フェリー

登録日:2025/09/23 Tue 23:35:36
更新日:2025/10/10 Fri 06:37:25
乗船時間:約 9 分です




フェリーとは、定期運航で川や海を渡り、人や荷物(とりわけ自動車)を運ぶ船の事である。


概要

「人間のみを乗せるもの」や「人間に加え車や鉄道車両なども乗せるもの」があるが、特に日本においては人間と車両を乗せる「カーフェリー」の事を指す事が多い。

飛行機や鉄道、高速道路と比べると速度面では劣る。
だが、「車両ごと海を渡れる」という唯一無二の特性から、地域や区間によっては未だに交通や物流の要であり続けている。
飛行機に10tや20tのトラックや貨車なんて大量に積むのは非現実的だからね。
また、フェリー以外の交通機関も発達している日本においては、事実上の客船としてのポジションにもなっている。

海路を介さないと行けない離島半島部など陸路では遠回りになる2地点間の移動では無くてはならない存在である。無数の島々から成る日本にはこれらに当たる地域が大量に存在し、今もフェリーは大活躍している。
特に
  • 本州と自動車道路では接続されていない北海道
  • 架橋が限定的で陸上ルートと比べても大して遠回りにならない瀬戸内海
  • 離島が多い上に半島も多く海路が近道になりがちな九州~南西諸島
は航路が多い。


船舶としてのフェリー

カーフェリーは、
  • 旅客の快適性を追求した「客船」
  • 車両や荷物の積み下ろしの機能性を追求した「貨物船」
の2つの側面を要求されるため、民間向けの船では建造費がかなり高価な部類。
「荷物を積まなければ長距離バスにもそのまま使える20tトラックとか作れない?あ、もちろん揺れが少なくて快適で、エアコン完備していて、トイレも備えていて、人数分のスーツケースも積み込めるやつでね。行き先表示のモニターと次止まりますのボタンも忘れないで。もちろんトラックとして使う際の機能も忘れないでよね?荷物の積み下ろしが楽なやつで、フォークリフトでも積めるように。あと後ろにリフトもあるといいな」のような無茶振りだといえばいいのか。
車両の積み下ろしを容易にするため、現代ではRO-RO船(ローロー船。車両が自走して乗下船できるランプを備えた船)が基本となっている。

動力は低速ディーゼルエンジンが主流だが、一部ではハイブリッド船や、ガスタービンエンジンを用いる船もある。
飛行機や高速列車と比べると低速なように思えるが、短~中距離フェリーでも10~18ノット(18.5km/h~約33.3km/h)、長距離フェリーでは30ノット(約56km/h)と、一般道の車並の速度を出している。そこ!つまり船外に出れば手軽に○っ○○の感触を楽しめるとか考えてたな!
しかも列車やバスと違って目的地到着まで止まることが基本的にないため、所要時間的にも決してバカにしたものではない。


船内の設備

客室(客席)

乗客を乗せる場所。
バスや飛行機のような座席から、下手なリゾートホテル並の設備を備えたスイートルームまで様々なタイプが有る。

  • 普通席
「フェリーの船室」と言ったら真っ先にイメージするであろう大部屋。カーペット敷エリアと座席エリアがあり、座席は進行方向を向いたり机を挟んで向かい合わせになっていたりするソファが並べられている。基本的に自由席。
短距離フェリーで一般的な形式で、船会社によっては下記の二等船室共々「ツーリストクラス」と呼ぶこともある。
安価に利用したい場合に加え、グループ旅行にも最適。

  • 二等船室
普通席のカーペット敷部分を切り出した部屋。こちらは長距離フェリーで一般的な形式で、大部屋1つだけのこともあれば複数の部屋があることも。
基本的には部屋のみ指定され、それ以外は自由席だが、区画分けされた指定席になっている場合もある。

  • 特別席
新幹線高速バスなどのようなリクライニングシートを採用した座席。短距離フェリーで普通席の1ランク上の席として設定されることが多く、多くは座席指定制。
短距離便だけでなく、中長距離便でも前方の景色を楽しめる席として設定されることもある。

