シャドー


"As you sow evil, so shall you reap evil!
 Crime does not pay…The Shadow knows!"

(因果応報!
 犯罪は報われない……"影"は知っている!)

+ 日本語吹替声優
江原正士
1994年映画版(ソフト版)
辻親八
1994年映画版(テレビ朝日版)

アメリカのパルプ小説*1『The Shadow』シリーズのヒーロー。
初出は1930年のラジオドラマ『Detective Story Hour』の主人公…ではなくナレーター
グリーンアローの愛人ではないし「俺の役目は終わったようだな…」とも言わないし、カオスコントロールも使わなければ格闘神でもない。
「シャドウ」と訳される事もあるが、本項ではテイルズオブシリーズキャラや『KINGDOM HEARTS』シリーズの雑魚敵との区別、
ならびに1994年度の映画版にも合わせる形で「シャドー」とする。
元々はストリート&スミス社のヒーローだったが、倒産後はコンデナスト・パブリケーションズ社に版権が移っている。

元々、探偵小説(本格的なものではなく冒険活劇要素が強い物も含む)を載せた雑誌『Detective Story Magazine』があり、
それのラジオドラマ版では謎の男「シャドー」が話をしてくれる構図だったのだが、
この謎のナレーターに人気が出たため彼自身の物語がノベライズ化されたという珍しい経緯がある。
脇役・敵役から主役に昇格というのは探せばあるが、ナレーターから主役になったヒーローは彼ぐらいなものだろう。

本名はケント・アラード。偽名としてラモント・クランストンを名乗る(ラジオドラマやテレビドラマでは逆にこちらが本名)。
つばの広いソフト帽と口元を覆うスカーフを装備し、マントを身に着けている姿で描かれることが多い。
このように顔を隠している彼だが「特徴的なぞっとするような笑い声」や「赤紫の大きな宝石の付いた指輪」などが、
日本でいう水戸黄門の印籠のように彼を示す証となっている。
トレードマークの一つであるこの指輪は大戦中にロシア皇帝から贈られたものとも、「シンカ族」の秘宝である神の瞳の一つとも。
そしてその風貌と謎に包まれた正体から、「マスターズ・オヴ・ダークネス(闇の帝王)」とも呼ばれる。

元々は第一次世界大戦中、ブラックイーグル(あるいはダークイーグル)の異名を取った米国義勇航空隊の撃墜王。
終戦後にグアテマラにて墜落して死亡認定されるも密かに生き延びていたアラードは
先住民の「シンカ族」から様々な秘術を授かった事で、犯罪と戦うことを決意した上でニューヨークに舞い戻ると、
表社会では大富豪ラモント・クランストン、裏社会では怪人シャドーを名乗り、様々な変装と偽装身分を駆使しながら、
身を凍らせる高笑いと共に、影に紛れて犯罪者に冷徹な裁きを下すクライムファイターとして活動を始めた。

ラジオドラマ版ではこれらの設定が整理され「世界各地を巡って未だ現代科学が発見できていない様々な技能を学んだ」ことで犯罪との戦いを決意し、
94年映画版では麻薬王インゴーとして裏社会で伸し上がった後にチベットの聖者と出会って懲らしめられ、改心した事で犯罪と戦うべくニューヨークに戻った。

ガールフレンド兼協力者にマーゴ・レーンという女性超能力者がいる。
彼女は強力な精神感応、テレパシー能力を持っており、シャドーの催眠術が通じないばかりか、心を読む事ができる。
本来はラジオドラマ用に登場したヒロインキャラで、シャドーのエージェントの一人で公私共に彼のパートナーだったのだが、
小説版ではシャドーの正体を知らず、その正体はアラードなのではと疑念を抱きながら協力するヒロインとして描かれた。

主に使う武器は45口径オートマチック。東洋の秘術も得意とする。
最も頻繁に扱う術は親指と人差指に仕込んだ化学物質を指を鳴らす要領でこすり合わせて爆発させるもので、
発生する閃光と爆炎を目眩ましに活用し、まるで瞬間移動のように姿を消して現したりしている。
また、コスチュームのマントを自在に操って敵を撹乱させる。
ちなみに前述の『Detective Story Hour』でナレーターを務めていたのは、
その主人公達がシャドーに勧誘ないし支援されているシャドーのエージェントたちであるため、という事らしい。
実際シャドーの最大の武器は巧妙に張り巡らされたエージェントたちによるネットワークであり、様々な面で彼に協力している。

アメリカのヒーローというイメージに多大な影響を及ぼしたキャラクターで、
スーパーマン』のクラークとロイスの姓はそれぞれケント・アラードとマーゴ・レーンが由来となっている。
そういった経緯もあってか、1973年にはDCコミック化もされている。
また、バットマンの生みの親であるボブ・ケイン氏とビル・フィンガー氏から、「バットマンに影響を与えたヒーローの一人である」と言及されている。
ウォッチメン』の初代ナイトオウルが影響を受けたコミックヒーローやパルプ小説ヒーローの一人でもあり、
シャドウのマントを真似てコスチュームを自作してみたが、上手く扱えなかったため、最終的にマントは不採用となったという設定。

