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223 :427な俺:2012/11/28(水) 16:48:39 ID:kw5afKvk
「町に補給、ですか?」

 ある日の朝食。芳佳ちゃん手作りの納豆を掻き混ぜつつ、ミーナ中佐にそう聞き返すと中佐は頷いた。

「ええ。ロマーニャ軍から補給品の受け取りと、あと皆が必要なものの買い足しをお願いしたいのよ」

 まぁ、まだ飛行停止が抜けていないから、妥当な仕事と言えば妥当だろう。

「それに、お前の刀の修理を頼んでおいたのが昨日出来上がったそうだ。取りに行ってくれ」

 坂本少佐も声をかけてきたので、それなら行かずにはいられない。

「トラックの運転は出来ますけど、道に不安が…」
「ルッキーニを連れて行くといい。それと…そうだな。ペリーヌ、お前は確か今日は非番だったな? 悪いが、ついてってやってくれるか?」
「へ? は、はい! わかりました、少佐のお言葉なら…」

 ペリーヌが一瞬だけ不機嫌な顔になったのはヒミツだ。
 非番だから坂本少佐の鍛錬にでも付き合おうと思っていたのだろう…が、今回ばっかりはそうも言ってられないか。
 ただ、問題があるとすれば前より少し態度は柔らかくなったけれども、なんとなく気まずいって事だ。

「これは補給品のリストね」
「はい、確かに。あー、それと何か買ってきて欲しいものある人ー」
「お菓子お願いね!」「おかしー!」
「エーリカ、遊びに行くんじゃないんだぞ。それとルッキーニもな」

 エーリカとルッキーニの反応は解りすぎる。そうだろうな、うん。
 バルクホルン大尉に胃薬でも買うべきか? 何せあのエーリカの相手をしているんだしな…。

「お味噌はもう入ってますから…あ。もし、あればでいいんですけど、みりんを」
「私は、特には…」
「私もイイ」
「わかった。エイラ中尉には俺のブロマイド買ってくるわ」
「ソンナのいるカ!」

 サーニャちゃんには普通に、エイラ中尉はからかうと面白いのでそう答えておく。

「おいおい俺。エイラをいじめちゃ駄目だぜー。バイクのエンジンオイルをそろそろ…」
「了解。芳佳ちゃんがみりんで、シャーリーがエンジンオイルな…。えーと、他に」

 どうやらいなさそうである。

「あと、俺用に煙草とコーラを調達すっか…」
「だからここは禁煙だと言ったろうが」
「煙草は良くないしねー」

 バルクホルン大尉はともかく不摂生オブ不摂生のエーリカにまで言われたくない。

224 :427な俺:2012/11/28(水) 16:52:02 ID:kw5afKvk
「ちゃんと外で吸ってるさ。初日からずっと」
「近頃風呂の方に煙が来ると思エバお前カー!!!」

 エイラ中尉に締め上げられたというのにバルクホルン大尉は「自業自得だ」というし、エーリカは助けてくれないし、
 唯一助けてくれた芳佳ちゃんも「でも禁煙しましょうよ」とあっさり言われた。マジかよ…。


「エーリカ…何故ここにいる」

 格納庫の軍用トラックの運転席を開けたとき、荷台からエーリカの顔が覗いていたのに気付いた。
 落としそうになった煙草を慌てて運転席備え付けの、使われた気配の無い灰皿へと押し込む。

「お前、今日哨戒じゃねーの?」
「シャーリーに頼んだ!」

 これである。俺が呆れていると、ルッキーニとペリーヌの二人が現れる。

「あら、ハルトマンさん」
「俺だけだとお菓子買ってくれなさそうだからねー」
「えーそれはやだー」
「おまえら…」

 遊びに行くんじゃないんだぞー、と思いつつとりあえずエンジンをかける。

「ほんじゃま、行きますかい」

 では、ついでに一服…しようとして、それが最後の一本であることに気付いた。

「ラッキーストライク売ってるかなぁ」
「禁煙しなよ」「禁煙しなさい」「きんえん!」

 見事なトライアングルアタックだった。
 おまけに火をつける前からルッキーニの手で口から引っこ抜かれて灰皿に押し込まれてしまった。

「ところでルッキーニ。道はこっちで合ってるか?」
「そう、まっすぐー!」

 しかしのどかな道である。道の脇の牧場では水牛がのんびりしている。
 ネウロイの侵攻を受ける前の欧州各地で見られた光景。今では…解放されたガリアや、ヒスパニア、ロマーニャぐらいでしか見られない光景だ。
 それでも、必ず平和という訳じゃない。だからこそ、その小さな平和が嬉しいんだ。

