Quantum Break

登録日:2024/04/23 Tue 23:39:00
更新日:2025/07/08 Tue 13:50:17
所要時間:約 5 分で読めます



Quantum Break』とは、2016年にレメディーエンターテイメントが開発したTPSアクションゲーム及びテレビドラマである。
対応ハードはXboxとWindows 10。


▷目次


【概要】

時間を操る三人称アクションゲームと、ゲームと連動する 実写の 連続テレビドラマが融合した メディアミックス作品
本来は他社の作品のように「メディアミックス展開」するはずだったが、紆余曲折を経てレメディーの過去作品である『MAX PAYNE』や『Alan Wake』を踏襲した「 ゲームと実写ドラマがニコイチされた作品 」となった。

主人公ジャック・ジョイスを操作し、ピストル、ショットガン、マシンガン、ライフル等の各種銃火器と時を操る超常的な能力 タイムパワー を駆使して敵であるモナークソリューションズのセキュリティ部隊と戦う爽快な アクションパート 、ポール・セリーンを操作しストーリーが分岐する選択を行う ジャンクションパート 、そしてモナークソリューションズ側の視点をポールとモナークのエリート警備員リアム・バークの視点で描いた 実写ドラマパート で構成されている、ストーリー主導型の作品。
ジャンクションパートでの選択により ドラマの内容も変化 する。
また、作品の都合上、登場キャラクター達は 実在の俳優をモデルにしており 、ドラマパートでもゲームキャラクターのモデル自身がそのキャラクターを演じる。


【あらすじ】

2016年10月9日、主人公 ジャック・ジョイス は親友の ポール・セリーン によってマサチューセッツ州リバーポート大学へ呼び出され、そこで研究開発されていた タイムマシン の実験を秘密裏に手伝うことになる。
しかしその最中に突然、タイムトラベルの危険性を訴えていたジャックの兄 ウィリアム が銃を手に乱入し発砲。
その直後に誤作動を起こしたタイムマシンは時間を司る クロノン粒子 が逆流し、タイムマシン内にいたポールと傍にいたジャックはクロノン粒子から放射されるエネルギーを大量に被曝してしまい、意図せず時間を操る能力 タイムパワー を会得するのだった。
直後、追い討ちをかけるようにリバーポートの一帯を支配する大企業モナークソリューションズのセキュリティ部隊に襲撃され、混乱の最中、 タイムマシンから出られなくなったポールは仕方なく(何時の時代に繋がっているかはわからないが)未来へ逃げ出し 、ジャックは兄と共に地下へと逃げ込んだ。
尚も立ちはだかり 容赦なく発砲してくる モナークの警備員達に対し、本能的にタイムパワーを発現させて何とか大学からの脱出を目指すジャックの前に現れたのは、2021年に「時間の終わり」を目撃し、冷徹な人間になってしまった モナークソリューションズの社長モナークアクチュアル であった。

「時間の終わり」を阻止しようと 運命に抗う ジャックと、未来を見たが故に 諦観 に支配され消極的な対応を推し進めるモナークアクチュアルの対立の行方はいかに……。


【登場人物】

メインキャラクター

演:ショーン・アシュモア

ゲームパートの主人公である白人男性。
元悪ガキの チンピラ で、職業は不明。タイで銃火器の扱いをマスターしたため戦闘力は高い。
幼馴染みのポールに呼び出され久しぶりに再会したと思ったら 非合法な タイムマシンの実験に手伝わされた挙げ句、兄に銃を向けられたり、モナークソリューションズに追い回されたり、未来を見て変わり果てた親友と殺し合う羽目になったり、と数奇な運命を辿る。

別の宇宙であるレメディー・コネクテッド・ユニバース関連作品でティム・ブレーカー(time breakerのもじり)として再登場を果たすが、「 失われた時間 」や「 赤毛の女 」、「 多面体 」、「 自分の別バージョン 」を「現実のように感じられる夢」として見たと語っており、シフターとして異なる宇宙に存在する自分であるジャックと知覚を共有していることが示唆されている。
詳しくは個別項目及び[クロノン破壊波動関数生命体/シフター]を参照。
なお、ジョイスというファミリーネームは「選択(チョイス)」の言葉あそびである。


演:エイダン・ギレン

ジャンクションパートの操作キャラにしてドラマパートの主役の一人。
ジャックの幼馴染みの親友だったが、意図せず未来にタイムトラベルしてそこである光景を見てしまい……
ゲームパートでは要所要所で彼を動かすことになり、それによりストーリーの途中ルートが変化する。
詳細は個別項目を参照。


  • ウィリアム・“ウィル”・ジョイス
演:ドミニク・モナハン

ジャックの兄。タイムマシンの開発計画「プロジェクトプロムナード」の中心人物であり、クロノン研究の第一人者。
あらすじにある通り、タイムマシンの実験をしていたジャックとポールを銃を手に妨害しにきた。
過去のいざこざからジャックからは「頭いいけど変な奴(意訳)」扱いされている。
一方で彼は彼なりに弟を思ってたり、自分がやったことのツケを償おうとしてはいるのだが、割とうまく行ってない。色々めんどくさい兄貴である。

