MSA-0120(MS)

登録日:2023/01/11 Wed 19:07:21
更新日:2025/01/30 Thu 22:52:07
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MSA-0120とは、ガンダムシリーズの世界観の一つ、宇宙世紀シリーズに登場するモビルスーツ(MS)である。




MSA-0120

【基本データ】

型式番号:MSA-0120(MSA-120)
別名:ドライグ(非公式。一部の開発スタッフによる)
開発:アナハイム・エレクトロニクス社
頭頂高:15.0m
本体重量:17.5t
全備重量:54.1t
出力:3,040kw(メガブースト使用時6,400kw)
推力:180,000kg(メガブースト使用時230,000kg)
搭乗者:ウィリアム・C・オーランド、ヴェロニカ・ヴァーノン、サイファー*1
  • 《武装》
ハイパーメガランチャー
ハイインパクトガン
ビームサーベル


【概要】

機動戦士ガンダムF90」関連企画にて設定が存在するMS。設定画と文字設定が公開された後、長い期間どの作品にも登場していなかった。

U.C.111年10月に行われた『次期主力モビルスーツ開発コンペ』においてサナリィのF90と争ったアナハイム社グラナダ工場ZEONIC事業部製のMSという設定。

2022年12月現在、正式名称は存在するかも含めて不明である。

ファンの間での通称(蔑称?)はフリーダイヤル。

型式番号は「機動戦士ガンダムF90 FastestFormula」以降は「MSA-0120」が用いられているものの、それ以前は「MSA-120」と表記ゆれを起こしていた。

かつてこの機体の型式番号は元々「機動戦士ガンダムF90」の設定において、当初は「ガンダムF90がU.C.120年のコンペティションの際にロールアウトした」設定だったためその際のAEの対抗機として型式番号120にしたと設定されていた。
しかしながら、U.C.111年にF90のロールアウトが繰り上がる設定変更に伴う型式番号の変更はなく、こちらも「MSA-111」辺りに直さなければならないはずが放置されて現在に至っている。
RGM-111 ハーディガンがこの機体からフィードバックを受けている設定を見る限り、おそらくは命名ルールの変更に吸収されたのだろう。


さて、MSA-0120といえば連邦系ともジオン系とも違うゼントランみたいな異星文明にでもいそうな、というかガンダムシリーズ全体で見ても明らかにトップクラスの異質な見た目で有名。*2

アナハイム社内でも半ば独立勢力とされるグラナダ支社のジオニック事業部*3が制作しているため、モノアイも含めて一応ジオンの誇り的な説明はつかないでもないが……それにしたって異質すぎである。

しかし中身はヘビーガンの強化発展型に過ぎないとのこと。
……すなわちこいつは、この見た目でハーディガンの兄弟ということになるが…?


【性能】

性能で言えばユニコーンガンダムΞガンダムにも匹敵する高性能MSであった。

しかし、次世代MSの新境地であるF90に比べてフリーダイヤルは従来のMSの延長線上の存在でしかなく、
  • 「15mには納まっているものの小型MSとしての完成度は高くなかった」
または
  • 「F90に比べて性能自体が劣る訳ではなかったが小型化とコストダウンの面で軍の要求に満たなかった」
とされる。

一応、最大出力と耐弾性はF90よりも優れていたらしいが、重量がヘビーガンのほぼ2倍に増え、ノーマル時の推力重量比が3.32と若干低下している*4

特に全備重量はF90の3倍以上と、小型なのは見た目だけだった。

見た目以外の特徴として疑似重力兵器*5と銘打たれた謎の兵器「ハイインパクトガン」、

瞬間的に出力を倍加して機動性を上げる「メガブースト」

着弾箇所の装甲を蒸発させてダメージを防ぐ「蒸発式アップリケアーマー」など、

他に類を見ない機能を持つものの、受け継がれた機体がかなり後になるまで出てこなかったあたり、こちらも何らかの問題があったか生産コストや維持費がやたらかかるなどの短所があった可能性が高い。