「基地で騒ぎになってなきゃいいけどな…」
「どうしてー?」
「エーリカが無断外出してることさ」
「大丈夫だよー。非常時用にストライカー積んできたから」
「下手すっと無断出撃も追加になるだろ。兄ちゃん、エーリカをそんな風に育てた覚えはありませんよ」
「ふっふーん。自室禁固6回が7回になったところで問題なし!」
「お前がどうして撃墜数の割りに昇進してないのかよくわかった」
「ぶー。別に昇進なんてしなくてもいいもんねーだ」
「まぁ、俺もさほど興味は無いけどさ」
「じゃあなんの為に話しましたのよ…」

225 :427な俺:2012/11/28(水) 16:55:27 ID:kw5afKvk
 ペリーヌがため息をついた時だった。

「ん?」

 後ろから追い上げてくる爆音。何だ、と思った直後。
 猛スピードで軍用トラックを追い抜く、3輪自動車。
 凄まじい煙が荷台のペリーヌとエーリカを襲い、二人の咳き込む声が聞こえる。

「ごほっ…ごほっ…! なんですの、今の」
「うえー…」
「……」

 ギアをチェンジする。

「上等」

 アクセルを力の限り踏み込む。3輪自動車ごときが軍用トラックを追い抜くとはいい度胸。
 こちとら、伊達に激戦区ばかりを転戦してきた訳ではない。

「ゼロヨンだろうがゼロセンだろうが、売られたケンカは買ったらぁぁぁぁぁっ!!!!」
「今のあなたに何がありましたのぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

「このコーナーが天王山だぜ!」
「おいぬいたー!」

 絶妙なハンドリングと共に後輪をドリフトさせ、3輪自動車を見事に追い抜く。

「「イぇーイ!」」

 俺とルッキーニはハイタッチを交わし、そしてエーリカとも。
 ペリーヌは…顔が真っ青だった。しまった、速度出しすぎたか。

「ま、勝負には勝ったし、少し速度緩めるか」
「な、何を考えてますの…って前ー!」
「へ?」

「あちゃー…ハンドルは急に曲がれないというが、まさかこうなるとはなぁ」

 カーブを曲がりきれず、慌てて急ブレーキと急ハンドルをかけたものの既に遅し。
 トラックは道路を外れて草原の中をドリフトし、でっかい岩に横から衝突して停まった。
 運転席側の屋根と側面が盛大に凹んでしまい、フロントガラスには大きくヒビが入っている。

「あんな速度を出したらこうなりますわよ! まったく、誰も怪我しなかったから良かったものの!」
「とほほだぜ」
「「とほほー」」

 肩をすくめつつそう呟き、エーリカとルッキーニも同時に同じ仕草。見事なシンクロ。

226 :427な俺:2012/11/28(水) 16:58:27 ID:kw5afKvk
「どうしますのよ、これ」
「うーむ…お、エンジンはかかるか」

 フロントガラスはヒビで真っ白だし、運転席の上部分は屋根が盛大に凹み、運転席側のドアも歪んで開かない。が、エンジンとハンドルは問題なく作用するようだ。

「よーし、ちょっと離れてな」

 ジャケットを腕に巻いて、フロントガラスを全部叩き割る。これで視界確保。後はバックで道路まで戻れば完璧。

「ちょっと風通しがよくなったぜ?」
「もはや何も言えませんわ…姉さん、苦労したでしょうね」
「あー…確かに問題児集団を超越したレベルだったらしいな。報告書まとめて持ってった時にワイン飲んでてさ、その時に散々愚痴られて…」
「その時に直しなさい!」


