270 :
427な俺:2012/12/05(水) 18:43:00 ID:c0/7SmSs
今日は、俺の飛行停止処分が明ける日だ。思えば10日間の間、結構長かった気がする。
今日の予定は、訓練に加えて哨戒…だったはずだが、そういえば哨戒は誰とロッテを組むのだろうか。
そんな事を考えながらベッドに横たわっていると、ノックの音が聞こえた。
「後30分」
「起きてますのね。朝食の時間ですわよ!」
盛大な音と共にドアが開かれ、ペリーヌが顔を出した。
「うわ、マジかよ!?」
慌てて跳ね起きると、ペリーヌはすっとジャケットを差し出してきた。
「んあ、ありがとうペリーヌ」
カールスラント軍制式の黒いジャケットを着てから、ふと思う。
ところで、なんでペリーヌがわざわざ起こしに来てるんだ?
「どうしましたの?」
「いや、わざわざ、どうも?」
「……俺さん、昨日の夜にミーナ中佐に言われたのではないんですの?」
昨日の夜。記憶を巻き戻してみる。昨日の夜。
俺が(表向き)負傷で10日間の飛行停止を喰らった為に司令部から427宛の書類がどっさり来たので、ミーナ中佐の執務室でそれの整理をしていた。
ミーナ中佐と二人きりといっても書類仕事に集中してればうふーんな事になる訳が無いのは当たり前。そう考えていた時の事。
「ああ、そうそう。明日から俺君もシフトに組み込んであるから」
「了解です。哨戒と、訓練ですね。あ、ロッテは……」
「一応、司令部から届いた戦闘記録、読ませてもらったのだけれど……」
ミーナ中佐はここからハイパー説教タイムになった。
「撃墜内訳の大半どころか9割超が小型ネウロイで対大型の経験が少なく、機動がほぼ乱戦に特化。戦闘開始直後の突出が多し。そして射撃は平凡」
胸に大量にぐさぐさ来る言葉である。
「ここまでロッテに組み込みづらい子もそうそういないわね。幾らエースでも極端にも程があるわ」
「酷い言われようですけど事実なので何も言えません」
「でも俺君はちゃんと指示に従うと言ってくれたわよね?」
「イエス、アイ、マム」
「そこで。ペリーヌさんとロッテを組むことを命じます」
「ペリーヌの了解は?」
「もう伝えたわ」
「なるほど。……って事は、俺、僚機ですよね?」
何せ階級はこっちが下だ。前は大尉だったけど今は少尉だし。
どうしよう、今まで僚機になったことが殆ど無いんだけど。
271 :427な俺:2012/12/05(水) 18:46:02 ID:c0/7SmSs
とりあえず思い出した。そうか、ペリーヌとロッテを組むことになったんだった。
理由としてはペリーヌの方も今までリネットちゃん、芳佳ちゃんとケッテを組んでいたけど、二人のロッテ経験を積ませる事と、ペリーヌに指揮経験を持たせる事というのが理由だった筈。
ミーナ中佐の言葉を信じれば、だけど!
「あー………朝から訓練だっけ?」
「ええ。朝食の後に」
訓練ばっかりはサボる訳には行かない。流石にこれ以上隊内での評価を暴落させたくないし。
さて、今日の朝飯はなんだろうか。
「さて、全員揃ったな。まぁ、まずは肩慣らしで編隊飛行で飛んでみるか」
バルクホルン大尉はそう宣言してから、「後に続け」とエーリカを伴って飛び立っていく。
ペリーヌの僚機だからペリーヌの後に続けばよいのだけれど…問題は僚機としての行動である。俺、今まで僚機経験が(訓練でも)まるでないのである。
やばい、どうしよう。
とにかくペリーヌの後に続き、離陸する。僚機。
それは自身の背中を任せられる立場であるという事。そして、長機の背中についていく事。
背中を、守ること。
ぐっとMG42を握りこむ。腰につけた8本のショートソードも、背中に背負った扶桑刀も、いつもより重い気がする。
「どうしましたの?」
「いや、久しぶりに飛んでるから、ちょいと速度を合わせるのがね」
ペリーヌの問いにそう返しておく。確かに、ストライカーの調子がいつもと違う気がする。いつもより自由に飛べない。
もう少し速度を上げて上手く追従し…おかしい。加速するのに、加減が効かない。
慌てて減速してどうにか速度を合わせたが、本当にどうしたものか。
