・・・」

通信先の男『いいか、くれぐれも失敗しない事だ』

ダルシム「了解しました」

通信先の男『では、健闘を祈る』


プツン、ザザーーッ……


ダルシム「・・・ふん」

ダルシム(トレヴァー・マロニーとは違う? 確かにあの男と貴様なんぞでは違うだろう)

ダルシム(貴様の中に1ミリでも、世の為に力を使おうと言う思いがあるか? ……否、断じて否)

ダルシム「私利私欲でしか動かない豚が・・・!」


336 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/25(水) 22:40:53.90 ID:QRwhVFXQ0
支援

337 :試作な俺-22話 支援ありがとう:2011/05/25(水) 22:43:56.17 ID:Ek1KIi6d0

ダルシム(……だが所詮私には、奴を貶す資格などは無いか……)

ダルシム(奴の後ろ盾を無くして、実験の成就は有り得ない。資金・人材面のバックアップ、隠蔽工作、情報統制・・・。計り知れない支援がある)

ダルシム(しかし奴は我々を利用しているに過ぎない。ならば、私も奴を利用させてもらうだけだ。私の目的の為に)


ダルシム(カオリ……。君の好きだった世界は私が……いや、私達が守る)

ダルシム「始まる・・・。あと少しで・・・・・」

――――――――――――――――――――

その日、501に1つの凶報が飛び込んで来た


ヴェネツィア上空の巣より、超ド級ネウロイが出現

現在一定速度で、ローマに向けて南下中

急遽防衛線を張り、航空部隊やウィッチ部隊を集められるだけ集めた、大規模な迎撃作戦が展開される事になった


オペレーション・『エピオン』


勝利すれば、この戦線の情勢は人類側に大きく傾く
しかし万が一敗北すれば、ロマーニャに人間の居場所は無くなる事になる


───決行は、明後日正午───


338 :試作な俺-22話:2011/05/25(水) 22:49:14.94 ID:Ek1KIi6d0

基地では至急ブリーフィングが開かれ、作戦説明と各々の役割の確認が行われる

この事実は彼女たちに一時的に強いショックを与えたが、決して闘志を折るには至らなかった


そう。この戦線の決戦と言っても過言では無いこの戦いも、彼女達にとっては通過点に過ぎない


人々を、世界を守る為。仲間を救う為。彼女達は戦い続ける



そして・・・、作戦決行前日



<作戦決行前夜(4日目の夜)・基地内俺の部屋>


俺「いよいよ明日、か……」

俺(オペレーション・『エピオン』。超ド級ネウロイに対する迎撃作戦……。厳しい戦いになる筈だ)

俺(だけど、守ってみせる。ルッキーニの故郷を、ローマの街を、沢山の人々を、みんなを・・・!)

俺(そして、その後は……)

俺(その後は…………)


339 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/25(水) 22:49:15.33 ID:AMcAZooc0
支援ー

340 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/25(水) 22:53:04.50 ID:zqb90wWu0
しえん

341 :試作な俺-22話 支援多謝:2011/05/25(水) 22:54:17.93 ID:Ek1KIi6d0

ドア< コンコンッ

俺「はーい、どうぞー」

俺(こんな時間に…………誰だ?)

ガチャッ

バルクホルン「私だ」

俺「トゥルーデだったか。どうしたんだ?」

バルクホルン「・・・俺、ちょっと話さないか?」

俺「話? 何の?」

バルクホルン「そうだな……、場所を変えよう。上のテラスで待っていてくれ。私もすぐに行く」

俺「え? あ、ああ」

バルクホルン「……………………」


<10分後・テラス>

バルクホルン「待たせたな」 テクテク

俺「いいよ別に。……それは?」


342 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/25(水) 22:56:33.19 ID:N72A/Uyu0
支援

