投下スレ:俺「ストライクウィッチーズぅ~?」111-142
時刻は4時半頃、襲来したネウロイを全て撃墜し、501のウィッチ達が、ロマーニャの基地へと帰ってきた。
次々にウィッチの少女達がハンガーへと降り立ち、ストライカーユニットをその足から外している。この時、各人が作業を
進めている中、宮藤は、ハンガーにある椅子に座って、ついさっき目の当たりにした光景―――――先刻の、男とネウロイの
戦闘を思い返していた。
その戦闘では、男はシールドを張る事もせず、かといってエイラのように攻撃の隙間をくぐり抜ける出もなく、ただまっすぐに
ネウロイへと直進していた。通常、ネウロイの攻撃が直撃すれば、間違いなく命に関わる。事実、宮藤の上官の一人であり、
同じ501のエースであるバルクホルン大尉は、以前、ネウロイの攻撃を受けて瀕死に陥ったこともあった。男の行動は、本来
ならば、ただの自殺行為でしかなかった。
だが、実際には、男はネウロイから一切の傷を受けなかった。ネウロイの攻撃が男に届いた瞬間、男に迫っていた光線の
全てが、まるで元からそこにいなかったかのように掻き消えた。どれほどの光線が男に降り注いでも、一つとして、男に傷を
負わせる事は叶わなかった。
そうこうしている内、男はネウロイの真上へとたどり着いていた。その後、宮藤の位置からは判断できなかったが、男が腕を
振り上げた直後、ネウロイの上部で大爆発が起きた。その爆発は瞬く間に大型ネウロイを飲み干し、その姿を崩壊させた。
後に残っていたのは、辺りを舞うネウロイの白い残骸と、何事もなく宙に浮いていた男だけだった。
宮藤は、基地に戻る前に坂本が言っていた言葉を思い出す。
『奴の固有魔法は――――――エネルギーの吸収、及び放出だ』
エネルギーの吸収と放出。坂本は、それが男の魔法と言っていた。ネウロイの光線が、男に触れた瞬間消滅した現象や、
一撃で大型ネウロイすらも屠って見せたあの尋常ならざる攻撃力は、その魔法によるのだろうか。宮藤は思案を巡らせる。
「……さっきから、いったい何を唸っておりますの?」
唐突にかけられた声に、宮藤は顔を跳ね上げる。声の主は、先ほどの戦闘で行動を共にしていたペリーヌだった。
「いえ、さっきの戦闘の事で…。……あれってやっぱり、男さんの魔法なのかなーって」
「ああ、先ほどの……全く、ネウロイの攻撃を消滅させた上、大型を一撃で倒すなんて、とんでもない方ですわ……」
最早、驚きを通り越して呆れてすらいる様子で、ペリーヌが小さくため息をついた。
宮藤とペリーヌが言葉を交わしている頃、
シャーリーとルッキーニが、連れだってハンガーへとやってきた。
「やっ、少佐、お疲れ様!」
「おお、二人とも来たか!」
シャーリーの陽気な労いの言葉に、坂本が反応する。シャーリーはいつもの様子だったが、ルッキーニはどこか沈んだ様
だった。坂本は、小さく手招いてシャーリーを呼び寄せる。
「やはり、この間のロマーニャの件が響いているか…」
「ああ、大分ショックだったみたいだな…励ましてはいるんだけど、どうにもあんな調子でさ…」
二人は、顔を近づけて小さな声で会話している。その内容は、ロマーニャ放棄の可能性を突きつけられて以降の、ルッキーニの
意気消沈した様についてだった。
「シャーリー、お前一人に押しつけるようですまんが…ルッキーニが一番信頼しているのはお前だ。なんとか元気づけてやってくれ」
「任せてくれよ、少佐。私だって、ルッキーニのあんな顔は見たくないんだ、またいつもみたいに笑わせてやるさ!」
坂本の言葉にシャーリーは、豊満な胸を張って威勢良く返す。シャーリーの言葉に、坂本は頬をゆるめた。
「―――そういえば、今回は中型と大型が一緒に来たみたいだけど……」
シャーリーが、ふと思い出した様子で言葉をこぼす。
「なに、あの程度、物の数ではない……と、言いたい所だが、今回の奴はなかなか厄介だったようだ。男が来ていなければ、
存外に危なかったかもしれん。……しかし、あの男の魔法、まさかあそこまでとは…」
坂本が話し終えた途端、シャーリーが強い反応を見せた。
「そうそう、それだよそれ!なんか凄い爆発が起きてたけど、一体ありゃ何だったんだ!?あの、男って奴の魔法なのか?」
