登録日:2015/11/07 Sat 07:45:37
更新日:2024/11/21 Thu 21:53:54
所要時間:約 20 分で読めます
監督:こだま兼嗣
脚本:古内一成
主題歌:
倉木麻衣「always」
『
名探偵コナン 天国へのカウントダウン』とは、劇場版『
名探偵コナン』シリーズの第5作目のタイトルである。2001年4月21日公開で上映時間は100分。興行収入は29億円。
【概要】
コナンの宿敵である
黒の組織が初登場し、同時に組織のメンバーだった灰原にスポットが当たっている作品。
また、過去の劇場版では目立った活躍がなかった少年探偵団が、終盤では大活躍を見せる初の作品でもある。
また劇場版『コナン』のサブタイトルは「○○
の××」という命名法則になっているが、2024年時点で唯一本作のみ「天国
へのカウントダウン」である。
時系列では『時計じかけの摩天楼』の後、かつ『お金で買えない友情』より前と思われる。
主題歌の『always』は、後にアニメ版エンディングにも採用されたため、特に印象に残っている人も多いかもしれない。
なお、以前から兆候は見られていたが、今回を期に各キャラクターに所謂“劇場版補正”がかかるようになり、本作ではコナンや蘭が派手なアクションを見せている。
公開から15年後の2016年には漫画化された(全2巻)。
【音楽】
前作と同じくサスペンス色が強めだが、同時にスケール感のある楽曲が多い。
また物語にガッツリと組織が絡むため、その名もズバリ『ジンのテーマ』という組織用の楽曲群が作られている。
ただし映画では使われなかった楽曲が非常に多く、サントラを聴いてると「こんな曲流れたっけ?」となることも多い。
TVへの解禁は『雪の夜の恐怖伝説(前編)』からで、前作の楽曲の解禁から半年強での解禁であった。
このためかデビュー後しばらくは前作の楽曲と共に聴く機会がかなり多かった。
その後レギュラー的に定着した楽曲もそこそこあり、特に『小五郎の推理』はリニューアル前後を問わず非常によく使われている。
【ストーリー】
コナンたち少年探偵団と阿笠はキャンプからの帰り道、西多摩市に新設されたツインタワービルを訪れる。
そこでビルの所有者である常盤美緒からの招待を受けた蘭たちと鉢合わせし、彼女たちと一緒に内部を見学させてもらえる事に。
最上階からの絶景を楽しんでいる中、コナンは黒のポルシェが正面玄関前に停まっている事を知り、それはジンの車だと確信し急いで正面玄関に戻る。
だがそこに着く頃にはもうその車は走り去ってしまっており、組織が一体何を企んでいるのかコナンの中に疑問が湧き上がる。
数日後、ツインタワービルの一室で市議の大木岩松が殺害される事件が発生。
現場からは割れたお猪口が見つかり、目暮は大木と面識があったコナンたちを招集して意見を伺う。
コナンたち少年探偵団も独自に捜査を開始し、関係者を訪問していくが、原佳明の自宅を訪ねた時に彼の遺体を発見。
その現場からも割れたお猪口が発見された事から、警察はこれを犯人のメッセージと考えて捜査を行う。
その一方で、灰原は夜中に不審な行動をとるようになり、コナンと阿笠も気にかけるようになる。
灰原が組織に寝返った可能性もあったが、後にそれは思い過ごしだった事が発覚。しかし、灰原のその行動が原因で、灰原がツインタワービルのオープンパーティーに出席する事がジンにばれてしまい……!
翌日、オープンパーティーは予定通り行われる事となり、コナンたちもそれに出席する。
何事もなくパーティーは進行していくが、そこで第3の事件が発生。主催者の美緒が舞台上で殺害されてしまう。だが今回はいつもと違い、傷1つないお猪口が舞台上に置かれていた。
小五郎は美緒が殺された仕掛けを見抜き、犯人を指摘。しかしコナンは舞台上で真珠の玉を見つけて本当のトリックを見破り、同時に真犯人の動機並びに事件の真相にも気づく。
だがその後、ビルの電気室とコンピューター室が爆破される事件が発生。
炎と煙から逃れるために一同は避難を開始するが、その先で組織の卑劣な罠が次々と牙を剥く。
逃げ場を失い絶体絶命の危機に瀕したコナンと蘭。その時に蘭がとった行動は……?
