「蒼穹の絆2-10-1」


―合同誕生祝賀会― 

月が変わり、2月。俺も退院し通常勤務に戻っていた。

 執務室で事務仕事をしていたミーナは、休憩中に俺から質問される。

俺「ところで、ミーナさんの誕生日はいつ?」

ミーナ「3月11日ですよ?」

 フム!と考え込む俺。

ミ「あら。幾つになるか計算しているのね?」

 二人で笑う。

俺「レディ?歳はあなたには関係ないですよ。
 今ちょっと考えたんだけど、、2月生まれの隊員と3月生まれの隊員が結構いるよね。全員其々の日に
 祝うのは、ちょっといまの戦況では厳しいかも? それで、2月グループ、3月グループと分けて誕生日
 を祝う、ってのはどう?盛大なパーティを其処で開く。誕生日当日は豪華な食事を提供する」

ミ「私の誕生日もお祝いしてくださるの?有難う。えーと、二月生まれは・・・」

俺「シャーリーが13日、イッルが21日、そしてペリーヌが28日。三月は、ミーナさんが11日、トゥルーデ
 が20日。 でしょ」

 パラパラと手帳をめくって確認するミーナ。合っていた様だ。

ミ「あら、凄い。ちゃんと情報収集したのね。その他は、ハルトマン中尉が4月、リーネさんが6月、坂本少佐
 とサーニャさんが8月、ルッキーニさんが12月ね」

俺「8月はちょいと忙しそうだw。あとはじっくり」

ミ「プレゼントは当日渡すのがいいかしら?それとも最初のパーティで?」

俺「ミーナさんだったら、どっちがいい?」

ミ「ええ~?難しい質問だわ。そうねえ・・・うん!パーティーで賑やかなときが嬉しいと思う」

俺「では、それでやりますか。用意もあるから、二月のパーティーは・・・」

 二人でカレンダーを見る。

ミ「10日か11日にしましょうか。予備日を考えるべきかなと思うの。あと、過ぎてしまってから
 では何か可哀想で・・・」

 さすが、作戦立案者。やることにそつが無い。

俺「では、その線でトゥルーデとシャーリーにも意見を聞いてみましょうかね。三月は?」

ミ「自分が絡むことは決め難いわよ・・・w」

俺「あ、そうかw。それでは・・・7日ないし8日では?」

ミ「ええ。お任せしますw そのほうが皆さんご馳走に飽きなくてよいでしょw?」

俺「そういうことww!」

*


俺「と、いうわけなんだ。二人はどう思うかな?」

シャーリー「やった!嬉しいよ!ご馳走の機会が一度増えるww」

バルクホルン「私は・・・・なんか済まないな・・・。任せるよ」

ミーナ「トゥルーデ?気にしちゃ駄目よ。仲間がお祝いするのは当たり前でしょ?」

シャーリー「うんうん。そうだよ?お姉ちゃん」
俺「うんうん」

バルクホルン「そうか・・・有難う//」

*

この合同誕生日パーティーの件は、その日の夕食の席でミーナ隊長から皆に提案され、完全な同意を得た。
次の日から、皆活発に準備に入る。食事の用意もあれば、飾りつけも。そして大事なプレゼントも考え
なくてはならない。軍務の傍ら、皆張り切った。相互の情報収集も大事。プレゼントが被ったら面白くない。
自分が、そして仲間が帰ってこない日が何時来るか解らぬ最前線。口にすることは無いが、心のどこかで皆
考えている。それを一時でも押しやることが出来る楽しみ事は大歓迎。


 ネウロイの迎撃戦の翌日。一番安心できる日と有って、多くの隊員がロンドンに出発した。
 目的はプレゼントの調達。ラスカルは、一度隊員を送ってから隊にとんぼ返りした。ミーナ隊長が午後から
 半休をとるので、ロンドンまで送迎しようというわけだ。まあ、帰りは皆と一緒に2台で帰る。1台は
 トラックだ。生活必需品も買い込む算段。

