Episode11 『刑死者』
---連合国軍本部:応接室---
ミーナ「失礼します。」
司令「まあそう肩を張らずに・・・かけたまえ、ミーナ中佐。」
ミーナは連合国軍の総司令部から呼び出しを受け出張していた。
今回のこのカールスラント奪還にあたり、世界中の協力を仰ごうと考えたカールスラント皇帝が新たに連合国軍の結成を宣言。
狙い通り、カールスラントを中心に世界中の殆どの国が加盟した。
今ミーナの向かい側に座っている男は、皇帝から直接信任を受けた連合国軍の総司令官。
現在第501統合戦闘航空団はこの連合国軍の指揮下に置かれている。
そのため彼が今回の501の上層部の人間。
と言っても忙しすぎて部隊の運営は完全にミーナに任せきりなのだが・・・
司令「先日のアルカナネウロイの一件、ご苦労だった。君たちが無事で何よりだ。」
ミーナは度々上層部へアルカナネウロイについての報告をしていた。
故に司令もアルカナネウロイについてはそれなりに知っていた。
司令「それで、アルカナネウロイの残りは?」
ミーナ「おそらく、あと1体かと・・・」
司令「そうか・・・俄かには信じがたいが、それを倒せばネウロイは消えると・・・」
ミーナ「確信は出来ません。以前接触した『グレゴリ』と名乗る2人組みはそう言っていましたが・・・」
司令「なるほど・・・しかし、それがもし本当なら次回の満月の晩が最終決戦となるな・・・」
ミーナ「ええ・・・」
司令「そこでミーナ中佐。君に提案がある。」
ミーナ「・・・なんでしょう?」
司令「次回の決戦にあたり、君の部隊に『もう一度』彼女を投入してもらいたいと思う。決戦となるなら、彼女の力は大いに役立つはずだ。」
ミーナ「もう一度・・・?」
司令「入りたまえ。」
ガチャ…
ミーナ「あなたは・・・!」
---ブリーフィングルーム---
エーリカ「ゲッ・・・」
ゲルト「なぜまたあいつが・・・」
ミーナ「という訳で、次回の満月の作戦のために投入されたハンナ・ユスティーナ・マルセイユ大尉です。」
ハンナ「またよろしくな、子猫ちゃんたち。」
ミーナ「彼女は以前の私たちの作戦に参加したことがあるから、皆さんもよく知っているでしょう。」
ハンナが俺へと視線を向ける。
ハンナ「ん?お前、どこかで・・・」
俺「?」
彼女は眉間に手を当て、少し考える。そして・・・
ハンナ「・・・!!思い出した!お前、『銀獅子』だな!!」
芳佳「銀・・・獅子・・・?」
俺「は?銀獅子?」
ハンナ「恍けるな!お前の顔はよく覚えているぞ!」
俺「は・・・はぁ・・・」
ハンナ「あの時のこと・・・忘れるものか・・・!!」
――――――――――
――――――――
――――――
1942年10月
---アフリカ上空---
――あれは不気味なほど巨大な満月が輝く夜だった・・・―――
ドガァァァァァァァン!!
ハンナ「うあああぁぁ!!」
ライーサ「ティナ!!」
―――私は墜ちていた・・・―――
―――私の大切な戦友の・・・使い魔が、死んでしまった・・・―――
―――受領したばかりのストライカーは炎上し、煙が出ていた―――
―――正直このときは死を覚悟した・・・上からはネウロイも迫って今にもビームを放とうとしていた――
―――そんな時だった・・・―――
?「はぁッ!!」ドガアァァァ
―――上から何かがやってきた――ウィッチだ――しかもよく見ると男だった―――
―――そいつはネウロイを持っている刀で一撃で葬った―――
?「本気出せオルフェウス!!」
―――そしてそいつはストライカーの速度を上げ、落ちる私へと手を伸ばす―――
?「間にあえッ・・・!!」
―――縋る思いで私も手を伸ばした――死ぬのが・・・怖かった・・・―――
パシッ!
―――そいつの手が私をつかんだ・・・――――私は、助かった・・・――――
?「大丈夫っスか?怪我はないっスか?」
――そいつに抱え上げられた・・・――――
ハンナ「く・・・うぅ・・・」ボロボロ
―――泣いた。―――
―――
死の恐怖、相棒の死――――安堵や悲しみ・・・いろんな感情がゴチャゴチャになって私は泣いてしまった――――
?「あ・・・いや・・・ちょっと・・・どうしよ・・・」
ライーサ「ティナ!!」ブロロロロロロロロ
?「あ。あなたこの方の知り合いさんっスか?」
ライーサ「あなた、ティナに何をしたんですか!?」
?「へ?」
ライーサ「へ?じゃありません!ティナを返してください!!」
?「あ・・・はぁ・・・」
ライーサ「よかった・・・もう大丈夫ですからねティナ・・・」
ライーサ「とっとと消えなさい!この野獣!!」キッ!
