「蒼穹 EX-4」
―潜入2―
俺「扶桑の食事ってのも、美味しいなあ。ご馳走様!」
宮藤「有難うございます!」
俺「有難うね」
バルクホルン「よし!」
俺「えと?なにが?」
バルクホルン「食事を作ったものに対しての礼儀がよい。見直したぞ、中尉!」
俺「?」
ミーナ「トゥルーデはね、結構礼儀に厳しいの。あなたはその基準にパスしたのよ、俺中尉」
俺「はあ。そうですか?よくわからんのですが・・。ま、いっか。テラスでタバコ吸ってきます」
ハルトマン「ほぉ?トゥルーデ。俺が気に入った?」
バルクホルン「少し見直した、が正解だ。ところでハルトマン?お前、今日の午後の予定は?」
ハルトマン「夜勤前に寝るよ」
バルクホルン「その前に洗濯だな。溜め込みおって。カールスラント軍人が汚れ物をキログラム単位
で溜め込み、挙句に男の手で詰め込まれるとはどういう了見だ!直ちにかかれ!」
ハルトマン「あっちゃー。気付かれたか。いってきまーす・・・」
ミーナ「トゥルーデ、午後は俺さんに模擬空戦を試してみてくれる?戦力の把握をしたいのよ」
バルクホルン「ああ。是非そうしたいと思っていた。やるよ」
バルクホルン「頼めるか?」
ペリーヌ「私も一手お願いしたいですわ。よろしいですか?坂本少佐」
坂本「ああ、是非そうしろ。私はミーナと管制室で見る」
―――――――
バルクホルン「では、開始しよう。地上で説明したとおりだ。マーカーが一発でもあたる、弾切れ、制限
高度より下がった、理由無しに戦闘放棄、以上で負けと判定する。シールドは無し。いいな?俺中尉」
俺「承知。大尉、一つ頼みが。俺、と呼んでくれる?そのほうが早い」
バルクホルン「解った。では俺。シャーリーが合図したら開始だ。南でいいか?」
俺「ありがと。ぢゃ、いきますね」
ふう。やっと離れることが出来た。どれ、探るか。
バルクホルン大尉は・・・おーおー。私をどう料理するかしか考えてねえや。こえー。
シャーリーは・・・おいおい、ルッキーニと何秒で私が撃墜されるか賭け事してるぜ。おあいにく様。
ルッキーニは・・・掛け金稼いで虫かご?
ペリーヌは・・・あはは。戦闘予測と・・・少佐がなんだって?あれ・・遠慮しておこう。
シャーリー「双方、反航開始して」
クルリンとターン。ブレン軽機関銃のボルトを操作し、303ブリティッシュ弾を装填する。予備弾倉
を入れたマガジンパウチの蓋を外す。
どれ?ほお。上から襲おうと。では私も。インメルマン風にアップして・・ウィルマ直伝小半径だよ。
よし、向首だ。どうする?お、さらにアップ?ああ、私のほうが上昇速度遅いもんね。では、私は
下がって誘いをかけるか。おりゃ、ダイブ!
あはは。慌てて追いかけてきた。もうちょっとスピード稼ごう。ほら、ついてこいよ?シーザスを
始めるよ?お。撃つ?んじゃ反対側に逃げる。えへへ。残念でした~。じゃ、シーザスだぜ!
ミーナ「ふうん・・・・」
坂本「なんか、妙だな?」
ミーナ「よねえ?」
よいしょっと!スピットは小回りも結構効くんだよ。あらよっと。撃ちまくっても当たりませんよ。
撃つタイミングがわかるんだから。あ。結構頭に血が上りだしたね。苦しいけれど面白い。でも、
ウィルマより上手いな。気をつけねーと!ここだ!前に出ろ! よっしゃ!
坂本「いままで、バルクホルンの射撃がここまで外され続けたことがあったか?」
ミーナ「無いわねえ。あ!撃った! 逃げたわね。こうしてみていても、俺さんの飛行技術は・・・」
坂本「腕はいいが・・・とくに決め手となるものが無いな。満遍なく上手いが」
ミーナ「そうよねえ?決着付くかしら」
坂本「決めるだろう?バルクホルンが。相手は5.5機だぞ?」
制限高度に近づいてきたな。さて、双方手詰まり。縦旋回に持ち込みたいのか。じゃあ、横だ。ほれ。
ちっくしょー。ギリギリ視界に入るかはいらないか・・・。苦しいな。腹式呼吸だぞ。しっかり追え!
坂本「我慢比べになった」
ミーナ「どっちがヤケをおこすかしら・・・」
ウィルマがいっていた。この時、苦しさにかまけて他の手を考えると墜とされるとな!我慢比べだ!