 ロマーニャ市街の、ロマーニャ軍の集積地で食料や燃料などの補給品を受け取る。きちんと、リスト通りである。

「リスト照会、完了と。お疲れ様です」

 ロマーニャ軍の兵士にそう敬礼を返し、次は市街地で嗜好品の類をそろえなくてはいけない。
 トラックを動かし、集積地の邪魔にならない場所にトラックを停める。

「さて、色々買い足しに行きますかい」
「「おかしー!!」」
「こら、走るなお前ら」

 走り出す二人の背中に軽く触れる。一度触れて魔力を送り込んでおけば、1キロぐらいまでなら固有魔法は届く。
 エーリカとルッキーニを固有魔法で持ち上げて両手でホールド。俺は保育士か。

「「はーなーせー!」」
「暴れるなよ、お菓子あげないぞ」
「「!」」

 一瞬で動きが止まる。二人。解りやすすぎるぜ。

「よし、何か買ってやろう。好きなの選べ。……ペリーヌもどう?」
「わ、私はいいですわ流石に…」

 ペリーヌはやはり、真面目なようだ。正直、そんなところが大佐に似てる。それもそうか。
 ならば…視線を彷徨わせると、ロマーニャ名物のジェラート屋台を発見。ちょいと少し離れてコーヒージェラートをゲットである。

「ほい」
「…あら、ありがとうございます」
「ん、この前迷惑かけたし、そのお詫びも兼ねて」

 そう返事をした後、ペリーヌは「別にいいのに…」と答えつつぱくり。

227 :427な俺:2012/11/28(水) 17:03:31 ID:kw5afKvk
「……これ、コーヒー味ですのね…」
「え? 苦手だった?」
「ガリア貴族にコーヒーは禁句ですわよ!」
初めて聞いた」

 エーリカとルッキーニは店先でお菓子を選んでいるが、また珍しいものでも見かけたのか目を輝かせて、数分後には両手でいっぱいのお菓子を抱えていた。

「多いな、流石に」

 まぁ、お菓子好きだとは思っていたけど。

「買えますの、そんなに?」
「大丈夫だ、問題ない。店長、ツケといてくれる?」

 俺の問いに店長は頷き、伝票を出す。

「お名前様は?」

 俺は実にいい笑顔でこう答えた。

「501Jfw基地のエイラ・イルマタル・ユーティライネンでお願いします」
「ナチュラルにエイラさんに支払い押し付けましたわ!?」
「あー…俺はたぶん今朝の事根に持ってるんだよ」

 しばらくエイラ中尉の近くには座れないな。

「あれ、ペリーヌがジェラート食べてる!」
「え? こら、俺ー! わたし達にもー!」
「わかったわかった。買ってやるから」

 俺は保護者か。

 酒屋を何件かはしごして頼まれていたみりんを発見して購入し、ついでにワインとブリタニア産ウィスキーを数本調達。
 しかし、リベリオン製コーラはやっぱり無かった。リベリオン軍に頼むしかないようだ。
 その代用品として、色合いの近いガラナなる炭酸飲料を買ってみたが、味のほどはわからない。

「旨いのか、これ?」
「…買ったのは俺さんですわよ?」
「それもそうか」
「そろそろお昼だよ」

 俺の呟きの後、ルッキーニがそう口を開く。確かにもう昼過ぎだ。

「んじゃ、いったん荷物をトラックに置いてから昼飯にするか。午後には、エンジンオイルと…刀取りに行かねぇとな」
「「はーい」」

 エーリカとルッキーニは実にいい返事だが、なんだか本当に保育士みたいだな。
 子供の頃、エーリカとウルスラを連れて遊びまわってた時も、そんな風に返事は…エーリカだけはしてくれてたか。

「俺さん、何笑ってますの?」

228 :427な俺:2012/11/28(水) 17:06:41 ID:kw5afKvk
 ふと、顔がほころんでいたのか、ペリーヌからそう声をかけられる。

「ああ。昔、エーリカとウルスラ連れて遊んでたときを思い出してさ。エーリカは昔から変わらないなって思って」
「へぇ」

 ペリーヌは意外そうにエーリカを見てから、言葉を続ける。

「仲がよろしいんですのね」
「妹みたいなもんだからなぁ」

 そんなやり取りをしつつ、トラックに着いたので、まずは荷物を入れる。
 飯は地元に明るいルッキーニにでもいい店を紹介してもらうとしよう。

「それにしても、いい賑わいをしてますわね」
「ロマーニャは元気の国だから!」
「ええ、これぐらいの元気をガリアの人たちにも出してもらわないと」
「ペリーヌなら出来るよ」