リーネ「ラスカルさん、買い物する時間有るんでしょうか?」

 買い物途中、皆でパブで食事を取りながら呟く。ロンドンにあまり慣れていないから、と心配
 しているのだ。

ペリーヌ「リーネさん、考え事しながら食べては消化によくありませんわ。大丈夫ですよ。大尉は
 しっかりしていますから。もう、目星もつけておられると思います。何処のお店で何をって」

エイラ「おオ!高評価ダナw。もしかして、ラスカルに惚れたノカ?ツンツン眼鏡w」

サーニャ「エイラ・・・」

ペリーヌ「えっ!そんなことはありませんわ! その・・・凄く頼りになる上官です///」

ハルトマン「頼りにして、されて、愛が芽生えるってことは多いと思うなー。ね?ペリーヌ」

ペリーヌ「・・・・・そんな//// どうしましょう・・・」
リーネ「それって、解ります//。ペリーヌさん、2番機で羨ましい・・」

 オオーッとどよめく一同。思わず、引率のバルクホルン大尉の顔を見る。

バルクホルン「いいんじゃないのか?真剣に相手を想い、かつ自分の義務を忘れなければ、な」

 想像していなかった発言を聞いた全員が眼が点となる。いま、なんていいました?おねえさま?

ハルトマン「そうそう!ウィッチだからって禁止ばかりされたら堪らないよ!我々にも人権を!
 恋をする自由を!1944年ロンドン・ウィッチ人権宣言!」

 やんやの拍手が起こる。

バルクホルン「ハルトマン中尉。掃除する義務・洗濯をちゃんとして身奇麗にする義務、そして毎朝
 定時に起床する義務があるぞ?それを果たさないで権利だけを主張するのは、なあ?」

 ハルトマンの顔が硬直。周りが噴出す。

エイラ「あと、茹でジャガイモとお菓子を独り占めしない義務もあるゾ」

バルクホルン「忘れていた。料理をしない義務!これも追加だなw。お前が作るものは堪らんww」

ハルトマン「駄目!それは駄目!私の権利!私の人権は最優先しようよ!!」

サーニャ「クスクス・・・」

 皆、大笑いする。バルクホルン大尉が軽口を言うようになった。変わったな。

*
 M20を吹っ飛ばしてきたので、午後早々にロンドン市街に到着。

ミーナ「私用で来るのは久しぶりだわ。でも、シャーリーさんに押し付けちゃってよかったの
 かしら?」

俺「彼女は明日か明後日、ルッキーニと来るって言っていたよ。気にしないで大丈夫」

ミ「なんかね、落ち着かないのよ。仕事中毒かしらねw」

俺「そりゃ心配だ。右手が万年筆を持つ形になってない?そうなったらもう末期症状だよw」

 二人して笑いながら、駐車場に車を止める。先行車との待ち合わせは1600にクリスの病院前
 となっている。たっぷり余裕がある。

 二人して、一端別れてお目当てのものを探しに行く。


 ミーナの肩をラスカルが叩いた。

俺「お待たせ。俺は終わったから、荷物を持つよ」

ミ「あら!早かったわね。私はもうちょっとなの。荷物、いいかしら?」

 お任せあれ!とラスカルが紙袋・箱を一手に引き受けた。彼が持っていたのは中くらいの袋が
 一つ。しっかりした材質、品のいい外装から、いい店に入ったことが解る。

ミ「ごめんなさい。私ばっかり大きい荷物で・・・」

俺「あ!いやいや、大きめのは車に入れてきたんだよ。これが一番最後でねw」

 気遣いさせちゃってすまん、と笑うラスカル。少し安堵するミーナ。

 買い物を済ませた二人は食事休憩するために車で移動し、レストランに入った。
 食後、ミーナはお茶とケーキ、ラスカルはコーヒー。静かな音楽が流れる室内で、たわいも無い話を
 して寛ぐ。周りは一般市民のほか、軍服を着用したものもいるが一様に静かに時を楽しんでいる。

