ドッペルゲンガー

登録日:2018/10/28 Sun 21:24:00
更新日:2023/10/13 Fri 16:39:16
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ドッペルゲンガーとは、自分自身と全く同じ姿をした人物を見るという現象、もしくはその「自分自身と同じ姿をした人物」のことである。
また、「同一の人物が、第三者によって別々の場所で同時に目撃されること」を指す場合もある。
語源はドイツ語で「二重に歩く影」を指す。



超常現象としてのドッペルゲンガー

一般的に、ドッペルゲンガーはオカルトネタ、一種の超常現象として理解されることが多い。
特にホラー系の作品において、「自分自身と同じ姿をしたドッペルゲンガーによって追い詰められる」というシチュエーションで登場することが多い。
ドッペルゲンガーに殺される・ドッペルゲンガーに自分自身の存在自体を乗っ取られるというオチが一般的。

これがホラーの題材として強力なのは、何より「自分自身のアイデンティティ」という、自分の存在の根幹を揺さぶる存在であるからであろう。
自分と同じ顔の人間が、自分の代わりに自分の家族や友人と接していて、彼らもそちらが自分だと思っているとしたら……
そのような本能的な恐怖心に訴える存在なのだ。


しかし、それらフィクションに登場するドッペルゲンガーと、伝承として伝わるドッペルゲンガーの特徴は異なる点も多い。
まず、「本人の周囲に現れる」というのはフィクションでも伝承でも共通してドッペルゲンガーの特徴の一つとして挙げられるが、
伝承ではただ本人の周囲を徘徊しているだけで、本人はもちろん、誰に話しかけられても応答しないとされる。
ドッペルゲンガーがよく現れたという人の証言では、近所の人や友人などから「なんで声掛けたのに無視すんの!?」と身に覚えのない苦情を言われることが多々あり、
苦情を言ってきた相手に詳しくその時の話を聞くと、自分が遠出していた等の理由で会えるはずがないタイミングだった(=ドッペルゲンガーに話しかけて無視されていた)とか。

ちなみに、誰に話しかけられても応対しない以外は普通の人間と変わらないらしく、ドアの開け閉めなども普通にしていたそうだが、見ているといつの間にか忽然と消えているとか。
その目的に関しても、フィクションでは本物に成り代わろうと画策したり、直接本物に危害を加えようとしたりするのがお約束だが、
目撃談などを纏めると何も話さず、他人に危害を加えることもないなど、目的以前に自我を持っているような節は見られないというパターンがほとんど。

また、自分自身のドッペルゲンガーを見るとすぐに死ぬという設定も一般的である。
フィクションにおいては、上記のようにドッペルゲンガーに殺されるといった形で実現することが多い。

ただ、実際に自分のドッペルゲンガーに会ったとされる人物について調べてみると、ドッペルゲンガーに会った後数年から数十年ほどは生きていたというケースのほうが多い。
「会うとすぐ死ぬ」というのは、ドッペルゲンガーの怪奇性を強調するために作られた創作に過ぎないようである。


医学におけるドッペルゲンガー

実はドッペルゲンガーは単なるオカルトネタではなく、医学的にも説明がつく現象であるとされる。
医学的には「自己像幻視」と呼ばれる。

このような現象が起こる原因として、まず挙げられるのは脳の損傷・腫瘍である。
脳の側頭葉と頭頂葉の境界領域(側頭頭頂接合部)に腫瘍などができると、自分自身の幻覚を見る場合があることが知られている。
この領域は、自分自身の身体のイメージを司っているために、このような現象が起きるらしい。

もう一つは統合失調症に代表される精神疾患である。
このような疾患の症状として、幻覚や妄想が起こることは広く知られている。
その中には「自分自身の姿の幻覚」もあるのだ。

