『定めの楔』 その1
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時間が空いてしまったので前話のあらすじ
- 総力をあげて母艦要塞型ネウロイを撃破した501。しかしその日の夜、突如実験部隊と俺がラオホウ(実験部隊の船)ごと基地から離脱する。
- そしてダルシムは、事前にされていた黒幕の命令に従いウィッチーズを奇襲して消そうとしたが、助手の反逆により一時的に阻止される。
- 処刑されたはずが奇跡的に生き残った助手は、きっかけこそ偶然だったものの、バルクホルンや宮藤たちに諭されてウィッチーズを手助けする事を決意し全てを話す
助手がみんなに話したこと↓
- 強化ウィッチの正体は体内に特殊なコアを宿したネウロイ人間。過去には俺以外の試作体や、試作体にもなれずに死んだ大勢の被検体が居た。
部隊のバックアップ役である空軍大将が黒幕。援助される代わりに実験部隊は彼の命に従い、彼の指示されるままに暗殺・掃討を行った。
これらの事実は空軍大将の情報操作、工作により完全に隠蔽され、上層部は真実を何も知らずに騙されている。
そして今、黒幕は501が邪魔になったので彼女たちを始末しようとしている
- 俺がいつも首につけていたチョーカーは「首輪」と呼ばれており、その正体は爆弾の起爆スイッチ。爆弾は体内に埋め込まれており、作動したら首が吹っ飛ぶ。
首輪の制御はダルシム自身が彼の魔法力で行っている。彼は老年の男性で魔法力が枯渇していないという、極めて珍しい異例中の異例
首輪の作動条件→→→①力などで無理やり外そうとした時 ②ダルシムが意図的に作動させた時 ③ダルシムが死んだ時
しかし助手が作った解除薬を飲ませれば、すぐに普通に外せるようになる(はず)。その薬はラオホウの助手の部屋の中
- 501は助手から通信で話を聞きながらラオホウを追っていたが、実験部隊からの刺客であるウォーロックの強化型、「インペラトール」が彼女たちの前に現れる。
苦戦する501。そしてミーナたちに意志を託され、バルクホルンは単独でラオホウに潜入するのだった。
314:試作な俺ー25話 :sage:2011/08/25(木) 00:48:18.97 ID:3nnPLO/wO
<ラオホウ内部・通路>
タタタタタ……
バルクホルン(助手軍曹の部屋は確か・・・)
バルクホルン「!」 ササッ
兵士A「……ったく、大佐の人使いの荒さにも困らされるぜー」
兵士B「少しは休暇が欲しくなるよな」
テクテクテクテク……
バルクホルン(……行ったか)
バルクホルン(危なかった……。大佐に私の存在を気取られる訳にはいかないからな)
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助手『いいですか? 船の中では、くれぐれも大佐と対峙しないように気をつけて下さい』
助手『大佐はいつどこでも瞬時に首輪を作動させられます。見つかってしまえば、確実にあの子を人質にとられてしまいます』
助手『絶対に……、絶対に大佐と対峙しないで下さい』
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316:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage:2011/08/25(木) 00:51:38.06 ID:VLePp0iO0
試作来たか
支援
317:試作な俺ー25話 支援感謝です :sage:2011/08/25(木) 00:53:58.61 ID:3nnPLO/wO
バルクホルン(なんとしても大佐に気づかれる前に、俺の ”首輪 ”を無効化しなくてはならない)
バルクホルン(それにインペラトールも停止させねば。あのままではミーナ達が危ない。急げ……!)
タタタタタ……
バルクホルン「……!」
< でさー。そいつがまた大馬鹿でよ
< マジで? ホント馬鹿だなそいつ
バルクホルン(前から声が……。ここは引き返して───)
< ───って訳なんだよ
< ギャハハハハ! ありえねー
バルクホルン(しまった! 後ろからも……)
バルクホルン(くっ・・・どうする。こうなったら、どちらかを倒して強行突破───)
ガシッ!
バルクホルン「!?」
?「こっちだ」 グィッ
ガチャッ、キィッ……、ガチャン!
318:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage:2011/08/25(木) 00:56:18.32 ID:qVPg7twi0
支援
319:試作な俺ー25話 支援感謝です :sage:2011/08/25(木) 00:56:59.51 ID:3nnPLO/wO
「……あれ、今ここに誰か居なかったか?」
「いいや。気のせいじゃね?」
「そっか……そうだよな」
テクテクテクテク……
<空き部屋>
俺(……行ったか)
バルクホルンを助けたのは俺だった。引き込んだのは30畳以上はある広い空き部屋で、幸い他には誰も居ない。
兵士達が去った事を確認すると、俺はゆっくりとドアから耳を離す
俺「……さて、随分と早い再会だったな。俺はもう会うつもりなんて無かったんだけど」
俺「数時間振りだな、バルクホルン」
バルクホルン「俺…………」
俺「まさか、本当に追いかけて来るとはね……。あんたの行動力には驚かされるよ」
俺「……だけど、ここはあんたが居ていい場所じゃないんだ。悪いがすぐに帰ってもらう」
バルクホルン「なに……?」
320:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage:2011/08/25(木) 00:57:12.44 ID:VLePp0iO0
寝る前支援
321:試作な俺ー25話 支援ありがとう :sage:2011/08/25(木) 01:00:03.75 ID:3nnPLO/wO
俺「あのヤローに見つかれば、何されるか分かったモンじゃないからな。早くここから脱出するんだよ」
バルクホルン「待て俺。私は……」
俺「とりあえず、脱出ルートは何とか確保するからさ、今すぐあんたは船から───」
バルクホルン「俺!」 バッ!