【事件関係者】
※本作では、如月峰水以外の容疑者の名前をレギュラー声優陣の名前から拝借している。
CV:藤田淑子
常盤財閥の令嬢でIT企業「TOKIWA」の社長。36歳。名前の由来は緒方賢一から。
米花大学の出身で小五郎の後輩にあたり、その縁で彼を特別に完成前のビルへ招待していた。
ビルのオーナーでもある彼女は建設のために大木に協力を仰ぎ、そのために彼には頭が上がらないでいる。
現在はB塔最上階に住んでいたため、最有力容疑者となっていた。
警察の要請を無視してオープンパーティーを開催するが、如月の絵を紹介する時にピアノ線をネックレスに引っ掛けられ、絵が下がるのと同時に首を吊る事となってしまい、第3の被害者として殺害される。
CV:橋本晃一
「TOKIWA」の専務でプログラマー。32歳。名前の由来は林
原めぐみ、山崎和
佳奈、神谷
明から。
子供好きないい人で、会ってすぐの探偵団とも仲良くなる。
甘いもの好きであり、職場でもつい
チョコレートをつまみ食いしている。
それでもプログラマーとしては優秀で、現在は新作
ゲームの作成を手がけているらしく、少年探偵団に子供目線の意見を求めた事も。
双宝町に住んでおりそこに探偵団を招待したが、そこで何者かに射殺され、現場にお猪口が残されていた事から第2の被害者だと警察は考えた。
ケーキを切り分けていた時に襲われたようで、手には
銀のナイフを握っていた。
後の捜査で彼の
パソコンのデータが全て消されていた事が判明する。
CV:
久川綾
美緒の秘書。29歳。名前の由来は塩
沢兼人、山
口勝平、高山み
なみから。
招待を受けた小五郎と付き添いのコナンたちを案内する。
落ち着いた印象の女性だがそそっかしいところもあり、原からは「彼女は猪年生まれで猪突猛進な面がある」と冗談で言われていた。
父親は新聞記者だが、彼女が大学4年の時に過労死している。
現場に残されていたお猪口から、それを「猪年で名前に「口」の字が含まれており、身を引き裂くような思いを表現するために割った」と解釈した小五郎に犯人だと疑われてしまうが……?
CV:渡部猛
西多摩市市議会議員。55歳。名前の由来は大谷育江、高木渉、岩居由希子、松井菜桜子から。
昼間から酒の匂いをプンプンさせている酔っ払いオヤジ。風間曰く「下品なオッサン」。
市議会議員ではあるものの実際は市長より力を持っており、市の条例を強引に改正してツインタワービルの建設を強力に後押しする。
第1の被害者で、B塔67階のスイートルームに宿泊していた時に襲われ、刺殺される。
現場には割れたお猪口の他に、不自然な形に切れた血痕がクローゼットの扉に残されていた。
CV:
小杉十郎太
建築家。42歳。名前の由来は茶
風林と井上和
彦から。
ツインタワービルの設計を手がけており、そのためにビルのオープンまであさひ野の仕事場に留まっている。
実は『
時計じかけの摩天楼』に登場した建築家・森谷帝二の弟子だが、芸術家タイプの森谷とは違って技術屋タイプ。建築に対するこだわりもほとんどなく、今回手がけたツインタワービルも左右非対称である。
「森谷のように自分の建築物を爆破したりはしない」と冗談めかしていたが、あの事件で少なからず煽りを受けて仕事が減少したのではというファンの推察がある。
だが今回のビルに関しては、「B塔からも
富士山を見えるようにしたかったが地盤の関係で断念した」と少しばかり悔いが残る建造物となったようだ。
怖そうな印象を受けるが仕事場に押しかけた探偵団にも気さくに対応し、一人息子が恋しくなり寝ていると分かっていながらもつい電話をしてしまうという親バカぶりを話していた。この会話がきっかけで、コナンは夜な夜な灰原が
ある人物に電話を掛けているのではないかと考える。
CV:永井一郎
日本画家。60歳。
富士山の絵で有名な巨匠で、30年以上に渡って数々の作品を世に送り出している。
美緒の日本画の先生でもあるが、彼女が絵を買い占めて高く売ったため、現在は険悪な関係になっている。
数年前に仕事場を兼ねた自宅をあさひ野の小高い丘に建てており、現在は1人で住んでいる。
子供に厳しく、事件を追っていると称して訪れた探偵団を「子供が警察の真似事をするんじゃない!!」と一喝する。御尤もである。
だが訪ねてきた彼らを門前払いせずに招き入れ話だけは聞いてやったり、その後手土産に一人ひとりに似顔絵を描いて持たせたりするなど、それほど気難しい人物でもないようである。
