名探偵コナン 時計じかけの摩天楼

登録日:2015/05/03 Sun 11:11:57
更新日:2025/04/26 Sat 22:16:53NEW!
所要時間:約 14 分で読めます





真実はいつもひとつ!


監督:こだま兼嗣
脚本:古内一成
主題歌:杏子「Happy Birthday」

『名探偵コナン時計じかけの摩天楼』とは、劇場版『名探偵コナン』シリーズの記念すべき第1作目のタイトルである。
1997年4月19日公開で上映時間は95分。興行収入は11億円。

【概要】

テレビアニメシリーズの大ヒットに伴い、放送開始の翌年に公開される事となり、以降は毎年*1GWシーズンに合わせて公開される定番映画シリーズとなった。

原作者の青山先生はのちのインタビューで映画化の話が来るまでの現場は「『サンデー』編集部からの意図しない注文、毎週のカラー作業・グッズ系のカラー作業・事件やトリックのアイデア出しなどで『コナン』を描くのが大変になりすぎていた」と語っており、映画化が決まった時は今まで稼いだお金を全部使いきるつもりでアシスタントたちと休みを取ってラスベガス旅行に行っていた。そして帰ってきたら『コナン』の連載を終わらせる予定だったという。

しかし、休暇中に泊まっていた現地のホテルに、当時の『サンデー』の担当編集者が電話を入れて『コナン』の映画化決定を伝えると先生は映画好きだったことから嬉しくなり、これは改めて頑張らないといけないと連載終了を思い留まったという。映画化がもし無かったら『名探偵コナン』は3年で終わり、アニメ共々これ程長く続く事はもちろん無かった。
アニメのプロデューサーである読売テレビの諏訪道彦氏も「やりたいことをすべてやり切るつもりで製作した」と語った。

ちなみに公開日は上記の通り1997年4月19日と記載されているがこれは関東およびその他の地域での公開日である。本作の時点では東京都での反応を見る意味もあったためで、関西およびそれ以外の一部地域はあえて1週間後の26日に公開日をずらした。諏訪氏によると「まず東京で公開されると口コミが広がり、1週間遅れて公開された大阪の映画館では立ち見が出るほどの満席ですごく感動した」と語る程反響は良く、毎年恒例と決定された次作『14番目の標的』以降は基本的に全国同時公開となっている。

1作目でありながら完成度は高く、新一と蘭のラブストーリーや綿密な伏線を基にした謎解きなど『コナン』作品を構成する要素が多く盛り込まれている作品でもある。
今作の象徴とも言える大規模な爆破シーンはこの作品以降も継承されていった。
あと、劇場版のタイトルは必ず「〜の○」となっているのが特徴である。

目暮以外のレギュラー陣は、作品によっては出番の多い少ないに格差はあるものの、現在も劇場版に毎年登場している皆勤賞メンバーである。
なお、コナンと蘭は劇場版ポスターにも毎年登場している。

チョイ役ではあるが、ゲスト声優として電車の乗客役で大阪吉本(現在は東京吉本)所属のお笑いコンビ「2丁拳銃」の2人が出演している。


【音楽】

初の劇場版ということもあり、今作のための楽曲は全17曲と少なめ。

またそのうちメイン・テーマを除いた16曲の半数に当たる8曲はTV版で流れていたもののアレンジであり*2、そもそもTV版で流れていた曲をそのまま流している場面も。
今後もお馴染みとなるTV版への楽曲導入は『幽霊船殺人事件』から、映画の公開から約1ヶ月半とかなり早めのタイミングであった。
ただしオリジナル曲の大半は2003年放送分以降はパッタリとご無沙汰となり、一時期はアレンジ曲の方が生き残っていた。

しかし、2007年のBGMのリニューアル以降は逆にオリジナル曲の方が現在まで使われる逆転状態となっている*3
ちなみにサントラに収録された曲が全てTV版で使われた唯一の作品でもある。


以下、ネタバレにご注意ください。


【ストーリー】

病院長の黒川大造が殺害される事件が発生。
現場*4に居合わせたコナンはいつもどおり小五郎を眠らせ、真犯人を暴いて事件は解決を迎える。

その事件から数日経った4月26日、コナンは阿笠邸で優作宛の手紙を整理していた時に、一通の新一宛の手紙を見つける。

手紙の差出人は有名な建築家の森谷帝二。
どうやら彼は新一のファンのようで、4月29日に自宅で開かれる予定のガーデンパーティに新一を招きたいと考えて招待状を送ったらしい。