俺「」 ピタッ
腕を掴んでいた俺の手を振りほどき、一喝する
バルクホルン「帰れるものか。私はまだ、何も為していない」
バルクホルン「私は……おまえを助けに来たんだ」
俺「助け……?」
バルクホルン「ああ。このままここに残ったとしても、おまえは死ぬだけだ」
俺「っ…………」
322:試作な俺ー25話 :sage:2011/08/25(木) 01:06:06.86 ID:3nnPLO/wO
バルクホルン「この計画は、余りにも人道から離れ過ぎてしまった。こんな計画はあってはならない」
バルクホルン「でもまだ、やり直す事が出来る筈だ。おまえが死ぬ必要なんて無いんだ」
俺「…………」
バルクホルン「宮藤も、少佐も、フラウにエイラに
シャーリーも……みんな、おまえの事を心配していた」
バルクホルン「だから帰ろう。俺、私と一緒にここから─────……俺?」
俺「……ふっ、くく、ははは……っ」 クスクス
俺の異変に気がつき、バルクホルンは言葉を止める
俺「なるほどねー……。 ” 助け ” って、そういうことか・・・ハハハッ」
バルクホルン「俺。どうした───」
俺「なぁ、バルクホルン」
俺「俺がいつ、あんたに ” 助けてくれ ” なんて頼んだよ?」
バルクホルン「なっ・・・? 何を言っているんだ俺。私は───(チャキッ)」
バルクホルン「!」
323:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage:2011/08/25(木) 01:10:44.32 ID:ZMoxM14xI
待っとったよ
支援
324:試作な俺ー25話 >>323ありがとう。支援感謝 :sage:2011/08/25(木) 01:11:59.55 ID:3nnPLO/wO
俺「何も喋るな」
バルクホルン「俺・・・・・っ!」
バルクホルンはここまで来た。睡眠薬による強烈な眠気と戦いの疲労をねじ伏せ、軍に逆らうまでの覚悟を背負い、全ては仲間を救う為に
しかし彼女に向けられたのは、自分を拒絶する言葉と……無機質な冷たい銃口だけだった
俺「頼まれてもいないのにこんな所まで来るなんて、あんたも世話焼きが過ぎたな」
俺「言った筈だろ、これは必要な事だと。これが俺の役目だってな」
バルクホルン「おまえ……」
温かみの無い冷徹な言葉と、氷のように冷たい眼差し。人間らしさのようなものを喪失したただの人形。それは到底、バルクホルンの知るような俺では無かった
戦意に満ちた戦闘中の俺や、照れて笑顔を浮かべるような日常の俺でもない。
まるで別人。光を失った乾いた瞳からは感情が読めず、何も窺い知る事は出来なかった
バルクホルン(これが……、あの俺なのか?)
俺「もう、お互いの居場所に戻ろうぜ。ここはあんたが居るべき場所じゃない」
俺「出てってくれ。今すぐ……この船から」
325:試作な俺ー25話 :sage:2011/08/25(木) 01:17:05.14 ID:3nnPLO/wO
バルクホルン「どうして……どうしてなんだ、俺!」
自分へ向けられた銃口にも怖じ気ず、バルクホルンは訴えかける
バルクホルン「おまえは言っていたじゃないか。私たちは仲間だと……、 ” 家族 ” だと!」
俺「家族だったよ。偽りの世界ではな」
バルクホルン「偽りだと……?」
俺「ああ。所詮、全ては偽りだ」
バルクホルン「・・・!」
しかし俺は彼女の言葉を、 ” 偽り ” という単語一つで切り捨てる
躊躇いも無い。親愛も無い。無情な言葉だった
俺「仮初めの時間は終わった。俺にとっては、こっちが現実なんだよ」
俺「だから今まであんた達と接して来た俺は別人。演技……フェイク……つまりは、お遊びって事さ」
326:試作な俺ー25話 :sage:2011/08/25(木) 01:23:23.92 ID:3nnPLO/wO
バルクホルン「おまえ」
俺「それなのに、ちょっと愛想良くしたら勘違いしやがって。仲間? 家族? 馬鹿馬鹿しい」
俺「戦場においては、『殺らなきゃ殺られる』そんだけだろうが。それが戦争だろうが」
俺「殺せるだけ敵をぶっ殺す、ただそれだけだ。『家族ごっこ』なんざ必要ねぇんだよ」
次々と繰り出される、侮蔑と罵倒の言葉。罵詈雑言。敵意のようなものすら感じられる
俺「『ウィッチに不可能はない』・・・? ハッ!バッカじゃねーの?」
俺「無理なモノは無理なんだよ。そんなお話みたいにご都合よくは行かねぇんだ。所詮は生温い理想論……絵空事だ」
今までの自分を否定するように、無かったことにするように、言葉は溢れ出て行く
俺「世の中にはな、どうしようも無い ” 現実 ” ってモンがあるんだよ。変えられない運命ってのがあるんだよ」
俺「そんな甘いだけの理想だけじゃ……何も変える事は出来ねぇ。何も変わらねぇ」
俺「だから俺はさぁ・・・おまえらみたいな甘ったるい連中、ホントは───」
俺「大ッ嫌いなんだよ」
まるで、自分と彼女たちの ”決別 ”を表すように
バルクホルン「…………本当に」
327:試作な俺ー25話 :sage:2011/08/25(木) 01:28:46.09 ID:3nnPLO/wO
俺「あ・・・?」
自分へ向けられた銃口と彼の言葉に込められた圧力に気押されそうになりながらも、バルクホルンは一歩も退かずに反論する
バルクホルン「本当にそう思っているのか? 俺」
俺「ハァー? 今更何言ってんだよ。話を聞いてなかったのか?」
バルクホルン「……確かに、心を読める訳でもないから、おまえが ” 本当の自分 ” で私達と接していたかどうかなんて、私にはわからない」