 3人のそんな会話が聞こえる。
 ガリアは、501の活躍で解放された。そのニュースを聞いた時は、凄いと思ったのと同時に感慨深かったのを覚えている。
 ガリア解放は、大佐の願いでもあったから。そして同じ願いをペリーヌは背負って戦い続け、それを果たしたのだ。
 もし、オラーシャでのアレが、1年遅ければ、大佐は祖国解放の瞬間を目にすることが出来ただろう。
 そう思うと…少しだけ切ない。
 それを振り払うように荷物を荷台に入れ終えて、声をかける。

「終わったぞ、ルッキーニ。旨い店教えてくれるか?」
「うん、いいよー! ついてきて!」
「おう」

 俺がついていこうと足を踏み出し、エーリカとペリーヌも歩き出した。

 そして数歩。
 行き交う町の中で、走りぬく少女とすれ違った。

 彼女はルッキーニと同じように、よく日焼けしていた。
 歳はルッキーニよりやや上、サーニャちゃんぐらいで。
 でも、ロマーニャ人らしくない…エイラ中尉のような髪の色。

「悪い! 先行っててくれ!」

 気がついたら、駆け出していた。その少女は既に遠くへと走っており、もたもたしていればすぐに見えなくなるだろう。
 だけど…。
 あんな特徴的な、ロマーニャ人らしさと、そうじゃないのが一緒の特徴は、見違えるはずが無いんだ。

「カルロ…!」

229 :427な俺:2012/11/28(水) 17:10:05 ID:kw5afKvk
 427の妹分だったナイトウィッチ
 ルッキーニのように元気で、とっても足が速くて、俺の事を兄のように慕ってくれてた。
 彼女の姿が大通りから路地へと消える。俺は急いで走りこみ、路地へと入った。

 しかし、そこにはもう誰の姿も無い。
 気のせいだったのだろうか?
 それとも、単なる勘違いか?
 彼女の故郷である事が見せた幻覚だろうか、と思いながら急いで元の場所へと戻る。

「悪い悪い。ただの勘違いみた…」

 そう声をかけようとした時、3人が2人の男に声をかけられている?
 エーリカが二人の前に庇うようにして立っている―――絡まれている?

 ホルスターからP38を引き抜き、構えた直後―――ペリーヌが俺に気付いた。

「わー! 俺さん! 撃っちゃ駄目ですわよ!?」
「ほへ?」

 銃を下ろさないままそう呟くと、その二人がこちら側を振り向いた。

「「あ!」」
「!?」

 意外な奴ら、と言えば意外な奴らだった。

「ベネディクト! それと…471の誰か!」

 ちなみに誰かの方はずっこけた。

「思い出してやれよ、ソーサだよ。リベリオンの」

 ベネディクトが肩をすくめながらそう口を開いたので、俺も記憶が戻ってきた。

「ああ、ソーサか。ラウンドハンマー作戦のとき、駐屯地でサルサ1瓶一気飲みした」
「それお前の隊のマイケルの事じゃねぇかよっ!」


 10分後。俺達はルッキーニお勧めだというレストランにいた。
 とりあえず、相手が誰なのかわからない3人の為に紹介してやる事にする。

「連合軍夜間戦闘航空団は427の他に、448ってのと、471ってのがあって…まぁ、448は427より前に壊滅したから、今現役で稼動してるのはこいつら471だけなんだ。
 こいつはベネディクト。427設立前からずっと戦友だったんだよ。色々と世話になってる、いい奴だよ」
「ベネディクト中尉だ。よろしく、501のお嬢さん」
「で。こっちはリベリオン陸軍のソーサ。アフリカで、ポーカーに負けた時の罰ゲームに女性ウィッチのテントに全裸吶喊したバカだ」
「だからそれもお前の隊のマイケルの事だろ!」

230 :427な俺:2012/11/28(水) 17:13:15 ID:kw5afKvk
「あんまり興奮するな、ルッキーニが怖がってるだろ」
「誰のせいだと思ってやがるテメェ…!」
「あ? 股間を撃ち抜くぞ9センチリベリアン?」
「やーめーんーかー。まったく、お前ら顔を合わせれば喧嘩しかしねーのか。3人がドン引きしてるぞ」