ミ「俺さんの誕生日は11月だったかしら?」

俺「うん。11月の17日。偉人が生まれたことが無い日ww」

ミ「あら?そうかしら?いるわよ?偉人w」

 は?誰だっけ?という顔をしたラスカル。笑いながら続ける。

ミ「その日に生まれた誰かさんは、普段は軽口ばかり叩いて女の子をからかっているけど、戦闘では人が
 変わるのw。危ない場所に飛び込んでいって、敵を引っ掻き回して。そして、なんでもなかった、たいした
 ことはしていないって顔をして戻ってくるw。そして、ご飯を貪り食べて、早速女の子をからかうのよww。
 次の日からが大騒ぎ。あちこちから感状やら私的な女の子の手紙やら。それが殺到して基地機能が低下する
 のよww。ほんと、凄い人だわ、あなたはw」

 最初は神妙な顔になったが、途中から居心地悪そうに聞いているラスカル。

俺「そりゃ違うって!俺はたいしたことはしていない。この前頑張ったのは皆だよ。俺はその一員でしかない。
 俺はただの変態海兵隊だよ!」

 両手を左右に振って否定しながら言う俺。レストラン内の客の目が二人に集まる。好奇の目。
 女の子をからかうとか、変態海兵隊という刺激的なワード。美女将校と野獣将校。衆目を集めるのも当然。

俺「俺は違うから。偉人じゃなくて、単なるエロ海兵なの!お願いしますよw!」

ミ「どうですか、ねww。羨ましいわ。私達に来るラブレターは同性ばかり。何でw?」

俺「俺もさ。来て欲しいと想う人からは一通も貰ったことがない。だからおあいこw引き分けw」

ミ「どうだかww」

俺「信用度マイナスか。悲劇だ。想う人には想われず。あ、これで小説が書けるかなw?推理仕立てにして
 エドガー賞狙うかな!」

 おもわず笑うミーナ。

俺「で、今日のブラジャーの色は?赤?黒?白?それとも?つけていない?ワォ!」

ミ「まったくww。ワインレッドです!いかが?変態さん?」

俺「うん!間違いなく似合う!ご理解ご協力有難う!」

 両手の親指をビッッ!と立て、満足げに頷くラスカル。笑いが止まらなくなるミーナ。
 本当にこの人は!

********************************************************************************************下7

 2月10日。心配されていたネウロイの襲撃は前々日の8日となった。つつがなく、2月に誕生日を迎える隊員
三名の合同誕生祝賀会が行われた。午前中までで重任務を終え、午後から隊員総出で準備に取り掛かる。
バルクホルンが指揮を取り、早々にパーティー会場の設置を完了。以後、主役は会場への出入りは禁止された。
楽しみに待っていなさい、というわけ。

 厨房では、皆が其々の御国料理に取り掛かっている。コンロの不足は、ラスカルのテントから徴発された
 ガソリンコンロも使うことで補っている。
最も、シャーリーとラスカルはハンガー脇でリベリオンバーベキュの作成の為、ドラム缶改造のバーベキュー
グリルと格闘している。両者とも、其々にソースに薀蓄があるらしく、二通りの味で楽しめるらしい。脇では
整備員が涎を垂らして、楽しみにそれを見ている。料理は、隊員分だけで無く、整備部・管制部・事務部及び
基地防衛隊にも提供できる量を皆が作成していた。楽しむ時はみんなで楽しむ。誰の指示でもないが。
というわけで、今一番楽しみにそれを見ているのは整備兵達である。ちゃんとおすそ分けするからさ、とラス
カルとシャーリーがドラム缶をグリルにする加工を依頼したのも事実。おかげで非常に使いやすく工夫された
グリルが二基仕立てられた。