「この前の戦闘でどっかイカれたのかよ、このポンコツめ。少しはしゃきっとしやがれ」
軽く悪態をつきつつストライカーをぶっ叩くと、前からペリーヌの声が響いた。
「俺さん。ストライカーを粗末に扱わないでくださいまし」
「……ぐ…すまなかった」
それから昼食まで一通り飛行訓練や射撃訓練もやったが、ストライカーへの違和感は晴れなかった。
エイラ・サーニャ組、
シャーリー・ルッキーニ組の二組と二戦ずつ
模擬戦をやったがどうにもストライカーが思い通りに動かず、1勝を挙げるのがやっとだった。
まぁ、
初めてのロッテにしては上出来だと坂本少佐は笑っていたのでペリーヌが不機嫌になる事は無かったが。
昼食の前にいったん、整備兵に「ストライカーに違和感アリ」と伝えたが、昼食後戻ってくれば「どこにも異常なし」の返事だった。
おかしい、おかしすぎる。
昼食後の哨戒前に、もう一度だけストライカーを履いて、飛んでみる。やはり、何か違う。
整備兵の腕前を信頼していない訳ではないのだが、どうにもなにかおかしい。
272 :427な俺:2012/12/05(水) 18:49:48 ID:c0/7SmSs
「ちょっと! 先に飛ばないでくださいまし!」
「ん? ああ、悪い」
ゆっくりと減速して降下し、滑走路に着陸。ストライカーに違和感がある時にアクロバットな着陸なんぞしたくない。
「ふぃー……駄目だ。まるで、駄目だ。何故だ…」
「……さっきも言ってましたわね? 10日間の飛行禁止の間に腕が鈍りましたの?」
「いや、ストライカーが絶対おかしい。でも、整備兵は異常なしだって言うし」
「どんな具合なんですの?」
「いつもより自由が利かない。そんな気がするんだ」
「それ以外は?」
「ノーマルさ。急にエンジン出力が悪くなるなんて事は無いし、飛行する分には問題ない。飛行する分にはだ」
そう、飛行する分にはなんら問題が無い以上、余計にタチが悪いのだ。
おまけに整備兵によるチェックでなんとも無いとあらば、他に考えられるのは。
「―――あなた、サボりたいんじゃないでしょうね?」
「とんでもない」
ただ単にサボりたいだけか、もしくは心理的な要素だろうと思われるのが関の山だ。
「どうしてもというのなら、後でシャーリーさんにでも見てもらいなさい」
ペリーヌはそう言った後、ブレンを手に取って滑走路へと戻る。
「それじゃ、哨戒に行きますわよ?」
「了解」
思えば、ロマーニャの空に哨戒に出るのは初めてかも知れない。
スオムスの空はどこまでも青く澄んでいたけれど、ロマーニャの空は暖かさも持つ青さだった。
眼下の海の色と相まって、とても綺麗だ。
「綺麗な国だな。ルッキーニが自慢するのも、よく解るぜ」
「ロマーニャに来るのは初めてだったんですの?」
「ああ。何せ今まで激戦区か過酷な場所を盥回しにされてたからな……えーと、確か最初がオラーシャとカールスラント国境で。
その次にいったん、1942年次のヒスパニアでの戦線に回されて、その後また東部戦線カールスラント方面で。
43年に
アフリカ北部戦線、それでスエズ運河奪還作戦やって失敗したらオラーシャ戦線に戻されて、427が壊滅して…。
44年はまた東部戦線カールスラント方面になって、その後はウラル方面に投げ込まれて一部隊の増援なんぞしてたら、そこで501の
ガリア解放ニュース聞いて。
その後、またアフリカに戻されたと思えば1ヶ月後にスオムス送りになってそっからロマーニャ転属命令だよ」
ああ、見事に流れに流れた我が427の御旗よ。あ、エックスレイ時代も混じってたけど一番最初しかねぇ。
「世界を半周ぐらいはしてますわね」
ペリーヌは苦笑する。
「まぁなー。お陰で色々やれたのはいい経験だよ」
273 :427な俺:2012/12/05(水) 18:53:47 ID:c0/7SmSs
カールスラント方面で厄介になった部隊のちっちゃなデストロイヤー娘は元気だろうか。
当時は俺もまだ小さかったのでお互いに「ちんまい」と言い合ってたのだが。
過去の事を思い出すのは、辛いこともあるけど、いい事もある。
「前向きですのね」
「まぁな。まだ、完全に吹っ切れたわけじゃないところもあるけどさ」
