魔鍾洞(遊戯王OCG)

登録日:2019/08/13 Tue 21:36:32
更新日:2025/04/24 Thu 08:26:22
所要時間:約 7 分で読めます




暴力はいけません! 暴力はいけませんって!?


魔鍾洞(ましょうどう)》とは、遊戯王オフィシャルカードゲームに存在するフィールド魔法カードの一つである。
「鐘」ではなく「鍾」、「つむ」である。イラスト的にも「魔」的な何かが加わった「鍾乳洞(しょうにゅうどう)」、と覚えるといいだろう。


●概要

高速化が進む現在の環境において、「ドロー&セットしないと使えない」魔法・罠による除去は軽視される傾向にある。
代わりに、素材さえ揃えたらいつでも用意できるEXデッキのモンスターによる除去・制圧が優先されがちなのだが、このカードはそれに待ったをかける

フィールド魔法
(1):相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドのモンスターより多い場合、相手はモンスターの効果を発動できず、攻撃宣言もできない。
(2):自分フィールドのモンスターの数が相手フィールドのモンスターより多い場合、自分はモンスターの効果を発動できず、攻撃宣言もできない。
(3):自分・相手のエンドフェイズに、お互いのフィールドのモンスターの数が同じ場合に発動する。
このカードを破壊する。

効果そのものは至ってシンプル、要は「相手よりモンスターが多いプレイヤーの、モンスターによるアクションを封じる」というもの。
つまりコイツが張られていると、がら空きの場にダイレクトアタックをかけたり、大量展開で制圧する、ということがやりにくくなるのである。
これは相手のみならず自分にも影響し、更に《スキルドレイン》などと違いモンスターの墓地発動や手札誘発まで封じられるため必然的にデュエルが低速化する。
後攻の場合でも発動に成功すれば効果は適用されるが、相手のモンスターが自分より多くなければ意味をなさない他、あくまでも「発動」を封じるだけなので、特定の場所にいる限り効果が適用される永続効果の類には無力。
この点は過去のカードで言うと《エンジェル07》や《威光魔人(マジェスティー・デビル)》に近い。

互いのフィールドのモンスターが同数なら自壊してしまうが、お互いのモンスターが0体同士でも効果が適用されてしまうため、先攻1ターン目に使うとモンスターを送り付けていない限りエンドフェイズで自壊してしまう。
そのため、《テラ・フォーミング》より相手のアクションに合わせて発動できる《メタバース》や《終焉の地》の方が相性が良い。
なお、「維持コスト不払いによる自壊」ではなく「カードの効果による破壊」扱いのため、《Sin スターダスト・ドラゴン》などで無理矢理維持することも可能である。

このカードを使うのなら、自分のモンスターが相手よりも多くならないようにしつつ、
デメリットである「モンスターの数が同じ場合の自壊」を防ぐ、という駆け引きが要求される。
【メタビート】などで有用なおける癖の強いサポートカードと言えるだろう。


追記・修正は魔の鍾乳洞から脱出できた方がお願いします。















……なんて言われていたのは登場当初の話。
強者揃いのOCGプレイヤーたちは、このカードを利用することによって凶悪なロックをかけられることに気付いてしまった。


●遅延デッキ【魔鍾洞】の誕生

上述のとおり、互いのモンスターが0体同士でも(3)効果が適用されてしまうために一見すると先攻1ターン目で貼り難いのだが、
逆に言えば相手の場にさえモンスターがいれば、自分の場のモンスターが0体でも(1)効果は適用されるという事になる。
この効果の処理を徹底的に利用するデッキが【魔鍾洞】である。

具体的にはデッキの罠カードをサーチする《悪魔嬢リリス》や《トラップトリック》から《メタバース》をサーチし、効果で《魔鍾洞》をデッキから引っ張り出して発動。
そのままモンスターを一切出さないまま《波動キャノン》や《自業自得》などの高火力バーンカードで相手ライフを焼き切ったり《終焉のカウントダウン》による特殊勝利を狙う。
特に1枚で相手のライフを削り切れる《波動キャノン》との相性は抜群で、バーン担当をこのカード1本に絞り、残りのデッキスロットをサーチ・ドロー・防御カードで埋め尽くす一撃必殺の構築が可能となる。

