犬夜叉 天下覇道の剣

登録日:2020/11/10 Tue 21:31:50
更新日:2024/11/21 Thu 19:32:02
所要時間:約 6 分で読めます




犬夜叉VS殺生丸



『犬夜叉 天下覇道の剣』は、2003年(平成15年)12月20日より全国東宝系列の映画館で公開されたアニメ『犬夜叉』の劇場版第三作である。

監督は篠原俊哉、脚本は隅沢克之の担当。アニメーション制作はTV同様サンライズ。
主題歌『Four Seasons』は安室奈美恵が担当。


【概要】

興行収入は8.1億円。
シリーズの人気キャラである殺生丸と、主人公・犬夜叉の兄弟に焦点を当てた作品。
高橋留美子作品らしい、男女のロマンス要素を前面に押し出した前2作に比べると、男同士のアクション要素に比重が置かれた異色作でもある。

本作はアニメスタッフの構想したオリジナル作品だが、当時まだ設定が固まっていなかったであろう鉄砕牙天生牙の成り立ちや、原作では作者の意向でほとんど触れられなかった生前の犬の大将の姿が描かれる*1など、犬一族のバックボーンを大胆に描いた作品。
天生牙の立ち位置や冥界の設定など、結果的にのちの原作設定と食い違ってしまった部分も生じたのだが、独立した作品としての完成度は高く概ね好意的に受け入れられている。

その後、原作後の未来を独自の世界観で描いたオリジナルアニメ作品「半妖の夜叉姫」にも、本作での姿をした犬の大将や、本作オリジナルの刀である叢雲牙が登場した。
……上述通り、本作の事件が「夜叉姫」世界でも本当にそのまま起きてしまっていたと仮定すると、若干設定に矛盾が生じることになるのだが、叢雲牙は回想シーンのみの登場となっている・犬夜叉の代に復活したのかどうかが描かれていないため、詳細は今のところ不明。


【あらすじ】

かごめの実家の日暮神社の蔵から見つかった剣・叢雲牙。
それはかつて封印されたはずのこの世に破滅をもたらす魔剣だった。
魔剣の因縁に誘われ犬夜叉、そして殺生丸は戦いに身を投じる…。


【登場人物】

犬耳主人公。
かごめを迎えに現代までやってきた際、封印を解かれた叢雲牙を抑えようとして逆に憑りつかれてしまう。
妖怪の本能を辛うじて理性で抑え込み、かごめの霊力と言霊の念珠によってなんとか叢雲牙を振り払う。
しかし、仲間達を巻き込んだ事や父親への負い目から独りで決着をつけようと先行してしまい、殺生丸と競り合いを繰り返しながらも叢雲牙に挑む。
半妖である事の劣等感を変わらず感じている一方、逆にそれを誇りに思うなど前作からの精神的成長もみられる。

転生系ヒロイン。
叢雲牙に憑りつかれてしまった犬夜叉を追い、危うく殺生丸に斬られる寸前だった犬夜叉を気絶しながらも救う。
単独で叢雲牙に挑もうとする犬夜叉を終始心配する。
殺生丸をはじめ人外相手にも物怖じしない胆力といつもの「おすわり!」は健在。

子狐妖怪。
相変わらずのツッコミ役。
決戦では狐火が使えるという理由で弥勒に強引に戦力扱いされる。

不良法師。
三界や息子にとっての父親の在り方について分かりやすく教えてくれる。
終盤はリスクを承知で消耗した仲間達のため風穴を開く。

妖怪退治屋。
弥勒や冥加と共に十六夜の墓参りをしていた。
危うく冥界に落ちそうになるが弥勒に引き留められる。

珊瑚の相棒の猫又。

  • 冥加
ノミじじい。
一応決戦まで同行するが、やっぱり逃げる。
残念ながら今作までの出番なため地味に皆勤賞を逃す事に(ただし中の人次作でも端役で出演している)。