でも、いちいち過去の事を後悔するよりも、今、俺は生きている。
そして仲間達の為にも、飛んで、ネウロイを倒して、故郷を、ひいては世界を取り戻したいという願いは誰もが一緒なんだから。
「でも、故郷を取り戻したい、守りたいって気持ちは皆同じさ」
「……でしょうね。ガリアが解放されてからは、なおさら皆さんのそんな気持ちがわかるようになりましたわ。あの頃は私だけで精一杯でしたから」
なんとなくイメージが出来る気がする。精一杯で、崩れそうなペリーヌを。
考えてみれば、皆一人の女の子なんだよな。エーリカだけじゃなくて、皆もそうさ。
そこで、会話が途切れてしまった。新しく話題を探すか。
「あ、そう言えばペリーヌは毎朝坂本少佐の特訓メニューこなしてるんだよな」
「ええ、もちろんですわ! 坂本少佐のメニューは素晴らしいものですから!」
「って事は、ペリーヌも坂本少佐と同じように扶桑刀振ってるわけ?」
「流石にそれはありませんわ。……そういえば俺さんも扶桑刀を持っていましたわね」
「おう。ハットリとの友情の証だ」
扶桑から来た、親友。戦友だと胸を張っていえる奴だ。
「どんな方でしたの?」
「いい奴だったよ? 変わってるっちゃあ変わってたけど……俺と義兄弟の契りなんぞ結んだな」
「へ?」
流石のペリーヌも呆然である。
「あまりにも仲が良かったもんでな。…当時は階級は俺の方が上だけど、ハットリが半年分誕生日早いからハットリが義兄って事で」
「そ、それは大したものでしたのね…」
「まぁ戦闘でも一緒に暴れてたからなぁ。真っ先に最前線に飛び込んでくんだぜ、アイツ」
たはは、と呑気に笑っていると、インカムから声が響いた。
『ペリーヌ! 聞こえるか! ネウロイだ。大型2、距離が近い。すぐにスクランブルを出すからそれまで行動を見張ってくれ!』
「わかりました、坂本少佐。俺さん、ネウロイを刺激しないように慎重に行動しますわよ!」
「了解」
とは、言ったものの、あちらさんが何処にいるか気になるのだけれど。
そう思いつつ、白い雲の中に目を凝らすと、遠くの方に浮遊する物体。わーお。
「大型…大型は苦手だ」
「いちいちボヤきませんの」
274 :427な俺:2012/12/05(水) 18:56:48 ID:c0/7SmSs
それにいちいちツッコミを入れるペリーヌもペリーヌだ。
ふと、ぞわりと嫌な感覚がした。
「回避!」
思わずそう叫んだ直後、ちょうど俺の真上ギリギリをビームが通過していった。
「なんてこったい!」
「くっ……坂本少佐! 大型2体が攻撃を開始しました!」
『シャーリー達は今飛び立った直後だぞ!? もう少し待ってくれ!』
「んじゃ、最低限の抑えにして、回避をメインにしますか?」
『ああ。そうしてくれ。頼むぞ、二人とも』
「だとさ」
「途中で割り込んだりしませんの! ともかく、彼らの侵攻を遅らせながら、皆さんの到着を待ちますわよ」
「了解」
MG42を構えなおす。ショートソードを使うのは魔力を食うので、シャーリー達が到着してからだ。
それに、こんな大型相手じゃギリギリまで近づかないとまともに削れもしなさそうだし。
「おおっと!?」
ネウロイのほうも俺達が攻撃を仕掛けてこないのをいい事に、ビームを数発連発して撃つようになってきた。
「ったく、ここまで大型じゃシールドなんざ使えそうに無いな」
「ですわね、とと、俺さん!」
「うおっと!」
ペリーヌに言われてなけりゃ上半身がこの世からおさらばしていたに違いない。
こっちが反撃してこないのをいい事にやりたい放題しやがって!
おまけにこうもビームをホイホイ撃たれちゃ、そのうちロマーニャの町まで届きそうだ。
「……ペリーヌ。奴の攻撃を引き付けて見る。その間にシャーリー達を探してくれるか?」
「駄目ですわ」
「このままだとロマーニャの町にも被害が出るぞ!」
「………」
「ペリーヌ!」
迷ってる暇は無いんだぞ、と言いかけると、ペリーヌはようやく息を吐いた。
「攻撃を引き付けるのだけは認めますわ。その間に削れるだけ削ってみます」
「そうこなくちゃ」
ようし、いっちょうやりますか!