 1700から、各部署への飲食物の配送が始まる。皆、お互いに手助けして大車輪で活動。

 夕刻1800時。今日の誕生日の主役にパーティー会場への入室が許可された。
 拍手が三人を迎える。シャーリー、エイラ、そしてペリーヌ。照れくさそうに入ってきた主役3人。
 テーブルには、保温のアルコールバーナーが揺れている銀のサーバー、グラス、皿、銀の食器。
 上座に置かれた別テーブルには、三つのケーキ。蝋燭が燈っている。

ミーナ「では、2月に誕生日を迎える3人の誕生祝賀会を始めましょう。まずはケーキの蝋燭を吹き消して
 貰いましょうね」

 部屋の照明が暗くされ、蝋燭がともったケーキが押してこられる。三人が照れつつも、頬を膨らませて
 蝋燭を吹き消し終わると皆が歌う。クラッカーが鳴り響き拍手が起こる。おめでとう!の声に笑顔で
 答える3人。ペリーヌがしんみりした顔をし、シャーリーに肩を抱かれた。

 椅子に着席し、ミーナ、バルクホルン、ラスカルの三人が一斉にシャンパンの栓を抜く。皆で乾杯。
 食事の始まりとなり、皆が適宜プレゼントを三人に手渡しだした。笑い声が止むことはない。

 プレゼントの終盤、ラスカルがプレゼントの包みを三人に手渡す。三人がそれを開封すると、出てきたのは
 ゴールドのネックレス。ペンダントヘッドは、シャーリーが流星、エイラは雪の結晶、そしてペリーヌは
 薔薇。細やかなダイヤモンドで縁取られている。三人とも嬉しそうにヘッドを眺めて頬を緩める。

俺「肌の白いレディにはこれだよw!シャーリー、流星の如く最速を目指せよ。そしてこれからは宇宙だぜ? 
 イッル、清らかなその気持ちを忘れないで。ペリーヌ、薔薇のように気高く咲き誇れ! ああ、俺って
 詩人だよな。ん?変態詩人?ww」

 最後の一言で周りは大笑い。三人は目をキラキラさせている。

 バルクホルンはハンドバックを贈った。もじもじしているのがはっきりわかる。

バルクホルン「もう、それが必要な年頃だと思ってな。デザインが異なるから、気分で其々交換しつつ使い
 あうのもいいんじゃないかな?ユニフォームでも、私服でも似合うものを、と思って探したんだ。気に
 入ってくれると嬉しい・・・どうかな?」

 照れるバルクホルンの気持ちを汲んだか、三人は抱きついて礼を言う。バルクホルンも嬉しそう。

 ミーナは、三人に服を贈った。三人とも、基本は同じ。カシミアのセーターとウールのスカート。でも
 デザインも色も異なる。それプラス、腕時計と靴。

ミーナ「制服ばかりは駄目よ?それを着て、年頃の女の子の自分を見つめなおして欲しいわ。絶対似合
 うわよw」

 三人はキャーキャー喜んでいる。

ルッキーニ「ねぇねぇ!三人とも!それを着て見せて!あとラスカルのネックレスと、トゥルーデの
 バックも持ってさ!」

 賛成の声が沸き起こる。ミーナもバルクホルンも促す。ラスカルに背を押されて、三人が着替えに
 行った。ワイワイガヤガヤと食事しながら皆は待つ。

シャーリー「ジャジャジャーン!着替えてきたよw」

 ドアから三人が猛烈に照れつつ入ってきた。
 大歓声が迎える。

リーネ「わぁ!!!三人とも凄くお似合い!」
サーニャ「お人形みたい・・・・」
ハルトマン「おお!化けた!!こりゃ、男はいちころだ!ね?ラスカルw」
俺「うんうん!似合ってる!おい!バルクホルン!写真撮っておこうや!」
バルクホルン「よかった!ん?ああ!準備できてるぞ!」
ルッキーニ「ゎゎゎ!大人の女って感じぃ!すっごーい!きれいー!!」
ミーナ「ああ!イメージした通り!よかったわ!」