バルクホルン「おまえが言ったように、全ては偽りだったのかもしれない」
俺「ハッ! ” かもしれない ” じゃねぇ。嘘だったって言ってんだろ? 今までのは全部おまえらを騙す為の───」
バルクホルン「でも私には、今までのお前の行動が偽りだったとは思えない」
俺「っ・・・・・」
バルクホルン「ほんの数ヶ月の間だが……それでも私は、他の者よりもおまえを知っているつもりだ。ずっと一緒だったからな」
俺「…………」
328:試作な俺ー25話 :sage:2011/08/25(木) 01:34:00.73 ID:3nnPLO/wO
バルクホルン「実験部隊の一員と言う立場を考えれば、嘘を吐いたり自分を偽ったりした事もあるだろう。……だが、それも全てでは無い筈だ」
バルクホルン「始めは芝居のつもりだった。だが時を重ねると共に、おまえの考えも変わっていったんじゃないのか?」
俺「…………黙れ」
バルクホルン「おまえは本当に楽しそうだった。心の底から笑っているように見えた」
バルクホルン「偽りで、芝居で、あんな風に笑顔になれるものか……!」
俺「黙れよ」
バルクホルン「それに約束したじゃないか。共に守る為に戦うと。ちゃんとあの返事をすると・・・!」
バルクホルン「それすらも嘘だったと言うのか、私の想いも……おまえの気持ちも!」
俺「っ…………!」 チャキッ
パ ァ ン ッ ! !
バルクホルン「・・・!」
放たれた一発の銃弾
それはバルクホルンの顔のすぐ横を通過して、後ろの壁に突き刺さる。
巻き込まれた髪の毛が数本、空を漂って散った
329:試作な俺ー25話 :sage:2011/08/25(木) 01:39:48.22 ID:3nnPLO/wO
俺「次は当てる」
鼻をつく硝煙の匂い。薬莢が床に転がり落ちる
バルクホルン「おまえ・・・!」
俺「何度も言わせるな。これ以上は、あんたが踏み込んでいい事じゃない」
俺「ここは・・・あんたが居ていい場所じゃねぇ!!!」
端整な顔つきを怒りの表情で歪め、激昂しながら俺は再度バルクホルンに警告する
撃たれたと言う事実にバルクホルンは少なからず衝撃を受けるが、何とか気持ちを取り繕って俺を真っ直ぐに見据える
自分へと向けられた銃口が、彼女に俺との間の距離を何十倍にも感じさせた
目の前に居るのに、2人の間には壁がある
手を伸ばせば届きそうなのに、その手は届きそうで絶対に届かない
こんなにも近くに居るのに、心の距離はどうしようもなく遠い
遠い───
330:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage:2011/08/25(木) 01:40:56.34 ID:TVrn1a3S0
支援っと
331:試作な俺ー25話 支援感謝です :sage:2011/08/25(木) 01:45:31.01 ID:3nnPLO/wO
バルクホルン「・・・・・」
だがバルクホルンは諦めない。元よりそんな生半可な決意では無かった
バルクホルン「・・・それでいいのか」
俺「は?」
バルクホルン「おまえはそれで満足なのか! 記憶を失い、自分が誰なのかも判らず、自由を奪われ道具のように利用されて戦わされ続ける・・・!」
バルクホルン「挙げ句の果てに・・・ッ、感覚を失い、実験の為に命まで奪われネウロイへと成り果てる! おまえはそれでいいのか!?」
俺「っ! なんであんたがネウロイ化の事を……」
バルクホルン「どうなんだ! 答えろ、俺!!!」
俺「…………」
バルクホルンがネウロイ化を知っていた事に俺は一瞬だけ動揺を見せるも、すぐに無機的な表情に戻る
だが先ほどとは違い、怒り……というよりは苛立ち・歯がゆさのようなものが、若干だが表情に表れていた
俺「・・・あの野郎は気に食わないけど……奴の研究は本物だ。間違いなく『天才』って部類の人間だよ、アレは」
俺「昨日も言ったが、研究が完成すれば世界はあっという間に救われる。量産化された強化ウィッチ達が、ネウロイなんざ瞬く間に滅ぼしてくれるさ」
俺「その先兵になれるんだ。不満なんか在るわけないだろ」
バルクホルン「その計画が正しいと思っているのか? 罪の無い多くの人間を犠牲にしてきたその計画が・・・! その計画の為に犠牲になる事が!」
332:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :sage:2011/08/25(木) 01:49:48.59 ID:ZMoxM14xI
支援
333:試作な俺ー25話 支援多謝 :sage:2011/08/25(木) 01:51:16.82 ID:3nnPLO/wO
俺「計画の為じゃねぇ、世界の為だ。あの野郎の為なんかじゃない」
俺「1人が死ぬ事で世界をひっくり返すような戦力を創り出せるんだ。まさに効率的。それは素晴らしい事だろ」
バルクホルン「本当に……おまえはそう思っているのか?」
俺「ああ。ホントだ」
バルクホルン「!」
俺「だから後は俺に……俺達に任せりゃいいんだ。それで片がつくんだからな」
バルクホルン「俺・・・・・」
俺「さぁ、わかったらさっさと帰れ。もうてめえに用はねえ」
俺「消えろ。頭ぶち抜かれたくなかったらな」
バルクホルン「・・・・・!」 スッ……
────────────────────
202:試作な俺-25話 11/08/26 17:29:02.05 nM2cSTew0
<同時刻・ロマーニャ近海>
インペラトール「…………」 ダダダダダダダダダ!
