登録日:2011/05/20 (金) 06:50:13
更新日:2024/06/12 Wed 12:50:48
所要時間:約 15 分で読めます
『BACCANO! -バッカーノ!-』は2007年秋にWOWOWで放送されたブレインズ・ベース制作のテレビアニメ。
全13話だが、DVDなどには番外編(全3話)が収録されている。
原作は電撃文庫の『バッカーノ!』
作者は
成田良悟。
概要
1930年代、禁酒法時代末期のアメリカを舞台に、“不死の酒”やそれを口にした“不死者”たちを中心として巻き起こる様々な騒動を描く
群像劇。
群像劇らしく1クールアニメにあるまじき登場人物の多さを誇り、ストーリーの中心となる主人公が設定されていないため視点が次々と変わっていく上、原作の3つのエピソード(後述)が同時平行して進行するためシーンごとに時系列も変わる…という複雑なストーリー構成が特徴。
とにかく情報の密度が濃く、初見の人には若干分かりにくい。
しかしアニメ作品としての完成度は高く、ストーリー終盤になるにつれ、多彩な登場人物たちが織り成す物語がクライマックスへと収束していく様は非常に痛快。
また、とにかく“濃い”キャラクターが多く、一癖も二癖もある人物ばかりなので、登場人物の数は多いが記憶に残りやすい。
基本的にエンターテイメントに特化した娯楽作品であり、小難しいテーマなどは語られないため、肩の力を抜いて愉快な登場人物たちの馬鹿騒ぎを楽しむのが良いだろう。
主なスタッフ
あらすじ
基本的に1930年・1931年・1932年の3つのエピソードで構成されている。
原作で人気の高い1931年のエピソードを主軸に、物語の発端として1930年のエピソードを、後日談として1932年のエピソードをそれぞれ配置したような構成になっており、前述のとおり、アニメ版はこれらのストーリーが平行して展開される。
エピソードごとに登場人物も一部異なるため、5・6話あたりまでキャラ紹介的な場面が多く、ストーリーがあまり大きく動かない。
そのため、アニメ全体ではややスロースターターな印象を受けるが、役者が出揃った後半は怒濤の勢いでクライマックスへとなだれ込んでいき、特に終盤は1クールアニメとは思えない熱量と疾走感を見せる。
1930年:The Rolling Bootlegs
舞台は禁酒法真っ只中のニューヨーク。
長年の研究の末、ついに「不死の酒」を完成させた老人セラードは、とある事件がきっかけでそれを紛失してしまう。
行方不明となった不死の酒はそうと知られないまま次々と人々の手に渡り、ギャングや泥棒カップル、金持ちのバカ息子などを巻き込んだ騒動へと発展していく。
該当する原作は第1巻『The Rolling Bootlegs』。
ちなみに原作者・成田氏のデビュー作でもある。
1931年:The Grand Punk Railroad
大陸横断特急『フライング・プッシーフット号』に偶然乗り合わせた不良少年団、テロリスト集団、マフィアの殺し屋とその仲間たちは、各々の目的のため行動を開始し、すぐさま抗争へと発展。
車内は大混乱に陥り、さらに追い討ちをかけるように列車で人を襲う怪異“線路の影をなぞる者”までもが現れる。
一つの列車内で様々な人物の思惑が絡み合っていく狂騒劇。
該当する原作は第2・3巻『The Grand Punk Railroad(鈍行編/特急編)』。
原作でもファン人気の高いエピソードだが、アニメ版も出色の出来。
1932年:Drug & The Dominos
行方不明の兄を探す少女イブは、情報屋として知られるデイリー・デイズ新聞社を訪ねる。
一方、ニューヨークでは大規模マフィア・ルノラータファミリーの幹部グスターヴォの暴走から、ガンドールファミリーとの対立が深まっていた。
果たしてイブは兄を見つけ出すことができるのか? そして2つのマフィアの抗争の行方は?