さすがに子供の姿で行くわけにもいかず、コナンは新一の声を使って蘭と小五郎に代わりに行って貰うように頼み込む。
蘭はその頼みを了承したが、交換条件として5月3日の土曜日にオールナイトの映画に付き合うよう新一に約束を迫る。
その翌日の4日は新一の誕生日で、0時になったところで新一にプレゼントを渡して驚かそうと計画を立てているらしい。

そして問題の5月3日。早朝から蘭は嬉しそうに出かけていくが、そんな彼女を見送ったコナンはこれからどうしようか頭を悩ます。
阿笠邸のテレビで爆薬盗難や連続放火のニュースを見ていたその時、家の電話に「爆薬を盗んだ犯人」と名乗る男からの電話が入る。

その電話で「堤向津川緑地公園で面白いものを見せてやる」と聞いたコナンは大急ぎでそこへ向かう。
そこでは少年探偵団がRC飛行機で遊んでおり、よく見るとその飛行機には爆弾が搭載されていた。

ふとしたアクシデントにより飛行機が暴走するが、コナンがコントローラーを蹴って飛行機に命中させた事によって空中で爆発。
幸い大事には至らなかった。

だがこれを皮切りに都内の各地で爆弾騒ぎが発生し、規模も徐々に大きくなっていく。
果たして犯人の目的は新一に対する挑戦なのか? それとも……?


【事件関係者】

  • 森谷帝二(もりや ていじ)
CV:石田太郎
東都大学建築学科の教授と同時に日本でも指折りの建築家。47歳。
高校の頃までイギリスで暮らしていたからなのか、英国紳士のような気品あふれる物腰の柔らかい人物。

英国風の建築に心酔しており、特に古典建築の左右対称(シンメトリー)様式へのこだわりは病気といっていいほど強い。
そのため本名の「貞治」を左右対称になる「帝二」に変えている(この点においても、コナンから「もはや病的だな」と突っ込まれるほど)。

芸術家タイプの建築家で、若手の建築家に対し
「美意識が欠けている!もっと自分の作品に責任を持たなければならない!」と警鐘を鳴らしている。

ちなみに独身で、家事全般についてもほとんど自分で行っている(本人曰く、自分で何でもやらないと気が済まないらしい)。
そのためパーティーで出した料理も(方式から手作りにこだわったこともあり)彼が手作りしていた。
ただ上記の様に美意識への強いこだわりがある点を考えると、かなりの完璧主義者&神経質であると考えられ、
とても結婚出来る器であるとは考えられない(たとえ結婚出来たとしても、すぐに離婚しそうなレベルである)。

父親も世界的に有名な建築家だったが、15年前の別荘の火事に母親と共に巻き込まれ他界。
そして両親が亡くなった頃から、帝二が手がける建築が急に世間の脚光を浴びるようになったらしいのだが……?

今回、火事や爆破未遂の被害に遭った建築物は全て彼が30代前半の頃に手がけたものだった。

劇場版恒例のダジャレクイズだが、記念すべき?第1回目は彼がパーティで出題していた。

ちなみに劇場版第5作『天国へのカウントダウン』に登場する建築家・風間英彦は彼の弟子。

CV:塩沢兼人
警視庁捜査一課の警部補。
国家公務員1種試験をパスしたキャリア組だが、この設定は後のエピソードで追加される事となる。
この春から目暮のいる一課に配属された*5
建築に興味があるらしく、森谷の父親が設計した建築を特に好んでいる。
森谷自身の建築にも詳しいが、彼に関しては不信感を抱いている節がある。

なお、本作では苗字しか分かっておらず、任三郎という名前は劇場版次作品である『14番目の標的』で明かされる。

  • 坂口(さかぐち)
CV:藤本譲
東都環状線運行部長。52歳。
警視庁からの連絡で環状線に爆弾が仕掛けられている事を知り、「時速60km以下で爆発する爆弾を作動させないように、時速70kmで走行をするように指示を出せ」と楠に命令した。

