ノンマルト


「海底はノンマルトのものなんだ。
 人間が海底を侵略したら、ノンマルトは断然戦うよ」

円谷プロの特撮作品『ウルトラセブン』第42話「ノンマルトの使者」に登場する謎の種族。別名「海底人」。
宇宙人・宇宙怪獣との対立が主な同作において異端となる、自分達こそが本物の地球人(先住民)だと主張する敵である。

かつて人類よりも先に地球で繁栄していた種族だったが、人類に地上から追われて海底での生活を余儀なくされたとし、
「本来の地球の住民は自分達であり、人間達は侵略者である」と主張。
海底にも人間の開発の手が伸びてきた事に怒り、
「また住処を奪われてたまるか」と怪獣ガイロスを使役して人類と対峙した…らしいのだが。
劇中ではノンマルトとガイロスとの関連性は一切言われておらず(当人だけではなく「使者」の少年も未言及)、
ウルトラ警備隊に至っては「あの怪獣はガイロス」と言われるまで怪獣がノンマルトだと誤解しいてたほど。

ノンマルト自身が劇中で会話するシーンは無く、本人たちが「ノンマルト」と呼ばれる場面も一切無い。
謎の少年「真市」をメッセンジャーにして、ダン達に自分達の主張を伝えていた(ちなみに怪獣の名前もこの少年が教えてくれた)。
しかし、海底開発センターの職員らに攻撃を仕掛けて命を奪った事で、
ウルトラ警備隊は「(地球の先住民を詐称する)侵略者の宇宙人」と認定して攻撃を開始。
人間から奪った原子力潜水艦グローリア号を駆り戦うがウルトラ警備隊のハイドランジャーによって轟沈され、
切り札であったガイロスもセブンとの戦いの末に敗北。
ノンマルトの海底都市も侵略者の基地と見なされて完膚なきまでに破壊されてしまった。
そしてラストではアンヌやウルトラ警備隊に海底開発をやめるように進言していた真市は、
2年前に海で死んでいた事が発覚したのであった。

(諸事情で欠番扱いとなったスペル星人を除けば)ギエロン星獣のエピソードと並んで、同話は『セブン』最大の問題作として知られる。
ダンによればM78星雲の言葉では地球人を「ノンマルト」と呼ぶらしく、
これだけがノンマルトが先住民であったかもしれない事を匂わせる唯一の検証材料であるが、
この単語が彼らの種族の事を指すのか、現代の人類を含めた地球人全体の事を指すのかは劇中では明かされておらず、
この情報を把握してセブンを牽制するために、敢えて「ノンマルト」を称していた異星の侵略者であった可能性もゼロではない。
(劇中説明によるとグローリア号の行方不明になった時期は「半年前」なので、
 事故で偶然沈んだのを拾ったとかでないならこの頃からこっそり攻撃開始していた事になる)。
結局、劇中ではノンマルトの主張を覆すような具体的な物証も、逆にその主張が正しいと明確に証明できる物証も存在せず、
謎は謎のまま人類はノンマルトを侵略者として根絶する選択をした。
それは、さながら「『人類も地球を脅かしてきた侵略者達と何ら変わらないかもしれない』という事実から目を背けた」とも取れる顛末であった。
無論、上記の通りノンマルトの主張の正誤はそもそも検証が不可能であり、ノンマルトを放置すればさらに多数の死傷者が出る事は想像に難くなかったのだが、
ラストのキリヤマ隊長による「海底も我々人間の物だ」という、
海底人による地上侵略」ならぬ「地上人による海底侵略」を暗に認めているセリフは悪い意味で有名。
ついでにアイアンロックスの回のミミー星人の「我々は海底に眠るこの豊富な資源、それも地球人が利用していない物を~」を見た後でこれを見るとさらに皮肉。
そう言えばミミー星人も人類の軍艦を乗っ取って戦ってたな…

ただし誤解なきように述べておくが、本作の地球の置かれた状況は極めて過酷なものである。
宇宙全体は地球で言う所の大航海時代に近しい時勢であり、「発見」された後進惑星である地球は常に侵略の危機に晒されている。
防衛軍およびウルトラ警備隊が常に自衛のために全力を尽くし続けなければ、地球は侵略されて植民地化されかねないのだ。
これはギエロン星獣回の超兵器R-1のような軍拡方向ばかり注目されがちだが、キュラソ星人回ではキュラソ星との友好条約が正式に締結されており、
地球が外交的努力も必死に行っているという事実もきちんと描かれている。
つまり、文字通りあらゆる意味で地球人類は生存と独立、自らの自由と平和のために奮闘しているのだ。

その上で「地球先住民を名乗り、原子力潜水艦を強奪、既に海底には都市や拠点を建設し、一方的に侵略者呼ばわりして攻撃してくる異文明」について、
地球側がこれに譲歩できるわけもなく、良き地球人・父親・上司・軍人であるキリヤマ隊長が攻撃を躊躇する理由も無いのである。
なにしろノンマルトは断じて一方的な被害者などではない
海洋調査船シーホース号は轟沈させられ、海底開発センターは全滅。城南大学海底探検部の船舶も襲撃を受けている。
原子力潜水艦グローリア号の乗員も恐らくはノンマルトの手にかかって殺害されている。
真市少年も、単にノンマルトが海難事故の犠牲者の姿を借りているだけならまだしも、拉致された可能性は否定できない。
加えて真市少年の警告からシーホース号および海底開発センターの破壊まではほぼ間がなく、警告の意味は一切無いのだ。
ノンマルトが真に平和を望み、地球人類との共存共栄を目指すのであれば、もっと異なるやり方があったはず。
そうでない以上……そして既に大勢の罪のない人々が犠牲になっている以上──……。