該当する原作は第4巻『Drug & The Dominos』。
こちらは原作小説からシーンが大分削られており、他二つと比べると地味なエピソードとなっている。
どちらかというと1930年のエピソードの補足・後日談的な役割が大きい。
主な登場人物
ここに記載されていない登場人物も多い。
公式サイトを見るとキャラクターの多さに驚かされるだろう。
マルティージョファミリー
ニューヨークの片隅に拠点を置く小規模なカモッラ。
童顔がコンプレックスの組織の若衆。
ガンドール兄弟とクレアとは幼馴染。
たまに空気になるが、外見や活躍は“主役っぽい”(あくまで“っぽい”)。
ナイフ使いだが、作中ではあまり使ってなかったり。
組織の出納係(コンタユオーロ)
温厚な性格で
フィーロを弟のように可愛がっている。
組織の秘書(キアマトーレ)
序盤は地味な人物だが、その正体が明らかになると一気に重要なポジションに。
- ランディとペッチョ(CV:相馬幸人/こぶしのぶゆき)
痩せた男と太った男の二人組。組織の幹部。
ある意味、すべての元凶。
ガンドールファミリー
マルティージョファミリーと縄張りが隣接する小規模マフィア。
立場が近いマルティージョとの仲は良好。
3兄弟の長男で無口。
小説ではあった出番とセリフを削られた可哀相な人。
アニメでは一言もしゃべらない。
3兄弟の次男で筋肉馬鹿。
やっぱり出番は少なくなっている。元々少ないけど。
3兄弟の三男で紳士でテラ子安。
ファミリーのブレーンを務める頭脳派。
3兄弟の中では一番出番がある。
ハサミ大好きの拷問係。
続編があれば活躍の場が…
不死者セラードとその関係者
セラードが完全な「不死の酒」を作るために懐柔、利用している一団。
齢200歳を超える錬金術師のおじいちゃん。
完全な「不死の酒」を造ろうとしている。
セラードの助手兼運転手をしている女性型人造人間。
常に無表情。感情がないのではなく、知らないだけ。
セラードの部下。
ついに「不死の酒」を完成させるが、様々な不幸に見舞われる。
ジェノアード一族
ニューヨークのミリオネア・ロウに豪邸を持つ富豪。
当主と長男が殺されたため、没落気味。
ジェノアード家の次男。
ろくでなしが服を着て歩いているようなダメ人間。
1930年の話に絡むが、1932年では行方不明。
ダラスの妹で、ジェノアード家の現当主。
行方不明の兄を探している。
作中では珍しい、普通の可愛い女の子。
ルッソファミリー
シカゴに拠点を置く中堅マフィア。最近落ち目。
身代金と人殺しを目当てにフライングプーシット号に乗り込む。
ラッドの趣味で全員白服を身に纏っている。
ルッソファミリーきっての殺し屋で殺人狂。
「自分は安全」と信じている人間を殺すのが大好きな享楽殺人者。
婚約者のルーアのことは本気で愛しており、一番最後に殺すと決めている。
ラッドの婚約者。
ラッドに殺されるのを楽しみにしている。
解体マニア。
ラッド・ルッソの弟分。
常にハイテンションだが、感情の方向はコロコロ切り替わる。
アニメ本編には登場しないが、番外編(14~16話)では大活躍。というかほぼ彼のターン。
ジャグジー一味
ルッソファミリーから逃れるため、フライング・プッシーフット号に乗ってニューヨークを目指す少年ギャング集団。
顔面に剣の入れ墨がある一味のリーダー。
臆病で泣き虫だが行動力のある漢。
ニースとは幼馴染で恋人。
ジャクジーの右腕で幼馴染で恋人の爆弾魔。
眼帯に眼鏡をかけている少女。
10年以上付き合っているが、キスはまだ。
幽霊
不死者ヒューイが革命のために組織したテロリスト集団。
逮捕されたヒューイを救出するためにフライング・プッシーフット号の乗っ取りを計画する。
楽団に偽装しているため、全員黒服。
逮捕されて塀の中にいる、シャーネの父親。
ヒューイの娘。無口なナイフ使い。
番外編のシャーネは特に可愛い。
フライング・プッシーフット号の乗客たち
通称トーマス…ではなく、
チェス君。
子供らしからぬ言動で大人相手に交渉を迫り、車内で策略を巡らせる。
作業着を着た謎の女。
実はとある事情で無賃乗車のため、車掌は天敵。