?「野獣って・・・まぁいっか・・・んじゃ失礼しますね。」
――――あいつはそのままどこかへ去っていった――私は依然泣いたままでその後のことは良く覚えていない――――
――――――――――――――
――――――――
―――――
---ブリーフィングルーム---
俺「あ~・・・そういえばそんなこともあったような・・・」
ハンナ「あの後お前のことをいろいろ調べた。そしたら
アフリカの銀獅子の噂に辿りついた。」
ハンナ「その男は月の晩にストライカーを駆り、銀色の長い髪をたなびかせ、一刀の下にネウロイを葬る。」
ハンナ「だが刀を使う銀髪のやつなんてどこの部隊を捜してもいなかった。ましてや男だ。そうそう見つかるはずがない。」
ハンナ「それがまさかこんなところにいるとはな・・・」
ハンナ「お前には・・・私の無様な姿を見られてしまったからな。いつか決着をつけなければならないと思っていた。」
俺「は?決着?」
ハンナ「私のプライドを傷つけたお前を倒さなければ私の気がすまない!勝負しろ!!」
俺「えー・・・」
ハンナ「もちろんハルトマン、お前との決着もつけるからな!」
エーリカ「え~・・・」
マルセイユと決闘する事になってしまった・・・
翌日・・・
---バルト海上空---
ハンナ「祖国で決着をつけることになるとは夢にも思わなかったな。」
俺「決着って・・・別に俺は・・・」
ハンナ「ミーナに実弾の使用許可をもらえなかったのが残念だが、まあいい。今はこいつで我慢しよう。」
俺「いや・・・実弾使ったら死にますって・・・」
ハンナ「つべこべ言うな!ハルトマン!!」
エーリカ「はいはい。じゃあ・・・はじめ!」
ハンナが勢いよく上昇する。
俺はあまり乗り気ではないが一度ハンナと距離をとる。
今回の決闘のルールは簡単だ。
お互いにペイント弾を撃ち、どちらかが被弾するか、シールドを張った方の負け。
そして固有魔法の使用禁止。
それだけだ。
上昇していたハンナが急降下してくる。
その勢いでスピードに乗り、俺を追い始めた。
ハンナ「どうした!逃げ腰では私には勝てないぞ!!」ガガガガガガガガ
俺「くっ・・・」ブォォォォォン
ハンナの攻撃をループで回避する。
本来ならハンナの固有魔法である『偏差射撃』を用いれば被弾させることなど簡単なのだが
今回は自ら固有魔法縛りを宣言してしまったため使うことが出来ない。
完全に実力勝負だ。
俺がループの頂点あたりまでくると、背面の状態からロールして水平飛行へ入る。
ハンナ(へ~・・・やるじゃないか・・・)
俺「逃げても変わらないんならッ・・・!」
俺は向きを変え今度はハンナに真っ向から仕掛ける。
俺「いけッ!」ガガガガガガガガガガガ
ハンナ「ようやくやる気になったか!!」ガガガガガガガガ
お互いに向かい合い。
2人はロールを加え回避しながら引き金を引く。
しかしお互いに弾に被弾することなくすれ違う。
俺は再びループしようとするがハンナに後ろをとられる。
ハンナ「もらった!!」ガガガガガガガガ
俺「やべっ!オルフェウス!」
俺の思念に応えるようにストライカーが不規則なブレイクを繰り返す。
ハンナ「なんだあのシザーズは!?」
弾は全て回避されてしまった。
そこから捻りこみを行い今度は俺が後ろを取る。
ガガガガガガガガ!!
だが相手は仮にもスーパースター。アフリカの星だ。
そう簡単に被弾するはずもない。
ハンナは垂直降下をしながらバレルロールとシザースを行う。
俺「マジかよ・・・」
ハンナ「舐めてもらっては困るな。私はアフリカの星だぞ?」
決着がなかなかつかない。
それから数分間幾度となく撃ちあいを続ける。
ハンナ「墜ちろッ!」ガガガガガガガガガガガ
俺「嫌っス!!」ヒョイッヒョイッ
しかし何分、何十分と経っても一向に互いに被弾する気配はなかった。
逃げる追うを
繰り返してもきりがない。2人は再び真っ向勝負へ。
ガガガガガガガガガガガガ!!
