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西グリニア

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魔族篇 1章までのネタバレを含みます。
西グリニア

西グリニアとは、スラダ大陸西部に位置する国家。首都はアバ・ローウェル。

歴史

成立と体制の確立

神聖暦321年に勃発した終焉戦争の影響で、翌322年(暗黒暦元年)から約1350年に及ぶ氷河期が始まった。この時期、地上国家の多くが滅亡した一方、恒王ダンジョンコア迷宮魔法が拡散し、スラダ大陸各地に内部環境が温暖に保たれる地下迷宮が形成された。とりわけ北西部の山水域では地表まで迷宮化が進んだことで、強力な魔物が比較的少ない、安全な生存圏が確保された。

亡命中であった魔神教の元教皇クゼン・ローウェルは、この山水域に到達すると魔石抽出技術を携え、集落「西グリニア村」を組織した。暗黒暦100年頃には国家体制が整い、魔石を受容した新たな魔神教を国教として掲げた。(詳細は「西グリニア魔神教」を参照)

建国に際しては、思想的指導者であるクゼン・ローウェルを初代法王として位置づけ、法王・枢機卿・評議会から成る神政体制が確立された。しかし、氷河期の長期化にともない社会階層の固定化と権力の集中が進行する。やがてローウェルの血筋に連なるアスラ家・ジオーン家・トラヴァル家(総称して「ローウェル御三家」)が枢機卿位と法王位を事実上独占し、評議会人事にも強い影響を及ぼした。暗黒暦1300年代には、御三家による寡頭的支配が完全に固定化した。

追放者政策とトラヴァル家の台頭

西グリニアでは、もともと病者や犯罪者を隔離し、労働に従事させる目的で山水域外縁に「追放者(シュリッタット)の街」が設けられた。しかし、次第に制度が濫用され、国家に不都合な者や私的対立の相手までが罪人として追放されるようになる。人口が増加した追放者は街を事実上掌握し、暗黒暦1300年頃にはシュリッタット事変と呼ばれる反乱を起こした。反乱は速やかに鎮圧されたが、生存者が東方へ逃れてシュリット神聖王国を建国し、以後その討伐が西グリニアの国家的課題とされた。

国家の主要産業は、山水域直下の迷宮からの古代遺物の発掘である。発見物は防衛力の強化や国内統治に転用された。暗黒暦1340年代、遺物技術の解析により罪印の魔術が実用化されると、「咎人の贖罪に関する制度改定および罪印の運用規定」(通称咎人制度)が施行された。これにより、同国内で犯罪を犯した者は魔術的拘束によって国家に強制従属する咎人となる。

御三家のトラヴァル家が支援する探索者ギルド「戦士の塒」は、咎人を戦力として活用して迷宮探索を加速させ、勢力を拡大した。また、トラヴァル家のアンジェリーナは夢回廊に導かれたことでシュリット神聖王国の所在を特定し、大砲をはじめとする兵力を投入して同国に大打撃を与えた。これらの成果と政争上の優位が重なり、トラヴァル家は国家中枢における影響力を大きく伸ばした。

魔神襲来と滅亡

暗黒暦1340年代、突如として発動した神呪侭雨(リライト)を端緒に、首都アバ・ローウェルは魔族を率いる魔神アリエットに襲撃され、占拠された。降下した黒い雪の影響で市民に深刻な被害が生じ、占拠下では住民が魔族へと作り変えられた。国家中枢の機能喪失に対し、トラヴァル家当主となったアンジェリーナが軍政を主導して抵抗したが、シュレリア古城の戦いで劣勢を挽回できず、暗黒暦1350年までに西グリニアは崩壊した。

政治

西グリニアは、魔神教の法王と枢機卿によって統治される神政国家であり、評議会が立法および司法を担った。

枢機卿は初代法王クゼン・ローウェルの血を継ぐ一族からの輩出が通例で、任命権は法王に帰属する。基本的には法王が自身の出身家から任命したが、顕著な功績が認められた場合には他家出身者の抜擢も行われた。

法王は現法王の指名によって、アスラ家・ジオーン家・トラヴァル家(総称して「ローウェル御三家」)の中から功績を基準に選出される。ただし、特定家系への偏重は他家の反発を招きやすく、三家間の均衡維持が常に政治運営の重要課題とされた。

法律

  • 追放刑 - 犯罪者や皮膚病・感染症患者、反逆者などを「追放者の街」に移送し、鉱山採掘などの強制労働に従事させる制度。のちに政治的・私的な目的にも濫用された。
  • 救済法 - 生活困窮者に対する支援を定めた社会福祉法。後述の咎人制度の導入に伴い廃止された。
  • 恩赦 - 法王の生誕祭に際し、各都市につき一名の罪人に恩赦を与える制度。後述の咎人制度の導入に伴い廃止された。
  • 咎人の贖罪に関する制度改定および罪印の運用規定(通称、咎人制度) - 罪人の資産を没収し、罪印と呼ばれる魔術刻印を施す制度。刻印された者は国家の資産として登録され、奉仕によって罪印を薄め、消失とともに釈放される。すべての行動は聖堂または雇用主の許可・命令を要し、命令への反抗は不可能となる。魔装保持者は魔装を抽出され、魔石として没収される。

地理

西グリニアはスラダ大陸西部に広がる迷宮山水域の北部に位置する。

南方から東にかけては深淵渓谷、シュリット神聖王国、迷宮蟲魔域が連なる。

国土全体が山水域の圏内に含まれており、氷河期下にあっても温暖な気候が保たれた。地下には広大な迷宮が張り巡らされ、各地の入口が互いに接続している。

首都アバ・ローウェルは国土の中央やや北寄りに位置し、魔神教の聖堂本部が置かれた国家運営の中枢である。
主な都市は以下の通り。
  • 塩の街 - 東部に位置し、国内の主要な塩の供給源。周辺では農業も盛んで、首都とはメルデ・ジル街道で結ばれる。
  • シュレリア古城 - 西部に所在する旧首都防衛拠点。魔神襲来の際には、西グリニア軍の反攻拠点となった。
  • 花の街 - 南部に位置し、花畑が広がる地域。地上では雑種級の魔物が共存する一方、地下迷宮には強力な魔物と多くの遺物が眠る。
  • 追放者の街 - 南部に位置し、かつては皮膚病患者や犯罪者を収容して強制労働を課していた。シュリッタット事変後に廃墟化し、その役割は別の収容施設に引き継がれた。*1

軍事

西グリニアの正式な戦力は、聖堂に所属する聖騎士および神官術師で構成され、治安維持や魔物討伐などの任務を担った。

ローウェル御三家はそれぞれ私兵を保有していたが、なかでもトラヴァル家私兵団は武力に優れ、大砲などの兵器を備えていた。一方、民間では探索者ギルドが独自の戦力を抱え、迷宮探索による遺物発掘のほか、傭兵として国家からの依頼を請け負うこともあった。

国家末期には、実権を握ったトラヴァル家の私兵団が正式な国軍として編制され、他の探索者ギルドを傘下に収めた戦士の塒がトラヴァル家の直轄組織となった。聖堂戦力もこれに協調し、軍事指揮系統は事実上統一された。

また、一部の兵にはトラヴァル家当主アンジェリーナから魔装「餓楼」が貸与され、これを利用したオリハルコン製大砲による機動戦術が確立された。
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注釈

*1 408話