これらの説明からすると、「ドッペルゲンガーを見ると死ぬ」という言い伝えが生まれたこともある程度は頷ける。
脳に重大な損傷が起これば当然生命の危険があるし、精神疾患の患者はそのために事故を起こす危険がある。
ただし前述したように、実際にドッペルゲンガーを見てすぐに死んだという例はさほど多くはない。

このように、現在ではドッペルゲンガーは科学的に説明がつく現象だとされているが、
複数の第三者がドッペルゲンガーを目撃したケースなど、これらの説明だけでは解明できないケースがあるのも事実である。



ドッペルゲンガーを経験したとされる実在の人物

以下に挙げる逸話はドッペルゲンガーの実例として有名なものであるが、明確なソースが判然としないものも多いことに注意。


  • ピタゴラス
「ピタゴラスの定理」など数学者・哲学者として知られるが、秘密主義だったこともありオカルトめいた伝説も多い。
その一つとして、同じ日の全く同時刻に、イタリア半島のメタポンティオンとクロトン*1に同時に現れて、多くの人に目撃されたという。

しかしこの逸話は、ドッペルゲンガーというよりは「ピタゴラスは、このようなことができるほどの異能の人だった」ということを伝えるものだと思ったほうが自然だろう。


  • ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
ゲーテ自身が書き残しているとされる逸話である。
若い頃のある日、道で馬に乗った男とすれ違った。
その男は服装こそ違ったが、顔立ちはゲーテにそっくりだった。
その8年後、同じ道を逆向きに馬に乗って走っている時、不意に現在の自分が、あの日自分がすれ違った男と同じ服装をしていることに気が付いた。
そしてゲーテは、8年前に出会ったあの男が自分自身であったことに気が付いたのだった。


  • エカテリーナ二世
はっきりした記録がある(とされる)中ではわりと珍しい、「自分のドッペルゲンガーを見た直後に亡くなった」とされる人物。
ある晩、寝室で休んでいると、部屋に入ってきた召使が「あれ?さっき玉座の間に入っていきませんでしたっけ?」などと言い出した。
玉座の間に行ってみると、玉座に自分自身が座っていた。
この体験の後間もなく、彼女は崩御したとされる。
が、この話も明確なソースが不明である。


  • エイブラハム・リンカーン
「自分のドッペルゲンガーを見た有名人」として最も有名な例。
ただし、実際には「鏡の中に、真っ青な顔をした自分が映り込んでいるのを見た」という話であり、一般にイメージされるドッペルゲンガーとはやや違う。
また、これは最初の大統領選挙の前の日のことだったと言われ、死の直前ではない。

なお、リンカーンの逸話では「死の数日前に、自分自身の葬式の夢を見た」というのも有名だが、実際にリンカーンが語ったのは
ある大統領の葬儀に出る夢を見た」というものであり、必ずしも自分自身の葬儀だったわけでは無いようだ。


  • ギ・ド・モーパッサン
フランスの文豪だが、死の4年前に「もう一人の自分」の来訪を受けたと言われる。
晩年のモーパッサンの作品は、このもう一人の自分が教えてくれたものだとも言われる。
なお、晩年のモーパッサンは精神を患い、その結果精神病院で没したが、ドッペルゲンガーに会ったせいで精神を病んだのか、
それとも病んでいたからドッペルゲンガーに会ったのか……


  • エミリー・サジェ
19世紀のフランスの女性教師で、生涯に渡って第三者によってドッペルゲンガーを目撃され続けたという逸話で有名。
どこの学校に赴任してもドッペルゲンガーが出現するため、かなりの迷惑を被ったとされる。
なお、エミリーのドッペルゲンガーに触った生徒の話では、柔らかい布のような感触で手ごたえがなかったという。
ただし、信頼性のある史料は少なく、生没年もはっきりしていない。


