当て馬

登録日:2011/04/10 Sun 11:41:07
更新日:2025/01/16 Thu 16:00:04
所要時間:約 4 分で読めます





「………あのさ」

「ん? なぁに?」

「…………もうやめよう……俺達…間違ってたんだ……」

「―――っ!?」

~♪(オープニングかエンディングに突入)



1.「当て馬」とはそもそもの種付けの際、その気にならない馬を興奮させる為だけにあてがわれる馬を示す。正式名称は『試情馬』。
当て馬は対象馬を興奮させ、その気にさせた所で本命である馬へバトンタッチする。生殺しなんてもんじゃないぜ…。
ただし稀に当て馬が本当にやらせて貰えるケースがあり、1988年オークス馬コスモドリームは父が当て馬な事(母が暴れ馬だったため本命を試しづらかった)で知られている。

活躍しなかったサラブレッドは当て馬か乗馬か馬刺かの大体三択になり、ウマ娘化した事で知られるG1馬シンコウウインディも、一度は種馬になるも様々な事情により種牡馬を引退せざるを得ず、その後は当て馬として余生を過ごしていた。
なおこのシンコウウインディ号、興奮した牝馬に蹴られても怖気づいたりせず、スタッフからは「天才的に上手い」「こんなに素晴らしい当て馬は見たことがない」と大絶賛されていた。

また逆に適切な当て馬を一緒に連れてこないとそもそもヤッてくれない困りものの種牡馬の事例もあり、JRA所属経験馬だとウォーエンブレム号が著名。
なにしろ「栗毛かつ見るからに小柄な牝馬」でなければ勃たせてくれるどころか全力で嫌がる偏食(比喩)っぷりな上、産駒はむしろ当たり率が高い(あと馬主名義変更時に金銭でやり取りしたため「7頭につけました。終わり」はいくらなんでも前例にならないように*1回避するしかなかった)から繁殖引退させるわけにもいかんという困りもの。
結局毎回そういう牝馬を当て馬にすることでなんとか繁殖以来のシンジケートを維持でき、終わってみればGⅠ・JpnⅠ勝利経験ありだけでもブラックエンブレム、ローブティサージュ、オールブラッシュの3名を輩出した名種牡であった(うちオールブラッシュ号がシビルウォー号と共にウォーエンブレムの後継種牡を特殊性癖持ちまで引き継いで*2担当中)。
…まあ精液検査が必要な検疫で案の定いつものイヤイヤ起こしてちょん切られちゃった*3んだが。


二次元作品では、いわば『恋愛の噛ませ犬』
主役とヒロインを本当の気持ちに気づかせる為のカンフル剤であり、恋を燃え上がらせる為の燃料で、2人を結びつける為の引き立て役。
女性キャラの場合「負けヒロイン」と呼ばれる場合もある。
どれだけ健闘しても最後はフラれるピエロに他ならず、往々にして登場した瞬間に判別が可能。

実写作品においても基本的に主演より知名度の低い若手俳優が演じるため、やはり判別できる。

これがギャグ要素や片思いの範疇ならまだいいが、親密になって交際を始めたりしたら目も当てられない事になる(青年誌や少女漫画にかなり多い)。
いかにもアレな性悪ならいざ知らず、何の落ち度もない本当に良い子だったりすると、
身勝手な主役とメインヒロインに怒りがこみ上げてくること請け合い。
特に肉体関係を結んでいた場合は俗に言う”ヤリ捨て”に該当し、
主役にあるまじき最低の所業で一気に好感度がガタ落ちする。下手すると作品の存続に関わる事も。
愛は見返りを求めないものとはいえ、いくら何でも”責任”は生じるものである。因みに、どこかの誠は論外ね。


時としてヤンデレと化し刃傷沙汰に発展するケースもあるが、こればっかりは主役の自業自得なので致し方ないとも言える。
中には、そんな惨い仕打ちを受けてもなお愛する人の為に全身全霊で命を懸ける”鹿(褒め言葉)”も存在するが。