MG42をしっかりと構え、遠慮なく銃撃を浴びせる。射撃は下手でも、あそこまで的が大きければ平気で当たる。
2体の大型ネウロイは接近し、反撃を始めた俺に気付いたのか、一旦動きを止めた後、再びビームを放ってきた。
これでしばらくはロマーニャの町に接近する心配は無いだろう。
275 :427な俺:2012/12/05(水) 19:00:22 ID:c0/7SmSs
『あんまり近すぎると、当たりますわよ?』
「そこはペリーヌの腕前でなんとかしてくれ」
『無茶言わないでくださいまし!』
ペリーヌの声が飛ぶが、とにかくネウロイの攻撃を引き付ける為に遠慮なく飛ぶっきゃない。
その間にペリーヌが攻撃を仕掛けてくれれば―――いや、上手く合間を飛び回らないと、1体しかこっちに寄ってこない!
「!」
ヤバイ、1体がペリーヌの方に注目しているが、ペリーヌは俺を追尾するもう1体を削るのに夢中だ。
ならば、やるしかない。
「くそったれぇぇぇぇぇ」
片側のストライカーだけの出力を上げて短い距離で無理やり斜めに捻るような飛行と共に1体の前に飛び出し、そして空中でリボンを描くような飛行で下側に離脱―――の筈だった。
「え?」
がしゃり、という音と共にストライカーの緊急停止。片側だけの出力を上げて上へと捻って向いた時。
「のおっ!?」
「俺さん!」
声に気付いたのかペリーヌが2体目のネウロイを迎撃、その間にストライカーが再起動して、無防備な俺が攻撃される事態は免れた、が。
「何をやってるんですの!」
「悪い…けど、今…ん?」
いや、待て。普段、あんな機動してもストライカーが止まるなんて事は無かったし、今のはエンジンが不調だった止まり方ではなく、非常時用の緊急停止のような。
すると、一つだけ考えられることがあるのだが…。
俺がそんな事を考えているところへ、遠くの方から4つの人影。シャーリー達が追いついてきたようだ。
「とにかく、合流しますわよ!」
ペリーヌが言うより先にシャーリーとルッキーニ、リネットちゃんと芳佳ちゃんペアがやってきた。
「わお、本当にデカいなぁ。堅物とハルトマンも呼ぶべきか?」
「なに、シャーリー達が着てくれたら百人前さ!」
「…俺さん、百人力です」
どうやら俺の扶桑語は間違いだらけのようです。芳佳ちゃんといい坂本少佐といいちゃんと指摘してくれるのね。
「それとシャーリーさん、俺さんのストライカーが不調のようですの」
「いや、ペリーヌ。その原因がさっきのでわかった気がする」
「え?」
「とと、シャーリーちと肩貸してくれ」
「ん、お、おおっと!」
シャーリーには悪いがシャーリーにもたれかかるようにして、ストライカーを一旦停止させる。うーん、背中に当たる丘が最高だ。
近くでルッキーニがうじゅうじゅ言っているが気にせずに膝を曲げてストライカーの側面を開いた。
276 :427な俺:2012/12/05(水) 19:03:40 ID:c0/7SmSs
「飛行中にメンテナンスなんてするなよ!」
「すぐ終わる!」
やはりそうだ。今までのストライカーに無かったものが、ある。道理で整備兵は異常なしという訳だ。
手を突っ込み、機体制御補助ユニットを力任せに引き抜いた。
「「「「「ええっ!?」」」」」
全員の声が驚く中、もう片方の足も外し、配線を幾らか応急処置的につなぎなおして準備完了。
「これでよし、と」
「……俺、そんなのでよく飛べるな……」
まぁ、普通では考えられないカスタムだ。何せ元々あるはずのユニットが一つ丸ごと無いのだから。
さっきの機動中に止まったのは危険機動への安全装置が働いたからだろう。
「こっちに慣れきるとノーマルだと飛べなくなっちまうのさ。お陰が今日だよ!」
そう答えてからストライカーを再起動。いつものように、自由に飛びまわれる気がする。OK。
「ほんじゃま、行くぜ!」
目が点になっていた皆が慌ててネウロイに意識を戻し、それぞれ散開する。
今まで使っていなかったショートソードに魔力を込めて、8本の剣がそれぞれ鞘から抜かれて、動き出す。この剣はもう、俺の剣。狙った相手は、逃がさない。