  • 寝台
基本的に二等船室より1ランク上に設定されているが、一部の長距離フェリーでは二等船室の代わりにこちらが最低ランクのことがある。
カーテンで仕切ることができ、プライバシーにも配慮されているのが基本。
基本的に2段式になっておりかなり落ち着いて寝ることができる。

  • 一人用個室
一部の長距離フェリーで見られることのある一人用個室。
机とベッド、テレビを備えるだけのシンプルなものであるが、長旅には適している。

  • ドライバーズルーム
一人用個室の一種。
長距離ドライバー向けの個室タイプの客室。
トラックドライバーにとってはフェリーは貴重な長時間休憩の場であるが、そんな中で「周囲に邪魔されずゆっくり休憩したい」という需要に応えるためのものである。
お盆や年末年始のような旅客繁忙期には一般客にも開放されることも。
また、船によっては部屋ではなく乗客が立ち入れる区画それ自体を契約ドライバー用とそれ以外に分けている場合もある。

  • 個室
2~3人用の個室。多くはミドルクラスの位置付け。
古い船だと二段ベッドと机、洗面所がある程度だが、最近就航した船の場合陸上のビジネスホテル並の設備を備えることも珍しくない。

  • スイートルーム
一部の船に設定されている最高級客室。
使用料は高額だが、それに見合う充実した設備を有する。


レストラン

短・中距離フェリーの場合、自動販売機で全てを賄ういわゆる「オートレストラン」「オートパーラー」のこともあるが、長距離フェリーは本格的なレストランを備え、発着地の名産品を使ったメニューを楽しめる便もある。
供食形態はカフェテリア型やビュッフェスタイル*1が主流。
またレストランが稼働していない時間帯でも、カフェが開いているということもある。

売店

飲料や菓子類、おみやげなどを扱う。陸上の小売店と比べると割高なことも多いが詮無い……もとい船内価格、ということで。ここでしか手に入らないグッズもあるかもしれない。
短距離フェリーでは普通席の一角にカウンターが設けられている事が多い。

ゲームコーナー

フェリーのゲームコーナーはスペースの都合もあって、クレーンゲームとスロットマシーン、数台のビデオゲームが置かれているというこじんまりとしたものが多い。
ただ、一部の船だとファミコンボックス*2のような歴史的なマシンが現役で稼働していることも……!?

ビデオシアター

DVDビデオの上映を行う小規模な映画館。超長距離便でないとお目にかかるのは難しいかもしれない。
映画の上映をしていないときは貸し切りにできる場合も。
また専用の施設が無くても個室や寝台に備えられているテレビモニターや、
船内ネットワークに接続したスマホやタブレットに対して映画や情報番組等の配信サービスが行われている船もある。

車両甲板

車両を積み込む区画。基本的にギッチギチに並べられる。
ガールズ&パンツァー 劇場版のエンディングでは航行中に戦車を整備するシーンがあるが、実際には法令の関係で航行中に乗客は車両甲板への立ち入りは禁じられている。
客室内で使用する予定があるものや車内に放置すると危険なものなどの忘れ物には気を付けよう。


フェリーでの旅の魅力

まず何と言っても「休みながら移動できる」ことであろう。仕事にしろ旅行にしろ長距離はしんどい。それを和らげるばかりか、ワクワクさせてもくれるのだからありがたいことこの上ない。
それと愛車と一緒に乗れるので、旅先でもいつもの相棒と気ままにドライブを楽しめるのは、他の交通機関では真似できない魅力といえる。
また「船旅」という、日常から特に離れた移動手段であること自体も。