互いに回避を行いつつ相手を確実にしとめるため弾を撃ち続ける。
そして、互いが正面に立ち銃を向け合う。
カチッ…
ハンナ&俺「!?」
2人とも弾切れだった。
ハンナ「またか・・・」
俺「夢中になって残弾数のこと忘れてたっス・・・」ゼェゼェ…
結局、勝負はつかなかった。
ハンナ「ハルトマンの時も同じだ。弾が切れて、勝負がつかなかった・・・」
俺「さすがスーパースターっス・・・やっぱちときついっスね・・・」ゼェゼェ…
ハンナ「お前も私が予想したよりはるかに強かった・・・まあ、固有魔法を使えば私が勝っていたがな。」
俺「もう勘弁してほしいっス・・・」
ハンナ「仕方ない・・・今回は引き分けということにしておいてやろう。」
ハンナ「次はハルトマン、お前の番だからな!」
エーリカ「えー・・・やだよ~・・・」
この後結局エーリカも決闘をする羽目になるのだがそれはまた別のお話・・・
---???---
イヴ「次でどうやら彼女らの戦いも最後となりそうですね。」
アダム「せやなぁ。オレらもそろそろ動かんとアカンちゃいますか?」
イヴ「そうですね。私たちに残された時間はあまりにも少ない。」
イヴ「今後の動向待つには時間が惜しい・・・直接見に行くとしましょう。」
アダム「りょーかい・・・」
数週間後・・・
---ブリーフィングルーム---
俺「交流会?」
ミーナ「ええ、そうです。」
ミーナ「カールスラントはほとんどの領土をネウロイに占領されているのは知っての通りよ。」
ミーナ「そんな中で親を失い孤児となった子供達もたくさんいるわ・・・」
ミーナ「そこで、孤児院の方から子供達に元気を与えるためにぜひウィッチである私たちと交流会をしたいとお願いがありました。」
ゲルト「それで、引き受けたんだな。」
ミーナ「ええ。それで、私たちからも出し物をすることにしたわ。」
ルッキーニ「なにするの~?」
ミーナ「それはね・・・」
ミーナ「お芝居よ!」
ハンナ「フッ・・・ならば主役は私だな!」
ミーナ「あ、配役はもう決まってるの。」
ミーナが配役のリストが書かれた紙を見せる。
ハンナ「どれどれ・・・なに!?」
エーリカ「なになに~・・・プッ!」
エーリカ「プククククク・・・・ハンナ、木だって!アハハハハハハハハ!!」
ハンナ「納得いかない!中佐、配役は変えられないのか!?」
ミーナ「だってあなたが来る前からあったお話だから・・・もう変える役もないのよ・・・」
ハンナ「そんな・・・」
坂本「それで、残りの役は?」
ミーナ「じゃあ順番に言うわね。」
ミーナ「まず主役の白百合姫。これはサーニャさんにやってもらいます。」
サーニャ「私が・・・主役・・・」
エイラ「本当カ!?よかったな、サーニャ!」
サーニャ「う・・・うん・・・///」
ミーナ「そして女王様はペリーヌさん。魔法の鏡は美緒にやってもらうわ。」
ペリーヌ「女王って・・・」
坂本「鏡?よく分からんが面白そうだな!」
ミーナ「狩人役にはエイラさんね。」
エイラ「狩人?まあいいカ。」
ミーナ「6人の妖精さんには宮藤さん、リーネさん、ルッキーニさん、
シャーリーさん、それにトゥルーデにフラウね。」
芳佳「妖精だってリーネちゃん!」
リーネ「うん!どんな役なんだろうね!」
ゲルト「妖精なんてやったことないぞ・・・」
シャーリー「バルクホルンが妖精・・・ククク・・・」
ゲルト「わ、笑うなリベリアン!」
俺「あの・・・俺は・・・?」
ミーナ「俺さんは唯一の男性ですから・・・」
ミーナ「王子様役よ!」
数日後・・・
---交流会会場---
院長「今日はみんなのために、ウィッチの人たちが来てくれましたよ!」
髪の短い男の子「ウィッチだって!」
ツインテールの女の子「すごーい!」
ミーナ「こんにちは皆さん!」
子供達「こんにちはー!」
ミーナ「今日は皆さんのために私たちウィッチのみんなで劇をすることになりました。」
ミーナ「どうぞ楽しんでくださいね!」
ショートヘアーの女の子「なにするんだろ~?」
おかっぱの男の子「たのしみ~!」
ミーナ「それでは、『白百合姫』のはじまりはじまり。」
パチパチパチ
舞台の幕がゆっくりと上がる。
サーニャ「私は白百合姫」
サーニャ「ああ、なんて美しい空かしら。木々も、小鳥さんたちや森の熊さんたちもみんな幸せ色に輝いているわ!」
サーニャ「さあ、みんないらっしゃい!」
サーニャ(恥ずかしい・・・///)
ミーナ「白百合姫はその優しい心と美しさでみんなの人気者です。」
ミーナ「そして、お城では・・・」
舞台の幕が下がり、場面が変わる。
ペリーヌ「わたくしが世界一美しい王妃でしてよ。魔法の鏡もいつもそう言ってくれますわ。」ボーヨミ
ペリーヌ(なぜ私がこのような役を・・・)
メガネの男の子「あのおねーちゃんなんかへたくそ~」
髪の長い女の子「つまんなーい」
ガヤガヤ…
ペリーヌ(クッ・・・いいですわ。
ガリア貴族として、ここで失態をするわけにはまいりません!)