この戦術は相手側にもモンスターが必要なのがネックだが《おジャマトリオ》や《おジャマデュオ》と言ったトークン生成などで解決できる。
更にこちらも裏守備モンスターを出しておき、《ナイトメア・デーモンズ》のコストにしてしまえばこちらはがら空き、相手はモンスター3体というこのデッキにとって最良の状況が出来上がる。
何せ、(リンク召喚の登場によって)多数のモンスターを1体までに減らすこと自体は難しくないのだが、その1体を処理してゼロにするのは難しいのである。
加えて、手札誘発・墓地発動は《魔鍾洞》がある限り封じられるため、ロックとしての強度は高い。

《魔鍾洞》自体の破壊に対しては《身代わりの闇》などで防御すればよいだろう。
破壊効果以外の除去は《神の宣告》、《魔宮の賄賂》などのカウンター罠が有効となる。


●弱点・対策

確かにこのデッキは強力なロックを仕掛けられるのだが、弱点及び対策方法は明確である。

  • 《魔鍾洞》を破壊できる魔法・罠カード
《魔鍾洞》が封じられるのはモンスターのみであるため、魔法・罠カードによる除去・バウンスなど、モンスター以外の対処法には悉く弱い。
《ハーピィの羽根帚》や《ツインツイスター》はもちろんの事、《身代わりの闇》をすり抜ける「破壊しない除去カード」にはほぼ無力。
《コズミック・サイクロン》なら除外できるし、チェーンを許さない《ポルターガイスト》なら《魔宮の賄賂》すら貫通する。
尤も、使う側もそんな基本的な弱点は百も承知のため上述のカードでしっかり対策している場合がほとんどで、メインデッキ一本で戦うシングルやマッチ一本目ではこの弱点を徹底的に突くのは難しいのだが。

  • 《盆回し》
相手に張り替え不可のフィールド魔法を押し付けることができる。
前もって発動を潰せるのはもちろん、《メタバース》にチェーンすれば不発にすることも出来る。

ご存じ最強の魔法メタカード。
破壊せずに無効化するので《身代わりの闇》が反応せず、制圧がおじゃんになってしまう。また、サイクロン系よりも汎用性が高く、通常のデッキにも無理なく搭載しやすい点も優れている。
ただ、発動している限り自らのライフも削ってしまうため、決めきれないとエキストラターンで敗北する可能性もあるので注意。

  • 全体除去カード
《ブラック・ホール》などで自分フィールドを一掃してしまえばお互いの場にいるモンスターが0体になるため、《魔鍾洞》を自壊させることができる。
こちらも汎用性が高く、気軽に搭載可能。

  • バーンデッキ
地雷デッキには地雷デッキで対抗。天敵中の天敵。
モンスター効果の封殺が意味をなさず、バーンの速度で《魔鍾洞》を上回るこの手のデッキは即刻サレンダーレベルで相性が悪い。
【チェーンバーン】なんかは勝ち目ゼロと言っていい。

その他の普通(?)のテーマ単位ではこのデッキが最大の天敵。
《DDD神託王ダルク》を立てられるとバーンを全て吸収されてしまい、「エキストラターンでライフ差で勝利する」と言う戦法が成り立たなくなってしまう。
《DDD双暁王カリ・ユガ》を出されたら更に悲惨であり、ルール効果で全てのカードを無効化された上で《身代わりの闇》もろとも魔法罠を一掃されてしまう。
他にも永続効果でバーンをしてくる【トリックスター】も苦手。

様々書いたが、基本的には《魔鍾洞》さえどかせれば何とかなる。戦いの軸を《魔鍾洞》一本に絞っているため、ここを潰されるとほぼ何もできないと言っていい。


●【魔鍾洞】の問題点とその顛末

ここまでの話は単なる概要で、本題はここからである。
このデッキの一番の問題点はその強力さではなく、大会における勝ち方にある。

このデッキの大会での勝ち方は極論すると「マッチ1戦目をマッチ自体の制限時間である40分間フルに続けてエキストラターンに突入し、ライフ差で勝つ」というものであり、かの悪名高き【Vドラコントロール】【トランス】の再来と言うべき、サイドデッキでの対策を許さずにマッチキルを狙うという代物。
サイドデッキ交換を許すとサイクロン系統や《レッド・リブート》などこのデッキに取って脅威になるカードが多数投入されるため、対策を許さずに勝てる点は大きい。