早く行きたいなら飛行機、手軽に乗りたいなら新幹線、安さを重視するなら高速バスと、フェリーより有利な移動手段は現代ではいくらでも溢れている。
むしろ「発着場所が限られる」「特に長距離や車両航送の場合はほぼ予約必須」「時間がかかる」と、乗り物としてだけ見ればマイナス面の方が目立っているかもしれない。
だが、航行中でも自由に歩き回れるほど広い船内は他の交通機関では真似することは難しいし、そこにホテル並みの設備まで詰め込むとなればなおさら。
航行中もシートベルトで身体を固定しておく必要は無いので開放的だ。船によっては本格的な食事もとれるし、大浴場だって完備。長い船旅も見方を変えれば「自由な時間を楽しめる」とも言える。
から昇る朝日や水平線の向こうに沈む夕日、夜間の陸の灯り、イルカアザラシなど普段は水族館でしか見れないような動物だって野生の姿を見られるかもしれない。
携帯(スマホ)の電波なんてギリギリ届くかどうかというところ。だが、それだってたまにはネットから離れる時間(デジタルデトックス)になると受け取ることだってできる。カメラや音楽は電波が届かなくても使えるしね。最近だとスターリンク等の衛星通信を使って洋上でもインターネットに接続できる航路も出始めているが。
しかも値段はもちろん、場合によってはドレスコード(服装の規定)まである豪華客船やクルーズ船と比べると、価格も敷居もめちゃくちゃに低い。
「自由」な「非日常」をそこそこ手軽に味わえる乗り物はフェリーくらいであろう。
いつもは新幹線や飛行機を利用している方も、たまには船旅をしてみてはいかがだろうか。

そしてもう一つ重要なのは、日本にはそもそも船でしか行けない場所が思ったよりもたくさんあること。
規模の大きい離島には(淡路島のような本土との橋がある場合を除き)まず間違いなくフェリーの便が運航されているはず。
空港がある島であっても、周囲の島々にはそこから船便で、ということもよくある。あるいは定期便が周辺の拠点都市との間にしか無い場合だって。
そのような場所に赴き、定番観光地とはまた違った空気を楽しむのもまた乙なものではないか。


利用の流れ

1)予約
かつては旅行代理店経由や、港や都心部の営業所に出向く、或いは直接電話で予約をするという方法だったが、今はIT時代、インターネットから直接予約することもできる。
支払いはクレジットカードはもちろん、銀行振込やコンビニ振込などでも。
なお車やバイクも乗せる場合、車両情報も登録する必要もあるので車検証も手元に。
離島航路であれば、観光振興の一環で船代込みの旅行プランもあったりするので探してみよう。

2)港へのアクセス
人間だけでの乗船の場合、最寄り駅からフェリーの時刻に合わせた連絡バスが発着していることが多い。
無かったり乗り遅れたらタクシーを呼ぼう。
逆に敢えて早めに最寄り駅に着き、乗船前の買い物をしておくのもいいだろう。
車・バイクの場合は、港によっては高速道路のICが近くにあることも。

3)受付
乗船前の集合時間は、飛行機と同じく閑散期で出港30分前まで・夏休みなどの繁忙期では90分前までと考えておいたほうがいい。
窓口や受付端末で利用者情報を登録し、発券する。
人間だけの場合は奥の待合室で過ごし、車両ありの場合は指定された駐車スペースまで移動させよう。

4)乗船
人間の場合はタラップやボーディングブリッジを使って直接乗船。
車両は案内されるとおりに船内に自走して乗船する。誘導された場所に停めたらエンジンを切り、客室に行こう。

5)下船
人間はタラップや(ry直接下船。
車両は案内されるとおりに自走して下船する。良い旅を。

フェリーの例


津軽海峡フェリー・青函フェリー

航路:青森港-函館港(津軽海峡フェリー・青函フェリー)、大間港-函館港(津軽海峡フェリー)
青函連絡船の後身といえるフェリー。北海道新幹線が開通した現在でも、運賃の安さや車両航送を強みとし現役。
メインルートと言える青森・函館航路に加え、津軽海峡フェリーにより大間・函館航路も運航されている。旅を楽しみたい方はこちらも検討してみよう。
あと津軽海峡フェリーには「ブルーマーメイド」というなんかどっかで聞いたことあるような名前の船が就航している

シルバーフェリー(川崎近海汽船)

航路:八戸港-苫小牧港
中距離フェリー。本州-北海道連絡便としては上記の津軽海峡フェリー・青函フェリーに次ぐ4本という高頻度運航である。
が、そんなことはどうでもいい(?)。
ここの売りは高速バスとのセット乗車券である「なかよしきっぷ」。
盛岡-札幌プランで8,400円、八戸-札幌プランで6,500円という圧倒的なコスパが売り。マリオカート付きのSwitch2か?