 清純さと女の色気が漂う三人。姿見で確認してきたのだろう、彼女達もいい笑顔で笑う。

――――――――――――
バレンタイン1―

ハルトマン「ねぇねぇ、これ作ってよ」

整備兵「はい。中尉殿。・・・・・なんですかこりゃ」

ハルトマン「設計図だよ」

整備兵「悪戯書きかと思いました。寸法もないし・・・」

ハルトマン「ひっどーい!説明するからよく聞いてね。型よ。これが~~」

整備兵「成程。でも、この基地にあるフライス盤ではちょっと厳しいです。曲線の連続が多すぎですよ」

ハルトマン「そう?瓶状がよかったのにな。んーー。じゃあ、球体は作れる?」

整備兵「曲面の連続でしょ?無理っす!」

ハルトマン「なら、どういうのが作れるのよ」

整備兵「直方体で、角を丸くするので勘弁してください。どうせ、これ戦闘任務に関係ないでしょ?」

ハルトマン「当たり前じゃん。地上ではダラけるのが私よ。んじゃ、それでお願い」

整備兵「型と仰いましたが、中に入れるのは何を?」

ハルトマン「チョコレート!あ、ちゃんと抜き穴つけてね。ボンボンにするから!」

整備兵「100度もいきませんね。一口サイズと。それじゃあ、5個いっぺんに作れるようにしましょう」

ハルトマン「おお。スゴイ。出来るの?」

整備兵「お任せください。なんか面白そうですし頑張りますよ。三時間後にお渡しします」

ハルトマン「おおー。それじゃよろしく!」

―――――――

整備兵「ここにお玉でジャーッと融けたチョコを入れます。鋳型も少しだけ暖めたほうがいいでしょう。
 そして、入れ終わったら、水で外を冷やします。外側が固まった時点で、これをひっくり返せば中
 の、まだ固まっていないチョコは流れ出します、ま、様子見ながらやってください」