8本の剣をそれぞれ縦に連なるように動かし、1体目のネウロイへ次々と飛ばす。
装甲は硬いので少し削れる程度だが、それでも連続して続ければいずれはコアが出るはず。
「俺さん、前に出すぎですわよ!」
「おっと!」
ペリーヌの声を聞いた直後にビームが放たれ、慌てて横へと回避し、そのまま速度を上げて後ろへと戻る。
「あそこまで動けるのって凄いな」
「シャーリー、奴は結構硬いぞ!」
下方向への宙返りで方角を戻し、もう一度ネウロイを視界に捉えつつ、飛ばしていた剣を引き戻す。
「だろうな。あんだけ大きい奴ならちょっとやそっとじゃ行かないぞ」
「2体でコンビを組んでいますのね、援護し合ってますわ」
2体のネウロイは1体を深追いすればもう1体が邪魔にし現れる、効率良く片方ずつ倒そうにも、もう片方を釘付けにしておく必要がある。
何かいい方策は無いか、と考えているとリネットちゃんが口を開いた。
「あの、あの2体…同じ型っぽく見えて、少し違う型みたいです。援護し合うって言うより、前衛と後衛をしっかり区別してるような……」
277 :427な俺:2012/12/05(水) 19:06:41 ID:c0/7SmSs
言われて全員で注意深く見ると、確かに形状は似た感じがする。しかし、動きが違う気がする。さっきの動きを思い出してみよう。
俺の誘いに積極的に寄ってくる奴は常に前衛に出ている。もう1体は後方にいて、前衛の奴の援護。俺とペリーヌが後衛の奴に注視すれば、前衛が邪魔をする。
ならば、前衛を常に引き離し続けるのが良い方策かも知れない。
「ひらめいた。さっきの続きと行こうぜ、ペリーヌ」
「それだと後衛が常に妨害してくるではありませんの」
「いいや、俺とペリーヌで前面の奴を相手にして引き離すのさ。そうすりゃ後衛は皆に阻まれて動けないし、前衛も援護に戻れない」
「おー…凄いですね、俺さん」
「うじゅ! 俺、すごーい!」
芳佳ちゃんとルッキーニが褒めてくれたので、少し照れくさい。
「よし、それでやってみるか!」
「おう。1体は任せろ!」
シャーリーの言葉に頷き、俺は再び剣を展開。後ろでペリーヌが「まったく…」と呆れていたがまんざらでもないようだ。
大型ネウロイの上や下へと何度も回り込み、剣による攻撃を浴びせていく。その間にペリーヌが銃撃を浴びせていくが、やはり大型、なかなか削れない。
ただ、先ほどとは違い、2体目が妨害してこないだけまだマシだ!
ネウロイの形に合わせて、円を描くように飛び回ってビームを回避し、時に上下を反転しながら剣を楔のように何本も打ち込み、
時に宙返りでビームを回避する。自由自在に飛ぶ空は、戦うよりも何よりも、気持ちいい。
だけど、それだけじゃネウロイは倒せない。
しかし、それを何とかするのも、ウィッチだ!
「なかなか削れないな!」
「ええまったく! 中まで攻撃を届かせることが出来ればよいんですけれども!」
「ん? ペリーヌ、今なんて?」
「中まで攻撃が届けばいいと言ってるんですの! 無理ですけれども!」
いいや、待て。
中まで攻撃を届かせる。それは、俺達が今持っているMG42やブレンでは出来ない。そう、銃火器では。
でも、それ以外の攻撃手段を、俺達は持っている。俺は全てのショートソードを引き戻し、MG42をベルトで肩にかける。
「何をしてるんですの!? 銃をしま……」
ペリーヌが言葉を続けるより先に、背中の扶桑刀を抜いた。この前修理が終わったばかりで、素晴らしい輝きを放っている。
「ペリーヌ、援護よろしく!」
「え? ちょっと、俺さん――――」
一気に急加速し、とにかく勢いをつけるべく、速度をぐいぐい上げていく。制御補助装置が無い分、ストライカーは魔力を込めれば込めるほど、エンジン加熱を気にせず加速していく。
流石にシャーリーみたいな人類トップスピードは無理だけど、それでもメッサーシャルフが出せる限界まで速度を上げてやる。
足が猛烈に熱くなってきたけど気にしない!