太平洋フェリー

航路:苫小牧港-仙台港-名古屋港
太平洋を縦断する長距離フェリーで、苫小牧から仙台が毎日、仙台-名古屋間が隔日での運行。苫小牧から名古屋までの所要時間は脅威の35時間。時間を忘れて過ごしたい人にはうってつけの船ともいえる。
青と白を基調とした「いしかり」、南国をイメージした「きそ」、宇宙船をイメージした「きたかみ」で運行している。
仙台から北海道に行く場合、他には飛行機で新千歳空港、もしくは北海道新幹線で新函館北斗駅から乗り換えしかないため、需要は高い。また、仙台-名古屋航路では名港トリトンの下や、神島の近くの景色を堪能できる。


商船三井さんふらわあ

航路:大洗港-苫小牧港、神戸港-大分港、大阪南港-別府港、大阪南港-志布志港
某戦車アニメの聖地大洗と苫小牧、神戸・大阪と九州を結ぶ長距離フェリー。
「さんふらわあ」の運航事業者は色々変遷があり、少し前までは大洗-北海道航路担当の「商船三井フェリー」と関西-九州航路担当の「フェリーさんふらわあ」が別々に運航していた。
2023年に合併し、長らく様々な会社が運航していた「さんふらわあ」の運航事業者が1社にまとめられたものの、今でもインターネットでは各々合併前のサイトを手直ししてそのまま用いるなど、あまり統一感は無い。
水面から今まさに昇る太陽を大きく描いた船体が目印。太陽は揺らめく光を放ち、まさしくヒマワリのような姿。
見た目のインパクトもあり、日本のフェリーといえば真っ先に挙げられる存在。
古くから玩具で製品化されているほか、創作内でも特撮のロケ地(『仮面ライダークウガ』で予告殺人のターゲットになる、『仮面ライダーW』のジュエル・ドーパント回で戦いの舞台となるなど)に使われたり、クィーン・マリーゴールド号(『YAT安心!宇宙旅行』)など様々な船舶のモチーフともなっている。

新日本海フェリー

航路:新潟港-小樽港、敦賀港-苫小牧港(直行便)、敦賀港-新潟港-秋田港-苫小牧港、舞鶴港-小樽港
日本海側で北陸・西日本と北海道を結ぶフェリー。
……日本の義務教育を受けた方なら勘づいただろうが、このルートはかつての北前船とほぼ同じルート。人呼んで「現代の北前船」。
太平洋側と比べて荒れやすい日本海側を航行するため、荒天にも強い大型船で25~30ノットの高速航行を行うという力業で日本海の荒れた海に対抗している。
また長距離運航をするためか他のフェリーと比べると船内設備が豪華になっているのも特徴。
それでも冬の日本海はかなり荒れる。不慣れな方は冬季を避けるのがベター。
下関-光州(韓国)の物流を長く営んでいた「関光汽船」により開設された長距離フェリー企業のグループ、「SHKライングループ」のS担当。

東京湾フェリー

航路:久里浜港-金谷港
神奈川と千葉を結ぶ極短距離フェリーの代表格。乗船時間はわずか40分。
そのため座席のみ……と思いつつ、地味に個室である1等船室が存在する。
東京湾アクアライン開通で大打撃と思いつつ、通っている場所が全然違うので根強い人気がある。
あと久里浜港は駐車場が併設のため、久里浜港集合で徒歩で乗船、金谷側でゴルフ場の送迎バスに乗るというプランや、フェリーを経由した自転車での東京湾1周等、車でなくても通行可能というのを活かした使用方法も多い。