なお、一方的か円満を問わず破局に至っては最終的に第三者とくっつくという救済措置がとられる事が圧倒的に多い。
なるべく心変わりを読者に自然に思わせるようにか、
実は「ヒロインと母を重ねていたマザコンでした」とか「いつの間にかあいつが気になってた」とか丁寧な理由を付けて。
だが、これらはかえって恋の鞘当てに敗れた者を貶め逆効果にならないだろうか。
大団円を目指したと言うよりも、ただ傷ついた人間を最後まで正々堂々描く度胸がないだけのように思える。

申し訳程度に副産物なカップル成立でお茶を濁すくらいなら、捧げた一途さや健気さを最後まで貫かせてやって欲しいと感じる人も少なくない筈だ。
勿論、「新しい恋に生きるな」とも「愛を永遠に引き摺れ」とも言う訳ではないが。


尚、女がこれをやるとビッチの汚名≒照合を受ける。なんか…理不尽。
そして、バトル描写のある作品では闇堕ちの定番フラグである。

なお、これをやってしまうとそのヒロインのファンから作品が叩かれることも多々あるので、かなり注意が必要だと言える。

複数ヒロイン/ヒーローが出てくる恋愛ものでは最終的な勝敗を予想する楽しみ方がある一方、自分の好きなキャラが負けてしまったショックもなかなか半端ないものがある。近年、いわゆる「一対一ラブコメ」が人気なのは「最初から安心して楽しめるから」という理由があるのかもしれない。


「俺……やっぱり、あいつと…」

「嘘……だよね? 冗談だよね? ねぇ……あたしと……付き合ってるんだよ…ね…?」

「すまない……」

「あたし…あなたがあの人のこと好きなの……知ってたけど…でも……だけど!」

「……………」

「あなたの方からキスしてくれたのに……それ以上の事だって……だから…だから逆転できたと思ったのに……」

「…ごめん……」

「なのに…どぉして……何で今さら…そんなこと言うのぉ……」

「……………」

「答えて…答えて……答えてよWiki籠もりぃ!!」


追記・修正をする際は背後に気を付けましょう。

2.テレビ番組・映画・ゲームソフト等の集団制作前提の創作方法が基本の媒体を作る際、
上層部・スポンサーに売込みを行う時に本来自分たちがやりたい企画を通すために、
瞬間的に注目を集めるためだけに制作される実際には本気じゃない企画書。
作る方・見る方両方がお軽い雰囲気で誰でも見られて、読み流せるようにまとめられることが多い。

但し、ダミー側がスポンサーの受けがよく、それはまずいとばかりに本来の企画の大部分をダミー側にスライドしたり
それまでの本当は本気だった過去の没企画や没プロットや没イメージボード達の再利用・パッチワークだったり等、
その取り組みや駆け引きや情念は年々複雑となっている。

幾原邦彦「作品作りは『良い』と思った幾つものディテールや可能性を捨て去る作業であり、その徒労感や集団とのトラブルに耐えられる人でないと務まらない」

類義語:「ダミー企画」・「フェイク企画

当時は発想すらなかった「アニメの為だけの世界観を固めるためのロケハン」まで行う程の力の入れようだったが、原作者からのアニメ化の許可が下りず没。
その時に培われた主人公の性格・世界観のイメージを後の作品群にスライドした。
後年「ピッピ」のイメージボード集が発売された。

未来少年コナン」の続編として立てられたテレビアニメシリーズの企画だったが実現せず、
その時に描いたイメージを転用する形で「天空の城ラピュタ」が生まれた。
「海底世界一周」の企画書はそのままNHKに残り、それをNHKのプロデューサーがGAINAXに持ち込み、
様々な新規設定を盛り込んだ結果「ふしぎの海のナディア」が生まれた。
「青い石」「超古代文明」等わかりやすい類似設定がある。