343 :試作な俺-22話 支援ありがとう:2011/05/25(水) 22:59:28.44 ID:Ek1KIi6d0

バルクホルンは両手にマグカップを持っていた

バルクホルン「今日は冷えるからな、飲み物を持ってきた」

俺「ん? ……ああ、確かにな」

バルクホルン「アルコール類は大丈夫か?」

俺「大丈夫、普通に飲めるよ」

バルクホルン「そうか……。ほらっ」 スッ

そう言ってバルクホルンは、俺に片方のマグカップを手渡す。中にはたっぷりの赤っぽい液体が注がれていた


バルクホルン「温めたワインに香辛料や砂糖・シロップを入れて作ったグロッグだ。俗に言えばホットワイン。体が温まるぞ」

俺「お~、美味しそうだな。ありがとー」

バルクホルン「温かいだろう?」

俺「ああ。温かいな」

バルクホルン「……そうか」

俺「いよいよ明日……だな」

バルクホルン「ああ」


344 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/25(水) 23:03:39.72 ID:xUYIpAag0
コスケンコルヴァかスピリタス混ぜたい

345 :試作な俺-22話:2011/05/25(水) 23:04:43.85 ID:Ek1KIi6d0

バルクホルン「俺。明日のオペレーション・エピオン……どうしても参加するのか」


俺「当然だろ? 作戦内容ももうちゃんと聞いたよ」

バルクホルン「右腕の怪我は、もう大丈夫なのか?」

俺「大丈夫だよ。宮藤も手伝ってくれたからな、お陰様で明日の戦いに支障は無いぜ」 ブンブン

そう言って俺は右腕を力強く回し、自身の回復っぷりを示す

バルクホルン「そうか、それは良かった」

俺「トゥルーデの看病のお陰でもあるよ、ありがとう」 ニコッ

俺「明日・・・さ。絶対に…絶対に勝って、みんなで帰ろうな」

バルクホルン「……俺。そのグロッグ、せっかく作ったんだ。冷めないうちに飲んでくれないか?」

俺「あ、ああ。そうだな。……じゃあ、いただきます」

俺「(ゴクッ、ゴクッ) ……ぷはっ」コクン

バルクホルン「あまり作り慣れてないのだが……甘過ぎたりしてないだろうか」

俺「いいや、丁度いい甘さだ。美味しいよ」 ニコッ

バルクホルン「本当に美味しいか?」

俺「ああ、ホントだよ」

346 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/25(水) 23:10:04.19 ID:CtsLG2tZ0
グロックに見えちまった支援

347 :試作な俺-22話 支援感謝です:2011/05/25(水) 23:10:52.72 ID:Ek1KIi6d0

バルクホルン「……本当にか? 本当にソレは美味しいのか?」

俺「ああ。……ホントだけど?」

バルクホルン「そうか…………、やっぱりか」

俺「トゥルーデ・・・?」

意図の読めない意味深長な発言を繰り返すバルクホルンに、俺は若干の戸惑いを覚える


バルクホルン「俺……、おまえの飲んでいるソレは、本当に甘いのか?」


俺「えっ・・・」


バルクホルン「おまえの飲んでいるソレは、本当に温かいのか?」


俺「トゥルーデ、さっきから何を言って・・・」


バルクホルン「俺。さっきからおまえが飲んでいるソレはな───」



バルクホルン「ただの・・・・・色のついた水だぞ」


俺「……っ!!!!!」


バルクホルン「………………」


俺「あ、ははははっ・・・。嫌だなー、知ってるよ。ちょっとそっちの冗談に合わせただけで───」


348 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/25(水) 23:15:28.39 ID:RedolRae0
346
未来銃作っちゃうとかお姉ちゃん凄い

349 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/25(水) 23:15:49.89 ID:AnlxRwbM0
敗者になりたいんですかぁ?
エレガントではないですよねぇ?