東京九州フェリー

航路:横須賀港-新門司港
東京湾と北九州をつなぐ長距離フェリー。
会社自体2019年設立とでできたのは最近。2021年就航。SHKライングループ。
実は元々下記のオーシャン東九フェリーがSHKライングループだったが、色々あって王子海運(製紙大手・王子製紙の海上輸送を担う)と合併し資本的には王子グループ入り。その後SHKライングループとして改めて需要の見込める関東-九州間の航路を用意するべく新設されたものである。
所要時間は恐るべき22時間。そのためか大浴場、スクリーンルーム、ジムなど設備が充実している。
23:45発翌日21:00着のため、2時間半の滞在でとんぼ返りが可能。
横須賀港は京急本線の横須賀中央駅から徒歩15分で移動でき、新門司港へは小倉駅・門司駅を経由する連絡バスが発着しているので徒歩客にも配慮されている。
ちなみにオーシャン東九フェリーともども大部屋はなく、最低ランクは寝台(カプセル式)となっている。
SHKライングループの一員なので繁忙期やドック入り時は定員数が多い、新日本海フェリーの船と交代することもある。
要するに定員オーバーも生じ得るほどの人気航路ということ。新規航路として商業的にも今後が楽しみである。

オーシャン東九フェリー

航路:東京港(有明)-徳島港-新門司港
東京九州フェリーと同じく東京湾と北九州をつなぐ長距離フェリー。東京九州フェリーとは別の会社が運営している。
設立は1976年であるが、現行船自体は2016年竣工と比較的新しい。
文字を見ればわかるが社名は「東」京-「九」州のことである。私鉄の「東急」とは無関係。
こちらは東京発で途中で徳島に停泊する違いがある。
フェリーとしては四国-関東方面を繋ぐ唯一の航路である。
レストランがなく、自販機で食事をとる。自販機のたくさん集まったレストランの様子はまるで自販機のバーゲンセール。
所要時間は驚異の18時間+徳島での停泊時間1時間+14時間の計33時間。18時頃に出発し、なんと翌々日の朝5時半頃に目的地に放り出される。
目立った設備は大浴場程度。東京九州フェリーと逆じゃない?

伊勢湾フェリー

航路:鳥羽港-伊良湖港
三重と愛知の渥美半島を結ぶフェリー。
この区間は国道42号線と259号線の海上区間に指定されている。
2010年に一度倒産しかけたものの、地元自治体の支援により復活した。
運が良ければイルカやスナメリに出会う事もできる。
かつては鳥羽と愛知の知多半島の師崎を結ぶ航路もあったが、2005年の中部国際空港開港時に愛知側の発着港を空港島の対岸の常滑に変更し、中部国際空港へのアクセス航路に転身したが、2007年に廃止された。

四国オレンジフェリー

航路:東予港-大阪南港、新居浜港-神戸港
前者が愛媛と大阪方面を結ぶフェリー。因みに東予港は概ね新居浜と今治の中間にある。
東予-大阪南航路はどちらも夜20時出発、翌日6時到着ということで四国、関西方面のビジネス・観光利用にとても便利。出航前・到着後の数時間を船内で過ごせるサービスもあるため、幅広い旅程に対応できる。
2018年の新造船で全室個室に。最低ランクはベッドの周りが壁と戸で囲われているだけといった感じの簡素な造りだが、カプセルでは無いので立ち上がれるし物を置く床もある。
時間にして8時間程度の航路でありながら、大抵の長距離フェリーより快適に夜を過ごせるだろう。