【コンペの顛末】

アナハイムがサナリィにシェアを奪われまいと行われたコンペであるが、結果として一次審査のデータ比較で微妙な評価しか得られず*6、二次審査の模擬戦ではF90に完敗*7し歴史の闇へと消えた。

そもそも本来はコンペを行う予定ではなかったらしく、アナハイムが政治的干渉を以て計画に参入した結果こうなったと言われている。
割り込んできてこのザマでは軍もいい顔をするまい。

総じて小型MSとしての完成度は相当に低かったものの、最大出力や火力は魅力的だったらしく、サナリィのFシリーズに同様の特性を盛り込むように要求したとされる。

ちなみにMSA-0120は複数機が存在していたらしく、小説版『機動戦士ガンダム シルエットフォーミュラ91』とF902号機が主役の漫画『機動戦士ガンダムF90 FastestFormula(F90FF)』ではアイリス・オーランドの父ウィリアム・C・オーランド大尉が実験中に事故死した機体がMSA-0120の1号機とされる(漫画版だとジェガンの実験機になっている)。

そんな訳でこのMSA-0120は、F90のやられ役として、文字設定が優先された機体だった。

……と思いきや、『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』ではブラックロー運送が回収しているデブリの中によく見るとこいつの残骸が浮いている。

ガンダムEXA』でも(仮想世界ではあるが)木星帝国を迎え撃つMSの中に混じっている。

『F90FF』でもコンペ中の様子が1コマだけ登場した他、その時にパイロットを務めていたヴェロニカ・ヴァーノン中尉が登場した。

後はハーディガンの先行試作機であるGカスタムにブースターが流用されているのが確認できる。


どちらにしても隠れキャラ的な登場に終始しているが、近年はU.C.100年代以降、それもF90にスポットライトが当たり出しているので、ひょっとしたら何かの拍子に登場する。

……かもしれない。

実際、「プラモ位は出して欲しい」という意見もちらほらある。もっともかなりマイナーな機体な上、あの異質な見た目なので金型流用が全く出来ないといった問題もあり、確率は相当低いが。



追記・修正はコンペでF90に勝ってからお願いします。


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……何故だ 何故……

どうして あれがあそこに……!




と……捉えられない!?こんな瞬発力……

MSがっ!?




無駄だ

……メガブーストからは逃げられない!





宇宙世紀115年、某宙域。歴史の影に隠された戦いにて。

MSA-0120は、長い時を経てそのヴェールを脱ぐこととなる。

『F90FF』第19話にて実験部隊ファステストフォーミュラに襲い掛かる武装集団*8のMSとしてまさかの登場。F90の子孫であるF70 キャノンガンダムに猛然と襲い掛かる。

今度ばかりはかませ犬に留まらず、メガブーストの超加速はキャノンガンダムの弾幕を物ともせず、逆に一瞬で懐に潜り込んでビームサーベルで串刺しにしてしまった。

「F90のかませ犬」として初登場してから実に31年後の出来事である。

設計思想としては、かつてアナハイムがMSA-099 リック・ディアスから第二世代MS、ひいてはアナハイム・ガンダムを生み出したように、小型モビルスーツの時代においてアナハイムがさらなる飛躍を求めて作られたMSであった。

結局、コンペティションの敗北によってMSA-0120は表向き闇へと葬られ、グラナダでRGM-111 ハーディガンへの技術転用の原型として用いられていた。


しかしながら、裏ではシルエット・フォーミュラ計画のために6機が増産され、うち4機はアナハイムのフォン・ブラウン支社と地球の支社に納入された。

そして残る2機*9はテロリストに強奪されている。いかにもアナハイムが裏で糸を引いていそうなどこかで聞いたような話だが、実際にMSA-0120は流出し、アンノウンとして戦場で目撃されているのだ。