 俺とソーサの間にベネディクトが割って入り強引に引き剥がしてる間にエーリカは平然と注文をしていた。

「俺と、そちらのお二人さんはどうするー?」
「アラビアータ」
「ぺペロンチーノを頼む」
「俺はどうすっかな…。えーと…あ、じゃボロネ―ゼを」
「あら、ご一緒ですわね」

 ペリーヌと一緒のメニューだと!?
 やべぇ、少し緊張してきたわ。同じメニューが被っただけってのに…。

「で、だ。ベネディクト。お前らいつロマーニャに来たんだ?」
「一昨日だ。近々、ヴェネツィア上空のネウロイの巣を叩き落す為の作戦が展開されるからな」
「ああ…俺と一緒か」

 さすが上層部。ヴェネツィアを解放すれば、西部戦線からもオストマルク方面に進める。
 カールスラント方面は従来通りガリアからも進めるので、西部と東部、双方でカールスラント・オストマルク両戦線を進めるようになる。

「まぁ、もう一つの理由として、お前に話しておきたいことがあるんだ」
「…なんだ?」

 ソーサが周囲に気配を配り、誰も聞いていないことを確かめてから、エーリカ達にも顔を近づけるように手で示した。

「501の皆に聞かれてもいいのか?」
「関連が無い訳じゃない」

「501が再結成されてロマーニャに配属された理由、504がトラヤヌス作戦の失敗で壊滅状態になったからだが、まぁこれは知ってるな?」
「ああ」
「失敗とあらば、ヴェネツィア方面から撤退した時に、504の殿になったウィッチを援護してロマーニャまで送り届けたウィッチ達がいたらしい」
「ロマーニャ軍のウィッチだろ? 別に変じゃない」

 俺の言葉に、ルッキーニが首を振った。

「その時、ロマーニャ軍も結構被害受けてたって聞いたから…」
「そうなんだ。それに、それが男の部隊だったんだ」

 ソーサが口を開き、俺は思わず息を呑む。

「お前らじゃなくてか?」
「ああ。トラヤヌスの頃は俺らはまたアフリカ送りだったんだ」
「俺はその頃スオムスで寒さに凍えてたよ。輸送機の護衛しながらな」
「他に男性ウィッチ部隊が設立されてたのでは?」

231 :427な俺:2012/11/28(水) 17:16:18 ID:kw5afKvk
 ペリーヌの言葉にベネディクトと俺、ソーサは同時に首を左右に振る。

「有り得ない。そんなのが出来てたら、俺がそっちに組み込まれてる筈だよ。皇帝命令とはいえ、一人でずっと放置なんざ現実的でもないし」

 俺がそう解説すると、ベネディクトは言葉を続ける。

「で、件の隊員に、話を聞く事が出来たんだ。…殆どは遠かったけど、二人ほど至近距離で、一人とは会話もしたらしい」

 ベネディクトはここで声の調子を更に落とした。

「504の隊員と会話した奴は、サングラスで、サイモンと呼ばれてたそうだ…そしてその隊員はサイモンともう一人、目撃したのは手榴弾をバラまいてネウロイを追い払ってたそうだ」
「それって…!」

 サングラスをかけたサイモンと名乗る兵士。俺の記憶が正しければ、ブリタニア軍の男に一人。
 それと手榴弾をばら撒くという戦闘スタイルは、カールスラント軍出身の男に一人いる。

「ああ。オストマルク戦線で、お前らより先に全滅したはずの448の奴だ。ブリタニア軍のサイモン、それに俺ら元エックスレイ組のマテウスだ」
「ってことは、アイツら生きてるのか!?」

 あの448が、生きている。にわかには信じがたい話だ。

「可能性としてはな。まだ未確定だが。もし、生きてるとすれば、まだロマーニャにいるかも知れない」
「それで、調査しに来たんだ。それに…もし生きていたら、彼らがお前に接触するかも知れない。それを伝えに来た」
「わかった。こっちもなんか気になったら連絡する。後で連絡先を頼む」

 ここで、声のトーンを元に戻す。頼んでおいたパスタが来たからだ。

「ところで俺、追い抜かれたからってあのウスノロい軍用トラックでハッスルするんじゃないぞ?」
「……なんで知ってるんだ?」
「使っているジープが故障してたからアレしか借りれなかったんだよ」
「待て、あの三輪自動車お前らかよ!?」
「追い抜いた後岩に突っ込んでたのは笑ったよ」
「記憶を失えソーサ」


