ヤドリギ

登録日:2016/11/28 Mon 20:08:23
更新日:2021/01/30 Sat 19:49:21
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アニヲタの やどりぎのタネ!


めいでんの*に たねを うえつけた!


概要


ヤドリギとは、ビャクダン目ビャクダン科に属する寄生植物の総称である。
丸っこい茂みのような形をしており、日本に生息する種類はエノキ・クリ・アカシデ・ヤナギ類・ブナ・ミズナラ・クワ・サクラなどに寄生する。
ラフレシアなどの寄生植物と違って緑の葉をきちんと備えており、光合成は自力で行えるが、宿主に伸ばした寄生根から水分や無機塩類などを吸収する。
また、冬に宿主となる樹木が葉を落としても、ヤドリギは青々とした葉をつけているため非常に目立つ。
自らの葉を失った樹木が丸っこい茂みをいくつも付けた姿はちょっとした冬の風物詩である。


出典:wikipedia

これだけ多くの葉をつけているにもかかわらず、ヤドリギは地面の上で育つことができない。
そのため、彼らは実にある工夫を施している。
実は冬、小鳥たちにとって貴重な食料となるのだが、果実の内部は粘り気があり種はそれに包まれている。
これのおかげで種は消化されず、排泄されるときはまるで金魚のフンのごとく、鳥たちの尻にくっつくことになる
当然鳥たちにとっては不快極まりない事態である。そのため木の枝に尻をこすりつけて種を取るのだが、これこそがヤドリギの策略。
粘り気によって種は枝にくっつき、無事発芽することができるようになるのである。

寿命は30年ほどで宿主となる樹木よりずっと短いが、その成長は非常に遅く、発芽までに3カ月、宿主の道管まで根が張るまで9ヶ月かかるという。
その後2年半をその状態で過ごし、4年経って初めて枝分かれができて光合成を始め、5年目にようやく最初の花芽をつける。*1

ポケモンの技としてのヤドリギ


歴史は非常に古く、初代から「やどりぎのタネ」という名前の変化技として登場する。

タイプ:くさ
分類:へんか
威力:--
命中:90
PP:10

ヤドリギの生態の通り、ターン終了時に相手の最大HPの1/8を吸収するというもので、さらに植えつけたポケモンが交代しても有効(植えつけられたポケモンが退場すると解除)。
その性質上耐久型に採用される事が多く、使用するポケモンは主にフシギバナエルフーンナットレイなどが代表的。
最初のターンにこの技を使い、後は「まもる」や「みがわり」でターンを稼ぎループに持ちこむ「やどみが」が有名。
エルフーンはこの戦法を特性により最も活かせるポケモンだった。
(吸収量+たべのこし)*2回で、相手のHPがよほど低くない限り、みがわりをもう一度張ることができるのだ。
「テクニシャン」習得やファイアロー登場以前のキノガッサも、「ポイズンヒール」と「どくどくだま」と合わせることでこのコンボを使いこなしていた。
しんかのきせき」型のポケモンに使わせることで、最大HPの低さを逆手に取りHPの回復量を増やすことも可能。
それらの搦め手抜きにしても耐性や耐久力の優れたフシギバナやナットレイの使うこの技は非常に強力である。
まさに害悪としか言いようがない技だが、幸い上から弱点を突いて叩く以外にもちょうはつやヘドロえき、マジックミラーなど対策は豊富。

さらに初代ではどくどくと組み合わせることで、吸収ダメージまで増加していくという恐ろしい仕様だった。
とはいえ当時はエスパーふぶき全盛だったため、ナッシーはともかくフシギバナの使用率は低かったのだが。

総じて、弱点や耐性を持つタイプの多さから一見不遇に見えるが、複合タイプや特性が噛み合うと恐るべき実力を発揮するくさタイプに相応しい技と言えるだろう。
SMではくさ以外の使い手としてキュワワーテッカグヤが出現。
特に後者は耐性に優れたタイプとステータスの絶妙さ、そして圧倒的なカスタマイズ性でレートで人気を博している。

ちなみに実際のヤドリギは樹木に寄生するのに、この技の場合くさタイプに無効。……何故だ。しかしテッカグヤはくさ技が1/4な上にほのお技を覚えるため、くさタイプを呼ぶ心配も少ない。なんだこの門松ロケットは。

Zワザとして使った場合のは追加効果は自分の能力低下を元に戻すもの。正直地味。

シャドウハーツ2におけるヤドリギ



なんじゃ、こりゃぁーーーーーっ!!