エーリカ「くっ・・・手強いね!」
シャーリー「いい加減に落ちろって!」 ズドドドドドドドド!
インペラトール「…………」 サッ
エイラ「クッソ、さっきから滅茶苦茶な軌道で飛んで・・・、ジッとしてろよ」
インペラトールは軽々とシャーリー達の攻撃を躱し、銃撃やビームで反撃する。
その強大な攻撃力や機動力を始めとした戦闘能力の高さに、ウィッチーズは苦戦を強いられていた
インペラトール「…………!」 バチバチバチィ! ズゴォォォォォォーッ!
ルッキーニ「シャーリー危ない!」
シャーリー「っ!」 サッ
砲門の前で2、3度紅くスパークを起こし、インペラトールの胸部にある大型砲から、高出力のビームが発射されてシャーリーを襲った。彼女はそれを回避するが───
ビーム「」 ギュィン!
シャーリー「ビームが曲がる?!」
ルッキーニ「追いかけて来るよ!」
203:試作な俺-25話 11/08/26 17:34:45.26 nM2cSTew0
回避したビームは有り得ない軌道で曲がり、再び彼女に襲いかかる
持ち前のスピードで何とかそれを躱すシャーリー。合計3回躱したところで、ようやくビームは消滅した
シャーリー「このっ・・・!」 ズドドドドドドドドド!
インペラトール「…………」 ギュィン!
シャーリー「またか・・・!」
即座に反撃。しかし真っ直ぐにインペラトールへ向かった銃弾の嵐は、当たる直前で空間に波紋のようなものを生じさせて大きく弾道を変え、全て明後日の方向へ飛んで行ってしまった
先ほどから何度も同じように、弾道を曲げられて攻撃を防がれてしまう
ペリーヌ「それなら・・・トネールッ!!」 バチバチバチィッ!
蒼い稲妻が、けたたましい轟音と共にインペラトールを激しく襲う
インペラトール「…………」 ギュィン!
だが先ほどの銃弾と同様に直前で大きく軌道を変え、稲妻は見当違いの方角へ飛んで行った
ペリーヌ「トネールまで!?」
坂本「退けっ、ペリーヌ!」
ペリーヌ「少佐!」
204:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 11/08/26 17:37:14.40 lImYt05v0
おおぅ、保守代わりにしちゃあ豪勢ダナ! しえーん
205:試作な俺-25話 支援感謝です 11/08/26 17:38:06.81 nM2cSTew0
坂本が前へ出る。背中の烈風丸を抜刀し、インペラトールへ突っ込んで行く
坂本(銃撃に、魔力の雷……。あの能力がある限り、どんなに攻撃してもコイツには一切通用しない)
坂本(全部向きを変えられて防がれてしまう。恐らくは私の烈風斬による斬撃波も……)
坂本「ならば・・・懐に飛び込んで直接切り裂く!」
インペラトールは現在、人型形態のまま空中で制止して坂本に攻撃を行っていた。
航空機形態で高速移動などされては取り付くことはほぼ不可能になってしまうが、今は違う。チャンスだ
銃撃を躱し、ビームを切り裂き、坂本は着実にインペラトールとの距離を詰めて行く。
シールドこそ張れない彼女がここまでやれるのは、彼女自身の長年に渡る戦闘経験の積み重ねがあったからであろう
坂本(そのまま動くな・・・!)
インペラトール「…………」 ガシャン!
坂本(なに・・・っ)
突如インペラトールは、3連ビーム砲の搭載された両前腕部を切り離した。
切り離されたそれは、重力に引かれて下へ落ちて行く
坂本(両腕を棄てた・・・?)