350 :試作な俺-22話:2011/05/25(水) 23:16:10.03 ID:Ek1KIi6d0


バルクホルン「なら、これを飲んでみろ」 ズィッ

バルクホルンは、もう1つのマグカップを突きつける


バルクホルン「これを飲んで、味がするかしないか。熱いのか冷たいのか言ってみろ」


俺「な、なに言ってんだよトゥルーデ。そんなの───」


バルクホルン「言ってみろ。甘いのか甘くないのか。熱いのか冷たいのか!」


俺「そんな事・・・」


バルクホルン「言えっ!!」


俺「っ・・・・・」


バルクホルン「・・・言えないんだろう? わからないんだろう?」


俺「…………」



バルクホルン「もうおまえ・・・・・感覚が無いんだろ」


俺「…………」



ガチャァン……!


俺が持っていたマグカップを力無く落とし、床にぶつかったそれは音を立てて割れた


351 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/25(水) 23:18:50.28 ID:HUXO7XIG0
おおう帰って来たら試作とはツイてるぜ支援

352 :試作な俺-22話 支援ありがとう >>349崇高すぎて俺にはときどき閣下が理解できない…:2011/05/25(水) 23:23:41.50 ID:Ek1KIi6d0

推奨BGM的な物


バルクホルン「痛みで動かせない筈の右腕を使えてたのも、火傷しても痛がらなかったのも、刺さった鉄筋に気づかな・・・いや、気付けなかったのも、全ては感覚を失っていたから……、そうなんだろ」

俺「くっ、ははははは……」

俺は力無く笑う。その笑いに狂気は含まれていなかった

俺「あはははは・・・っ。何で……何でバレちまったかなぁ」

バルクホルン「!  やっぱり、そうだったのか……」

俺「ああそうさ。あんたの予想通りだよ、”バルクホルン”」

バルクホルン「っ…………」


俺「今俺には、感覚がない。無くなってるんだよ」


バルクホルン「……いつからだ?」

俺「最初に異常が出たのは、パトゥーリア倒した時の祝勝会。あの時だ(※13話)」

バルクホルン「そんな前から……!?」

俺「覚えてるか? あの時ルッキーニが、俺にジャム取ってって頼んだだろ?」

俺「ルッキーニは複数あるジャムの内の1つ、イチゴ味のを頼んだ。どれがどれだなんて、色を見れば一目瞭然だ。でも……俺は渡せなかった」


353 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/25(水) 23:26:23.11 ID:rYDLDtvo0
まったく・・・
何でこの作者は毎度毎度いろんなネタを盛り込んでくるんだ?
もっとやれ


354 :試作な俺-22話:2011/05/25(水) 23:29:34.60 ID:Ek1KIi6d0

俺「急に視界が眩んだかと思ったら、次の瞬間には色が分からなくなっていた。何もかも白黒。世界がモノクロに見えたんだよ」

バルクホルン「色が・・・?」

俺「その時は、10秒くらいで正常に戻った。でもその日以降、朝昼夜関係なしに1日にランダムで数回、色のわからなくなる時間が出来た」

バルクホルン(色覚に異常が出たのか……)

俺「それでその次が、テウルギスト使った模擬戦の後(※15話)。色と同じように、触覚が麻痺するようになった。これも1日に数回、すぐに治ったけどな」

俺「その次が、初めてツインバスターライフルをぶっ放した日(※16話)。戦闘が終わった夕飯の時、味が分からなくなってたんだ」

バルクホルン「…………」

俺「薄味料理かと思ったが違った。塩を沢山かけたって、何の味もしなかった。味覚が麻痺してたんだ。でもそれも、次の日には治ってたけどな」

俺「それからは戦って行くうちに、匂いや温度とかも分からなくなる時間が出来て、それらの長さと回数も段々と増えていった。
  それでもまだいいさ。麻痺はどれも1日に10回も無かったし、大抵は数分で元通りになった」

俺「でも問題は……拒絶反応を起こした(※18話)、あの後だ」

俺「トゥルーデが呼んでいる気がして、俺はカプセルの中で目を覚ました(※20話)。すぐに出撃しようとした」

俺「体に妙な違和感を覚えつつも、ハンガーに急いで向かって行った。だが何日も動いてなかったせいか、体が上手く動かずに階段で転んでしまったんだ」

俺「そして転んだ事により、俺はようやく気がついたんだよ。本当は、妙な違和感なんかがあったってわけじゃない……」

俺「違和感どころか、もう何も感じれなくなっちまってるってな」

バルクホルン「・・・!」


355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/25(水) 23:31:36.12 ID:AMcAZooc0
俺達の俺達による俺達のための支援さ!