+ 映像・派生作品でのシャドー
94年映画版でシャドーを演じたのは『レッド・オクトーバーを追え!』などで知られる名優アレック・ボールドウィン氏。
第一次世界大戦後、「インゴー」と称してチベットの阿片王に上り詰め、暴虐無道な振る舞いをしていたラモント・クランストン。
彼は 聖者タルク に懲らしめられ、罪を償うため七年の修業の末に超常的な秘術の数々を授かり、ニューヨークに送り返された。
クランストンは「シャドー」と名乗って悪漢と戦い、命を救った人々に赤い宝石の指輪を与え自身の部下とし、秘密結社を作り上げ暗躍。
また自分を心配してくれる叔父のバースNY市警本部長を巧みに暗示にかけ、怪人シャドーを実在しない都市伝説に仕立て上げる。
だがそうした多くの人々を利用するラモントは、自分の中に宿る邪心、悪、インゴーとしての側面に対して恐怖を抱えるようになり、
心を通わせる超能力を持った美女マーゴ・レーンに惹かれつつも、関わらぬよう自分を戒めていた。

しかし世界征服を企むジンギスカンの末裔シワン・カンが現れた事で、状況は一変する。
師であるタルクを殺害して秘術を奪ったシワン・カンは、野望のパートナーとしてラモントにインゴーへ立ち戻るよう囁きかけ、
さらにシャドーとまったく同じ秘術の数々を持ちながら、一切の良心の呵責を持たぬが故にシャドーを圧倒する。
欲望の赴くまま罪なき人々を暗示で死に追いやるシワン・カンの狙いは、マーゴの父レーン博士の開発した新兵器ベリリウム爆弾。
父を救おうとする中で精神感応によりシャドーの正体に気付いたマーゴの協力の下、
シワン・カンが暗示によって消失させた「存在しないビル」モノリス・ホテルへと乗り込んでいくクランストン。
ついに摩天楼を舞台に、怪人対怪人の闘いの幕が切って落とされる。
だがシャドーがシワン・カンを破るには、彼自身の中に宿る悪と、その《影》に打ち勝たねばならなかった……。
予告映像

作中ではシャドーの授かった秘術は催眠術にも似た強力な暗示と、その姿を覆い隠す幻術だが、
自身の影(シャドー)だけを消すことはできず、また見えなくなるだけで物理的に消えるわけではないという弱点があった。
つまり影を攻撃されればシャドーも傷つき、水や雨の中ではその移動の軌跡がはっきりと見えてしまうのだ。
しかしシャドーはその弱点を熟知しており、格闘技や二丁拳銃、暗示、マーゴの助けを駆使して危地を潜り抜けていく。
また最終決戦ではついに恐怖を乗り越え、シワン・カン以上の念動力に覚醒した。

興行的には残念ながら失敗してしまったものの、パルプ小説の雰囲気を出そうとした制作陣の努力は見事なもので、
決して駄作というわけではないため、興味のある方は一見の価値あり。

"I'm not afraid of you……"

(あなたは怖くないわ……)

"……But I am."

(……私は怖い)

本邦ではシャドーの活躍する作品に触れることは94年実写版を除いて中々困難だが、
キム・ニューマンによる「ドラキュラがヘルシング教授に勝利した世界線」を描いた空想大河小説『ドラキュラ紀元』シリーズでは、
第一次世界大戦を題材にした第二巻『ドラキュラ戦記』に、主人公の上官である飛行機隊長ケント・アラード大尉として登場。
本作では連合国側のラジオドラマやコミックなどで活躍する架空の撃墜王達と、ドイツ空軍の史実撃墜王達の戦いが繰り広げられており、
アラード大尉はラジオドラマ航空ヒーローの一角として抜擢された形で、群像劇に近い作中での存在感も強いキャラクターとなっている。
ドラキュラの乗った飛行戦艦とそれを護衛するリヒトホーフェンサーカス隊に挑む最終決戦の最中、不気味な高笑いを残して生死不明となるが、
続編『ドラキュラ崩御』では、当時の知人が「ニューヨークで活躍しているシャドーなる怪人の正体はアラード大尉ではないか?」と、
シャドー本人こそ登場しないものの、その正体を推測する形でほんの少しだけ触れられている。


MUGENにおけるシャドー

海外で2体確認されている。フォルダ名が被っているので間違って上書きしないように注意されたし。

+ The Red Cloak氏製作
  • D, The Red Cloak氏製作
現在はCenobite53氏のサイトで代理公開されている。
1994年にSNESで発売予定だったが、お蔵入りになったゲーム版のスプライトを用いている。

操作性は6ボタン方式で、ダッシュで突進攻撃も可能。
ストライカーとしてキング・フィーチャーズ・シンジケート社のヒーロー「ザ・ファントム」を呼ぶ。
警察がパトカーで相手を轢いて打ち上げた後、ガトリングを乱射する超必殺技「Back-Up」は半分程持っていく火力を持つ。
簡易的なAIが搭載されている。

+ regisc氏製作
  • regisc氏製作
上記のシャドーを改変したもので、海外サイト「The Mugen Multiverse」にて代理公開されている。
GHOST RIDER氏の嘉神慎之介ドラキュラ伯爵をベースに改変したドット絵で製作されている。
なお、ReadMeの類は付属していないため、各種コマンドはcmdファイルを開いて確認する必要がある。
改変元に比べ、透明化が削除された代わりに瞬間移動する「Teleport」が追加されている等、技構成が変わっている。
AIは搭載されていない。


"The weed of crime bears bitter fruit!
 Crime does not pay...The Shadow knows!"

(悪因苦果!
 犯罪は報われない……"影"は知っている!)

出場大会

  • 「[大会] [シャドー]」をタグに含むページは1つもありません。


*1
パルプとは「更紙」を意味する英語。
どの雑誌であっても毎月入手でき、当時は10セント硬貨1枚で購入できた。


最終更新:2023年11月09日 11:26