クソ・・・向うのことを探る余裕がなくなって・・・
シャーリー「根性あるなぁ。あの中尉。まだやってるぜ!」
ペリーヌ「我慢し続けたものが勝ちますわね」
視界が・・・やべ。貧血・・・。まけるかくそ・・・
ミーナ「こちらミーナ。双方制限高度を割りました。引き分けです!」
シャーリー「戦闘中止!引き分け! あれ?」
ルッキーニ「まだやってるよ?」
坂本「シャーリー!ペリーヌ!二人を救助!失神しているんじゃないか!行け!急げ!」
シャーリー・ペリーヌ「「解った!」ました!」
シャーリー「おい!俺!こら、しっかりしろって!」
ん?なんだ?
シャーリー「ああ、よかった」
俺「敵機は!!」
シャーリー「落ち着けよ。お前、失神したの。で、バルクホルンも失神。仲良く二人でね」
俺「え?そうなのか? 大尉は!」
シャーリー「ペリーヌが確保したよ。大丈夫。落ち着けよ。しかし、失神したまままだ廻るって?」
坂本「お前等頑張ったな。見事だぞ、根性が!」
ペリーヌ「大尉も意識が戻りました」
俺「大尉。もう一度やるぞ」
バルクホルン「ああ!今度こそ!」
シャーリー「今は駄目だよ。少し休憩しろよ」
俺・バルクホルン「「いやだ」」
シャーリー「だめだ・・・完全に逝っちまってる」
ミーナ「二人とも落ち着きなさい。命令です。休憩10分間!」
俺「・・・・了解。次はぶち落す」
バルクホルン「解った。・・・・私の前から消してやる」
シャーリー「おーい。聞こえるか?落ち着けよ」
ルッキーニ「怖いょ・・・シャーリー、二人を止めてよぉ」
ペリーヌ「間違っても実弾は装填されていませんよね?」
シャーリー「あたしも確認したけど・・・」
俺「時計を見ていてくれるか?シャーリー」
バルクホルン「それはいい案だな、俺」
シャーリー「う、うん」
ミーナ「困った人達ねぇ」
坂本「嬉しそうだな、ミーナ」
ミーナ「まあ、ね。美緒だってそうじゃない」
―――
こんのやろ!ちょこまかちょこまかと!
くっ!この程度!そこ! くそ。 ここか! ちっ!あぶね!
緑曳光弾。あと5発。交換する余裕がない。
お、やる気か!上等だ!スコップが無いのが残念だ!
シャーリー「あー。隊長。双方、相対ループから上昇しつつ接触。銃で殴り合いやってまーす」
坂本「あはははは!なにやってんだ、こいつ等」
ミーナ「空戦のはずよね。まったく」
シャーリー「どうする?コレ等」
ミーナ「シャーリーさん、双方が離れたら上手く割り込んで制止して。お願いね」
シャーリー「殴られたら嫌だけど・・・わかったよ」
―――
シャーリー「ったく。棍棒代わりに使うなよ、銃は撃つもんだぜ?」
俺「うん。なんだかな。頭に血が上ってさ」
シャーリー「あ!お前等今度から訓練時拳銃携帯禁止!守れよ!」
俺「うん。悪かったな、バルクホルン大尉」
バルクホルン「いや、私も悪い。つい熱中してしまった」
ペリーヌ「全く・・・お願いしますわ」
シャーリー「とりあえず、バルクホルン戦引き分け、でいいんだろ?あたしと引き分け。ペリーヌ撃墜。
そしてルッキーニ引き分けと撃墜。以上、各2戦づつ。大したもんだな」
ルッキーニ「ウヂュー!なーんか変!」
ペリーヌ「次は負けませんわ!」
俺「たまたま、だな。こんなに調子がいいのはなぜだろう?」
バルクホルン「謙遜するな。十分戦力になる。期待しているぞ、中尉」
ごちゃごちゃいっているが・・・ふむ。とりあえず疑っているのはルッキーニだけだが、それに悪気は
無いな・・・ふん?彼女達は白かな?私の素性を気にしているのは皆同じだけど、普通の疑問程度だ。
シャーリー「これで12機だな。キリがいいや、あはは」
ペリーヌ「俺中尉は誰と組むんでしょう」
バルクホルン「隊長が決める。ところで、その使い魔はなんだ?」
俺「隼だよ」
バルクホルン「そうか・・・」
マルセイユ?だれだっけ。
アフリカ? 使い魔が同じ種類だからって。関係ないぜ。
シャーリー「へぇ!眼がいいとか?」
ルッキーニ「カッコいぃ!」
ペリーヌ「猛禽類ですわね」
俺「少しだけいいのかな。気性は猛々しくなるけど。猛禽だからかな?」
バルクホルン「実戦経験は?」
俺「空戦は二度だけ」
「「「え?」」」
俺「ごめんな。素人がこんなスゲー部隊に配属されちまってさ」
シャーリー「ええと。5.5機墜とした、のか?二度の経験しかなくて?」
俺「素人だって言ったじゃないか・・・」
え?感心しているのか?君達の戦績には及ばないぞ?