デイリー・デイズ新聞社
ニューヨークの三流新聞社。
情報屋としても活動しており、社員もほぼ全員武装していてマフィア相手にも動じない。
妙に良い声をしたDD社社長。本名不明。
仕事場のデスクが本と書類の山に埋もれているため物理的に姿が見えず、外見も不明。
インターネットもないこの時代に、デスクから全く動いてなさそうなのに凄まじい情報通で、様々な事件の全容・裏側をほぼ把握している。
若本節全開のイントネーションが特徴の、DD新聞社の副社長。
片眼鏡の鋭い眼光をしたナイスミドル。
助手のキャロルに様々な問いを投げ掛け、その回答に点数をつける。
ギュスターブの助手兼見習いカメラマン。ロリ。
その他
神出鬼没な
バカップル。底抜けに明るい性格のコスプレ泥棒。
次回予告を任されているが、毎回予告になっていない。
約80年後の池袋でも相変わらずのバカップルっぷりで、カラーギャングの集会に参加していたりする。
酒をぶちまけたような凄惨な殺害方法から
葡萄酒と呼ばれる伝説の殺し屋。
「自分こそが世界の中心」と語る、いろんな意味で最強の
厨二病患者。
エピソードリスト
話数 |
タイトル・備考 |
#01 |
副社長は自身が主役である可能性について語らない |
副社長とキャロルの論議のみで大部分が進行。 13話視聴後に再視聴すると新しい発見が多い。 |
#02 |
老婦人の不安をよそに大陸横断鉄道は出発する |
1931年のストーリーの導入部。 様々な目的をもって大陸横断鉄道に乗車する人々を描く。 |
#03 |
ランディとペッチョはパーティの準備で忙しい |
1930年のストーリーの発端。 |
#04 |
ラッド・ルッソは大いに語り大いに殺戮を楽しむ |
フライングプッシーフット号内で黒服と白服の抗争開始。 ラッド演じる藤原啓治氏の怪演は鳥肌もの。 |
#05 |
ジャグジー・スプロットは泣いて怯えて蛮勇を奮う |
列車内の騒動に巻き込まれ、立ち上がる不良少年たち。 「“ばんゆう”って引力のことだね!」 |
#06 |
レイルトレーサーは車内を暗躍し虐殺をくりかえす |
列車を襲う怪異、『線路の影をなぞる者』現る。 |
#07 |
すべてはアドウェナ・アウィス号の船上からはじまる |
全ての発端が明らかとなる、1711年の錬金術師たちの話。 |
#08 |
アイザックとミリアは我知らず周囲に幸福をまきちらす |
1930~1932年全ての話に関わり、意図せず誰かの助けになる、 愛すべきバカップル主役回。 |
#09 |
クレア・スタンフィールドは忠実に職務を遂行する |
「クレアってくらいだからきっと女の人だな!」 1931年のエピソードの重要なネタバレ回。 |
#10 |
チェスワフ・メイエルは不死者の影に怯え策略をめぐらせる |
これまで詳しく語られなかった少年チェスの過去と現在。 |
#11 |
シャーネ・ラフォレットは二人の怪人を前に沈黙する |
作中屈指のイカれた二人の邂逅。 どっちもヤバすぎてシャーネでなくとも黙るしかない。 |
#12 |
フィーロとガンドール三兄弟は凶弾に倒れる |
押し寄せる怒濤のクライマックス。 作中屈指の“馬鹿騒ぎ”。 |
#13 |
不死者もそうでない者もひとしなみに人生を謳歌する |
エピローグ。重大な事実についに気づくバカップル。 |
#14 |
グラハム・スペクターの愛と平和 |
番外編・上。 ラッド・ルッソの弟分であるグラハムが初登場。 |
#15 |
高級住宅街に辿り着いた不良少年たちはそれでもいつもと変わらない |
番外編・中。 列車搭乗組のその後が描かれる。 |
#16 |
物語に終わりがあってはならないことをキャロルは悟った |
番外編・下。もうひとつのエンディング。 3話以降出番のなかったアイツの意外な再登場。 |
余談
- OP曲『Gun&Roses』(作曲:野口茜/演奏:Paradise Lunch)は、アニメでは珍しいボーカル無しのインストゥルメンタルナンバーで、軽快な曲調にテンポよくキャラクターが登場するセンス抜群の映像で高い人気を博した。
