疫病(遊戯王OCG)

登録日:2021/02/28 Sun 17:18:49
更新日:2025/01/14 Tue 20:49:42
所要時間:約 6 分で読めます






KONAMI「オレは手札から「あまびえさん」を召喚する!
コイツはあらゆる病気の発生を禁ずる妖怪族モンスター…
これでお前の持つ「疫病」の使用は封じられたぜ!!」

デュエリスト(え…「疫病」禁止効果だとぉ~~!?!?)


時は2021年2月中旬。
エラッタを挟む形でのしょごりゅうの帰還や、リンク召喚によって秘められた能力を解放したトーチ・ゴーレムの禁止カード化などが話題となった1月のリミットレギュレーションからおよそ1ヶ月半後…。


次に規制を喰らうのはどのテーマか?
デュエリスト達の間で考察や予想を行う中、公式がとある発表を行った。




それは、緊急リミットレギュレーションである。




年4回(2021年時点)という決まった時期に行われるリミットレギュレーション。通常であれば話題こそあれ、改定はまだまだ先であった。
しかし今回は緊急の名目で、通常の改定時期を無視して改定が行われたのである。

23年にも及ぶ遊戯王OCGの歴史の中でも初となる事態に困惑するデュエリスト達。


今回の改訂では1枚のカードが無制限から突如として禁止カードに指定されたとのこと。
いったい何のカードが規制されたのか?














疫病
装備魔法
戦士族獣戦士族魔法使い族モンスターにのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は0になる。
また、自分のスタンバイフェイズ毎に、装備モンスターのコントローラーに500ポイントダメージを与える。




デュエリスト一同「……なぁにこれぇ?」



そこにあったのは環境上ではおろか、一般的な認知度でも「無名」と言っても大げさではない程のカードだった……





以下、真面目な概要。


概要

疫病とは遊戯王OCGの1枚。

初出は『DUELIST REVOLUTION』。パッケージイラストが遊星が融合召喚した波動竜騎士 ドラゴエクィテスというパックである。
デュエリストには強欲で謙虚な壺エフェクト・ヴェーラーなどの汎用カード、スクラップエレキなどが初登場したパックとしても有名。
「種族指定の装備カード」や「シンプルなネーミング」から初見時は初期のカードと思いがちだが、意外にもこのカードは7期のカード。


戦士族・獣戦士族・魔法使い族モンスターに装備して攻撃力を0にし、更に自分スタンバイフェイズごとにコントローラーのライフにダメージを与える、
装備モンスターにデメリットを課すタイプの装備魔法である。




……この項目を見た大半の人は思うだろう。「微妙だ…」と。


相手モンスターに装備させて攻撃力を0にして殴る事が出来る…と考えれば効果自体は悪くない。
だがこのカードの最大の問題点は「装備対象が大きく限定されている」ことである。

装備対象の3種族は、いずれも比較的メジャーな種族であり、仮にその種族に偏ったデッキでなくとも出張パーツなどとして見かける可能性は十分ある。
だがそれでも装備できるかどうかは完全に相手任せであり、安定性が著しく低い。
また当然上記の種族を使っていないデッキ相手では完全に腐ってしまう。
「DNA改造手術」などを使えば強引に装備する事も可能だが、そこまでして装備する意義があるかと言われると怪しいものがある。


さらに厄介なのが以下のカードの存在。


魔界の足枷
装備魔法
装備モンスターは攻撃する事ができず、攻撃力・守備力は100になる。
また、自分のスタンバイフェイズ毎に、装備モンスターのコントローラーに500ポイントダメージを与える。


攻撃力を0にできる点こそ「疫病」の方が僅かに優っているが、こちらは「守備力も下げられる」「攻撃自体を封じる」とさらなる効果を持っており、何よりこちらは装備対象の種族に制限がない

更に言うと「魔界の足枷」が収録されたのは「疫病」の収録パックDUELIST REVOLUTIONの発売から僅か3か月後に出たSTARSTRIKE BLAST。
つまり「疫病」は発売から僅か3か月後に(ほぼ)上位互換カードに活躍の場を奪われてしまったのだ。
発売から10年前のカードの完全下位互換になるよりはまだマシ…いや、どんぐりの背比べか。