宮藤「下です坂本さん!」
坂本「!」
206:試作な俺-25話 11/08/26 17:45:04.02 nM2cSTew0
ビシュゥンッ!
突然下方から数条の火線が坂本を襲う。ギリギリ回避して下を見れば、切り離されて落ちて行った両前腕部が宙に浮き、此方に向けてビームを撃っていた
魔眼で確認すると、その両腕は本体と細く強靱なリード線で繋がっているのが確認できた
坂本(棄てたのではなく分離したのか!)
インペラトール「…………」 ダダダダダダダダダ! ビシュゥンッ!ビシュゥンッ! ズゴォォォォォォーッ!
坂本「くっ!」 サッ
複数方向からのビームと追尾ビームと機銃乱射によりまるで近づけず、坂本とインペラトールの距離が離れる
こちらが攻撃を行っても、手前で軌道を変えられて防がれてしまう。
接近戦に持ち込もうにもあちらからの攻撃が激しい上に、人型から航空機形態への高速変形による素早い一撃離脱戦法によりまともに近寄れない
有効な対処法も見つけられないまま戦闘は続き、ウィッチ各員の表情にも疲労が色濃く表れ始めていった
シャーリー「くっ、そ・・・! 何でも有りかよコイツは・・・・・っ!」
リーネ「こんな敵、どうすればいいの……?」
サーニャ「せめて、あのバリアが無ければ……」
ミーナ(……みんなまだ、昨日の作戦の疲れがとれていない。こんな悪条件でさえ無ければ、もっとマシな動きが出来るのに……)
状況は最悪かもしれないが、それでも彼女達は戦い続けるしかない。今はただ、艦に1人潜り込んだ仲間の成功を信じて─────
────────────────────
207:試作な俺-25話 11/08/26 17:50:11.36 nM2cSTew0
<ラオホウ内部・空き部屋>
推進BGM的な物
──パシンッ!
俺「っ・・・!?」
薄暗い室内に、乾いた音が響く
バルクホルンの平手打ちが、俺の横っ面を撥ねた。左頬が充血し、仄かに赤くなる
感覚消失により、もう痛みなんて感じない。しかしその小さな一撃は、確かに俺の心に響いていた
バルクホルン「ふざけるなよ、俺・・・!」 ガシッ
バルクホルンは俺に詰め寄り、向けられた銃など気にせずに思いっきり襟元を掴みあげる
俺「は、放せ」
バルクホルン「現実? 世界の為? 甘ったれた事を言うな! 自分の命をなんだと思っているんだ!」
俺「・・・事実だろうが。実際普通のウィッチの限界なんざ底が知れてるんだ。人間、出来ないことの方が多いんだよ」
208:試作な俺-25話 11/08/26 17:52:32.26 nM2cSTew0
俺「だからコレが一番の方法なんだよ。強化ウィッチの量産こそが、世界を救う為の───」
バルクホルン「違う。おまえのそれは、逃げでしかない・・・!」
俺「!」
バルクホルン「自分が死ぬことで終わりにするだなんて、諦めたようなものだ。生きることから逃げるな!」
俺「っ・・・! うるさい!」 バッ!
俺はバルクホルンの手を振り解いて離れ、再び彼女へ銃口を向ける
バルクホルン「・・・仮に強化ウィッチの手により世界が救われたとしても、私はおまえを認めない」
バルクホルン「そんな救われかたをしても、ちっとも嬉しくない。私は一生おまえを許さずに恨み続けるだろう」
俺「別に・・・あんたに認めて貰おうなんざ思ってねぇよ!」
209:試作な俺-25話 11/08/26 17:56:08.36 nM2cSTew0
バルクホルン「それで世界が救われたとしても、その世界におまえは居ないじゃないか!」
俺「…………!」
バルクホルン「残された人の気持ちを考えろ! 残された人は……残された人は苦しむしかない。笑えない」
バルクホルン「おまえは私や宮藤たちに……それを背負わせるつもりなのか!?」
俺「黙れ……黙れよ!」
バルクホルン「駄目なんだ!そんなやり方では……! そんなやり方を認めては!」
バルクホルン「そんなこともまだわからないのか! 俺ぇっ!!」
俺「黙れって言ってんのが聞こえねぇのかあぁぁぁッ!!」
パ ァ ン ッ ! !