ネウロイの放つビームを速度を落とさないまま身体を逸らす事で回避し、とにかく距離を飛んで加速を載せていく。
そして、上空まで飛んで―――ネウロイを真下に捉える。ここからの急降下だ!
278 :427な俺:2012/12/05(水) 19:09:52 ID:c0/7SmSs
「い、いったい――――まさか!? 俺さん、何を考えてるんですか!?」
流石に異変に気付いたのか芳佳ちゃんが悲鳴をあげ、シャーリー達も視線を向ける。
だけどもう遅い。限界まで上げた速度と落下スピードもあわせて、ネウロイへ突撃していく。
落下しながら、ペリーヌに向けて、インカムで叫んだ。
「トネろ、ペリーヌ! トネるんだよ!」
「! わかりましたわ!」
そして、強烈な衝撃と共に、俺の両手に握られた扶桑刀がネウロイへと突き刺さった。
盛大にネウロイに身体ごと落下し、コントロールを失って数回バウンド。シールドを張りはしたし、ストライカーユニットのお陰もあってか、大怪我……とは言わないが手足の痺れが酷くて、まともに……。
と、思ってたら。
「のおっ!?」
ストライカーユニットからは黒煙が噴出しており、加熱も酷いことになっていた。
おまけに、ネウロイの身体から滑り落ちた際、ストライカーがうんともすんとも言わなくなっていた。
だがしかし、ネウロイに突き刺さった扶桑刀は、にゅっと突き出た避雷針のようなものだ。
そしてさっき俺が叫んだように、既にペリーヌはトネールを放つ準備を終えているし、無防備になるその間も、さっき芳佳ちゃん達が気付いてくれたお陰でフォローしてもらっている!
「トネール!」
ペリーヌのレイピアから放たれた電撃は、ネウロイに突き刺さった刀越しに、装甲の内側へ、コアへとあっという間に浸透していった。
盛大に砕け散っていく、ネウロイ。
「やるなぁ! 誰かへるぷー!」
見送りつつ、まったく動かなくなってしまったストライカーごと落ちていく俺…を掴んだのはシャーリーの手。
「めちゃくちゃ危ないだろうがっ! あーあーストライカー酷いことになってるじゃないか!」
もう1体のネウロイの方は、というと俺達が1体をひきつけている間にリネットちゃんがコアをぶち抜いたらしい。
流石リネットちゃん。おっぱいに見合う実力だ。そうこうしている間に、皆集まってきた。
「まったく、ひやひやさせないでくださいまし! 本当に僚機というポジションを理解してますの!?」
「すいません、初めてです。……ま、でもペリーヌがトネらなきゃ撃破できなかったし。流石はペリーヌ」
「誤魔化さないの! ストライカーも壊れてるじゃありませんの」
「ちょっと見せてくれよ、俺……きゃあ!」
「ど、どうした?」
俺のストライカーを覗き込んだシャーリーが悲鳴をあげて肩をわなわな震えさせ始めた。
279 :427な俺:2012/12/05(水) 19:13:04 ID:c0/7SmSs
「お、俺はストライカーの使い方ってものを考えろ! エンジンが真っ黒だ! これはひどい!」
「あちゃー……さっき機体制御補助外したときに冷却ユニットへの配線も外しちまったのかな?」
「どう見てもそうだろ! エンジンが…惨めな事に…」
「それにこれもひどいよ、俺ー」
それに合わせるように、ルッキーニが見せてくれたのはネウロイに突き刺した扶桑刀。
速度もあわせて力任せに突き刺したせいか、刀身はぐにゃぐにゃに曲がっており、トネールの直撃でそこら中焦げ焦げである。
坂本少佐が見たら発狂しそうだな、これ。修理したばっかりなのに。
「ま、何はともあれ撃墜したから帰りますか」
「お前自力で帰れないだろ……」
それに、苦手だった大型ネウロイだって、皆で力を合わせれば怖くない。
そして当たり前だが、帰ってきた俺は悲惨な事になったストライカーを見た整備兵を真っ青にさせ、ついでにカスタム要望を伝えたらそれもそれで怒られた。
更に扶桑刀の無惨な姿を見た坂本少佐が卒倒した為にミーナ中佐からは拳銃を向けられて追い回される羽目になった。
それを逃げ切ったと思えばバルクホルン大尉にストライカーの重要性を、シャーリーからはストライカーの扱い方についてをステレオで聞かされた。
酷い目に遭った。俺、泣いちゃう。
最終更新:2013年04月02日 18:58