物語の鍵を握る道具として登場している。
詳しくはウルムナフ・ボルテ・ヒュウガの項目を参照。

西洋などの文化におけるヤドリギ


このように、現代の日本では寄生・不潔・害悪とあまりいいイメージがなさそうなヤドリギだが、西洋では逆に非常に神聖な樹木として扱われている。

ヤドリギは土から生まれず、地にも水にも根を張らないため、ケルト人やゲルマン人から四大元素(空気)から生まれない特殊な植物と考えられていた。
さらに冬になっても宿主の樹と違い、青々とした葉をつけていることから魂の再生を表すシンボルとなる他、寒さをしのぐために妖精が住んでいるとも言われる。
ケルトのドルイドはとりわけオークから生えたヤドリギを神聖視し、刈り取るときは決して手で触れず、専用の黄金の鎌でそっと刈り取った。*2
また、ヤドリギの実が白くネバネバしていることから精液を連想させ、男性エネルギーの象徴になっているという。つまり、それを刈り取るということは……

北欧神話では、ロキがこれを素材に作った槍を盲目の神ヘズに投げさせて光の神バルドルの命を奪い、ラグナロクの一端を作るが、その後バルドルは復活する。
北欧では夏至の日、儀式のためにヤドリギを集めるのが習慣であった。
これを集めた後は冬が近づき、太陽が弱体化していくことになるのだが、同時にヤドリギは再生のシンボルでもある。
つまりロキとバルドルの神話は、こうした逸話が由来となっているのである。
また、この事件の前にバルドルの母フリッグは万物に息子を傷つけぬよう契約させたが、ヤドリギとだけ出来なかったのは「幼すぎたから」とされている。
他者に頼って生きている子供のようなヤドリギは土から生じず、四大元素に属しないため契約できなかったのだ。
デビルサバイバーで、このエピソードを元にした展開が描かれた。
ただし、実はバルドルに関する痕跡は地名ぐらいにしか残っていないため、
「後からエピソードを付け足しされたのでは?*3」とか「神ではなく戦士だったのでは?」とする説もある。

人類学者ジェームズ・フレイザーの歴史的大著『金枝篇』のタイトルの由来は、イタリアのネミ湖周辺にあった風習から取られている。それによると、
聖なる木立に生えたヤドリギ(金枝)を手にすることができた逃亡奴隷だけが、「森の王」と呼ばれる女神ディアナの祭司を殺し、後継者になることが許された。
「森の王」は在任中自然と一体化し絶大な権力を持つが、後継者に必ず殺されるという運命を背負っていたのである

キリスト教文化が完全に浸透した現代でもヤドリギは、ヒイラギやモミと同様にクリスマスを象徴する植物として扱われている。*4
ヤドリギの枝でリースを作って玄関に吊るし、その下で恋人たちがキスをすると幸せになれると言われている。*5
もちろんこれは教化される以前のケルトやゲルマンの文化が由来であり、ヤドリギは魔よけや雷よけのまじないにも使われていたのである。

他にも西洋では薬効が知られており、何世紀もの間セイヨウヤドリギは、伝統療法においてけいれん発作、頭痛、その他の症状の治療に使用されている。
シュタイナー教育で有名な人智学の創始者ルドルフ・シュタイナーはヤドリギの寄生能力が癌の増加傾向に似ていることに着目し、癌の治療薬として研究をしていた。
事実、癌細胞を死滅、免疫系を活性化させるとされ、抗癌剤や化学療法と共に平行して使用される。*6が、その他の調査では疑問視する声も少なくない。
いずれにしても安易に信じるのは危険だが、それだけ古くから医学の面でも重要な植物として扱われてきたことに疑いの余地はない。

また、日本において神聖視されるエピソードは西洋に比べて少ないものの、大友家持の万葉歌にヤドリギが登場する。
あしひきの山の木末(こぬれ)寄生(ほよ)取りて 挿頭(かざ)しつらくは 千年寿(ちとせほ)くとそ
この歌では、長寿の象徴としてヤドリギが描かれている。

そして近年ではヤドリギは寄生植物のイメージとは裏腹に、生態系においても重要な役目を持っていることが明らかになりつつある。
実や葉や新芽が多くの動物たちの餌となり、その特徴的な形の枝は鳥たちの休憩場所や巣作りの場になる。
事実、ヤドリギの多い地域ほど生物多様性が豊かになっているという。

古来よりその生態の特殊さや薬効から神聖なる樹木として崇められ、さらに動物たちにとっても日々の生活を支える存在であるヤドリギ。
文明の中でも自然の中でも、時代が移り変わってもその重要性は決して変わることはないのだ。



追記修正は、ヤドリギの枝の下でキスを成功させてからお願いします。
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最終更新:2021年01月30日 19:49
添付ファイル

*1 http://www.eco-garden.net/countrylife/haraiso/h128.html

*2 ヤドリギは大地に根を下ろさない特殊さゆえ、一切土に触れさせてはならないとされた

*3 バルドルが比較的有名なのはロキの残虐エピソード且つラグナロクの引き金になったからなのだが、そもそもバルドルのエピソードは神話に残されていないとのこと。ロキも後付けによる印象操作の疑惑が強いので尚更。

*4 マライア・キャリーの代表作『恋人たちのクリスマス』に登場する「mistletoe」という単語はヤドリギを意味している

*5 逆にヤドリギの下でキスを拒むと翌年は結婚できないとするパターンもある

*6 ちなみにドイツでヤドリギ製剤には保険が適応される