一方、新居浜-神戸航路は貨物輸送メインの航路で、新居浜発が16:20発23:40着、神戸発が深夜1:20発8:20着という、何とも使いにくい時間の発着となっている。
一般乗船の予約は今のご時世でなんとネット予約非対応で電話のみ、神戸港側のターミナルはアクセスもクソ悪いと、前述した東予-大阪南航路とは真逆のマイナー航路となっている。
前述通り、完全に貨物のついでに客がいたら運ぶといったような様相だが、船内の設備は意外としっかりしている。
特に神戸発ならどんな時期に乗っても船内をほぼ貸し切り状態で利用できることが基本なくらいに利用者が少ないので、一風変わった旅をしたい人にはオススメ…かもしれない。

愛媛県-関西のフェリー航路はしまなみ海道の開通などで次々と廃止され、オレンジフェリーが最後の航路となった。
インフラとして、親会社の利益で誤魔化しつつ運航を続けるとしている。

南海フェリー

航路:和歌山港-徳島港
和歌山と徳島を結ぶフェリー。
南海という名前からも分かるように、大手私鉄の南海電気鉄道傘下の海運業者。
特筆すべきは和歌山側は南海本線の列車と接続するダイヤを取っており、日本でも今や貴重な鉄道連絡船の一つ。
かつては徳島側も小松島港を発着しており、国鉄小松島線(1985年廃止)と連絡するダイヤを取っていた。
高速道路の開通に伴い利用者が激減したが、道路通行料金の高さもあってかマイカーや貨物利用が多く、鉄道連携きっぷなど割引券も多数発売されている。

阪九フェリー

航路:神戸六甲アイランドフェリーターミナル・泉大津港-新門司港
SHKライングループの「H」担当。「S」と「K」に先んじ1968年より営業開始。
道路の整備も進みトラック輸送が内航海運を圧迫しつつあった当時、そのトラックを丸ごと載せられるカーフェリーがあれば逆に客として迎えられる上、ついでに荷物の積み下ろしも楽になるというアイデアを、4年の研究と準備を経て実現した。
目論みは大当たりし、多くの後追いが生まれたのがこのページからも推察できるだろう。阪九フェリーこそが今日の日本の「長距離カーフェリー」という業態そのもののパイオニアとすら言える存在なのだ。
2020年に新造船を導入するなど、半世紀経った今なお一定の需要を保ち続けている。
所要時間はどちらの航路でも12時間半。夕方~夜に乗船し朝に下船という理想的なダイヤである。
その分船内設備は控え目な方だが、船内がリラックスして眠れるシックな色合いでまとめられているのは嬉しい所。
また2017年から、フェリー事業者には珍しく「ふねこ」というマスコットキャラクターが活動中。
胴体が船の猫と文字にするとシュールだがデザインは王道なゆるキャラ。船内の売店でグッズもどうぞ。

名門大洋フェリー

航路:大阪南港-新門司港
そして阪九フェリーの後追いの中でも露骨に航路をかぶせてきたのがこの会社。
揃って1970年に創業した「名門カーフェリー」と「大洋フェリー」が大元。
名門カーフェリーは元々名古屋-門司航路を運航していたが、より稼ぎが良い大阪航路に移行。
大洋フェリーは商船三井傘下で、「さんふらわあ」が運航されたことも。
しかし後追いでは分が悪かったのであろうか、1983年の中国自動車道全通*3を見据えた合併交渉の末、1984年より「名門大洋フェリー」名義での運航が開始し現在に至る*4
カーフェリー事業者自体が数を減らす中、長距離航路にもかかわらず複数社が並行して運航しているのはこの航路くらい。
こちらも2021~2022年に新造船を導入しており、この航路の需要の高さを示していると言えよう。
17時発と19時50分発の2往復体制で運航中。大抵遅い方の便に新しい船が使われる。
料金・所要時間・船内設備どれをとってもそこまで大きな違いは無いので、関西側の交通の便などで選んでOK。往復で違う会社を使うのもあり。

