概要
北海急行電鉄では初めての本格的な高性能電車となった
2300系は、初期にいろいろな問題点こそ浮上したものの、
そうした諸問題は早期に改善され、以後はおもに特急用として乗客の好評を博するまでになっていた。
しかし2300系が登場してから15年が経過し、その間に新型車両が多数製造されるようになると、さすがに設備面での陳腐化が目立ち、更なるサービスレベルの向上が必須課題となった。
このため、代替となる特急車両を新造する必要が生じた。この状況に鑑み、1981年より営業運転を開始したのが今回紹介する5000系電車である。
(1997年ごろの5000系)
車体
車体外板の塗装はアイボリーを基本としており、それまでの慣例に従い特急用形式を意味するスカーレットのデザインが配された。
前面部分は同じ日本車輌製で、先に登場していた遠州鉄道のモハ51+クハ61を基本とするが、時代を反映してライトケースは角型となっており、
また、さすがに大手の車両らしく方向幕と種別幕が左右に振り分けられ、その中央部に標識灯が設置されているあたりが北海道らしい。
正面窓は熱線吸収・防曇ガラスとしたが、後年積雪による破損対策としてポリカーボネート樹脂版に交換されている。
車体構造は従前通り普通鋼を用いているが、骨組みや戸袋部分など強度が必要な部分にはステンレス鋼を採用している。
車体長は17500mmとしているが、先頭車については運転室面積を広く取る都合上18100mmとされた。
このため連結面間の距離は先頭車18640mm、中間車18140mmとなっている。
出入口は片側2箇所に設置されており、側扉は両開き式のものである。開口幅は1300mm。
車内設備
編成苫小牧方向に位置する特別車両は室内にシートピッチ1080mmの回転リクライニングシートを、
それ以外の一般車両はシートピッチ900mmの転換クロスシートを基本としている。
座席はグリーン系統であるが、優先座席についてはグレー系統とした。
特別車両の出入台付近はデッキ式となっており、編成先頭に位置するモロ5100形の後位側には自販機とカード式電話が、続くモロ5200形の後位側には洋式便所と洗面台が設けられていた。
また、サハ5300形の前位側貫通扉には特別席である旨の表記がなされていた。
側窓はすべて熱線吸収・複層ガラス構成としたが、一部の窓は非常時の換気を考慮し一段下降式である。カーテンにはベージュ系色の横引き式プリーツカーテンを設置する。
貫通扉は各連結面に設置しており、側扉については室内側は化粧板仕上げ、ドアガラスは側窓同様のグレーの複層ガラスである。
走行機器
制御装置の主回路は、三菱電機製の界磁チョッパ制御装置を採用している。これは、北急の電車としては
2700系に続き採用されたものである。
主電動機は直流複巻式のものを採用しており、出力は1基あたり150kWである。
制動装置は、すでに2700系などでの実績があるHSC-R形電磁直通ブレーキを装備している。このブレーキ装置は回生ブレーキを併用する方式である。
台車は車体直結型空気ばね台車としている。軸箱支持はコイルばねと気圧ダンパーを使用した円筒案内方式である。
運用
6両固定編成であり、基本的には単独で石狩市~札幌~苫小牧間ならびに石狩市~札幌~定山渓温泉間の「特急」および石狩市~札幌~新千歳空港間の「空港特急」の運用にあたっていた。
土休日には夕張鉄道への直通運用にも使用されていたほか、多客時には2両編成の一般車両を増結し、8両編成で運用されることもあった。
改造、その後
その後、後継車両の
6000系が登場するにあたり、2002年から2003年にかけて順次、通勤型電車への格下げ改造が実施された。
おもな改造点としては
- 座席の全ロングシート化
- 車体中央部に1300mm幅の乗降扉増設
- 車いすスペースの設置
- 便所設備の撤去
が挙げられる。なお、性能面では変化はないが、改造にあわせ塗装の変更(スカーレット→フェザントグリーン)が実施されている。
現在は主に本線・定山渓線の急行運用を中心に活躍している。
主要諸元
最大寸法:18640×2840×4100mm(M1c/M2c)、18140×2840×4100mm(M2/M1)、18140×2840×4070mm(T1/T2)
空車重量:M1c=36.0t、M2=36.3t、T1/T2=31.0t、M1=36.2t、M2c=35.8t
出力:150kW×4/両
駆動方式:WNドライブ
歯数比:5.31
制御方式:他励界磁チョッパ制御(1C8M)
制動方式:HSC-R(回生併用電磁直通ブレーキ)
台車:HKS-81M/HKS-81T
製造:日本車輌製造・東急車輛製造・川崎重工業
(各数値は改造後のものを示す)
編成図
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最終更新:2013年01月18日 00:21