再び発砲。またしても銃弾はバルクホルンのすぐ横を通過し、後ろの壁に突き刺さった
210:試作な俺-25話 11/08/26 18:00:57.34 nM2cSTew0
バルクホルン「次は当てるんじゃなかったのか?」
俺「・・・ちっ!」
バルクホルンに指摘され、俺は軽く悪態づく。
確かに「当てる」と言った先ほどの警告とは違い、二発目も脅すだけの威嚇射撃に過ぎなかった
俺「……今のが最終警告だ! 死にたくなかったら、今すぐ俺の目の前から消えろ! 消え失せろ!!」
バルクホルン「…………」 テクテク
しかしバルクホルンは警告を聞かず、ゆっくりと俺に歩み寄る。そして──
ガシッ
俺「なっ・・・」
バルクホルン「これなら……もう外さないだろう」
俺はバルクホルンに銃を向けていた。
しかしバルクホルンは俺が戸惑っている隙に自分へと向けられたそれを掴むと、俺に持たせたまま銃口をずらさせて彼女自身の額に押し当てる形にセットし直した
211:試作な俺-25話 11/08/26 18:06:13.73 nM2cSTew0
バルクホルン「どんなに射撃が不得手な奴でも、これなら外しようが無いな」
俺「てめえ」
バルクホルン「全てが偽りだったのなら……自分自身の選択が正しいと思うのなら、撃てるよな?」
俺「正気かよ」
バルクホルン「世界を救うんだろう? そして私は、おまえ達の計画を邪魔する ”敵 ”だ」
バルクホルン「ならば、障害は取り除かなければならないな」
俺「嘗めんなよ・・・。俺が撃たねぇとでも思ってんのか!」
バルクホルン「・・・・・」
俺「・・・クソッ! 何なんだよオマエは・・・!」
俺「もう消えろ!消えろっ! 消えてくれよ!」
激しい動悸に襲われて肩で息をし、額に汗を浮かべる俺。
しかしそんな俺とは対照的に、バルクホルンは至って冷静で汗一つ掻いていなかった
バルクホルン「撃て、俺……!」
俺「っ・・・・・!」
俺はバルクホルンに気押されて後退りしようとしたが、彼女が力強く銃を握り締めている為に出来ない
212:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 11/08/26 18:08:41.77 kgroifAe0
支援
213:試作な俺-25話 支援ありがとう 11/08/26 18:14:18.42 nM2cSTew0
〈やめろ…………〉
バルクホルン「覚悟があるのなら・・・それを成し遂げようという想いがあるのなら!」
〈これ以上……掻き乱すな〉
バルクホルン「撃てよ! 臆病者!!」
バルクホルン「計画を完遂させたいなら・・・、先へと進みたいのなら私を撃て!」
俺「ぐっ・・・っ・・・・・!」
バルクホルン「そして……思うままに死ねばいい!!!」
───バルクホルンのその一言が、引き金となった───
俺「・・・・・駄目って言ったって───」
俺「駄目って言ったって、他にやりようなんか無いんだよ!!!」
バルクホルン「・・・!」
214:試作な俺-25話 11/08/26 18:20:40.19 nM2cSTew0
俺「クソ!!! クソッ!クソッ!クソッ!クソッ・・・! 何でこうなるんだよ・・・! 何だってんだよ畜生!!」
バルクホルン「俺…………」
俺「ああそうさ! さっきあんたが言ってた通りだ!」
もう、限界だったのだろう
最初の一言を引き金として、言葉は次々に溢れ出て行く。今まで堰き止められていたものが、開放されたように
俺「楽しかったよ、あんたらと過ごした時間は! 本当に楽しかった! 仮初めだった筈が、いつの間にか俺の中では掛け替えのないものになっていた!」
俺「そうして俺は偽りに酔いしれていたんだ。それはもう滑稽なまでにな・・・!」
バルクホルン「何……?」
俺「仲間入り出来たつもりになっていたバカが、1人で勝手に浮かれていたってことさ」
俺「分不相応な願いなんざ持って、それを手に入れた気になって……。現実も見えねぇ……いや、現実から逃げているだけの間抜けがな!」
自嘲的な笑みを浮かべつつ、まるで他人ごとのように自分のことを話す俺
最初バルクホルンに見せた無機的な表情の時とはまるで違う、生の感情を剥き出しにした ”人間らしさ ”に満ちた言葉
しかし悲しみや憤りを始めとした、様々な感情が入り混じった悲痛な叫びであった
215:試作な俺-25話 11/08/26 18:26:11.34 nM2cSTew0
パッ
ようやくバルクホルンが銃を放し、俺は彼女に向けていたそれを下ろしてヨロヨロと二、三歩後ろへ退がる
俺「今度こそ変われたと思った。俺にも誰かを護ることが出来ると思った。人として生きたいと思った……!」
俺「でも! 現実は何も変わってなかった! 変わったのは
俺の気持ちだけで! 実際は何も変えれなかった!!」
バルクホルン「…………」
俺の叫びと嘆きを、バルクホルンは真剣な表情で聴く。目を逸らさず、じっと彼を見据えたまま
俺「……気がついたんだよ。あんたの前で血を吐いたときに(※18話)。完全に感覚を失ったんだと分かったときに」
俺「結局俺は……人形のままだった。偽りは偽りでしかなかったんだ…………」
生きてきた
己を殺し、感情を殺し、兵器としてひたすら戦い続け、死にたくないからという理由だけで生きてきた
出会った