企画立案にあたり押井守監督は聖書関連はもちろんのこと、新しい建築方面のアニメーションでの表現を模索するために、
建築関連の分厚い本を片っ端から読んで1から勉強するほどだったが、
当時既にスタンダードブランドと化しつつあったルパンシリーズには相性が悪く、没になる。
しかし、この準備期間で得た断片と呼ぶにはあまりに大きすぎるイメージ・モチーフは、
その後数々の企画を起こす際のいくつもの当て馬兼押井監督のアイデンティティとなった。

  • 小室哲哉作品全般
1曲をコンペティションに通すための対策として、10通りの僅かなアレンジがあるバージョン違いのデモテープを作る。

当初は中国の女性作家ユン・チアン女史の祖母の人生をテーマにしたエッセイのテレビアニメ化の予定だったが、
制作会社の社長から「企画が動くまでに時間がかかる」と言われて、渡されたつなぎの企画だった。
企画書を渡された鳥海永行氏が幼年向けアニメに合う監督を何人か候補を出したが、
社長から「そうじゃない。『ニルスのふしぎな旅』を作り切った貴方にやってほしいんだ。あの演出は貴方にしかできない」と
本音も交えた渾身の説得を受けた鳥海氏が制作を引き受けたことで、今日まで続くご長寿番組がスタートした。社長さん、中々の策士ですなぁ…

「王立宇宙軍 オネアミスの翼」の直接的続編として企画され、絵コンテ・作画作業にまで入っていたが、スポンサーが集まらず凍結。
山賀博之監督に制作再開の準備期間を用意するため・一旦集まったスタッフのその後の仕事の作るための代打として、
庵野秀明監督によって急ごしらえで企画されたのが「エヴァ」の準備稿であった。
その後も何度か「蒼きウル」そのものの制作再開の情報が出て、資料集・PC向けゲームが発売されたが、具体的な動きは発表されていない。

当初は「PlayStation用の鳥山明キャラクターデザイン」のゲーム企画であり、
鳥山氏の画集のイラストをドット絵に落とし込みながら、徐々にデザイン開発作業が行われていたが、
DRAGON BALL」がフリーザ編で終了するはずのところを、
セル編へと連載延長しなければ行けなくなったため、頓挫。
鳥山氏のスケジュールに余裕が出るまで、その時のデータを表面上は無関係な形になるように一部引用して制作したのが「聖剣伝説2」である。
その後、「○鳥(まるとり)プロジェクト(仮)」そのものが本格的に再始動したのが「クロノ・トリガー」となった。
主人公・ヒロインの髪型・衣装に若干共通項が見られる。

内容こそ「美少女戦士セーラームーン」の焼き直しだったが、真の意図はさいとうちほ女史の魅力の周囲へのプロモーションにあった。

桝田省治氏が手掛けた元プロットの前半が元になっている。
権利元であるハドソン*4との版権上での訴訟沙汰を防ぐために、
タイトル・キャラクター・縦軸の物語・世界観・メインターゲットは大幅に変更された。
名残として「舞台は邪馬台国」「ボーイ・ミーツ・ガール」「鏡で結ばれた2つの世界」が残っている。
あくまで元にしたのは枡田氏が手掛けた「PC-FXで予定されていたシナリオ」であり、
実際にPlayStation2向けに発売された「天外魔境III NAMIDA」とは関係ない。

企画当初はSFロボットアニメと原作ものが同時に立ち上がっており、その後二転三転する内にそれらの没企画のパッチワークが軸となっていった。


追記・修正をする際は「死んだ子の歳の数を数えるように(by桝田省治)」行いましょう。

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最終更新:2025年01月16日 16:00

*1 当たり前だが、双方に悪意や詐欺行為の意図が無かったのはもちろんである

*2 ウォーエンブレムは先述のように激しいロリコン。オールブラッシュはおしっこフェチが激しく、相手の尿の匂いを嗅がないとスタンバイしない。さすがに当て馬が無いと冗談抜きに無理まではいっていない模様?

*3 当該の病気は有効なワクチンや薬が開発されていないため、一度馬産地に流入すると一気にその地域の馬産を壊滅させてしまう・牡馬はキャリアでも原則無症状と仕方ない面はあった

*4 現在はハドソンの権利はコナミに譲渡されている。