こちらにしかできないことと言えば、攻撃力が0になる点を活かし、レプティレス関連の各種サポートを行う事であるが、この場合も種族変更等の処理が必要になる。


また、後半の500バーン効果だがこのカードは装備魔法である事、そしてバーンが発生するのが自分ターンのスタンバイフェイズである事から、
普通に使った場合、ダメージを与えられるのは「次の自分のターン」になる。

今の環境ではモンスターが各種召喚の素材やカードの発動コストとして1ターンの間に場から消えることなど決して珍しいことではない。
ましてや発動からダメージが発生するまでに相手ターンが挟まれることが確定しているのなら尚更である。
ダメージを与えたいのであればロック性や奇襲性で優る「拷問車輪」などの方が向いている。

もちろん条件を満たせば自分のカードに装備する事も可能だが、コンボが前提になる為、行うのであれば相応のリターンを得に行く必要がある。





この様にカードの性能面を見る限りでは環境デッキで使われる可能性は低く、逆にこのカードによる環境を覆すような騒動が起きたわけでもないのだが、
冒頭での茶番記述の通り、緊急リミットレギュレーションにより、それまで無制限カードだったこのカードは突如として禁止カードに指定され、2021年2月20日から大会等で使用する事が不可能になった。


なぜ性能面で大きなバグを背負っているわけでもないこのカードが禁止カードとなったのか?

それはこのカードの存在である。



あまびえさん
効果モンスター
星3/水属性/天使族/攻0/守0
(1):自分メインフェイズ1開始時に、手札のこのカードを相手に見せて発動できる。
お互いのプレイヤーは300LP回復する。

合計10万枚を目途として、コナミフレンドリーショップで遊戯王OCG関連商品を購入すると1枚配布される「『あまびえさん』プレゼントキャンペーン」にて登場したカードで、
このカードの配布開始日も2021年2月20日である。*1


実は冒頭の内容は厳密には間違いで、KONAMIからの発表は「このカードの配布日発表、及び『疫病』に対する緊急リミットレギュレーションの適用」だった。

「アマビエ」についてはここでは詳しい説明は省くが「“疫病”退散」に関連のある妖怪である。


即ち「あまびえさん」の力による「疫病退散」によって「『疫病』を遊戯王OCG界から消滅させる」という、半ばネタ的な形でこのカードは禁止カードに指定されることになった。「むしろ知名度上がった」などと言ってはいけない。

ちなみに「ウイルス」「病気」関連のカードは「疫病」以外にもあるが(同じく疫病の名を持つ「疫病狼」や「疫病ウィルス ブラックダスト」もある)、
その中でこのカードのみが禁止カードに指定されたのは、それらのカード全てを消すと環境に影響を与えかねないと判断したらと思われる。
どれか1枚だけ、それもさして禁止にしたところで影響を与えない(悪く言えば元々採用率が低く弱いカード)ということで、このカードが選ばれたのだろうか。
単純に上記のカードと比べるとシンプルなカード名だったというのもあるだろう。

ちなみにこの「あまびえさん」だが、実は2021年1月16日に発売されたLIGHTNING OVERDRIVEと共に配布が開始される予定だったが、
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で同年1月4日に延期が発表され、約1ヶ月が経ってからの配布となった。
その際には1月1日の通常のリミットレギュレーションが適用されたばかりというのもあってなのか、緊急リミットレギュレーションなどの情報はなかった。
もしこの時点で配布されていた場合、「疫病」がどうなっていたのかは不明。


当然だが、日本での緊急リミットレギュレーションの制定は勿論のこと、カードパワー・大会運営等のゲームバランス的な理由以外でのカード規制は遊戯王OCG史上初の出来事である。

また、このカード自身が環境に悪影響を及ぼしているという訳ではない為、禁止期間は2021年3月31日までの期間限定となっており、
4月のリミットレギュレーション適用の前日には規制解除され、無制限に戻っている。



追記・修正は「強さ」以外の理由で自分自身が禁止カードに指定されながらお願いします。

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最終更新:2025年01月14日 20:49

*1 ちなみにこのカード発表時のTwitterのツイートでは「あまえびさん」と名前を間違えられている。

*2 ものすごく激しい筋肉痛に近い

*3 この項の追記修正者の場合。ちなみに「全身の激痛」と書いたが、これで軽い方である