また、試験中の事故で失われたはずの1号機がツインアイ・タイプに改造されたことも目撃されている。


【隠された性能】

F90に匹敵する超高性能機であることは前述の通りだが、F90FFおよびその関連企画である「月刊モビルマシーン」にてさらなる設定が明かされた。

MSA-0120は15m級MSに第五世代MS同等の性能を落とし込むことを目指したMSであり、設計の源流は第五世代MSに遡る。
曲線を多用した異質な外見もRX-104FF ペーネロペーの設計を小型MSに落とし込む過程で空力性能と避弾経始を重視したがためである。

MSA-0120はF90とは異なり、MS単体であらゆる戦場に対応する設計コンセプトであった。つまり、F90ではミッションパックに搭載するような機構も本体に実装していたために、本体重量が17.5tと重くなっていたのである。

また、全備重量54.1tのうち30tは推進剤。これはF90 Aタイプ同様の設計である。長距離侵攻用に30tまで積めるが、通常戦闘では4t積めば十分である*10。すなわち通常戦闘時の重量は30t以下であり、F90の1.5倍程度に収まるのだ。

ハイ・インパクトガン

詳細不明だったハイ・インパクトガンも「ミノフスキー・リパルサー・フィールドの反発力で弾体を加速する擬似重力レールガン」とされた。

……説明だけ聞くとなんのこっちゃだが、後になってミノフスキー・ドライブと同じ原理であることが発覚。

要はミノフスキー・ドライブの加速を機体ではなく弾体に用いた代物。F90FF作中では、片手で扱える手持ち武器にもかかわらず、小惑星を粉々に粉砕してみせるほどの威力を見せた。

とはいえ、ミノフスキー・ドライブがMSに搭載されていない時代の代物。コンセプトモデルであるMSA-0120以外への実装は電力・ミノフスキー制御の両面から困難で、他の機体への採用は確認されていない。……2022年現在では。

メガブースト

エネルギーCAPを用いて融合炉の出力そのものを増大させる機構。劇中では弾幕をかいくぐりF70を瞬殺する、追撃戦用のF90 Tタイプですら追いつけない速度で逃走するなどの活躍が見られる。ある意味UC版トランザム

この機能はハーディガンの先行生産型であるGカスタムにも採用されているが、劇中では推進剤の不足から不発となっている。

蒸発式アップリケ・アーマー

新素材を用いた複合材を用いることで、着弾箇所の装甲を蒸発させてダメージを防ぐ耐ビーム装甲。

劇中ではF90 Oタイプのビームライフルを肩部装甲で真っ向から受け切り、装甲に歪みは生じたものの内部にダメージを受けている描写はなかった。とはいえ、後のF90 Vタイプとの戦闘を見る限り、V.S.B.R.を受け切るだけの性能はないようだ。

また、レールキャノン等の十分な威力を持つ実体弾による攻撃は有効とのこと。

ミノフスキー・フライト

UC104年にペーネロペーで実用化されたMSサイズのミノフスキー・フライトも搭載している。

ペーネロペーが26mの大きさを要する理由はミノフスキー・フライトが小型化出来なかったためであるが、UC111年時点で15mのMSA-0120に搭載するという超小型化を成し遂げている。


【名称について】

さて、MSA−0120の名称について、初登場時からF90FFの終盤に至るまで、ペットネーム*11は明かされてこなかった。
これについて名称があるのか、あるいは型番だけでペットネームが存在しないのかについては謎であったが、F90FFの終盤で語られることとなった。

結論から言うと、MSA−0120に 公式の ペットネームは存在しなかった。しかしながら、MSA−0120の開発部内で非公式的に、というよりも開発主任が勝手に呼んでいた名前があった。
その名はドライグ型の至上である「ガンダム」を超越するを意味する名称である。

前述の通り、あくまでドライグは(創通・サンライズ的には公式だが)アナハイム社的には非公式の名称であり、MSA−0120を「ドライグ」と呼んだのは作中UC116年時点では開発主任とテストパイロットのヴェロニカの2人だけである。
しかしながら、月刊モビルマシーンによると、UC147年にはAE社の外部にもドライグの名称は知られているようだ。