- このオープニングは、原作者の成田氏が映画「スナッチ」の大ファンだったため、アニメスタッフの計らいで同作のオープニング映像のパロディ・オマージュしたものとなっている。
- 流れるように場面が切り替わる構成、キャラクター紹介を兼ねた一時停止演出、動作途中の一部のコマを意図的にカットすることでキレを増した動き…などにオマージュが見てとれる。
- スナッチでは予め撮影した映像から数コマをカットすることでキレの良い動きを表現しており、バッカーノもそれに倣っているが、監督曰く「アニメはそもそも実写より1秒あたりのコマが少ない」上、わざわざアニメーターに作画してもらってから不要なコマをカットするわけにもいかないため、この演出の再現には苦労したようだ。
- また、オープニングの途中で、前回までのあらすじが台詞付きで入ったりもする。
- この演出は『蒼き流星SPTレイズナー』のオープニング映像を参考にしたもの。
大森監督が同作を見て「いつか自分の作品でも取り入れたい」と温めていたアイデアとのこと。
- 複数のエピソードを平行展開するアニメ版バッカーノのストーリーを整理するにあたり、このハイライトシーンはかなり効果的に機能している。
その回を理解する上で重要なシーンが前回までのエピソードからいくつか抜粋されているのだが、前回どころか数話前の1シーンが映ったりすることも多く、視聴者にストーリーを思い出させる役割を持っている。
- このスナッチ風演出+レイズナー風ハイライトという組み合わせは、同スタッフによる『デュラララ!!』でも活用されている。
- 本作の第一話は一部のシーンがエピローグを兼ねており、原作未読かつアニメ初見ではほぼ内容を理解できない。
- 13話まで見た上で、(DVD版などに収録されている14~16話を見る前に)一度第1話を見返してみると、初見時とは全く異なる楽しみ方ができるだろう。
- この第1話の特殊な作りはキャスト陣にも詳しい説明がされていなかったようで、ラッド役の藤原氏は後から第1話を見返してようやく内容が理解できたことを明かしていた。
- アニメオリジナルキャラとして、デイリー・デイズ新聞社社員の『角砂糖』なる男が登場している。
- 常に角砂糖をポリポリ食べている寡黙な男。
- 書類と本に埋もれていて外見も不明なDD社社長に自ら接触し角砂糖を手渡すなど、謎の多い社長の素顔を知る人物の一人。(その様子を見ていた他の社員は絶句していた)
- 原作者に気に入られたのか、後に原作にも逆輸入された。
wiki篭りもそうでないものも
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- アニメ見たけど時系列バラバラすぎて意味が分からなかった -- 名無しさん (2015-11-09 17:07:29)
- 2周目に行こう -- 名無しさん (2015-12-10 12:24:49)
- これは傑作 -- 名無しさん (2017-01-16 20:10:24)
- 1933からまたアニメ化してほしいけどマリアどうすんだろ…。 -- 名無しさん (2017-01-16 20:18:05)
- 実はマリアは第1話で背景に登場してるんだよな ちなみにティムも。 アデルはセリフまである -- 名無しさん (2017-01-16 20:24:41)
- ↑↑マリアはガンドールファミリーがいつの間にか雇った用心棒って事で通すのは不可能じゃない。 前回の事件から1年も間が空いてる設定なんだし。 -- 名無しさん (2017-01-16 21:05:25)
- 二期やるとしたら今度は1934年代3つを混ぜ合わせた作品になるのかな -- 名無しさん (2017-07-05 22:19:30)
- 自分、なんでDVD全巻売っちゃったかな~? あ~、クソ! -- 名無しさん (2017-08-19 19:35:47)
- デイリー・デイズ新聞社のヘンリーが出てないからニコラス・ウェインが少し割りを食ってる -- 名無しさん (2021-10-12 11:59:45)
最終更新:2024年06月12日 12:50