彼が開発したクロノンフィールドを安定させる装置「クロノンフィールドレギュレーター」が「時間の終わり」を阻止する鍵となる。


演:コートニー・ホープ

モナークの警備員の一人である赤毛の女
8歳の時に訳あって「時間の終わり」を知り、それを阻止するために数々の裏工作を行いジャックやウィリアムをサポートする。
RCU関連作品にもベスの同位体と思われる赤毛の女ジェシー・フェイデンが登場する。
詳細は個別項目を参照。


演:パトリック・ホイジンガー

ドラマパートの主人公。モナークの「厄介事揉み消し人」。
モナークに忠誠を誓っていたがジャックを逃がすベスを問い詰め会話していたところをベスやジャックの仲間と誤認され、裏切り者として命を狙われることになる。
ジャンクションパートの選択次第でジャックの前に立ちはだかる。
詳細は個別項目を参照。


演:ランス・レディック

モナークソリューションズのCEOにして広報担当。
ポールの側近だが不審な行動が目立つ。
詳細は個別項目や[クロノン破壊波動関数生命体/シフター]を参照。



サブキャラクター

  • エイミー・フェラーロ
演:アメリア・ローズ

リバーポートの土地を次々と買収していくモナークソリューションズに抗議運動を起こした女子大生。
ジャンクションパートの選択により序盤から終盤まで味方になってくれたり、序盤でモナークソリューションズに口封じに殺されたりする。


  • ニック・マスターズ
演:ショーン・ダリー

ジャックを大学まで送ったタクシードライバー
エイミーが序盤で死ぬ場合は代わりにジャックの仲間になる。
RCU関連作品にも同位体と思われるディラン・フェイデンが登場する。



個別項目を参照。


その他の人物

  • エミリー・バーク
演者:ブルック・ネヴィン

リアムの妻。看護師。
夫との子供を妊娠している。
実写ドラマパートにのみ登場し、ジャンクションパートでの選択に関係なく生存する。


  • グレッグ・ローレンス
「ラッキー・ジョー」という会社のトラックドライバー。
モブキャラ同然のキャラクターだが何故かフルネームがある。


  • ボビー・ラッドフォード
「リバーポートラジオショー」の司会者。
モナークソリューションズに批判的。


  • ベリンダ・ウー
演者:リベルテ・チャン

モナークソリューションズがリバーポート大学を襲撃した事件を報道したニュースキャスター。
エンドクレジットでは ベリンダ・ウッズ と表記されている。


  • ラックリー市長
演者:ジョン・アトウッド

マサチューセッツ州リバーポートの市長。
実写ドラマパートにのみ登場し、ジャンクションパートでの選択によっては登場しない。


  • ポール・“ザ・パンチ”・パーマー
2010年当時、リバーポート工場地帯の建設現場に従事していた作業員。
2016年からタイムスリップしてきたジャックに仕事場のブレーカーを落とされ、溜まりに溜まっていたストレスが爆発しその場で辞めた。
その後、政界に参加し2016年にはリバーポートの市長選に立候補していた。


声:マシュー・ポレッタ
演者:イルカ・ヴィリ

ベストセラー作家。
作中作『リターン』で宿敵ミスター・スクラッチと対決したり、リバーポート大学の黒板一面に『CONTROL』と『Alan Wake Ⅱ』のネタバレや伏線をびっしり書き込んだり、アラン・ウェイクの著書『サドンストップ』のサイン入りをリアムの妻エミリーが所持していたり、モナークの社員が勤務中に『Alan Wake』を遊んでいたりとやたら出番が多い。
なお『Alan Wake Ⅱ』の「最後の草稿」のエンディングにて 「数多の世界の主」 となったため、 本作の出来事は全てアランの筋書きという可能性がある。
別に本筋とは関係無いっちゃないが、有るっちゃある。ややこしい人。


声:マシュー・ポレッタ
演者:イルカ・ヴィリ

アランの邪悪なドッペルゲンガーにして超自然的な殺人鬼。アランの宿敵。
血塗れのナイフを手にしていた。
詳細は当該項目を参照。


  • アレックス・ケイシー
演:サム・レイク
声:ジェームズ・マカフリー

作中作『リターン』に登場するFBI捜査官。
『Alan Wake』にも声のみ登場した『MAX PAYNE』の主人公マックス・ペインのセルフオマージュキャラ。
『Alan Wake』では声がマックスと同じくジェームズ・マカフリーが演じていたが、本作では 外見もマックスと同じ ことが判明した。


演者:マラ・マルミヴァーラ

作中作『リターン』に登場するケイシーと共に失踪した作家の謎に迫るFBI捜査官。
『Alan Wake Ⅱ』にて主人公の一人として再登場するが、人種が変更された。
しかし、ある人物の娘という設定のための人種変更であるため 意味のあるキャスト変更 となっている。