「もし宇宙人の侵略基地だとしたら放っておく訳にいかん」
「我々の勝利だ! 海底も我々人間のものだ!! これで再び海底開発の邪魔をする者はいないだろう!!」

これはキリヤマ隊長が地球を守るために決断し、戦った末の発言だという事はくれぐれも忘れてはいけない。
故郷は地球』で提示された「物事は一方向からでは真実は見えてこない」「真実(正義)は決して一つではない」というテーマは、
この『ノンマルトの使者』でも再び我々に提示されているのだ。
そしてだからこそウルトラセブン=モロボシ・ダンの苦悩は尽きない……。

+ 他作品のノンマルト
  • 『平成ウルトラセブン』
1999最終章6部作の最終話「私は地球人」に登場。
この作品では別名が「地球原人」となっている。
女性の個体がノンマルトは地球人類に侵略されたという事実の宇宙への告発、
地球防衛軍に対してノンマルトへの攻撃の実態が記録されているというオメガファイルの公開を求め、
守護神獣ザバンギを使役して人類と敵対した。

本作では過去の地球人類がノンマルトの文明を侵略した記録が存在し、
それを把握していた地球防衛軍はその記録「オメガファイル」の公開を渋っていたのだった。
ウルトラ警備隊の活躍によって宇宙に対してオメガファイルを公開されるが、
このノンマルトはザバンギを撤退させず、公開されたという事実をもみ消そうとした。
ノンマルトの本当の目的はオメガファイルの公開ではなく、
「人類が自分の罪を隠蔽した」という大義名分で地球人を絶滅させて、
宇宙に散ったノンマルトの同胞を再び地球に迎え入れる事だったのである。
見かねたセブンが変身してザバンギを倒すが、「もはやお前の居場所は宇宙にはない」と負け惜しみのセリフを吐き捨てて撤退。
その言葉通り、セブンは「侵略者の末裔に加担した大罪人」と見なされて終身刑に相当する処分を受けた
(一方でウルトラ警備隊が自発的にオメガファイルを公開した事により、
 地球人は反省の意志を示したと見なされて不可侵条約が結ばれたためお咎め無しとなった)。

脚本の武上純希氏が執筆したノベライズ『ウルトラセブン EPISODE:0』では明確に「正真正銘のノンマルト」とされているが、
旧作で見せたような本来の姿を取っておらず、
証拠とされる映像でも地球人類(と思しき侵略者)が乗る宇宙船が建築物を攻撃している場面だけで、
肝心の侵略行為を行う地球人の姿は全く映されていない事、
続編のEVOLUTION5部作に登場するアカシックレコードの記述にノンマルトの記述は全く見当たらないなど不自然な部分が多く、
先住人を詐称しつつ地球人の罪をでっち上げて自分達の侵略を正当化しようとし、
失敗してもそれを逆手に取り狡猾にセブンを地球から排除できるように仕組んでいた異星人だった可能性が指摘されている。

  • 『ウルトラ忍法帖』
身につけると神の力が手に入る「のんまるとのパンティ」とその在り処の手掛かりになる「のんまるとの鐘」が登場。
エロ過ぎて円谷から作者がお叱りを受けた人気キャラである邪鬼姫阿留波が出たエピソードのキーアイテムであり知名度は高め。

第22話「タッコングは謎だ」にシンジという謎の少年が登場する。
作中で彼がノンマルトと断言されたわけではなく、両腕が触手であるなど相違点も多いのだが、
姿が真市に酷似している点(ほくろ、服の柄など)や登場時のBGMからオマージュである事が窺える。
大地の怒りと呼ばれる怪獣ギーストロンを倒すためタイガ達に協力してくれたが、
本来は海と大地を汚す人類を警戒しているらしく、ウルトラマン達に人類を監視するよう依頼して去っていった。

  • パロディ
『ウルトラセブン』自体がオタク趣味界隈の必修科目に近い事もあって、関連パロディもそこそこ多く、
桜玉吉氏の『しあわせのかたち』でも、ワンダーモモのパロディ回「ワンダーオオ」の敵ボスが、
地上の先住民族だったが海に追いやられた事を主張して「ノンマルトの受け売り!」と突っ込まれるシーンがある。
パロディ上等の『ケロロ軍曹』でも『冬樹、ノントルマの少女であります』というエピソードが存在。
「ノントルマ」を名乗る人魚がゲストヒロインとして登場している。
例の如く「ケロロ軍曹の祖父は地球の事をノントルマと呼んでいた」という事が語られ、地球の先住民族である事が示唆されている。
なお、ノントルマの科学力は人類どころかケロン人以上で、ケロロ軍曹達の兵器も全く歯が立たなかった。


MUGENにおけるノンマルト

カーベィ氏の製作したキャラが公開中。
『対決!ウルトラヒーロー』版ウルトラセブンのスプライト改変キャラであるため、
主に徒手空拳による近接攻撃を中心に戦う性能となっているが、
レーザー銃による飛び道具必殺技も搭載されている。
超必殺技はいずれも1ゲージ消費で、遠距離攻撃「必殺銃」に加えて、
海に潜りガイロスを呼び出して攻撃させる「ガイロス」と、
どこかで見たような体勢でアイスラッガーオカリナを投げる「オカリナ」がある。
AIもデフォルトで搭載されている。
紹介動画


二年前、この海で死んだ少年の魂が、ノンマルトの使いになってやって来たのでしょうか…?
それにしても、ノンマルトが本当に地球の先住民だったかはどうか…
それは、全てが消滅してしまった今、永遠の謎となってしまったのです…

出場大会



最終更新:2024年04月15日 12:13
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