「じゃあ、またな…あ。なぁベネディクト。煙草持ってない? 実は切らしてる上に基地が禁煙でな」
「427の喫煙率が異常なだけだ。禁煙しろ」
「お前まで言うかよ…」
「あ、それとこれ連絡先な。今はロマーニャ軍の基地に居候してるからそこから繋いでくれ」

 パスタを食べ終えた後、ベネディクトとソーサとも別れ、再び町へと繰り出した。
 シャーリーに頼まれたエンジンオイルと、腕のいい鍛冶師に出していたという扶桑刀を引き取り、トラックまで戻る。
 その間に念願のラッキーストライクのカートンを手に入れた!
 これで一息つけるが、エーリカとペリーヌの視線が痛いです。何故だ。

232 :427な俺:2012/11/28(水) 17:20:16 ID:kw5afKvk
「んじゃ、戻るぞー」

 トラックのエンジンをかけ、まずは動かす。
 しかし妙な話を聞いた、と思う。448の連中が生きているかも知れないという事。
 オストマルク戦線で消息不明になった彼らが、ロマーニャへ渡るにはどんなルートを辿るのか?
 それを考えてみたら、当時まだ人類側の防衛線があったヴェネツィアを経由し、ストライカー履きで空を渡ればロマーニャに行くこと自体は簡単なのである。
 あくまでも、2年近くロマーニャに潜伏中と想像すれば、だ。
 しかし彼らに2年も潜伏する理由があるのか、とも疑わしい。

「448のバックボーンは確かマロニー大将…」
「「「え?」」」

 思わず考えていたことが口に出たのか、3人が同時に聞き返してきた。

「あ、悪ぃ…」

 慌てて謝罪する。ガリア解放でのマロニー大将と501の出来事は俺も知っている。俺個人としてはあのマロニー大将がウィッチを失脚させようというのが考え辛かったが。

「マロニー大将がどうかしたんですの?」
「ああ。448はマロニー大将の指揮下だったんだ。448の母体…って言っても、部隊員の半数ぐらいなんだが、ブリタニア軍の男性ウィッチ部隊でね。
 それの設立に貢献したのがマロニー大将だ。もし仮に448が生きてたとすれば、何故マロニー大将に接触しなかったのかってのが妙でね」

 何せ直接の指揮権を持つ指揮官である。それに、失脚したとはいえ、それでも将官である以上、まだまだ権力自体はある。
 一つ組織を隠蔽することぐらいは容易なはずなのだが。

「マロニー大将は反ウィッチ派では?」
「いや、正直な話それ、俺から考えれば有り得ない話なんだよなぁ。あ…その、皆がおっさんのせいで酷いことになったのは知ってんだけどさ」

 屋根がへこんでるせいで幾らか運転し辛いがこれはまぁ仕方ない。

「少なくともシェパードみたいな無茶苦茶は言わないしな」
「シェパード大将は確かに評判悪いよね」

 エーリカの言うとおりである。何せ部下の犠牲を気にしないモンだから。

「471はともかく、俺が無茶苦茶な命令ばっかされてんのもシェパードのせいなんだよねー。ハーフナー少将は東部戦線の担当だったから、448と427連続での喪失が響いて失脚。
 マロニーは西部戦線担当だったからその時はまだ良かったけど…ウォーロックのせいでドナドナされちゃったし。マロニーがいる頃はまだマシだったんだぜ?
 ナイトウィッチが来たのはマロニーが散々探し回って引っ張ってきたからだしな…。まぁ、訓練終わりたての新人だったけど」

 それに、427壊滅後もこっちには人員回してくれなかったし…まぁ、あの人はブリタニア軍で俺はカールスラント軍だからしょうがないかも知れんけど。

「けど、448が生きてるってなりゃあ、話は別だな」
「中佐に報告するんですの?」
「…正直、大きくはしてもらいたくはないから、今日の話は秘密にしといてくれ」

 ペリーヌにそう答えて、俺はアクセルを踏み込む。
 何か悪いことが起こらなければいいんだけど。俺は正直、そう考えていた。

233 :427な俺:2012/11/28(水) 17:23:42 ID:kw5afKvk
 それに……448が生きているなら、もしかしたら、とも思ってしまう。
 昼間見たカルロが幻じゃなくて、本物だとしたら。皆が生きているなら。
 どれだけ、幸せなんだろうか?
 どれだけ、楽になれるんだろうか?
 妄想だと解っていても、それを考えてしまう俺がいた。