【用語・アイテムなど】

  • クロノン粒子
別名:マイヤー=ジョイス粒子。
空間を一定の濃度で満たすことで時間の流れを一定に保つ役割を果たす粒子。

  • クロノンエネルギー
クロノン粒子による放射線
常人は大量に浴びると即死する。

  • クロノンフィールド
別名:マイヤー=ジョイスフィールド
クロノン粒子に満たされたフィールド。
少なくとも地球上の全域はクロノンフィールドである。

  • タイムパワー
クロノン活性により会得する時間に関する超自然的な能力。時間経過によって能力は強化されていき、使える能力の数も増えていく。
詳細は下記[クロノン破壊波動関数生命体/シフター]を参照。

  • タイムマシン
時間さえ歪めるブラックホールとクロノン粒子の性質を利用したタイムマシン。
巨大な回廊の形状で回廊を時計回りに歩くと未来へ、反時計回りに歩くと過去へ行くことができる。

  • タイムパラドックス
タイムスリップにより生じる矛盾や過去改編。
本作には存在しない概念で、プレイヤーの選択で展開に変化は生じるものの過去改編は一切出来ないようになっている。
また別の宇宙であるレメディーコネクテッドユニバース(RCU)関連作品の『Alan Wake』や『CONTROL』でも全てはアランの原稿通りに進行していき、死ぬはずの人間を救うことはできないなどかなり無情な世界観である。

  • 無時間状態
通称:ひずみ
タイムマシンの不具合によりクロノンフィールドが損傷した結果生じた時間の断裂。
これが起きている間は時間が停止する。
この状態で活動できるのは後述のクロノン活性した人間やシフター、クロノンハーネスを身に付けた人間など限られる。

  • 時間の終わり
ポールが見たとされる無時間状態が永続する世界。
後述のシフターが支配するとされる。

  • クロノン活性
クロノン放射線を大量被曝した結果、限定的な時間操作能力「タイムパワー」を獲得した人間。
自らクロノンエネルギーを生成する生きたクロノン粒子の塊と化している。
超能力者であると同時にクロノン放射線被爆による病人「クロノンシンドローム」罹患者でもある。

  • クロノンシンドローム
時間経過により会得する未来視 タイム分岐 の能力が発現した結果、分岐する全ての宇宙の自分と感覚を共有し 生体に起こり得るあらゆる可能性を同時に体験する という筆舌に尽くしがたい苦痛を味わうことになる。
この苦痛に苦しむ症状をクロノンシンドロームと呼ぶ。

クロノンアクティブのクロノンシンドロームが最終段階に移行した成れの果て。
量子重ね合わせ状態で存在し、更に全身が常人は近付くだけで死ぬレベルの歪んだ空間に包まれている。
多元宇宙に存在する異なるバージョンの同一人物が次々と置換されていくため、周囲からはテクスチャーがバグって挙動がおかしいキャラに見える。
強力なタイムパワーを持っているのに加え、致命的なダメージに対する耐久力が非常に高い*1
無時間状態にしか存在できず、安定したクロノンフィールドにいると最悪の場合消滅する。
クロノンが含まれた目薬や吸入器等で一時的に症状を抑え常人のように振る舞うことが可能。
前述のクロノンシンドロームによる苦痛のせいで理性は消し飛んでおり、全てのものに敵対的。
時間の終わりを迎えた世界はこのシフターが支配するとされている。

  • クロノンハーネス
身に付けると無時間状態でも活動できるようになるハーネス。
最新型の民間モデルは非常にコンパクトだが、モナーク隊員が身に付ける戦闘用のコンバットギアと呼ばれるクロノンハーネスは少し大型で背中に背負う様な形となる。

  • クロノンハーベスター
名前の通り周囲のクロノン粒子を収穫し貯蔵する機械。ライフボートプロトコルのために開発された。

  • クロノンダンプナー
クロノン粒子を収集する機械。
広範囲のクロノン粒子を枯渇させるため、クロノン活性した人間やシフターも範囲内ではタイムパワーを使えなくなる。
耐久性も非常に高く、停止させるには電源をOFFにするしかない。

クロノンエネルギーを増幅し、クロノンフィールドを操る正十二面体の装置。
作中における重要アイテム


【登場する敵】

各項目参照。


【余談】

「彼は知らなかったのだ。我が家たる湖の向こうに広がる常闇の海を。その荒ぶる(wilder)波とその静けさ(serene)を。私はその港(port)を訪れた」

これは『Alan Wake』冒頭でトーマス・ゼインが詠みあげた詩である。
ポール・ セリーン とベス・ ワイルダー 、そして 港(リバーポート)を訪れた、何も知らなかった男 ジャック。
彼らの運命を操っていたのは、アラン・ウェイクではなく闇の底にいてなお創作意欲を失わずにいる映画監督兼詩人なのかもしれない。


追記、修正は時間の終わりを阻止してからお願いします。

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最終更新:2025年07月08日 13:50

*1 例えば銃で撃ち殺しても死ぬのは重ね合わせになった一人だけ。理論上は致命的なダメージを与え続けていれば重なっている同一人物は減っていくためいずれは殺せるが不可能に近い