356 :試作な俺-22話 支援ありがとう:2011/05/25(水) 23:37:06.94 ID:Ek1KIi6d0

俺「何も感じなくなっていた。痛みさえも」

俺「だからおかしかったよ。あの人型と戦っている時、あんなにズダボロにやられてるってのに全く痛みが無かったんだからな」

バルクホルン「どうして……そんな事に……」

俺「俺た………俺みたいな強化ウィッチは、体内に「インプラント」って言う特別な装置を埋め込まれている。
  インプラントと己の魔法力を同調させる事で、普通のウィッチとは一線を画した強力な固有魔法や能力が使用可能になるんだ。……俺は大半を失ってるけどな」

バルクホルン(ダルシムの言っていた、精神的ショック……)

俺「でも強い力なんざ、ただで使えるわけがない。対価が必要なんだよ」

バルクホルン「それが、今のおまえの状態だとでも言うのか……?」

俺「そうだ。インプラントは驚異的な力を齎す。しかし、それだけ危険な物なんだよ」

俺「固有魔法や能力を使い過ぎると、体内のインプラントに過負荷がかかる。インプラントと宿主の魔法力の同調。
  その均衡が崩れた時、強化ウィッチに『拒絶反応』と言う発作が起きる。あの時の俺がそれだ。短時間以内に処置を施さなければ、確実に死ぬ」

バルクホルン「それでは、迂闊に能力を使えないのでは……」

俺「その通りだな。だからこそ、能力を使ってても拒絶反応が起きないようにする、魔法のクスリがある。それが『γ-グリフェプタン』。……これだ」 スッ

俺は懐から、小さなプラスチックケースに入った液状のクスリを取り出した

バルクホルン「これが……」

俺「拒絶反応抑制だけでなく、肉体超強化、魔力強化精神高揚などの様々な効果がある。とんでもねぇクスリだよ、これは」

バルクホルン(俺が戦闘時に凶暴化したり、私よりも力が強くなったりしたのは、このクスリのせいだったのか……)


357 :試作な俺-22話:2011/05/25(水) 23:42:55.13 ID:Ek1KIi6d0

俺「……んで、そのクスリさえ飲んでいれば、拒絶反応を起こす事無く自由に能力使えて、
  更にクスリの効果も加わってやりたい放題出来るか……って言うとそうでもねぇ。物事なんて、そうそう都合よくはいかないんだよ」

俺「コイツにも問題があってな。1つ目は一定時間経過及び魔力大量消費で発症する、クスリの効果が切れた状態『シナップスシンドローム』、別名『時間切れ』。
  まぁこれは『アラキドノイル』って言う特効薬飲めば直ぐに治るし、結構苦しいけど拒絶反応と比べりゃ大分マシだし、最悪でも廃人だから大した事は無い」