日本史上でドッペルゲンガーを経験した人物として有名な例。
度々「もう一人の自分」と出会っていたといい、本人が証言を残している。

ただし、彼が精神を病んでいたのはまず間違いないとされており、これも精神疾患による症状の一つなのではないかとも言われる。


  • ウンベルト1世
イタリア王国の第2代国ピザの特注で有名なマルゲリータ王妃の旦那。
ドッペルゲンガーとは少し異なるが、モンツァを訪問中に立ち寄ったレストランの店主が自分によく似ていたので話をすると、
名前も生まれ故郷も誕生年月日も同じ、妻子の名も同じでこの店もウンベルト即位の日に開店したという。
国王は店主を翌日の競技会に招いたが、翌朝店主の訃報を聞き、同日に暗殺された、という言い伝えがある。



フィクションの中のドッペルゲンガー

上述したように、ホラーを中心とした多くの作品でドッペルゲンガーは扱われている。
ただし、最後には


のようなオチがつく場合が多く、純粋な意味での「ドッペルゲンガー」が登場していると見なせる作品は案外少ない。



  • 各種ゲーム作品
RPGなどでは、「主人公らと同じ姿をした敵キャラ」と戦うというイベントは定番として登場する。
その殆どは魔力などで主人公と同じ姿に化けているという設定で、ドッペルゲンガーというよりは偽物キャラと言ったほうが正しいか。


  • 女神転生シリーズ
種族「外道」の悪魔として登場。
直接攻撃をはね返す「物理反射」の特性を持ち、多くのプレイヤーにトラウマを植え付けた。
初期の頃のデザインは黒い人影だったが、「デビルサマナー」や「ストレンジジャーニー」では主人公と同じ服装で顔に影がかかっているデザインとなり、「もう一人の自分」感が強調されている。


  • 魔導物語・ぷよぷよシリーズ
各機種の魔導物語1-2-3の主にエピソード1に登場する。主人公アルル・ナジャが覚えていない魔法を使用し、倒すことで主人公もその魔法を覚えることができる。エピソード1の敵キャラが卒園試験の為に教師の魔法で作られたものだという設定がよくわかる敵キャラ。
初登場となるMSX2版魔導物語1-2-3で、本物の主人公と違って装甲魔導スーツを着けていないほか、文字数制限に引っかかったわけでもないのに「ドッペル」という名前になっている。留年するという意味の「ドッペる」とかけていたのかもしれない。
PC-9801版魔導物語1-2-3ではエピソード1だけでなく2にも登場。今度は装甲魔導スーツこそ着けているが、鏡に映ったように左右反転している。
一方で魔導物語ARSのエピソードSでは鏡の中が舞台なのに左右反転していない。
わくわくぷよぷよダンジョンでは魔力を吸い取ったことで相手の姿に化けると説明されている作品もあるが、ぷよぷよ~んなど同じ姿と名前を名乗る理由が全くされていない作品もある。

  • ウィリアム・ウィルソン
エドガー・アラン・ポーの代表作の一つ。
最初はただ同姓同名で顔が似ているだけだと思っていた相手が、実は自分の半身だったことに気が付くまでの恐怖を描いている。


  • 常識
星新一の短編小説。「精神病の一種としてのドッペルゲンガー」(上記したような精神疾患のために見る幻覚ではなく、ドッペルゲンガー自体は実在する)が描かれる。
ラストがなんとも皮肉である。


漫画・アニメでドッペルゲンガーというとまずこれを思い浮かべる人も多いかもしれない。
アニメ版では14話に放送された「郷子が2人!?ドッペルゲンガーの恐怖」に登場。
この作品では、ドッペルゲンガーは一種の「生霊」だと解釈されている。


上述のように「過去や未来からやってきた自分自身」というパターンや、ひみつ道具によって出現するパターンなど、「広義の」ドッペルゲンガーと呼べる存在は数多く登場している。
大山版アニメ1770話「二人のしずかちゃん」(アニオリ)では、「ひみつ道具によって一時的に生み出された、自分自身の確固たる人格を持つドッペルゲンガー」が登場。
最後はあっさりと消去されてしまうのだが、冷静に考えるとかなり怖い話である。