興奮した様子で、シャーリーは坂本に問いかける。そのシャーリーの様子に、坂本は、先ほど浮かべたものとは若干
異なる、愉しげな笑みを見せた。
「ふふ、随分とはしゃいでいるな、シャーリー」
「そりゃそうさ、あんなの見せられたら燃えるに決まってる!あいつ、一体どんな魔法を使うんだ?」
シャーリーが坂本に問いかけたちょうどその時、男がハンガーへと降りてきた。それに気づいた坂本は、シャーリーに提案をする。
「――――ちょうど良い、本人に語ってもらうとしようじゃないか」
[SPLIT]
501の面々に続いて、男は最後にハンガーへと戻ってきた。男は、着陸してストライカーを外すと、全身を大きく伸ばして体を
ほぐしている。そこへ、シャーリーと坂本の二人が連れだってやって来た。
「さすがだな、男。お前のおかげで、今回の大型を撃墜する事ができた」
「いえ、私の魔法が、今回のネウロイに相性が良かっただけです。私など、まだまだ…」
「それよりも、男!」
坂本が、この日の最大の功労者とも言える男に、労いの言葉をかける。その男と少佐の会話に、シャーリーが割って入った。
「さっきの爆発、あれはお前の魔法なのか!?お前の魔法って、一体何なんだ!?」
シャーリーは目を輝かせながら、大声で質問をぶつける。その声を聞きつけて、他のウィッチ達も男の元へと寄ってきた。
「あっ、私も気になってたんです!さっき坂本さんは、エネルギーの吸収って言ってましたけど、どういうことなんですか?」
「早いとこ教えてくれよ、男!」
宮藤がシャーリーの質問に便乗し、シャーリーもまた、疑問への解答を催促する。
「まあまあ、まずは落ち着いてください、二人とも。……少佐、少々お時間を頂いても、よろしいでしょうか?」
「ああ、構わん。皆、お前の魔法の詳細が気になって仕方ない、という様子だからな」
男の確認に対し、坂本は了承を出した。それを受け、男は一息ついた後、自身の魔法について語り始めた。
「まず、私の魔法そのものは、先ほどそちらの扶桑のお嬢さんがおっしゃっていた通り、エネルギーの吸収、放出です」
男が口を開くと、ウィッチ達は一斉に口を閉じ、男の方を向く。特に強い興味を示していたシャーリーや宮藤は、目を爛々と
輝かせつつ、真剣に耳を傾けている様子だった。
「具体的には、『吸収』というのは、何らかのエネルギーそのもの、またはそのエネルギーを持つ物体が体に触れた時に、その
エネルギーを全て吸収して無効化し、吸収したエネルギーは、自身の中にストックしておく事ができます。先ほどの戦闘でネウロイの
攻撃を無効化したのは、この『吸収』によるものです。」
男がそこまで解説したところで、シャーリーが勢いよく手を挙げた。
「質問、質問!その、“何らかのエネルギー”ってのは、何でも吸収出来るのか?」
「いいえ、制限はあります。吸収出来るのは、ネウロイの光線以外は『熱エネルギー』のみです。これ以外のエネルギーは
一切吸収出来ませんが、熱であれば、どんなものでも吸収出来ます。」
言葉を続けながら、男はペリーヌの方に手を向ける。
「例えば、あちらのフロイラインが先ほど放っていた電撃自体は、私の魔法では吸収できません。しかし、電撃を受けること
によって発生する熱は吸収出来るので、電流を浴びても、火傷をする事だけはありません」
男がそこまで説明をすると、今度は宮藤が口を開いた。
「私も、質問します!さっき、“エネルギーをストックする”って言ってましたけど、どういうことですか?」
「文字通り、『体の中にエネルギーを貯めておく』という事です。これが、先ほど申し上げた『放出』に繋がります」
男は一度言葉を句切り、軽く咳払いをすると、説明を続けた。
「申し上げたとおり、私はエネルギーを吸収し、貯蔵することができます。貯蔵量は無制限で、限界量というのはありません。
そして、その貯蔵したエネルギーを何らかの形に 変換して、体外へ向けて放出する事ができるのです。放出の際の変換に
ついては、特に制限はありません。電気でも熱でも、ネウロイの光線にも変換する事が可能です」
男が言葉を句切ったところで、今度はリーネが質問を投げかけた。