バルクホルン「で、あの技術を持つ?」
俺「教えた教官が上手だったんだ」
バルクホルン「誰だ?その教官は」
俺「すまん。軍機で教えられないんだ、今は」
ペリーヌ「ご両親はなにを?」
あはは。なるほどね。
俺「政治家だよ。お袋はパッチワークのセンセ」
カバーを喋っておこう。しっかり準備は整えてある。
よし。勝手に思い込んでくれたか。そうそう、政治家がな?
バルクホルン「まあ、頑張ってくれ。毛並みが良くても、弾は遠慮ないぞ」
シャーリー「お前が墜とされて政治問題になるのは困るから。頼むぜ?」
ルッキーニ「まさか、チャーチル?お父さん」
ペリーヌ「ありえますわね」
俺「違う違う違う。あんな大物じゃないよ。あはは」
よし。これでカバーは出来た。演じきるぞ。
――――――
シャーリー「マジに殺し合いはじめたかと思ったよ。石頭があんなに熱くなるなんて珍しい」
ハルトマン「え?トゥルーデが?」
ルッキーニ「うん。見ていて怖かったよ。ね、シャーリー」
シャーリー「ああ。実戦を二度経験しただけってわりに・・・あいつ、頭に血が上ってもさ、緊張しない
みたいで。上手くいえないけど、なんか違和感あったな」
ハルトマン「ふーん。違和感、ねえ。頭にきた状態で、動きはどうだったの?」
シャーリー「どんどんシャープになっていた。その後も、攻撃に夢中になったルッキーニを一撃で決め
たし。銃で殴りあいするときも、のびのびやってた。ありゃ
ガリアの銃剣術も使っていたかな?」
ルッキーニ「次は勝つもん! 多分、だけど。殴り合いは嫌ぁー」
シャーリー「な?勝気なルッキーニがこうだぜ?あたしもやりにくかった。撃った瞬間に滑らせて
逃げるんだ。攻撃も防御も妙に上手い」
ハルトマン「只者じゃないみたいだね」
ルッキーニ「眼が怖いよー」
リーネ・宮藤・サーニャ・エイラ「うんうん」
―――――――
バルクホルン「十分使える。後は誰と組ませるか、ミーナが決めてくれ」
ミーナ「ええ。急いで考えるわ。お疲れ様、トゥルーデ」
坂本「・・・俺中尉の以前の軍歴が知りたいが・・・」
ミーナ「ええ。情報部は何も探れなかったわ。一応、調査を続行しているけど・・・」
バルクホルン「ミーナ。これは私の感、だが。俺中尉は、もっと実戦を経験している」
ミーナ「間違いないわね。いくら良質な訓練を受けても、ああは、ね」
坂本「私も扶桑の情報部に調査を依頼してみるか?」
ミーナ「・・・いえ、ブリタニア側にも気付かれる危険が増すわ」
坂本「それもそうだな。じゃあ、任すよ」
バルクホルン「一つだけ思いついた」
ミーナ「なあに?トゥルーデ。いっちゃいなさい」
バルクホルン「情報部の特殊工作班じゃないか?」
坂本「それなら、経歴は表に出ないな」
ミーナ「スパイってこと?だとしたら優秀なのは解るけど」
バルクホルン「もっと実務的だろう。探り、そして自分で行動」
坂本「国王の署名も偽造かな?」
ミーナ「あ、一応調べてもらいました。国王陛下の指紋もあったそうよ」
坂本「そうか、直筆か」
バルクホルン「この部隊を監査するなら、ああまでも訳のわからん書類を送ってきたりしないな?」
ミーナ「よねえ。偽装するわよ、きっと。プロでしょ?」
坂本「敢えてそれをし、マロニー空軍大将を迂回して・・・」
ミーナ「王女様かな・・・」
バルクホルン「王女が?何のことだ?」
ミーナ「二ヶ月くらい前、ロンドンに会議で行ったでしょ?そのとき、知らされずに王女様に拝謁し
たのよ。ここだけの話にしておいてね。マロニー大将は知らないはず。それで、いろいろとお話を
したのよ」
坂本「なにか変わった話とかは?」
ミーナ「そうね。組織運営についての苦労とか・・王女様は近衛歩兵連隊の連隊長もなさっておられる
から、それでかなと思っていたんだけれど」
バルクホルン「マロニーに絡んでのことは?」
ミーナ「ちょっと言っちゃった。前任に比べて何かと煩くて、って」
坂本「国王陛下直属かな??」
ミーナ「何のために?」
坂本「具体的には解らんが、国王に王女。普通こんなに接点は出ないものだ。一兵士に出す命令書に
国王がサインなど普通するか?言い方が悪いが、名目上の最高司令官だ」
バルクホルン「あの書類は・・・なんらかのシグナルか?」
ミーナ「あまり、警戒しすぎても良くないわね。味方のような気がするわ。私の堪、ですけど」
坂本「ミーナも折を見て『空間把握』で俺の動きを探ってみてくれ。必要があれば私かバルクホルン
を呼んでな?」
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最終更新:2013年02月02日 12:21