少年は11人の少女らと巡り会い、彼女たちと触れ合ううちに彼の中で何かが変わった
そしていつしか少年は、自らも彼女たちのように、『人』として生きることを望むようになった
465 :試作な俺-25話:2011/08/31(水) 00:41:12.60 ID:WCSr5Mu7O
しかしそれは・・・少年には許されない事だった
結局、自分は首輪に縛られた人形。所詮、偽りは偽り。信念を持つ彼女たちと自分は違う
外見は同じでも、どうしようも無く違う。どう足掻いたって自分は人間では無い。それが彼の ”現実 ”
再び自らの現実を突きつけられた時、少年はより深い絶望に身を落とした
俺「気持ちだけじゃ、何も変えられない……。どうすることも出来ない…………」
変えようのない事実がある。逃れられない現実がある。そして、彼には何も無い
死を恐れるから従って戦い、壊し、「人形じゃない」と抗いながらも、心の奥底ではとっくに諦めている自分が居た
俺「俺達は消耗品……。欠ければ、別の誰かが補充されるだけ」
俺「使い捨てられる、試作品(プロトタイプ)・・・・・」
こんな自分に彼女たちと一緒に生きる資格なんて無い。彼女の思いに応えるなんて出来るわけがない
自分では彼女を幸せには出来ない。自分が一緒に居ては、彼女が不幸になってしまう
もとより遠からず死ぬ運命。定められていた最期。ずっと知っていた。
それならば自分の気持ちに嘘を吐いてでも、せめて彼女たちを護る為に───
俺「だけど・・・・・」
〈もしも、望んでもよいのならば〉
〈もしも、願うことが許されるのならば〉
俺「俺はまだ・・・生きたい。みんなと一緒に居たい」
俺「生きて・・・いたいんだよぉ・・・・・」
それが嘘偽りの無い、彼が願ったことであった
ギュッ…………
バルクホルンは小さくなった俺の体を、そっと包み込むように抱きしめた
バルクホルン「出るじゃないか、涙」
俺「え……」
469 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/08/31(水) 00:51:46.69 ID:qRf0apEa0
支援
470 :試作な俺 25話 支援感謝です :2011/08/31(水) 00:56:38.79 ID:WCSr5Mu7O
俺はそっと目元に触れる
もう出ないと思っていたのに
自分自身も気がつかない内に、俺は涙を流していた
両眼から流れ出て行く雫が、頬を濡らして薄暗い室内で微かに光る
俺「わからない・・・もう何もわからない・・・・・」
俺「今だってトゥルーデに触れているのに、何も感じれない・・・。もう・・・わからないよ・・・・・」
力が抜け、握り締めていた銃が手から滑り落ちた
バルクホルン「こんなこと……誰かに相談なんて出来るわけがない。ずっと、這い寄る死に怯えていたんだ」
バルクホルン「かわいそうに。ずっと……ずっと1人で耐えてきたんだよな」
俺「っ・・・! やめてくれ・・・っ!」
バルクホルンの両肩を掴み、彼女の体を押しのける
俺「俺は弱い人間なんだよ。本当は、三年前に死ぬはずだった……」
三年前。俺は計画の実験体として、他の七人の試作体と共にネウロイと戦い続けていた
俺「偶然生き残っただけなんだ。他の仲間は、みんな死んでしまった」
俺「俺が一番臆病だったから……。アイツらだって、生きたかったはずなのに…………」
バルクホルン(助手軍曹が話していた、七人の試作体……)
俺「俺はアイツらみたいに勇敢じゃない。真っ向から死に抗い、命を賭けてまで檻から飛び出す勇気は無い」
バルクホルン「…………」
俺「しかも俺は失敗作……、肝心の力も失ってしまった出来損ない。あんたにそんな言葉をかけて貰える資格なんて無いんだよ・・・」
バルクホルン「……そんなことはない」
俺「何がわかる! 同じ試作体でも無い、他人なんかのあんたに!!」
バルクホルン「他人なんかじゃない!!」
俺「!」
バルクホルン「おまえがどんなに自分のことを悪く言ったって、私はおまえを知っている」
バルクホルン「素直じゃないけど優しいところも、本当は怖がりなところも、不器用だけど仲間想いなところも、意地っ張りなところも…………」
バルクホルン「私は……俺を知っている」
俺「やめて・・・やめてくれ・・・・」
俺「怖いんだ。俺の存在が……みんなと違うと言う事実が、いつかみんなをも壊してしまいそうで、どうしようもなく怖くなる」
俺「辛い……。どんなに同じ時を過ごしても、言葉を交わしても、俺はみんなと同じ場所へは行けない」
俺「それにもう俺は……壊れてしまった。知ってるだろ、もう俺は感覚が…………」
バルクホルン「……感覚消失がクスリの副作用なら、必ず治す方法だってある筈だ」
バルクホルン「だから……一緒に探そう。おまえの体を元に戻す方法も」 ギュッ……
俺「あっ……」
バルクホルンは再び俺を抱きしめる。俺はもう彼女の温もりを感じることは出来ないが、その優しさは確かに俺の胸に響いていた
俺「どうして……こうなっちゃったんだろうな」
俺「俺はただ、みんなと一緒に居たかっただけなのに……」
バルクホルン「その定めは、誰かが一人で背負うには重すぎるんだ」
バルクホルン「おまえの孤独を、私にも分けて欲しい」
俺「トゥルー……デ……」
バルクホルン「光でも、闇でも。哀しみでも、喜びでも」