「す、すいません、あの、私も質問しても良い、ですか…?」
後半へ行くに連れて声が小さくなったリーネに対し、男は軽い笑みを浮かべつつ頷き、了承の意を表した。
「えっと、そ、それじゃあ、さっきの戦闘で大型のネウロイをやっつけたのは、その『放出』で、ということなんでしょうか…?」
「その通りですよ、フロイライン。私はあの大型に近づく前に、大量の攻撃を浴びてその全てを吸収しました。あの大型への
攻撃は、その吸収した分を全て叩きつけただけです」
そう言いながら、男は両手にはめていた、紋様の書かれた黒い手袋を取り出す。
「そして、この手袋は、そのエネルギー放出を更に強化するためのものです。この模様は、放出されるエネルギーを増幅する、
言わば、呪文のようなものです」
男はリーネの質問に答えた後、ふと思い出した様子で口を開いた。
「そうそう、先ほど『吸収』と『放出』の条件を申し上げましたが、力学的エネルギーは、双方ともに対象外となっています。つまり、
物体が動く力や止まろうとする力は、吸収はもちろんのこと、変換して放出することもできません」
男が周囲を見回すと、宮藤を始めとして、数人が疑問の色を顔に貼り付けていた。今ひとつ、説明が飲み込めなかったらしい。
「例を挙げれば、仮に私が爆発に 巻き込まれたとすると、熱を吸収して火傷を防ぐ事はできますが、爆風は吸収出来ないので、
結局は吹き飛ばされてしまいます。他にも、運動エネルギーを放出して周囲の物を吹き飛ばすといったこともできません」
そこまで言って、先ほど眉間に皺を寄せていた面々も、ようやく納得した様子を見せた。
「―――まとめましょう。私の魔法は『吸収』と『放出』。吸収できるのは熱のみで、放出は、力学的エネルギーを除けば、あらゆる
形態に変換可能。変換したエネルギーは攻撃に転用できる。……こんな所でしょうか」
男が自信の固有魔法についての解説を一纏めした所で、坂本が口を開いた。
「成る程、過去に、お前が頻繁に大型狩りに回されていたのは、火力の高い大型相手の方が、お前自身の攻撃力が上がるからか」
「お見事、ご名答です。仰るとおり、私の攻撃力は対峙するネウロイの火力に依存するので、大型を相手にした方が効率が良いのです。
逆に、火力の低い小型相手の場合は攻撃用のエネルギーがなかなか貯まらないので、かえって時間がかかってしまうのです」
坂本の言葉に対して応答を行うと、男は言葉を続けた。
「――――私の魔法の解説は、これでほぼ全てです。他に質問をお持ちの方は、いらっしゃいますか?」
おおよその説明を終えた男は、眼前の少女達へ確認の言葉をかける。彼女達からは、特に声は上がらなかった。それを見て、
ミーナが口を開く。
「これ以上は疑問も皆無いようですし、夕食の時間まで、一度これで解散と――――――」
ミーナが解散を告げようとするも、そこへ男が割って入る。
「失礼ながら、ミーナ中佐。501の皆さんの名前を、一応確認しておきたいのですが……」
男の言葉に、ミーナはハッとした表情になる。
「ご、ごめんなさい、そう言えば、皆の自己紹介は、まだ終わっていなかったわね……。私と美緒はもう済ませているし、エーリカは
お知り合いなのよね……それでは、それ以外の人は、今この場で自己紹介をしましょうか」
「じゃあ、最初は私から行くかな。名前はシャーロット・E・イェーガー、出身はリベリオンで、階級は大尉だ。よろしくな!」
「えっと、扶桑皇国海軍、宮藤芳香です!階級は軍曹です、よろしくお願いします!」
「え、えーっと…リネット・ビショップです、出身はブリタニアで、階級は曹長です。よ、よろしくお願いします……」
ミーナの言葉を皮切りに、501の面々が、次々と自己紹介を済ませていく。そうして、ミーナ、坂本、ハルトマンを除く8名の
自己紹介が終わり、ミーナが口を開いた。
「それでは、今度こそ、夕食まで一時解散としましょう。この後は各員自由とします。それと、宮藤さんは、事前にお願いした
通り、男さんを彼の部屋まで案内してあげてくださいね」
501のウィッチ達にしばしの自由時間が宣言されると共に、ミーナと坂本はハンガーを後にし、ペリーヌもまた、坂本の