俺「……それで、もう1つの厄介なのが副作用である、『感覚消失』だ」

バルクホルン「感覚……消失……」

俺「文字通りに感覚が無くなって行く。異常が出るのは主に、痛覚・触覚・嗅覚・味覚・色覚・温覚・冷覚とからしいな。視覚・聴覚は消えにくいらしい」

俺「俺は三年以上前からずっと戦っていてな、γ-グリフェプタンとの付き合いも長いが、そのつい最近までは感覚消失が起きて無かった」

俺「γ-グリフェプタンの濃度には仕組みがあってな、濃度が濃い程、感覚消失の度合いも強まっていく事になっている。でも、クスリの効能は濃度には関係ない」

俺「だから、最初は薄い濃度から始めるんだよ。そこで重要になってくるのが、このクスリに対する適性だ」

俺「薄い濃度と言っても、繰り返し飲んでりゃ何故かそのうち効果が無くなってしまう。そんな時に力を使い過ぎれば、拒絶反応を起こして即あの世行きだ」

バルクホルン「…………」

俺「だが濃度レベルを上げさえすれば、γ-グリフェプタンは再び拒絶反応を防ぐ。しかしさっき言ったように、それは感覚消失の進行をも早める事となる」

俺「つまりγ-グリフェプタン適性の高い強化ウィッチは、濃度レベルの上昇も感覚消失の進行も遅く、比較的”長持ち”する。俺がそれだ」

俺「長い間を戦って来たにもかかわらず、俺がついこの前まで感覚消失を引き起こして無かったのは、γ-グリフェプタンの適性値が凄い高かったからなんだ」

俺「まぁ、今まで騙し騙しやって来たけれど、この前の拒絶反応で全部トンじまった。
  流石にガタが来ちまったって事だ。ま、当たり前の事だけどな」

バルクホルン「……なん、で…………」


358 :試作な俺-22話:2011/05/25(水) 23:45:39.06 ID:Ek1KIi6d0

俺「ん?」

バルクホルン「なんで、そんな風に言えるんだ……」

俺「…………」

バルクホルン「何故、そんな何でもないような言い方が出来る……。何故、そんなに平然としていられる……!」

バルクホルン「そんなのって普通じゃない……絶対におかしい!」

俺「・・・言ったろ。当たり前の事だって。これが力の代償。必然的な結果なんだよ」

バルクホルン「!  じゃあおまえは……最初から全部知っていながら、全て私達に隠していたって事なのか!!」

俺「オイオイおかしいな。今度は口止めされてたのだから仕方ない……とか言わないのか?」

バルクホルン「はぐらかすな! 何で……何で言わなかった!」

俺「余計な気を使われたく無かったからだ。言ってどうこうなるわけでも無いからな」

バルクホルン「ふざけるな! 私達の気持ちを何だと思って・・・!」

俺「はん、同情なんざされたくねぇよ。そうやって気を使われる度に、自分が壊れて行く事を自覚させられる・・・。それがどれだけ惨めな事か分かるか?」

バルクホルン「・・・!」

俺「気安い憐れみなんざ、侮辱と同じだ。同情されるくらいなら、いっそ嫌われた方がマシだね」

バルクホルン「でもだからって、こんな・・・!」


359 :試作な俺-22話:2011/05/25(水) 23:51:10.77 ID:Ek1KIi6d0

俺「仕方ないさ。これは必要な事なんだからな」

バルクホルン「必要だと……?」

俺「あのクソジジィは気に食わねぇが、野郎の研究は本物だよ。間違いない」

俺「強化ウィッチが量産されれば、世界はあっという間にネウロイの手から救われる。その為にも、試作体の生体データ採取は必要不可欠」

バルクホルン「…………」

俺は胸に手を当て、冷淡に話し続ける

俺「そしてその研究に必要な生体データ提供が、試作体である俺の本来の役目なんだ。だから逃げない。逃げたりしない」

バルクホルン「………………」


俺「これがホントの俺。プロト01としての俺の役目って事だ」


俺「今まで騙してて悪かったな。バルクホルン」


バルクホルン「…ざ……けるな」

俺「っ・・・・・」


バルクホルン「ふざけるなぁ!!!」


360 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/25(水) 23:53:30.08 ID:HUXO7XIG0
騙して悪いがこれも仕事でな


361 :試作な俺-22話:2011/05/25(水) 23:57:04.01 ID:Ek1KIi6d0

ガシッ!!