ペリーヌ「お、おほほほほほ! 鏡よ鏡よ鏡さん・・・世界で一番美しいのはこのわたくしですわね! 」
坂本「私が魔法の鏡だ。で、何の話だったか・・・」
ペリーヌ「ですから、世界で一番美しいのはこのわたくしかと聞いているのです!」
坂本「違う!」
ペリーヌ(そ・・・そんな・・・少佐・・・)ズーン…
ミーナ(美緒・・・強く言い過ぎよ・・・)
坂本「そうだな、白百合姫という娘がどうやら一番美しいようだぞ。」
ペリーヌ「まぁ!白百合姫ですって!?そんなはずありませんわ!何かの間違いではなくって!?」
坂本「間違いない!はっはっは!」
ペリーヌ「ムキー!憎い・・・憎いですわ!」
ペリーヌ「そうですわ・・・それならあの子を殺してしまえばいいのよ!」
ペリーヌ「来なさい!狩人よ!」
エイラ「なんだ~ツンツンメガネ~」
ペリーヌ「ち、ちょっとエイラさん!今は演劇の最中でしてよ!もっとちゃんとおやりになって!」ヒソヒソ
エイラ「なんダヨもー。わかったヨ。」ヒソヒソ
エイラ「何でございましょうカ王妃様。」
ペリーヌ「森に住んでいるという白百合姫を殺してきなさい!」
エイラ「はぁ・・・わかったヨ。」
ミーナ「こうして狩人さんは、白百合姫を殺すために森へとやってきました。」
再び幕が降り、場面が変わる。
サーニャ「それじゃあ行ってきますね、妖精さんたち。」
芳佳「行ってらっしゃい、白百合姫。」
シャーリー「道中は気をつけろよ~」
ゲルト「何かあったらすぐに戻ってくるのだぞ。」
サーニャ「ありがとうみんな。それじゃあね。」
ミーナ「白百合姫は森の奥へと入って行きました。」
サーニャ「今日もいい天気だわ。今日は妖精さん達に何を作ってあげようかしら。」
エイラ「あれが白百合姫・・・ハッ!」
エイラ「なんと美しい姫君ダ!私にあんな子を殺せるはずがない!」
エイラ「しかし王妃の命令もあるシ・・・そうダ、あのイノシシを殺してその腸を持って帰ろう!」
ミーナ「狩人さんはすぐそこにいたイノシシを殺してその腸を持って帰ることにしました。」
また場面が変わる。
ペリーヌ「よくやりましたわ!これで私が世界一のはず!」
エイラ「はい。では私はこれで・・・」
エイラが退場する。
エイラ「なんで俺が王子様なんだよぉ・・・」ブツブツ
ちょっとした文句をたれながら。
ペリーヌ「さあ鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番美しいのはこのわたくしで間違いありませんわね!」
坂本「違う!!」
ペリーヌ「なんですって!?それでは誰だと言うんですの!?」
坂本「前にも言っただろう!白百合姫だ!!」
ペリーヌ「そんな!あの子は死んだはずじゃ・・・」
坂本「死んでなどいない!」
ペリーヌ「あの狩人・・・まさか!」
ペリーヌ「ムキー!こうなったらわたくしが直々に殺してあげますわ!覚悟しなさい!白百合姫!!」
ミーナ「こうして老婆に変身した女王様は毒りんごを作り白百合姫に食べさせるために森へと向かいました。」
場面が変わり・・・
ルッキーニ「いってらっしゃーい白百合姫!」
リーネ「家は私達が守っていますから安心してくださいね。」