俺「う……ぁ……あぁっ…………」
彼女に抱きしめられ、俺は再び涙を流す
バルクホルン「怖かったよな? 辛かったよな? 苦しかったよな? 寂しかったよな? 今まで、ずっと……」
バルクホルン「でも……もういいんだ。死ぬ必要なんてないんだ」
俺「あ……あぁ…………」
バルクホルン「もうおまえは、独りでは無いのだから」
俺「うぁ……あああ……っ! あああああああ!!」
彼女の胸に顔を預けたまま、俺は子供のように噎び泣く
今まで必死に自分の中で押し殺し、目を逸らして来た「定められた死」への恐怖。
数少ない仲間が次々と死んで行き、唯一友達となってくれた少女さえも失ってしまった哀しみ。
過去の記憶も無く、誰も自分の隣に居らず、逃げることも出来ずに、人形として命をすり減らしながら戦い続けるという孤独・絶望
全ての負の感情が、涙となって流れ出て行く
俺「嫌だ……。もう忘れるのも、独りに戻るのも嫌だ…………」
俺「俺だって、こんなやり方は嫌だ……。ネウロイになんてなりたくない…………」 ポロポロ
バルクホルン「俺…………」
バルクホルンは優しく俺を抱きしめ、彼の嘆き・絶望……全てを受け止め続ける
475 :試作な俺 25話:2011/08/31(水) 01:09:15.36 ID:WCSr5Mu7O
俺「でも……駄目なんだよ……」 スッ
俺はそっと、いつも首に着けているチョーカーに触れる
俺「これ爆弾なんだ……。昔の逃げ出そうとした仲間が、目の前で首を飛ばされる瞬間も見た……」
俺の脳裏に、かつての仲間だった少女が見せしめとして目の前で処刑された瞬間の光景が過ぎる
その出来事は俺の心に深く刻み込まれ、逃げ出そうとしたり抵抗したりする「希望」を粉々に打ち砕き、実験に縛り付ける ”
トラウマ ”として機能していた
俺「これの制御はダルシムが魔法力で行っている。アイツの支配は完璧なんだ。付け入る隙なんて無い……」
俺「それこそ、” 奇跡 ”でも起きない限り、どうしようも無い……」
バルクホルン「…………」
俺「これがある限り、俺は何処へも行けない……。どんなに望んだって、どんなに願ったって……」
俺「選択肢なんて、始めから無いんだよ。奇跡なんか、起きないんだよ。今までも……そして、これからも!」
バルクホルン「奇跡は……起きる」
俺「起きないよ! 奇跡が起きてたら、アイツらは死なずにすんだ!! 俺だって、自由に───」
バルクホルン「ウィッチに不可能は無い!!」
俺「!」
バルクホルン「奇跡が起きないというのなら、起こしてみせる! 私自身の手でだ!」
俺「そんなの、どうするの……?」
バルクホルン「大丈夫だ。おまえに打ち込まれたその楔は私が……私たちが取り除く」
バルクホルン「ここで待っていろ!」 ダッ
俺「あっ……」
ガチャッ、キィッ……ガチャン!
俺を置いて部屋から出ると、廊下に誰もいないことを確認する
バルクホルン(……よし。早く助手軍曹の部屋へ───)
ガクッ
バルクホルン(・・・・・!)
バルクホルンは直ぐに駆け出そうとしたのだが、不意に体の力が抜けて壁にもたれ掛かってしまう
バルクホルン(なん、だ……?)
全身から汗が噴き出し、膝がガクガクと笑う。壁に捕まって何とか立ち続けた
バルクホルン(そうか・・・。私も怖かったんだな・・・・・)
思えば自分に銃を向けられて二回も撃たれ、自ら額に銃口を押し当てていたのだ。
いくら相手が俺とは言え、本当に撃たれる可能性が0だったとは言えないだろう。撃たれれば間違いなく死んでいた
477 :【12.5m】 :2011/08/31(水) 01:17:53.20 ID:Ce46lyFj0
支援
478 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2011/08/31(水) 01:17:53.80 ID:zzR8z0Xd0
支援
寝る
479 :試作な俺 25話 支援多謝 :2011/08/31(水) 01:18:43.26 ID:WCSr5Mu7O
軍人とはいえ、その前にバルクホルンは1人の人間……そして少女だ。いくら自覚が無くても、心の奥底では微かにも怖かったのだろう
バルクホルン(でも、こんなの今のアイツが味わっている痛みに比べれば……)
先ほどまでの、泣いていた俺を思い出す
戦闘中の覇気は全く感じられず(そもそも戦闘中の精神高揚は、魔力安定の為に投与されている覚醒薬の副作用)、とても大型ライフルや大剣を振り回して戦うようには見えなかった。
恐らくは、長い間モルモット扱いを受け続けて歪んでしまう前の俺に戻ったのだろう。目つきの悪さなんて微塵も確認出来なかった
それどころか、もう完全に心が折れていた
バルクホルン「ダルシム・・・」 ギリッ
血管が浮き出るほど拳を強く握り締め、彼女はゆっくりと立ち上がる。
そして脳裏には、元凶である初老の男の姿が浮かんでいた
バルクホルン(この計画が……あの男が俺をあそこまで追い詰めた)
バルクホルン(許せない……。貴様らの計画なんかに、俺を渡してたまるか・・・!)
バルクホルンは再び動き出し慎重に、けれど素早く船の奥へ向かう
彼の「首輪」を解除する「鍵」を求めて、助手の部屋目指して進んでいった
最終更新:2013年01月29日 15:34