バルクホルンが俺に詰め寄り、両手で力強く胸倉を掴む

俺「……いいよ別に、殴りたきゃ殴っても。どうせもう何も感じないからな」

バルクホルン「っ・・・!」 ギリッ……

バルクホルンは服を掴んだまま俺を睨みつける。その表情は憤怒の形相を浮かべていたが、瞳の奥には深い悲しみが満ち溢れていた


バルクホルン「ふざけるな。何が”役目”だ・・・!」

俺「…………」


バルクホルン「何が”必要な事”だ! 何が”仕方ない”だ!」


バルクホルン「それじゃあおまえが・・・おまえが救われないじゃないか!!!」


俺「救われてるさ」


怒りと深い悲しみの感情を露わにするバルクホルンとは対極的に、俺は全く表情を崩さずに答える


俺「俺はあんたや……宮藤やみんなと出会えた事で、もうとっくに救われてるんだよ」


バルクホルン「なんだ…………それは……」


362 :試作な俺-22話:2011/05/26(木) 00:02:18.35 ID:qMp4q9Mr0

俺「…………」

彼女たちは人々を守る為、仲間を救う為に戦い続けようと決心した

しかし肝心の俺は、強化ウィッチとしての役目を受け入れてしまっている。割り切っている

これでは、彼女の戦う意味は───


ギュッ……


バルクホルン「嫌いだ、この野郎……」 ポロポロ


俺「…………」


バルクホルンは胸倉から手を離すとそれを背中に回し、力いっぱい俺を抱きしめる


バルクホルン「おまえなんか、もう嫌いだ・・・。大っ嫌いだ、大馬鹿野郎・・・!」


俺「どうして……あんたが泣くんだよ」


バルクホルン「おまえが……泣か…ないからだ……!」 ポロポロ


バルクホルン「だから、わた…しが……おまえのっ……ぶん、まで……」


俺「……ごめんな、バルクホルン。俺、涙が涸れちゃったみたいだからさ、もう全然出てこない。泣けねぇや」


バルクホルン「バカ・・・やろう・・・・・!」 ポロポロ


バルクホルンは俺の胸に顔をうずめ、声を上げてひたすら泣き続ける


363 :試作な俺-22話:2011/05/26(木) 00:07:24.38 ID:qMp4q9Mr0

―――


俺(『やっちゃいけない事』、か……)


胸の中で泣いているバルクホルンの事を見ながら、俺はつい先日の人型ネウロイとの会話を思い出していた


俺(テメェで言って、テメェでそれをやってりゃ世話ねぇよな……)


バルクホルンは泣き止まず、俺の軍服を涙で濡らし続ける。
だけど俺は彼女の涙を拭く事も、彼女を抱きしめる事さえも出来ない。もう俺に、そんな資格はない


俺(ごめんな、トゥルーデ……また泣かせて。俺はまた、あんたに嘘を吐いた……)


俺(でも、あと少しだから。あと少しで……全部終わるから)




もう……空の色も、誰かの温もりもわからない



殴られる痛みも、肌が触れ合う感触もわからない



自分が生きているのか、死んでいるのかさえもわからない



でも、この時……。泣いているトゥルーデの顔を見た時…………



胸の奥が・・・、痛かった



そんな気がした


364 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/26(木) 00:11:50.21 ID:e0GvOuev0
せつねぇ・・・支援

365 :-Prototype-試作品-22話-言葉と感情。虚構と現実:2011/05/26(木) 00:13:41.56 ID:qMp4q9Mr0


─────翌日・正午─────


<ロマーニャ近海・『絶対防衛線』>


ミーナ「間も無く敵目標が攻撃開始地点に差し掛かるわ。各班、準備はいい?」

ザザッ……

ペリーヌ『東班、準備出来ましたわ』

エイラ『西班、大丈夫だゾ』

シャーリー『北班、こっちもOKだ』

坂本『突入部隊、問題ない』

エーリカ「いよいよだね」

ミーナ「ええ……」

敵は前方上空に広がる、超ド級ネウロイ。天井のように広く広がる巨体を以て日光を遮り、ロマーニャの海に巨大な影を落としていた。
そしてそれを取り囲むように501とウィッチ部隊と、多数の航空機、艦隊が四方に分かれて展開されている



ミーナ「敵目標、母艦要塞型ネウロイ・『リーブラ』……!」


ミーナ「ストライクウィッチーズ、全機攻撃開始せよ! オペレーション・『エピオン』、開始します!!」
最終更新:2013年01月29日 15:29