エーリカ「がんばってねー!」
サーニャ「ありがとう。いってきます。」
ミーナ「今日も白百合姫は妖精さん達の食べ物を探しに森へと出かけます。」
サーニャ「今日は少し曇っているわ。いやなことが起きなければいいのだけれど・・・」
ペリーヌ「そこのお嬢さん。」
サーニャ「?私のことですか、お婆さん?」
ペリーヌ「そうですわ。あなたにこれをあげましょう。」
サーニャ「まあ。どなたか存じませんがりんごをくださるなんて。ありがとうございます。」
ペリーヌ「よろしいんですのよ。さあお食べになって。」
サーニャ「はい、ではいただきます。」カプッ
サーニャ「うっ・・・!大変、これは毒だわ・・・このままでは死んで・・・しま・・・」パタリ
ペリーヌ「やりましたわ!これで私が世界一でしてよ!おーっほっほっほ!」
ミーナ「白百合姫は女王の毒りんごで死んでしまう呪いにかかってしまいました。」
ミーナ「こうなってしまっては、誰かのキスでしか目覚めることは出来ません。」
場面が変わる
ハンナ「・・・・・」
ゲルト「くぅ・・・うぅ・・・うおおおおおお!白百合姫ええええ!!」
芳佳「ひどい・・・」
リーネ「どうしてこんなことに・・・」
ルッキーニ「うええぇぇん!」ボロボロ
エーリカ(すご・・・本当に泣いてるよ・・・)
シャーリー「だれか助けられる者はいないのか!?」
ミーナ「そこへ、すごく偶然通りかかった王子が登場します。」
俺「失礼妖精さん。どうして悲しんでいるのかな?」
エーリカ「おお!あなたは王子様!」
ゲルト「白百合姫が・・・白百合姫が・・・うおおおおおおぉぉぉ!!」
ハンナ「・・・・・」
シャーリー「白百合姫が毒りんごを食べて呪いにかかってしまったんだ!」
俺「何ということだ・・・!私に何か出来ることは・・・」
シャーリー「この呪いは誰かがキスをすることで解けるらしい・・・」
俺「わかりました。なら私に任せてください!」
ゲルト「わかった・・・好きにしてくれ・・・」
俺が地面に寝かされたサーニャへと近づく。
俺「どうか私のキスで目覚めておくれ。白百合姫!」
そして顔サーニャへと近づける。
俺(あくまでフリだ・・・フリ・・・)
唇の手前で顔を止める。
芳佳「やった!白百合姫が目を覚ました!」
ルッキーニ「やったー!」
ゲルト「よかった・・・本当に良かった・・・」
ミーナ「こうして、白百合姫は目を覚ましその後は王子様と妖精さんと一緒に長らく、幸せに暮らしましたとさ。おしまい。」
子供達「わー!」
パチパチパチ…
メガネの男の子「おもしろかったー!」
髪の長い女の子「白百合姫がおきてよかった!」
拍手はまだ鳴り止まない。
俺「なかなかなりやまないっスね・・・もう少しこうしていても大丈夫っスか?」ヒソヒソ
サーニャ「は・・・はい・・・///」ヒソヒソ
サーニャ(どうしよう・・・顔が近い・・・///)モジモジ
俺(やば・・・すっげぇカワイイ・・・///)
2人が顔を赤くする。
エーリカ「・・・・・」ニヤリ
俺の背後に立っていたエーリカが怪しげな笑みを浮かべる。エーリカはゆっくりと俺の背後へ忍び寄り、
ゲシッ!