この作品世界では生命力を操ることで超常的な現象を起こすことができ、それを念能力と呼ぶ。
それが意図せず起こってしまう現象の一つがドッペルゲンガーであり、カストロはこれを意図的に起こして
分身と一緒に戦うという能力を編み出した。


「爆笑レッドカーペット」とのコラボ作品「もうひとりのオレ」など多数。


  • 「父の手」(世にも不思議な物語)
上述の「世にも奇妙な物語」の元ネタの一つである、50年代のアメリカの番組。
ホラーというよりは感動系のエピソード。
この話でもドッペルゲンガーは「生霊」という解釈がされている。


広義のアンデッド系に属する魔物娘としてドッペルゲンガーが設定されている。
男性の恋敗れた想い人の姿を取り、本物がどんな悪辣な人間だろうと男性にとっての理想の姿で逢瀬を重ねる。
その後偽りの姿で結ばれるか、変身を解いた本来の姿で男性に真に愛されるかは運命次第。

ずばり、ドッペルゲンガーというカードが存在。
自分の伏せカード1枚と相手の伏せカード2枚を破壊する悪くない効果持ち。
そして英語名はGreenkappa。緑のカッパである
さらに、ドッペル・ゲイナーという罠カードの英語名がDoppelganger、つまりドッペルゲンガーとなってしまっている。
こちらは相手のモンスター効果によるダメージを反射する。

なお、MTGにもドッペルゲンガーの名を持つカードが何枚かあるが、多相の戦士と言う、他のカードの能力を写し取る能力を持っている。
普通はそういうカードにするだろうになぜ遊戯王はこんなややこしいことに…

番外編

「スピン・ダブルアームだ――っ!!」
悪魔将軍の技に捕らえられ、絶体絶命のジェロニモ
「ダブルアームの体勢で体を回転させるなんて、なみたいていのパワーじゃ不可能だ! これは巨大超人サンシャインの力がはたらいているんだ!!」
(悪魔将軍のパワーを見せつけられて驚愕するロビンマスクブロッケンJr.ジェロニモ
「み…みんな! はやくジェロニモを助けるんだ!!」
(ジェロニモのもとへ向かおうとするとキン肉マン、ブロッケンJr)

おわかりいただけただろうか。
今まさに悪魔将軍の技をくらっているはずのジェロニモが、何故かほかの正義超人たちと一緒にその様子を観戦している。
でもまあ、ゆでだし…。
有名な作画ミスだったが現在は修正されている模様。


2018年4月15日に放送された回で、こたけ(まる子のおばあちゃん)が数秒間ほど同時に2人出現するという珍事が起きた。
もちろんただの作画ミスなのだが、「おばあちゃんのドッペルゲンガーが現れた!!」と騒がれた。


ドッペルゲンガーの出現は日常茶飯事。


2021年3月30日に放送された回で「ドッペルゲンガー相席」と題して、人気ロックバンドLUNA SEAのメンバー・真矢と元プロ野球選手の里崎智也が同じ服装、同じ場所(兵庫県・淡路島)でロケを行った。ただし、ロケを行った日は違う。
しかし、MCの千鳥からは「似てないやん!」とクレームが来た。だが、後に千鳥は「ドッペルゲンガー相席」に相応しい奇跡を目にすることとなる。
2023年10月10日に再び「ドッペルゲンガー相席」を放送、今度はピン芸人・ひょっこりはんと俳優の坂口涼太郎が同じ服装、同じ場所(兵庫県・香美町)でロケを行った。しかも、今回はロケを行った日が同じである。
またしても、MCの千鳥からは「似てないやん!」とクレームが来た。だが、後に千鳥は再び「ドッペルゲンガー相席」に相応しい奇跡を目にすることとなる。


追記・修正は自分のドッペルゲンガーに会ってからお願いします。

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最終更新:2023年10月13日 16:39

*1 東京~静岡くらいの距離