 さて。
 トラックが事故ってしまったことにより、俺は飛行停止が3日追加され。
 エーリカは無断外出で営倉行き3日間となった。ついでに俺とエーリカはバルクホルン大尉の硬い拳骨を貰った。

「うーん…ガラナ、微妙な味だな。やっぱりコーラが欲しい」
「不思議な味ですよね…」

 翌々日。ネウロイの襲来もあり、飛行停止中の俺は待機中のリネットちゃんと一緒に談話室でガラナを飲んでいた。

「どうにか理由つけて皆に押し付けちまうかな」
「冷蔵庫ガラナだらけになっちゃいますから止めてください」

 何せ後20本以上もあるのだ。1ケースも買うんじゃなかった。今のところエイラ中尉にその借金はバレてないが時間の問題だろう。

「あー、飛行停止ってのは辛い! 自業自得とはいえ辛い! でも扶桑刀の訓練するわけにも行かない!」
「え、何でですか?」
「昨日やってたら坂本少佐とチャンバラする羽目になった」

 扶桑人はネウロイに近接戦闘を挑むのが好みらしい。ハットリは固有魔法の関係で近接戦闘で出鱈目な強さを誇っていたが、471にも同じレベルの剣豪がいたし、
 448に至っては二人いた扶桑人がどっちもバケモノ(というか片方明らかに人間じゃない奴)なのでなんとも言えない。
 しかし坂本少佐はそんな奴らとタメを張るどころか剣術だけならそれ以上なのでなおさらタチが悪い。

「お陰で今でも痣だらけだよ…」
「そ、それは…。あ! 戻ってきたみたいですね」

 リネットちゃんが窓の外を見ながら口を開き、それから10分後に皆が談話室に戻ってきた後、郵便物を携えたミーナ中佐も姿を現す。

「皆、お疲れ様。郵便が届いてたわよ」

 皆がそれぞれミーナ中佐が置いた郵便物を分けていた後、サーニャちゃんがその中を見て口を開いた。

「エイラ。請求書が来てるけど、何か買ったの?」
「へ? わ、私は最近何モ買ってイナイゾ? どれどれ…」
「えーと…酒屋からワイン1ダース、ウィスキー1ダース、ガラナ30本と、菓子店からお菓子代で、鍛冶師から刀の修理代。あ、別の酒屋からみりん2ダース」

 ヤバイ、これはヤバイ。俺はそそくさと窓から脱出する。

「なんダ、コレ。買った覚えがナイゾ? そもそも私は酒はソコマデ飲まナイゾ。菓子はサルミアッキぐらいダ、刀の修理代ナンテ―――」
「でも、全部エイラの名前よ」
「ン? 刀の修理代?」

 エイラ中尉が真相に気付く前に俺は逃げる!
 今のエイラ中尉に捕まったら何をされるかわからない!

「俺ぇぇェェェェッ!!! 何処に逃げタァァァァァァ!!!」
「え!? さっきまでそこでガラナ飲んで…い、いない!?」

 リネットちゃんの声が響いた直後、エイラ中尉が俺を追跡するべく外へと飛び出してきた。

「見つけたゾォォォォォォ!!!」
「ぎゃあああああああああ!!!」

 ちなみにこのサバイバルな鬼ごっこは501全隊員を狩り出して1時間に及び、捕まった俺はツケを全額払う事とエーリカの部屋掃除をする事を約束させられて幕を閉じた。
 あと、バルクホルン大尉と坂本少佐のダブル拳骨もちょうだいした。
 その後エイラ中尉の個人的な制裁として薄着で木に吊るされた時は駄目かと思ったが(サーニャちゃんが後で下ろしてくれました)。
 ガラナは全部エイラ中尉が引き取ってくれました。中尉曰くサウナ出た後に飲むとウマイらしい。
最終更新:2013年04月02日 18:57