  • (くすのき)
CV:藤城裕士
東都環状線司令室の指令長。45歳。
坂口からの指示を仰ぎ、環状線の全車輌に対して前述のとおりの指示を出した。


【その他(病院長殺人事件関係者)】

  • 黒川大造(くろかわ だいぞう)
黒川病院の院長で殺人事件の被害者。62歳。
酒を飲みながらワープロを使っていたところを撲殺される。
平時から飲酒癖があるらしく、院長の権力を盾にして周囲の医療関係者に圧力をかけ、酔ったまま執刀する等の所業を黙殺させるなど問題行動があった様で、よりにもよって酔ったまま心臓手術を執刀した事が事件の引き金となった。
それを知る人物が「みんな黒川が怖かったんです」とも吐露しているため、日常的なパワハラ等もあった可能性が高い。
本編が始まった時点で既に殺されていたのと、知らない人に眠りの小五郎を説明するために用意した本編とは殆ど関係ないアバンストーリーなので台詞も無く、当然声優も居ない。

  • 黒川三奈(くろかわ みな)
CV:宮寺智子
大造の後妻。32歳。
ワープロに残っていた文字が「JUN」だったため、「JUN→6月→水無月→三奈」という事で小五郎に疑われる(ちなみに小五郎には三奈自身、大造に対して何かしらの恨みがあったと推測されている)。

  • 黒川大介(くろかわ だいすけ)
CV:山路和弘
黒川家の長男で内科医。36歳。
ちなみに異母である三奈よりも年上(本人自身、自分より年下の女性が母親となってどんな気持ちだったのだろう……)。
余談だが中の人は後に服部平蔵(2代目)を演じている。

  • 中沢真那美(なかざわ まなみ)
CV:藤井佳代子
黒川家に仕える家政婦で物語冒頭の殺人事件の犯人。27歳。
彼女の夫は大造による心臓手術を受けていたが、当時は大造が酒に酔って執刀していた事によって手術は失敗し、帰らぬ人となる。
当初は真っ当に告発しようとしたらしいが、上述の通り病院関係者は黒川を恐れていたため誰一人協力してくれず、自らの手で恨みを晴らすために髪型と名前を変えて黒川家に潜り込み、夫の命日に犯行に及ぶも、コナンにダイイング・メッセージの真の意味を見破られ犯人だと指摘される。
先述の犯行理由を打ち明けた後に「恨みを晴らせたから悔いはない」と言い、笑い声まであげたが、その目には涙があふれていた。
明かされた大造の所業とその殺害理由故か、目暮は彼女を言い咎める事無くどこか同情するように連行した。

ちなみにこの事件の舞台となった黒川邸は森谷が30代前半の頃に設計したものだが、連続放火事件の標的になり全焼してしまった。


【その他(西多摩市OL交通事故死事件関係者)】

  • 岡本(おかもと)
CV:平尾仁彰
西多摩市の前市長。52歳。
1年前に交通死亡事故を起こしてしまい、同乗していた浩平が身代わりを買って出た事で彼に疑いが掛かるような偽装工作を事故車に施す。
だがその事を新一に見破られてしまい、罪を認める。
その事によって失脚し、推し進めていた街づくり計画も白紙となった。

  • 岡本浩平(おかもと こうへい)
CV:谷川俊
電子工学部の学生で岡本市長の息子。21歳。
父親の立場を思って交通死亡事故の罪を被ろうとしたが、新一に暴かれた事で失敗する。
その事を恨んで今回の犯行を行ったのではと彼にも容疑が掛かるが、今朝早くから伊豆に出かけていたため容疑者から外れた。

  • OL
西多摩市に住む若いOL。
帰宅途中に横断歩道を渡っていた時に岡本の車にはねられ死亡。


【レギュラー陣】

今回が初めての映画である為、全キャラクターにゲストと同じく名前のテロップが入っている。

ご存知主人公。
蘭との約束をどうしようか悩んでいた時に爆弾犯からの電話を受け、爆破を阻止するために都内を奔走する。
犠牲者を出さないように爆弾を遠ざけようとした時に爆風に吹き飛ばされ、遂には負傷してしまう。
ちなみに『世紀末の魔術師』にて蘭に誕生日を知られる前の時系列になるため、5月4日の話題になっても彼の方には特に言及はない。

ご存知平成のホームズ。
1年前に西多摩市で発生した交通死亡事故の真相を暴き、一躍脚光を浴びる。
今回の犯人から挑戦ともとれる爆破予告電話が掛かってくるが、その理由はこの事件と関係があるのか……?