当然、このデッキの取り扱いで発生する問題も上述のマッチキルデッキ群と同じであり、サイドでの対策を取るために「わざと反則を犯して*11戦目を負ける」という問題行動が起こりかねない状況になってしまった*2

また使う側も《波動キャノン》が8000ダメージ与えられる状況なのにも関わらず、発動せずに延々とターンエンドを繰り返すという遅延行動と見られても仕方ない行動をするプレイヤーもいた。
当時のコナミの公式ルールではデュエルのサレンダー(投了)に関するルールが認められていないため、どう見ても無理な状況に陥っても制限時間が切れるまで無理ゲーをやり続ける状況になってしまう。
様々な遅延行動の温床になっており、頑なにコナミが導入しないサレンダーがない事への問題点を再度指摘されることになってしまった。

これがためにショップデュエルや非公認大会においては、《魔鍾洞》を禁止カードとする独自のレギュレーションを組んでいる場合もあった。
マッチごとに40分を超える時間を使われるため、大会自体が長引くからである。

以上のように、【魔鍾洞】自体は一定の成績を残したものの、対処すべき弱点が明確であった*3ことから、地雷デッキの域は出なかった。
また、非公式の大会ではプレイヤーがサレンダーを宣言した場合、もう片方のプレイヤーの了承は必要なく即座に適用されるのが一般的なため、
1本目で40分まで引き延ばすという戦術はまず成立せずサイドデッキに触られてしまい脆い部分を突かれやすい。
しかしそれ以上に、上述したマナーの問題を公式が重く見たのか、2019/7/1の改訂で《魔鍾洞》が準制限、《メタバース》が制限となり、《魔鍾洞》デッキは大会から姿を消した。

このカード自体が準制限に留まり、《メタバース》が制限になったのは、準制限では《悪魔嬢リリス》、《トラップトリック》で引っ張り出せてしまうため意味がない、と考えられたためだろう。
さらに言うと「メタ範囲があまりにも広く、かつ手軽に条件を満たせる」ため、大会での使用率が高まったことで、
デッキ構築の段階から「《魔鍾洞》対策にデッキスロットを割かざるを得ない」という影響力の高さも問題視されたと思われる*4

とはいえ、【閃刀姫】などなど展開が少なめで自分から《魔鍾洞》を割る手段を無理なく用意できるデッキなら*5
自分の展開をサポートする一時的な妨害札や切り返しの手段としては未だ有用。
自壊効果が適用されるタイミングもお互いのターンのエンドフェイズと使った側に都合がよく、仮に自分のモンスターに除去カードを使ってモンスターをゼロにしたとしても、エンドフェイズに無防備な状態を作ってしまった上で次のターンやりたい放題されることになってしまう。
これこそが本来想定されていたであろう用途の1つではあったものの、やはり単独運用のロックカードとしてはやりすぎだったようで、2019/10/1の改訂で制限カード、2年後の2021/10/1に禁止カードとなり今度こそ終止符が打たれることになった。
ちなみに現在では(大型大会イベント限定ではあるが)基本的にサレンダーが可能*6となっているため、上記の遅延戦術は事実上崩壊しているのだが、それでも単体のロック性能があまりにも高すぎるため緩和は難しいだろう。


追記・修正は《波動キャノン》をぶっ放してからお願いします。

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最終更新:2025年04月24日 08:26

*1 わざと自分のデッキを崩すなど。

*2 ただし、大会罰則規定では故意の反則は「受賞資格剥奪の上失格」とされている

*3 具体的には1ターン目。手札誘発で《魔鍾洞》を潰されると戦術自体が完全に瓦解する。

*4 対策ありきの構築が当たり前になってしまう=デッキ構築の幅が狭まるため。

*5 例えば上述の【閃刀姫】ならマルチロールのコストにするかエリアゼロに張り替える、という手段が容易に取れる。

*6 サレンダーした結果マッチでの勝敗が決まる状況のみ不可。