ハルトマン「おお!そうすれば!」

整備兵「ええ。容器状になるはずです。その後、注ぎ口に余ったチョコを包丁で削ぎ落として。ハンドルを
 こう開くと完成です。どうでしょ?」

ハルトマン「スゴイ!出来たのはどうやって取り出すの?」

整備兵「完全に冷えてから、ハンドルを手でポンポン叩けば落ちますよ」

ハルトマン「ありがとう!早速作るね!」

整備兵「いえ!お役に立てて嬉しいです。あ、アルミ製なので、余り無茶な扱いはしないで下さいね」

――――――――

ハルトマン「ねえ、ミーナ!ボンボン作りたいの。許可してくれる?ねえねえ?」

ミーナ「駄目よ、フラウ」

ハルトマン「ちゃんとリーネに教わりながら作るからさ。お願い!みんなにチョコプレゼントしたいの!」

バルクホルン「リーネに教わるのか?」

ハルトマン「うん!トゥルーデからも口ぞえしてよ!」

ミーナ「リーネさんに教わるの?・・・うーん?」

バルクホルン「素材には手を出さないんだな?」

ハルトマン「当然!溶かすだけでしょ?」

ミーナ「そ・・・それならいいかしら。あ、完成品を渡す前に、あなたが私の見ている前で試食するってことで?」

バルクホルン「ああ、それは絶対必要だ。フラウは何を作るか解らん!人体実験をお前がやれ」

ハルトマン「トゥルーデったら、ひっどいなー。そんなに心配?」

ミーナ「ええ!」
バルクホルン「当たり前だ!」

ハルトマン「解ったよ。約束するから~」

ミーナ「約束よ?それでは、特例で許可します。頑張ってね」

――――――

ハルトマン「ミーナ!トゥルーデ!できたよ、試作品!!」

ミーナ「あら、早かったわね」

バルクホルン「ほお。ちゃんと銀紙で包んであるんだな」

ハルトマン「では!いただきまーす!」

ミーナ・バルクホルン「「・・・・・?」」

ハルトマン「おいひい!」

ミーナ・バルクホルン「「??」」

ハルトマン「こっちも食べちゃおうっと♪♪」

ミーナ「まさか・・・」
バルクホルン「そんな馬鹿な・・・」

ハルトマン「うん!こっちもおいひい!   食べる?」

ミーナ「え・・・ええ。戴こうかしら?」

バルクホルン「私は・・・ミーナの後で」

ミーナ「あら?美味しいわ!」

バルクホルン「本当に?   じゃあ、戴こう」

ハルトマン「どう?私特製ボンボンは?」

バルクホルン「普通に・・・美味しいな」

ミーナ「食べても・・・脈も異常ないし」

ハルトマン「本当に脈を取ってるし。じゃあ、量産していい??」

ミーナ「ええ。あ、フラウ。このボンボンの型、私にも貸してもらえない?」

ハルトマン「俺に作るんでしょ?解った!後でもって来るよ。じゃ!」

ミーナ「違うわよ――って、もう行っちゃった」

バルクホルン「ハルトマンにも出来るものがあったんだな」

ミーナ「思い込みは・・・いけないのね」

バルクホルン「ミーナが終わった後、その型を貸してくれるかな?」

ミーナ「ええ。フラウに言っておいてね。だれに作るのかしら?」

バルクホルン「クリス・・・と・・・」

ミーナ「余り聞かないでおくわ」

―――――――――

リーネ「はい、シロップ完成です。冷やしてからお酒を入れましょう」

ハルトマン「ありがと!お酒はこれだけあればいいや」

リーネ「ウィスキーにブランデーにワインに扶桑酒にウォッカにビール? ビールですか?」

ハルトマン「駄目かな?ビール」

リーネ「炭酸は無理だと思います。圧で割れちゃいますよ、きっと」

ハルトマン「なるほど。じゃ、これは今夜私が飲んじゃおう」

リーネ「あとは、さっきと同じです。味見をしてからストローでそっと入れて、最後に湯煎のチョコで
 封をして御終いです。あの・・・そろそろ私?」

ハルトマン「あ、訓練ね。うん、有難う。後は任せて!大丈夫。頑張ってね」

リーネ「はい。では失礼します」

ハルトマン「さーて、と。基地の全員用に200個作ったから、途中で多少失敗しても大丈夫。坂本少佐が
 いないのが残念だけど・・・。帰ってきてから渡せばいいや。でも、ビールが使えないのは残念・・・」

ハルトマン「ちょっと刺激も欲しいよね。うーん・・・あ!仕切りを作って、メントスとコーラを入れたら?
 おっもしろそー!」

ハルトマン「・・・炭酸だから駄目じゃん・・・」

ハルトマン「炭酸以外で、何か面白いのないかなー」

――――――――

バルクホルン「ハルトマン。・・・・すまない」

ハルトマン「ん?トゥルーデ、どうしたの?」

バルクホルン「ボンボンの型を壊してしまった。済まん」

ハルトマン「あらら。まあ、しょうがないよ。でも、派手に壊れてるね」

バルクホルン「固まってから外そうとして・・・取っ手を強く叩きすぎたらしい」

ハルトマン「まあまあ。ほら、まだ充填していないのがあるからさ。本命分くらいは足りるでしょ?」

バルクホルン「いいのか? あ・・・・でもそれじゃあ・・・」

ハルトマン「ははーん。完全オリジナルのを本命に渡したいんだ?」

バルクホルン「・・・私だって女だ。女らしいところを見せたい」

ハルトマン「そんなこと言ってる余裕ないよ?戦場だよ、ここ」

バルクホルン「・・・・」

ハルトマン「勇猛果敢、積極的に動かないと。あの世で後悔するのも人それぞれだけど」
 「本命が認めてくれる、意識してくれる事が優先なんじゃない?悠長なこと言っていられる一般市民と
 はちっと違うんだよ?」