俺「ん!?」
サーニャ(えっ・・・)
エイラ「ん・・・?」
ハンナ「・・・・・・」
---ブリーフィングルーム---
ミーナ「みんな、お疲れ様。今日はとっても良かったわよ!」
ゲルト「子供達のためだからな!」
シャーリー「バルクホルンものすごく気合はいってたからな。ククク・・・」
ゲルト「なぜそこで笑う!?」
エイラ「二人ともさっきからなんか顔赤いゾ・・・?」
エーリカ「そりゃ~ね~」ニシシー
俺&サーニャ「・・・・・///」
ミーナ「子供達もとても喜んでいたわ。院長さんもまたやって欲しいって。」
ハンナ「なら今度こそ主役は私だな!」
ミーナ「はいはい。じゃあそのときはお願いね。」
しばらく他愛もない会話で盛り上がりデブリーフィングは終了した。
---俺の部屋---
深夜0:00
俺「ん・・・」
何かの気配を感じ目が覚める。近くにはもはや見慣れたあの少年がいた。
アニマ「やあ。こんばんは。」
俺「そうか・・・もうそんな時期だったか・・・」
アニマ「うん。次でいよいよ最後の・・・12体目だね。」
俺「そうか・・・次で終わるのか・・・」
アニマ「そうだね・・・君と会うのもあと一回・・・」
アニマ「ここまで長かったのか短かったのか・・・いろんな事があったよね。」
俺「ああ。たとえば見知らぬ少年がいきなり部屋に現われるとかな。」
アニマ「それ、僕のことだよね?フフフ・・・」
俺「ははは・・・」
なぜか自然と笑みがこぼれる。
アニマ「フフフ・・・でも、まだ思い出話をするにはちょっと早いよね。」
俺「ああ、それは全部ケリをつけてからだ。」
アニマ「じゃあ、終わったらまた会いにに来るからね。」
アニマ「くれぐれも気をつけてね・・・バイバイ。」スー…
アニマはそのまま消えてしまった。
俺「・・・絶対に勝つ!」
俺は決意を新たにした。
2日後の夜・・・
決戦前夜
---ブリーフィングルーム---
ミーナ「・・・いよいよ、明日で最後の作戦です。」
芳佳「長いようで・・・短かったような・・・」
坂本「この半年だけでいろいろなことがあったからな・・・」
俺「みんな頑張ったっスよね。」
エイラ「そうダナ。」
サーニャ「うん。」
エーリカ「ずっとヒマしてるよりかは全然良かったよ。」
ペリーヌ「無駄なことなんて1つもありませんでしたわ。」
ゲルト「ウィッチとなってもう何年も経つが、悪くない時間だった。」
ミーナ「そうね・・・メンバーも初めのころとはずいぶん変わってしまったけど、私は今のメンバーが一番好きよ。」
ルッキーニ「あたしもー!みーんな大好き!」
リーネ「私も大好きです!」
シャーリー「これで・・・ようやく終わるんだな・・・」
ハンナ「今回の戦いが終われば私の仲間にとってもいい手土産になるな。」
エーリカ「ハンナも今は501の1人なんだからがんばれよー」
ハンナ「言われなくたってやってやるさ!」
決戦を前に皆から静かな闘気を感じる。
皆、最後の闘いに向けて気合は十分のようだ。
ミーナ「明日は最後の招集をかけることになります。ですので今日は良く休んでおいてください。」
坂本「せっかくだ、最後に円陣を組もう!」
シャーリー「お!いいな!ここで一発気合入れてこうよ!」
仲間達が中央に集まり円陣を組む。
坂本「ウィッチに不可能はない!いくぞ!!!」
全員「おー!!」
翌日・・・
ミーナ「みんな、今まで良く戦ってくれたわ・・・」
ミーナ「これが最後の作戦になるはずです。いつも通り細心の注意を払って行きましょう。」
俺「片手で捻る!」
エイラ「ダナ!」
ついに最後のネウロイとの決戦だ。
これまで以上に皆の士気が高まる。
ミーナ「それでは作戦メンバーを発表します。」
ミーナ「今回のコアの破壊担当はおそらく俺さんになるはずです。」
ミーナ「なのでメインメンバーは俺一等兵と宮藤軍曹。それとマルセイユ大尉を加えた計3名です。」
ミーナ「残りは必要に応じて応戦してゆく形になります。作戦の説明は以上です。」
ミーナ「では、オペレーション・アレス・・・開始!」
全員「了解!」
---バルト海上空---
月を背景に2つの人影が見える・・・
俺「グレゴリ・・・!」
以前ウィッチーズの前に現われた、ネウロイの模様が入ったストライカーを履いた2人組みだ。
アダム「おひさしゅーな、みなはん。」
イヴ「今日で最後と言うことは無論知っていますね?」
イヴ「あなた方はネウロイが災いを招くから倒す・・・そうですね?」
ゲルト「当然だ!」
イヴ「しかしどうでしょう。命は日々無数に死んでゆく。ネウロイなどいなくてもです。」
サーニャ「・・・・・」
アダム「ホンマはわかっとるんやろ?自分らが今の生活により一層の充足を感じてることに・・・楽しんでるってことになぁ。」
エイラ「なんダト!?」
リーネ「楽しいだなんて・・・そんな・・・」
イヴ「あなた方はネウロイが滅ぶことなど本当は望んではいない。」
イヴ「あなた方はネウロイを倒すことで自分の中の何かを消した気になりたいだけなのですよ。」
エーリカ「そんなことあるわけない!」
俺「・・・・・」
イヴ「本心の言葉とは思えませんね。」
アダム「お前らのやってることは善やない。自分を満足させるために戦っとる。そんなんは偽善や。」
芳佳「何といわれようと私たちは戦います!そして平和な世界を取り戻すんです!」
ペリーヌ「そうですわ!」
イヴ「・・・本当に愚かな人たちだ・・・・・どうやら私達とあなた方では僅かほども交わってはいないようだ。」
イヴ「いいでしょう。なら行きなさい。行ってあなた方の未来をその目で確かめるといい。」
イヴ「私達は遠くから見物させてもらいます。退きますよアダム。」
アダム「了解。」
2人はどこか遠くへ飛び去った・・・
俺「・・・・・」
ミーナ「さあ・・・気を取り直していくわよ!」
全員「了解!」
深夜0:00
最後の満月のネウロイが現われる。
サーニャ「満月の方向にアルカナネウロイを確認。『ハングドマン』です!」
そこには逆さ吊りになった蝶の羽と触覚を持った人型のネウロイがいた。
ミーナ「これで最後・・・作戦開始!!」
それぞれが持ち場へとつく。
俺「もってけ!」ガガガガガガガガガガガガガ
早速銃撃による先制。
紫電を帯びた弾丸が次々に発射され、弾丸がすべて命中する。
ギャアアアアアアアアア!!