おとぼけ刀鍛冶。
叢雲牙の出現を察知し駆けつける。
回想で「わしゃ長生きしたいんじゃ」と言ってるがもういい年だろうに。

  • 朴仙翁
鉄砕牙と天生牙の鞘の元となった樹木妖怪。
冥加達の回想に登場。
形見分けの天生牙を殺生丸に渡す役目を刀々斎に押し付けられ冷や汗を流していた。
この時のメッセージは「殺生丸❤へ」
…これじゃ天生牙の件も含めて、刀々斎らが殺生丸に殺意を抱かれてもいた仕方ない。

殺生丸様。
犬夜叉の異母兄にして、完全な妖怪。
前作はセリフもない申し訳程度の出番だったが、今作は事実上のもう一人の主人公として活躍*2
叢雲牙の出現に天生牙が呼応した事で戦場に身を投じる。
半妖である事に加えもう一つ、父親への慕情故に犬夜叉や人間を嫌っている事が語られる。
かつて父親が今生の別れ際に残した「お前に守る者はあるか?」という問いに、言葉ではなく剣を以って答える事となる。

殺生丸の嫁にしてお供その1。
殺生丸の主役化に伴いこちらももう一人のヒロインに。
散らばってしまった言霊の念珠を拾い集めたりかごめとはのちの義姉妹(?)同士仲の良いところをみせる。どっちが姉で妹かって?深く考えるな。
弾き飛ばされた天生牙を拾おうとして助けに来たかごめ共々城にさらわれ危うく猛丸に斬られそうになるが、殺生丸が駆け付けたため事無きを得る。

殺生丸のお供その2。
余計な事を言って味方一同からシバかれるが一応殺生丸にちゃんと大事には思われていた様子。
よかったね、邪見様!しかし呼ぶ回数で一回りんに負けている。

  • 日暮草太
かごめの弟。
叢雲牙の鞘の存在に最初に気付いた。

  • じいちゃん
かごめの祖父。
叢雲牙を虫干ししていたが、読み方を間違えて『古事記』の『叢雲剣』と勘違いしていた。

  • ママ
かごめの母。
じいちゃんの蔵の整理を手伝っていた。

犬夜叉と殺生丸の父親。
今作で初めて人間態での姿(殺生丸に似ているが、こちらはポニーテール状)が描かれる。
犬夜叉が産まれる日の夜、胸騒ぎを感じ十六夜の館に駆けつけ、猛丸に殺害された十六夜を天生牙で生き返らせると二人を逃がし、自身は竜骨精との傷もまだ癒えぬ状態*3で猛丸とその兵を相手に激戦を演じた末相打ちとなった。


ネタバレ
叢雲牙が再び封印された直後、幻影の姿で登場。
兄弟が力を合わせて闘うことを願い敢えて叢雲牙について遺言で触れなかったことを仄めかし、二人の成長を見届け満足そうな表情を見せた。

犬夜叉の母。
出で立ちや回想からおそらく貴族の出身で、慈愛に満ちた人物と思われる。
犬の大将と恋に落ち犬夜叉を身ごもるが、それが許せなかった猛丸によって殺害される。
天生牙で生き返ったのちは犬夜叉と共に都で暮らしていたが、周囲から蔑視されるわが子には心を痛めていた様子*4

  • 刹那猛丸(せつなのたけまる) CV:松本保典
かつて十六夜に仕えていた武士。
十六夜に想いを寄せていたがそれ故に彼女が妖怪である犬の大将の子を身ごもった事が許せず、殺害するという凶行に走る。
駆け付けた犬の大将に左腕を切り落とされながらも執念で戦い続け相打ちとなる。
死後は密かに弔われていたが*5、叢雲牙に怨念を掻き立てられ復活し、殺生丸の左腕を代わりに繋ぎ剣を振るう。
とある山城の城兵を皆殺しにし先兵化し一行を迎え撃つ。
十六夜への憎しみは留まることを知らず、ついにはかごめやりんまで手にかけようとする。