コナンたちと会っていたほぼ同時刻に原が殺害されていたため容疑者から外れた。
年寄り扱いされる事を嫌っており、エレベーターに乗らず、階段で避難している。
キャラクター原案は原作者の青山剛昌氏が担当した。また、声優を担当した永井一郎氏も青山氏の推薦である。
ちなみに永井氏はのちに園子の伯父である
鈴木次郎吉を演じる事となる。
過去には『図書館殺人事件』で
津川秀治を担当している。
【レギュラー陣】
ご存知主人公。
事件の裏で動く組織を気にしつつ、灰原の様子も気にかける。
今回からアクションが本格化し、以降もそれが定着していく事となる。
ご存知蘭姉ちゃん。
光彦や歩美に恋愛相談をされ、親身になって乗ってあげる。
中盤で、ビルから脱出する際にとったスーパーアクションは必見。「映画みたいに上手く行くか分からないけど……」と言っていたが、多分参考にした映画は『
ダイ・ハード』。
10年後のシミュレーションでは顔は映し出されていないが、小五郎によると若いころの
妃英理にそっくりだとのことである。
ご存知哀ちゃん。今作の第一のヒロイン。
夜中にどこかに電話をしていたところを元太や阿笠に目撃され、不審に思われる。
実はかけていた先は、明美が密かに借りていた部屋。寂しくなった時などに数秒足らずの姉の声を聞きたくなった際、つい電話をかけていたらしい……(原作では明美が死んだ後、部屋は組織により証拠隠滅のため残されていないとされているが、前述の通り明美が組織の目を盗んで借りていた部屋であったため、難を逃れていたものと思われる)。
しかし、その最後の電話の内容をジンに知られてしまい、知らないうちに彼らに狙われる。
電話の不審さから当時の予告編ではジンに「任務を完了したわ」と電話で言うカットがあるがそのような場面は本編にはない。いわゆる嘘予告。
宮野志保としての姿はイメージカットのみで、特に園子が髪型を灰原そっくりにして現れた際にコナンが重ねた姿として『黒の組織との再会』での杯戸シティホテルの清掃員のつなぎに犯人追跡メガネをかけた姿が映されていた。
ご存知迷探偵。
パーティーの余興に行われた30秒当てゲームで偶然ピタリ賞を出し、高級外車「マスタング・コンパーチブル」をゲット。
これでレンタカー生活に終止符が打たれた。かと思いきや……?
ご存知天才発明家。
今回は追跡眼鏡に赤外線望遠機能を搭載。この設定は後に原作へ逆輸入される。
ビルから
逃げる際、コナンにある人物をマークするよう指示されるが、途中で見失う。
10年後シミュレーターでは全く変化がなかったため、他の諸々の理由も併せて一時は
黒幕疑惑が囁かれることに。
ちなみに、この頃から灰原に栄養管理をされていることが判明する。
ご存知純真小学生。今作の第二のヒロイン。
冒頭の30秒当てゲームでは見事ピタリを出したがパーティーの余興では外してしまう。
コナンが側にいなかったからのようだが、これが後に重要な意味を持つように。
10年後シミュレーターでは中々の美人高校生となっている。
ご存知探偵団団長。
米粒1つでも残すとバチが当たると普段から母ちゃんにうるさく言われているらしい。
ラストではこの言葉の通りの男気を見せる。
30秒当てゲームでは冒頭では59秒、パーティでは12秒とものすごい秒数外していた。
「壊れてるんじゃないかこれ?」「それは元太君の方ですよwww」
ご存知天才小学生。
歩美と灰原を同時に好きになった事で真剣に悩んでおり、その悩みを蘭に打ち明ける。
彼もまたラストで男を見せる。
ご存知蘭の親友。
10年後を予想した自分の写真が思っていたよりオバ……大人びていたため、イメチェンして髪型を灰原そっくりにする。
この事が災いし、ジンに人違いで殺されそうになるが、コナンの咄嗟の機転でその危機は脱した。
上記の髪型は、園子が漫画本編に初登場した時にアシスタントが「こいつが
宮野明美の妹か!」と誤解したのが元ネタであり、その少し前の『奇妙な人捜し殺人事件』でシルエットのみであるが志保も登場していた。
ご存知警部殿。
美緒にパーティーを延期するよう要請するが断られてしまい、仕方なくビルの駐車場で白鳥たちと待機していた。
爆破事件が起きた時は的確な避難指示を出すが、組織の妨害で思うようにいかなかった。
ご存知御曹司警部。
「お猪口はおっちょこちょいを指しているのでは?」という話題になった時に、それなら小五郎が一番怪しいと悪いジョークを言った。