ハングドマンの悲鳴が聞こえる。
芳佳「やああぁぁぁ!」シュンシュン!!
宮藤の手から放たれたビームは複雑な軌跡を描きながらネウロイに命中する。
しかしハングドマンは一向に動く気配を見せない。
ハンナ「私が墜とす!!」バララララララララララララララ!!
エーリカ「いくらハンナでもあたるわけ・・・」
ギュアアオオオオオオオオ!!
エーリカ「うそ・・・」
ハンナの放った弾丸は固有魔法も合わさって見事に命中した。
ここでハングドマンが動き始める。
手を前方へ翳し、何かを描くように動かし始める・・・
シャーリー「あいつ、何してんだ?」
ひと通りハングドマンが動作を終え両手を強く前へと突き出す。
サーニャ「!?何か来ます!!」
魔導針がいち早く異変を察知した。
ハングドマンの手から大量の小型ネウロイが召喚された。
ゲルト「何だあれは!?」
ミーナ「各機、ネウロイの掃討にあたってください!!」
全員「了解!!」
それぞれが召喚されたネウロイに応戦する。
ガガガガガガガガガガ!!
ドガーン!
エイラ「攻撃はちゃんと当たるみたいダナ!」
エーリカ「また小型機だよ~」バララララララララ
ゲルト「文句を言うな!勲章がやってくると考えればいいだろう!!」バラララララララララ
エーリカ「それ前にも聞いた~」バラララララララ
ミーナ「はぁっ!!」バラララララララララ
ペリーヌ「トネール!!」バリバリバリ!!
リーネ「お願い!!」ダンッ!
シャーリー「これで最後だ!ルッキーニ!!」
ルッキーニ「あちょー!!」
ズガガガガガガガガガ!
仲間達の手で召喚されたネウロイがどんどんと一掃されてゆく。
芳佳「やあああああぁぁぁぁ!!」ガガガガガガガガガガ!
一方宮藤たちもハングドマンと死闘を繰り広げていた。
ハンナ「避けられるかな?」バララララララララララララララ!!
愚問だ。避けられるはずもない。
彼女の固有魔法である偏差射撃をもってすれば当たらない的など無いのだ。
俺「相変わらずすごいな・・・」
俺たちはすでに何度かネウロイと交戦する中で彼女の固有魔法を見ていた。
が、その能力は何度見ても圧巻だった。
ハンナ「ボサっとするな!集中しろ!」
俺「は・・・はいっス!」
ハンナ「私が活路を開く!コアはお前にしか壊せないんだろう?」
俺「おそらく・・・」
ハンナ「コアが見えたらお前の一撃を叩き込んでやれ!いいな!?」
俺「ウィルコ!!」
芳佳「私も手伝います!」
ハンナ「ならまずお前のビームで装甲を削れ!削れた場所を私の偏差射撃で追撃する!」
ハンナ「コアが露出したらお前の出番だ!わかったな!」
俺&芳佳「了解!!」
3人がハングドマンへと向かう。
その間にもハングドマンの装甲は再生し、新たなネウロイを生み出していた。
ハンナ「そこをどけ!!」バラララララララララ!!
俺「ベルゼブブ!!」ブオオオオオオオ!!
芳佳「烈風斬!!」ザンッ!!
しかし3人の前ではもはや小型のネウロイなど敵ではなかった。
ズガガガガガガガガガガガガガ!!