【総評・余談】

結局のところ、F90とのコンペティションで不採用となったことは事実である。コンペにはアナハイム/サナリィの枠すら超えて多くの政治的な思惑が働いたことは明らかであるが、F90とMSA-0120には決定的な違いがあった。

MSA-0120は第五世代MSの到達点で強力な小型MSではあったが、何でもかんでも詰め込もうとするアナハイムの設計思想が安価なモビルスーツを求める連邦軍にマッチせず、本体は安価でオプションによって汎用性を確保するF90に見劣りしたことに何ら不思議はない。

サナリィの設計についても当然革新的な部分は非常に多く、アナハイムがその技術を欲したのはシルエットフォーミュラ計画から明らかだろう。

F90に勝てるか、主力機に採用されるかはともかく、コンペで惨敗したことが疑問に感じられるほどの暴れっぷりだったが、劇中でも「惨敗の原因はパイロットの腕の差では?」という疑惑が挙げられていた。
乗っていたヴェロニカ中尉もそのことで気を病んでいるようで、しかもシルエットフォーミュラ計画の上司(リベラ・アマルガム大尉)から「MSの性能を引き出しきれない愚図」等と人格否定レベルのパワハラを日常的に受けている。

シークレットフォーミュラ計画……否、シークレットフォーミュラ計画がネオガンダムに至ったこと、及びハーディガンが量産された事実から、MSA-0120の技術も少なくともある程度は宇宙世紀の未来へ継承されているだろうが……

本機がAEのジオニック事業部の開発である事を考えると、モノアイカメラや流線形のボディ、様々な機能を詰め込み大型化、等の特徴は確かにジオンの遺伝子を受け継いでいる。
だとすれば「『ガンダム』を超える」という願いにも特別な意味が感じられる、ような気がする。
…そんな機体のうち1機がツインアイカメラとブレードアンテナ装備に改造されたというのはなんという皮肉だろうか。

そのツインアイ式の1機が後の宇宙戦国時代に「古い武器」として登場した八手ビームサーベルとビームスマートガンを装備しており、もしかしたらこの機体が本来の持ち主だったのかも知れない。
それらの武器が新たな時代の白いMSの手に渡ったという事は、
「究極の人型に敗れた龍の牙は、超える事ができなかった龍殺しの英雄の末裔の手に渡り剣となった」
などという出来過ぎた物語になってしまう…

……MSA-0120の明日はどっちだ!

F90FFでの衝撃的な活躍から一躍人気MSとなったMSA-0120。『F90 A to Z project』に合わせてRE/100あたりでガンプラ化が望まれるところである。



追記・修正はメガブーストから逃げ切った人にお願いします。

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最終更新:2025年01月30日 22:52

*1 自称 ユーリー・ミノフスキー

*2 ちなみにデザイナーは藤田一巳氏

*3 旧ジオニック社が主体。GP-02やリック・ディアスの設計開発や新生ネオ・ジオンのMS製造を行っていた。

*4 メガブースト時は4.25でカタログスペックだけ見るとF90と同等になる

*5 宇宙世紀の技術水準上、流石にブラックホール兵器ないしそれに類する兵器ではないと考えられる。それこそホワイトドールのように、MSにマイクロブラックホール縮退炉を搭載できるレベルの技術が必要だろう。

*6 近年のムック本等では「一次審査は一長一短で大きな優劣は付かなかった」といった旨が書かれているが、当時の文章では「一次審査でF90の方が高ポイントを獲得した」となっていたため、設定がイマイチ定まっていない

*7 こちらは一次審査と違って、当時から現在までフリーダイヤルの敗北であると一貫している

*8 ネモやマラサイハイザック、ズサ、バウ、果てはクィン・マンサを運用していた。なお、クィン・マンサについては協力者の存在で入手したことが示唆されているが・・・。

*9 七号機と八号機

*10 F90FFによるとメガブーストの機動にも十分な推進剤が必要だと思われる描写があるため、そのために多量の推進剤が必要な可能性もある。

*11 品名。型番ではない、機体の固有名称としての名前。