本作と何かと関わりのある『時計じかけの摩天楼』で小五郎に犯人と疑われた事への意趣返しだろうか。
今回から
塩沢兼人氏の後任として、
井上和彦氏が彼の声を担当している。
余談だが、井上氏が前作の『
瞳の中の暗殺者』で、さらに前々作の『
世紀末の魔術師』では美緒役の藤田淑子氏の両名がゲストキャラを演じていた為、過去の劇場版の出演経験者が今作では2人いることになる。
ご存知高木君と千葉君。
今回は目立った活躍はない。
アニメオリジナルキャラの鑑識さん。
原が殺害された部屋でお猪口の欠片を全て回収するが、その破片に血が付着していない事にコナンは疑問を抱く。
本作が漫画化された為、原作キャラではないトメさんも漫画に登場した。
組織のメンバー。
灰原がパーティーに参加する事を知り、ツインタワービル内のとあるデータを物理的に消去する目的も兼ねてあちこちに罠を仕掛ける。
今回灰原を真似てウェーブを掛けた園子を灰原と勘違いして狙撃したため、一部で話題にされる。(通称 “別ジン” もしくは ”ドジン”事件)
まあ少々情けない姿ではあったが、あの遠距離に加えて標的がエレベーターで移動していたことも踏まえると、狙撃スキルだけに目を向ければ凄まじい腕前だったと言える。
組織のメンバー。
ジンの命令で連絡橋やヘリポートに仕掛けた爆弾を作動させ、徐々に逃げ道を奪っていく。
灰原の姉。
組織に秘密でとあるマンションの一室を借りていたが、組織にその場所を突き止められてしまう。
今回は音声のみの登場で、顔が初登場するのは後年の『黒鉄の魚影』まで持ち越し。
【その他】
CV:菅原淳一
ツインタワービルの保安主任。51歳。
ビルの各階で爆発が起きた事を風間に報告。
火災が発生していたのですぐに避難するようにと指示をしていた。
CV:百々麻子
パーティーに出席していた
赤ちゃん連れの女性。
赤ちゃんをあやすために会場を離れた別の階にいたが、それが原因で逃げ遅れてしまう。
後にエレベーターを待っていた時に探偵団と遭遇し、彼らに場所を替わってもらったおかげで無事避難できた。
燃え盛るツインタワービルに突入し、人命救助と鎮火に奮闘する。
【余談】
- 今回登場したゲストキャラのひとりは、劇場版オリジナルの組織メンバーの第1号である。
2024年現在、劇場版オリジナルの組織のメンバーは数人が登場しているが、原作に影響を及ぼす為、必ず命を落とすまたは生死不明になるのがお約束となっている。
- 常磐美緒の父親の名前は「金成」で、名前の元ネタはことわざの「時は金なり」だが、後に原作では組織のある人物がこれをアナグラムにした名前を名乗って活動している事が判明している。
- レギュラー陣の10年後の容姿は、2009年に制作されたOVA作品の『10年後の異邦人』でも描かれている。
その容姿はアニメスタッフが作成しそれを青山先生がチェックする流れになり、元太・光彦・園子・阿笠は一発OKだったが、歩美だけはなかなかOKが出ず、最終的には「未来の歩美は俺が原画描きます」と当初の予定には無かった青山氏の原画シーンとなった。
- クライマックスの車での脱出シーンについて、「普通なら飛び出す前にガラスを割っておくものでは?」という意見もある。
確かに予めガラスを割っていないと、ぶつかった衝撃で車の速度は落ち、ガラスの破片で怪我をするかもしれない。それでもそうしなかったのは、子供の力だけでは高層ビルで使われている強化ガラスが割れなかったか、単に見栄えの問題だと思われる。
- 本作は劇場版で初めて犯人が推理後に自殺をしようとした作品で、本編やアニオリと同様にこの展開を扱う場合はコナンや別のキャラが阻止するのがお約束となっている。
しかし、今回の犯人のように服毒自殺しようとするパターンは非常に少なく、『特別編』の『飛行船にかけた願い』に登場した組織のメンバー・アラックのように、本編においては歯に毒を隠すという手段は一度も扱っていない。
この方法だとコナン達でも予測不能で且つ阻止する事も難しいと思われる為、毒を使用する場合は今回のような展開しか扱っていない。
- 劇場版の命名法則は『〜の◯』となっているところ、「◯」に入る語がカタカナ表記だったのは本作が初めて。
追記・修正は、物体が20メートル落下するまでにかかる時間を求めてからお願いします。
最終更新:2024年11月21日 21:53