バルクホルン「・・・・」

ハルトマン「これから出撃して怪我をして入院かも。もしかしたら、戦死かも。時間がどれだけあるのか
 わかんないんだもん」

バルクホルン「確かに・・・そうだな」

ハルトマン「もし、そうなっちゃったら、さ・・・私のことを時々思い出してくれるといいな、って思う。だ
 から、私も頑張ったんだよ」

バルクホルン「思い出して・・・」

ハルトマン「私が作ったのは、多分そんなに美味しくないと思うよ。でも・・・それでも。時々でいいんだ。
 ・・・・私のことを思い出して、懐かしんでくれたら・・・・って・・・・。歴史に残るとか、そんなのどうでもいい。
 自分が好きだった人に思い出してもらったほうが嬉しい。それが片思いでもさ・・・」

バルクホルン「泣くな・・・・。解った。貰ってもいいのか?」

ハルトマン「ウン・・・」「はい、これね。あとこっちは包み紙。シロップの作り方はリーネに教わって」

バルクホルン「ああ。其処で私のオリジナルを出してみるよ。ありがとう、フラウ」

ハルトマン「今を悔いなく生きようね!そして生き残ろうよ!」

バルクホルン「それを聞いて安心した。生き残ろう!」

―――――――

 リーネに相談して、混合物と比率を考えたシロップをチョコレートに入れながら考え込むバルクホルン。

バルクホルン「(戦乙女と持ち上げられているけれど、実際は乙女らしいことなんて殆ど出来ない・・・)」

バルクホルン「(私達ウィッチを戦力化するには、確かに必要なことだろう。でも・・・人間性はかなり無視
 されているのも事実だな。それをいう状況にないのだから致し方ないのだけれども、な)」

バルクホルン「(私達と同じ年頃の女の子は・・・緩やかに恋して、それが愛に発展して・・・。じっくりと気持
 ちを育むことが出来る。ブリタニアでは、まあそうだ。カールスラントやガリアなどではネウロイに殺さ
 れた人も沢山いた・・・市民だけじゃない、戦死したウィッチ達も・・・。彼女達は家族以外に愛する人がいた
 んだろうか?  居た人もいるだろうな)」

バルクホルン「(思い出して欲しい、か・・・・。相手に悲しい思いをさせるくらいなら、とあいつは言った)」

リーネ「バルクホルン大尉。ちょっといいですか?」

バルクホルン「ん?なんだい、リーネ?」

リーネ「ちょっと思いついて、試してみたんです。このチョコはミルクチョコレートです。少しですけど、
 内側にビターチョコレートをコーティングして、それにこのシロップを入れてみました。味見してみて
 下さい?」

バルクホルン「お? これも美味しいね。うん、風味が豊かになってる」

リーネ「半分程はこれで作りませんか?大尉のオリジナルですよ」

バルクホルン「うん、そうしよう。有難う、リーネ」

リーネ「私に出来ることがあってよかったです!ビターチョコのコーティングやりますね!」

バルクホルン「(何時死ぬか解らないよね。解らないから、自分だけは大丈夫と思い込んで戦っているんだよ。
 皆、同じだろうな。胸に秘めて・・消えていくのも、少しだけ好意を表して・・死ぬのも、思い切り気持ちをぶつ
 けて死ぬのも・・。それぞれ、有りなんだろう)」

バルクホルン「(私は・・・好きな相手が現れたらどうするんだろうな。あいつの言うことも、フラウの言うこと
 も共に正しいと思う・・・。私は?   悔やむのは嫌だ・・・)」

リーネ「・・・私もやっぱり、作ろうかなあ」

バルクホルン「作りなさい。渡さないで後悔をするよりも、だよ」

リーネ「・・・・後悔、ですか。そうですよね、時間がどれだけあるかなんて解りませんよね」

バルクホルン「その考え方は良くない。今は今しかない。そういう意味だよ、リーネ」

リーネ「今は今しか・・・。はい!解りました!」

バルクホルン「(そうだな。今は今しかないんだ。無為の罪・作為の罪・・・?どこかで聞いたが。私は実行して
 反省するほうがいい。何もせずに悔やむのは嫌だ・・・)」

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最終更新:2013年02月02日 12:09