次々に小型ネウロイが破壊されてゆく。
芳佳「あたって!!」シュンシュンシュン!!
ビームは取り巻きのネウロイを粉砕しながらハングドマンへと向かい装甲を焼く。
命中した箇所へハンナが追撃する。
ハンナ「おしまいだ!!」バララララララララララ!!
弾丸は全て狙った箇所に当たる・・・
否、ハングドマンが自ら当たりに来るのだ。
ギュオオオオオオオオオアアアアァァァァァ!!
そしてコアが露出した。
俺「いくぞ!!」
そう叫ぶと、俺はハングドマンへと急速に迫る。
だが、小型ネウロイが最後の抵抗のためか自爆特攻を仕掛け、俺を阻もうとする。
しかしそれも、シールドに阻まれ無残にも散ってゆく。
エイラ「サーニャ!」
サーニャ「うん!当たって!!」バシュ!バシュ!バシュ!
俺にまとわりつく残りの小型機をサーニャのロケット弾が爆砕する。
サーニャ「俺さん!」
俺はサーニャの声に応え親指をグッと立てた。
俺「お終いだッ!」
コアへと一気に肉薄。魔力を切先に集め・・・
シュバッ!
横一閃。
それは見事にハングドマンのコアを両断する
はずだった・・・
俺「!?」
ミーナ「そんな!?」
ハングドマンのコアには傷一つ無い。ネウロイの装甲はまた再生を始める。
ハンナ「クッ・・・!」ブオオオオオオオン!!
芳佳「マルセイユさん!」
ハンナが急速にハングドマンへと接近する。
ハングドマンはそれを察知し、近づかせまいと羽をはためかせ黒い鱗粉のようなものを飛ばす。
リーネ「なに・・・これ・・・」
ペリーヌ「力が・・・抜けますわ・・・」
黒い鱗粉の正体は細かい金属片。
それはウィッチの魔力による防御すら凌駕するほどの濃い瘴気を纏っており、どうやら彼女達の魔力を急速に奪っているようだ。
それは俺も例外では無い。
俺「ク・・・ソッ・・・!」
ハンナ「しっかりしろ・・・!銀獅子・・・!!」
ハンナはそれでも懸命にハングドマンへと向かっていた。
ハンナ「お前は・・・その程度で・・・くたばるような男じゃ・・・ないはずだ・・・!!」ハァハァ…
俺が何かに気づかされたような顔をする。そして・・・
俺「まったく・・・っスね・・・スラ・・・オシャ・・・!!」スッ
シールドを張る余力が残されない中、ハンナの前にシールドが展開される。
それはスラオシャの力によって展開された俺のシールド。シールドは金属片を弾き返し、ハンナを黒い鱗粉から護る。
ハンナ「銀獅子!!」
俺「今っス!マルセイユ大尉!!」
ハンナは頷き、わずかに露出している部分へ全ての弾丸を叩き込む。
ハンナ「はああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」バララララララララララララララララララララララ!!!
1点へ集中砲火を浴びたハングドマンの装甲はみるみるうちに剥がれ・・・
パリーン…
そのコアを完全に砕いた。
芳佳「おわった・・・の・・・?」
シャーリー「やっと・・・」
ルッキーニ「やったー!!!」
ミーナ「みんな良くやったわ!!これで・・・これで、ようやく終わりよ!!」
全員が歓喜する。
互いに喜び合い、抱きしめあうものもいた。
サーニャ「俺さん。」
俺「サーニャさん・・・エイラさんも。」
エイラ「お前結局見せ場無かったナ。」
俺「うっ・・・痛いとこ突きますね・・・」
エイラ「せっかくダ。お前が最後に締めたらどうダ?」
ミーナ「そうね。俺さんにはいつも頑張ってもらいましたし、ここは一言お願いするわ。」
俺「そうっスか?じゃあ、せーの・・・」
俺「腹減ったー!!」
俺が高らかに腕を振り上げる。
サーニャ&エーリカ&ルッキーニ「はらへったー!!」
3人もそれに合わせて腕を振り上げた。
ペリーヌ「はらへっ・・・た・・・?」
シャーリー「あっはっはっは!!なんだソレ!」
エイラ「なんだか締まらないけど・・・まァ、お前らしいカ。」クスッ
しばらく皆が笑う。
こうして、最後のアルカナネウロイ『ハングドマン』はストライクウィッチーズの活躍により退けられた。
明日から世界には平和な空が戻る・・・
戦いは・・・終わったのだ・・・
最終更新:2013年01月29日 14:16