ネタバレ
駆け付けた殺生丸と犬夜叉相手に死闘を繰り広げるも、犬夜叉の人の想いを込めた鉄砕牙に押し切られ、本当は十六夜を憎んでなどいなかった事を思い出し成仏し、肉体も元の骸へと還った。

叢雲牙の鞘の精霊。
冥加や刀々斎とは昔からの知り合い。
七宝曰く心がささくれており、悪人ではないがややひねくれた性格。
臆病なうえに物忘れが酷く、肝心な事を思い出すのも遅い。

本作のラスボス。
犬の大将が鉄砕牙や天生牙を手にする以前から所持していた刀で、野太刀程度の刀身にと日本刀と同じくらいの身幅の両刃剣で、柄頭には大きな紫色の珠が埋め込まれている。
この三本をあわせて「天下覇道の三剣」と呼ばれる。
単体でも鉄砕牙と天生牙を凌ぐ力を持ち、地界(冥界)を司り、一振りで百の亡者を呼び戻すとされる(天界が天生牙で人界が鉄砕牙)。
手にした者はこの世の覇者になれるとされるが、実際は太古の邪悪な悪霊が宿っているため、相応しい者以外(特にどんな生き物よりも自我と欲望が強いとされる人間)が手にすれば柄から触手が伸びたちまち取り込まれ、破壊と殺戮で自分以外の全てを滅ぼしてしまうとされる、文字通りの魔剣マダオの声で喋る紅桜かと思うがこちらが先である

必殺技は黒い龍を思わせる邪気を纏わせ、衝撃波として放つ「獄龍破」。
その威力は爆流破、蒼龍破を遥かに上回り、広範囲の地形すら変えてしまう。
厄介なことに、叢雲牙に斬り殺された者は動く屍となって蘇り、たとえ真っ二つにされても動き続ける。そのため物理攻撃はほとんど効かない上、大量の瘴気を帯びているため風穴で吸い込んでも多大なダメージを追う。
さらに厄介なのは、物理的に破壊したり消滅させたりすることが不可能という強靭性で、封印することでしか無力化出来ない。
一応弱らせる事はできるほか、炎で焼き尽くす・破魔の矢などの霊力で浄化する・天生牙のこの世の物以外に発する効力などが有効打となる。

かつて何人もの人間がこの剣を巡り争ったため、それを鎮めるため犬の大将が手にしていたとされる*6
犬の大将の死後、叢雲牙については何の遺言も残されていなかったため、冥加らは相談の末、鞘に封印を任せて骨喰いの井戸に投げ込む。
その後日暮家の先祖が発見し、現代まで日暮神社の倉庫で眠っていた。
現代になって鞘の封印が弱まり目覚めると、制御しようとした犬夜叉に憑りつき妖怪化させ、再び戦国時代に持ち込まれる。
犬夜叉から引き離されると今度は道中で殺したモブ鬼に憑りつき「あの世とこの世の境目」で殺生丸の左腕を回収、猛丸の墓をあばき操ると一同を迎え撃つ。

ネタバレ
猛丸が倒されてもなお妖力で身体を形成し、ついには冥界を開き、亡者達を呼び出し現世を飲み込もうとする。
なおも犬夜叉と殺生丸を相手取るが、同時に放たれた鉄砕牙の爆流破と天生牙の蒼龍破に獄龍破を破られ敗北。
悪霊も消滅し、殺生丸の左腕もろとも冥界へと落ちてゆき封印された。


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最終更新:2024年11月21日 19:32

*1 映画で取り上げてもらった事に満足したからこそあえて描かなかったともされている。

*2 公開時のポスターや冒頭のクレジットなどでも、犬夜叉とかごめに続いて表記されている。

*3 この他にも傷や病を抱えていた様子で、先が長くないのを悟っていた。

*4 これが理由で犬夜叉は蹴鞠にあまりいい思い出がないと語っている。

*5 おそらく屋敷跡を訪れた冥加や刀々斎の手によるものと思われる。

*6 刀々斎の見立てでも、現在これを扱えるのは殺生丸ぐらいしかいないとの事。