JR西日本宮島フェリー/宮島松大汽船

航路:宮島口港~宮島港
広島県を代表する観光地である世界遺産、日本三景の『安芸の宮島』へのアクセス航路。下記の桜島フェリーに並ぶ高頻度・短距離フェリーの代表格で、どちらも片道10分、200円。*5
前者はJR西日本、後者は広島電鉄の子会社が運営している。JR西日本の宮島フェリーは「宮島航路」という鉄道線扱いであり、青春18きっぷのようなJRのフリー乗車券が使えたり、「宮島駅」からの切符が買えたりする。狭義の意味では日本で最後の鉄道連絡船とも言える。
両者ともに最短15分間隔、繁忙期には臨時便も追加されるという超高密度運航を支えるため、前後両方に車両用タラップや運転台を備えた特殊な船を採用、方向転換すらしない高速ピストン輸送を行っている。

関釜フェリー

航路:下関港~釜山港
定期国際航路の一つ。元を辿れば戦前の日本統治時代の朝鮮と下関を結ぶ鉄道連絡船であり、現在でも青春18きっぷなどと提携した割引があるところに名残が見られる。SHKライングループの「K」担当。
日韓共同運航で、日本船と韓国船が隔日で来るダイヤとなっている。両者では使える通貨も異なるので乗るときにはどちらの船が来るか確認しておくこと。一応両替はできる。

大分ホーバーフェリー

航路:大分基地-大分空港(運航終了時点)
かつて大分県に存在した、世にも珍しい旅客用ホバークラフト
専ら軍用、それも少し特殊な用途向けのホバークラフトをフェリーにしているのは日本唯一どころか世界でもイギリスのポーツマス-ワイト島間航路と大分の世界二ヵ所のみ相変わらず変なところで似た者同士な日英なのだった。
高速化に向いたホバークラフトだけあって陸路であれば1時間を要する大分市街地から大分空港までのルートを25分で結ぶことができ、またその物珍しさからホバークラフト自体が目当ての観光客やファンもままいた。またかつては別府や姫島にも不定期便が出ていた。
しかし高速道路の開通による陸路の利便性向上に伴い利用客が減少、2009年に廃止された。

……が、陸路よりスピードを求める層の根強い支持を受けて2025年7月、16年振りに大分第一ホーバードライブとして復活を遂げた。
航路は以前と同じく大分市街地基地(以前とは別の場所に新設)-大分空港便と別府湾周遊航路の二つ。

桜島フェリー

航路:鹿児島港桜島フェリーターミナル-桜島港
鹿児島市営の超短距離フェリー。片道15分、250円。鹿児島市の中心地から海を挟んで対岸の桜島を結ぶ。
気軽に使える地域の足で、港もちょっとした地方都市の鉄道駅のような趣。鹿児島市から大隅半島側に抜ける手っ取り早いルートのため、多くの市民に愛用されている。
2025年10月1日に廃止されたが、長らく終夜運航も行っていた(廃止後は23時半終発4時始発のダイヤとなったが、これは大都市圏の地下鉄並みのダイヤとなっている)。
こちらも最短15分間隔という超高密度運航を行っており、宮島フェリー同様の特殊な船が採用されている。
船内のうどん屋「やぶ金」もちょっとした名所。15分で食べ切る自信が無いなら鹿児島中央駅の支店へどうぞ。
現在は4隻が就航しており、各船とも定員600人強、乗用車65台ほどを積めるが、桜島が大噴火を起こした際の住民脱出船としての役割を兼ねており、その場合は車両甲板を開放して2000人程度を乗せることが可能。

創作におけるフェリー

舞台装置としては媒体、ジャンル問わず人気。
非日常感を出すことができるのは勿論、高級ホテルのような華やかさから下等客室・バックヤードまで、一定空間内で温度差を自在に演出できる。
また、隔絶された空間を簡単に作り出すことができることから、ミステリーやパニックホラーなどとも相性が良い。



乗船中のフェリーが港に着いたら追記・修正をお願いします。


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最終更新:2025年10月10日 06:37

*1 いわゆるバイキング形式。

*2 業務用ファミコン

*3 これにより大阪から北九州まで高速だけで行き来できるように

*4 会社自体の完全な合併は1986年

*5 実際には宮島への往路のみ100円の観光税が追加でかかる。