後へとついて行った。次いで、男の案内を頼まれた宮藤が、男の元へと寄ってくる。
「それでは、男さんの部屋まで案内しますので、一緒に行きましょう」
「はい、よろしくお願いいたします、宮藤さん」
男は、微笑を絶やすことなく、宮藤に対して言葉を返した。その直後、男は、とすん、と何か小さな物がぶつかったような
感覚を腰の後ろの辺りに感じた。男がその正体を確かめるべく後ろを振り向くと、そこには男の腰にしがみつきながら、その
背中に顔を埋めるハルトマンの姿があった。
「………どうかしたかい、エーリカ」
男が問いかける。しかし、ハルトマンは反応する素振りを見せない。男は宮藤と顔を合わせ、少し困ったような表情を互いに
浮かべた。男は、再度ハルトマンに声をかけた。
「……エーリカ、しがみつかれていては、私も動けないんだ。何かあったなら、言ってごらん?」
二度目の男の言葉に対し、ハルトマンは小さく声を漏らした。
「………一人で大型に突っ込んだりして………心配したじゃんか……………バカ…」
ハルトマンの僅かに震えた声を聞いて、男の表情が僅かに強張る。男は、その固有魔法のために、ネウロイの放つ光線
によっては決して傷つかない。故に、男は今回の戦闘で、単身大型へ迫った。しかし、その時点では、ハルトマンは未だ
男の魔法の性質はおろか、そもそも固有魔法を持っている事すらも知らなかった。男の行動は自殺行為にしか見えなかっただろう。
この言葉に、男はハルトマンに――――視界の下方で、小さく震えながら自分にしがみついている少女に、意図してはいなかった
とはいえ、残酷な恐怖を与えてしまったことに気づく。
「………すまなかったね、エーリカ」
言いながら、男はハルトマンの頭を優しく撫でる。男の言動に対し、エーリカは、男の上着に埋めていた顔を上へずらし、
男を見上げた状態になる。彼女の目の回りは若干腫れており、目そのものも僅かに充血していた。
「…………反省、してる?」
「ああ、もちろん反省しているとも。もう、心配をかけるような戦い方はしない」
「…………なら、良い」
男とのやり取りの後、ハルトマンは男からいったん離れ、軽く目元をこすった。ふと前を見ると、目を丸くしている宮藤が、
呆然とした様子でハルトマンを見つめていた。
「――――――――――――――」
ハルトマンと宮藤の目が合う。次の瞬間、宮藤は我に返ったように小さく声を漏らし、それと同時に顔を真っ赤に染めた。
「え、えっと、その、あの…………ご、ごゆっくりー!」
叫ぶや否や、宮藤は脱兎の如く駆け出し、あっというまに姿を消した。
「……ちょ、ちょっと待ってよ宮藤ー!違うってばー!」
ハルトマンもまた、慌てて宮藤の後を追い、扉の向こうへと消えていき、後には男一人が取り残される。その男はというと、
一連の流れについて行く事ができず、ただその場に立ち尽くすのみだった。
「………少しよろしいですか、男少佐」
呆然としていた男に、後ろから声がかかる。そこには、やや堅い面持ちのバルクホルンがいた。目の前の少女に対応すべく、
停止していた男の脳は、その活動を再開させる。
「――――失礼、すこし呆けていました。何のご用でしょう」
男がバルクホルンへと向き直る。日頃勇ましいその少女は、普段からは想像できない、しおらしい態度を見せていた。彼女は
目を伏せながら、申し訳なさそうな表情を浮かべつつ口を開いた。
「……先ほどの、出撃前のことですが……」
彼女の言葉を聞き、男は眼前の少女の様子に対して合点がいった。出撃前のやり取りでは、彼女は自身の実力に対して
疑問を投げかけた。そして自分は、ことネウロイに対しては圧倒的とも言える実力を明確に示した。故に、彼女は男の実力を
計ろうとした発言に引け目を感じている―――――おおよそはこんなところだろうと、男は推測する。
「……貴方の実力を知らずとはいえ、貴方の事を値踏みするような言動をしてしまいました。…もうしわけありません」
果たして、男の推測は正しかった。男としては、そんなことは忘れたふりをしてしまえばいいだろうに、と考えてしまう。
だが、彼女はそれを良しとしなかった。彼女は実直なだけでなく、自分自身にも厳しい性根だったのだ。