映画の制作時期が時期なので、工藤家の「177」から始まる五桁の郵便番号や「080-432-024〇(数字の形的に「2」か「3」のどちらか。)」という十桁の携帯電話番号など、時代を感じる描写もある。

ご存知蘭姉ちゃん。
今回は彼女の知らないところで事件が起きていたため、当時の本編では珍しく普通の女子高生のような休日を送る。
彼女も新一も5月のラッキーカラーは赤だったので、新一の誕生日に赤いポロシャツを贈ろうとしていた。
だが終盤で大規模な爆破事件に巻き込まれてしまい、新一(コナン)の指示で爆弾の解体に挑むが……?

ご存知迷探偵。
「歩く図書館」と自称し蘭に森谷の建築を解説して見せ、コナンも一時感心するが、手元にはカンニングペーパーを忍ばせていた。
森谷が余興として出したクイズが解けず、コナンに先に正解されて恥をかいたため憤慨して問題用紙を破り捨てた*6

普段からコナンの事は邪険に扱ってはいるものの、彼が負傷した時には誰よりも心配していた。
さらにコナンに危ない事を押し付けた(事になっている)新一に怒りの矛先を向けていたりと、人情家としての面が押し出されている。これら一連の描写でオッチャンへの好感度が上がった視聴者も多いだろう。

今回もいつもどおりの迷推理を披露し、終盤では視聴者を大いにずっこけさせた。
だが、第2の爆破事件の推理*7は結果的に空振りとなるもコナンにとっていいヒントになった。

ご存知天才発明家。
昆虫の羽ばたきのメカニズムを機械で再現して大もうけをすることが長年の夢*8
彼の何気ない一言が環状線に仕掛けられた爆弾の在処を発見する手がかりに。

ご存知少年探偵団。
緑地公園で遊んでいた時に犯人から爆弾が搭載されたRC飛行機を貰い、それで遊んでいた。
コナンの見舞いをした帰りに環状線に乗ったが、そこで第3の爆破事件に巻き込まれる。

ご存知蘭の親友。
蘭と一緒に新一に贈る誕生日プレゼントを選んでいた。

ご存知警部殿。
冒頭の殺人事件で、「死の間際の人間がそんな回りくどいメッセージを残すか…」と身も蓋もない推理作家泣かせな事を言っていた*9
今回の連続爆破事件の捜査指揮も執る。
この人の名前もシンメトリーである*10

【余談】

  • 東都環状線に仕掛けられた爆弾の性質は恐らく往年の名作特撮映画『新幹線大爆破』のオマージュ。

  • 森谷が出題したダジャレクイズは、脚本を担当した古内氏が考えたものだが、そのクイズは当時のプロデューサーだった諏訪道彦氏曰くかなりレベルが高かったものらしく、その後のクイズにも大きく影響したとの事。


追記・修正は運命の赤い糸が繋がっている方にお願いします。


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最終更新:2025年04月26日 22:16

*1 2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により見送り。

*2 このため平次が出てこないのに『西の名探偵(摩天楼ヴァージョン)』という曲がある。

*3 唯一の例外が『蘭のテーマ(摩天楼ヴァージョン)』。サントラ上ではリニューアル版の原曲はTV版ということになっているが、どう聴いてもイントロなどはこの『摩天楼』ヴァージョンのそれである。

*4 一応解決後のニュースでは、杯戸町と言っているように聞こえる。コミカライズ版では「山手区葉井戸町」となっている。

*5 後に原作回『揺れる警視庁 1200万人の人質』では本作と矛盾が生じてしまっているが、本作にはよくあることなので気にしてはいけない。

*6 当のコナンには「たまには恥もかかなくっちゃね」と内心でつぶやかれていた。

*7 爆弾のタイマーが一時停止したのはその場所の近くに犯人が住んでいたからではないかというもの。

*8 なお、この時作っていたのはカマキリモチーフのメカ。カマキリも飛べるので別に間違いではないが、わかりやすくチョウとかの方が良かったのでは…

*9 と言っても作中世界ではダイイング・メッセージを暗号にして残す被害者は大勢いるのだが。

*10 ただし、この時は下の名前が設定されておらず、名前が判明するのは次作である。