その様な人柄をバルクホルンの言動から見出し、男は心中笑みを浮かべていた。
自分に向かって頭を下げているバルクホルンに対し、男は静かに声をかける。
「頭を上げてください、大尉。私はこの部隊では闖入者だ。貴方の態度も無理からぬものでしょう」
「しかし………」
なお自責の念を抱いた様子のバルクホルンを制して、男が言葉を続ける。
「少なくとも、私は貴方の言動を受け入れています。…それで全て良しと致しましょう」
「……ありがとうございます」
二度目の男の言葉に、ようやくバルクホルンが頭を上げる。それでもなお、彼女の表情は沈み、顔は下を向いていた。
眼前の少女の顔に張り付いている暗い影を剥がすためにはどうしたものかと、男は思案を巡らせる。そこで男は、ふと
彼女との出撃前のやり取りの一部を思い出した。
「大尉」
短く、男はバルクホルンに声をかける。改めてバルクホルンが顔を上げた所で、男は口を開いた。
「貴女は謹厳なだけでなく、自身を甘やかさない人柄です。やはり、貴女はすばらしい女性だ」
男の言葉に、バルクホルンの表情が一瞬固まる。数秒置いて、彼女の顔はみるみるうちに赤く染まっていった。
やはり、この少女はこの手の言葉に耐性がないのだろう。男は男で、少なからず彼女の反応を楽しんでいた。
「な、な、な………!」
唐突な言葉に我を忘れ、口は空気を求める魚のように開閉を
繰り返している。同様の余り言葉が続かないバルクホルンへ、
からかくような声後ろから投げかけられる。
「いやー、お熱いねぇ、お二人さん」
「な、シ、シャーリーか!なな、何を言っている!わ、私は何も……!」
必死の形相で反論してくるバルクホルンをシャーリーは適当にいなし、男へと歩み寄った。
「悪いな、男。ちょっといいかい?あんたと話したい事があるってやつがいるんだが…」
頼み込む仕草を見せつつ、シャーリーが尋ねる。
「ええ、構いませんよ。して、その方は?」
男の言葉を聞きどけた後、シャーリーは背後の人物を前へと促す。シャーリーの後ろから現れたのは、暗い表情の
ルッキーニだった。ルッキーニは男へ近づくと、男の上着の端を掴みながら、小さく呟いた。
「男も……男も、ロマーニャを、一緒に守ってくれるよね……?」
褐色の少女は、平時の快活さとは打って変わって、その目を不安に滲ませながら、縋るように男に問いかける。
男は、膝を折って自身の目線をその少女に合わせ、眼前の少女に言葉をかけた。
「――――約束しましょう、ルッキーニ。全力を以て、このロマーニャは私が守る。この国を襲うネウロイは、私が倒す」
男はルッキーニと目を合わせたまま、力強く言い放った。先ほどまで沈んでいたルッキーニの顔に、明るさが灯る。
「何も怖がる事はありませんよ、ルッキーニ。君ぐらいの子は、笑っている方が良い」
「……うん!ありがとね、男!」
男とのやり取りですっかり明るさを取り戻したルッキーニは、早速男に飛び付いた。最初は男の腰の辺りでじゃれていた
ルッキーニは、次第に背中、肩、頭と上っていき、現在は男に肩車される格好となっている。普段見ている風景とは全く
異なる景観に興奮しているルッキーニを余所に、シャーリー、バルクホルン、男の三人は言葉を交わしている。
「ありがとうな、男。この間からルッキーニの奴、ずっと落ち込んでてさ。あんたがあれだけ断言してくれたおかげで、
こいつも元気になったよ」
「おいシャーリー、男少佐は上官だぞ!そんな言葉遣いがあるか!」
あっけらかんとした態度で話すシャーリーを、バルクホルンが諫める。語気を強めるバルクホルンに男が声をかけた。
「構いませんよ、バルクホルン大尉。私としては、皆と同じように接してくれるほうが嬉しいですから」
「しかし、上官である貴方にばかりそのような……」
「私の口調でしたら、これは単なる癖ですので、お気遣い無く」
反論するバルクホルンに、毒気のない顔で男が応じる。バルクホルンは、若干渋い顔をした後、すぐに表情を元に戻した。
「……わかった、では、私も普段通りに話させてもらうぞ、少佐」
バルクホルンの言葉に、男は微笑みながら頷いた。
最終更新:2013年01月31日 15:44