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持込君物語

登録日:2018/02/13 Tue 18:35:18
更新日:2026/07/30 Thu 11:50:20
所要時間:約 7 分で読めます





マンガ界に僕という名の、期待の新星登場だ!





『持込君物語』は『ギャグマンガ日和』のシリーズ作品の一つ。
その名の通り漫画の持ち込みを題材としており、漫画家志望の青年・持込高志が描いた作品を、漫画雑誌の編集者が講評するという内容である。

『ギャグマンガ日和』には『夢野カケラシリーズ』など漫画家を題材にしたエピソードが存在するが、夢野シリーズが連載中の漫画について担当編集者と電話でやり取りする形式であるのに対し、本シリーズでは漫画家志望の新人が編集部へ持ち込みを行い、編集者から直接添削や講評を受ける形式で物語が進行する。
作中では初心者にありがちな作画ミスや構図の問題、取材不足、漫画制作の基本姿勢、持ち込み時のマナーなどがギャグとして描かれており、漫画家志望者にとっては主人公を反面教師として見ることもできる。

また、夢野の作品は独善的な展開や伏線の放置など問題点こそ多いものの、漫画として最低限の体裁は整っていたことが、本シリーズとの対比によって浮き彫りになっている。


【登場人物】

●持込高志(持込TAKASI)
主人公。19歳(『澤穂希物語』以降20歳)。
「漫画界に革命を起こす」という大志を抱き、漫画家を目指して上京する。

しかし、その実態は意識だけが先走った典型的な「意識高い系」であり、実力は伴っていない。
  • 商業誌に掲載するには到底及ばない画力
  • 少年誌向けにもかかわらず女性キャラクターばかりを登場させる
  • 拙く不自然な台詞回し
  • 内容よりもアニメ化やグッズ化などの商業展開ばかりを気にする
など、デビューには程遠い状態である。

編集者からのアドバイスや母親のフォローにも素直に耳を貸さず、何かと反論したり、厳しい指摘を受けるとすぐ泣き出したりするなど、精神的にもかなり幼い。
向上心もほとんど見られず、このままデビューすれば「第二の夢野」になるのは間違いないだろう。
……もっとも、夢野の漫画は最低限シナリオとして成立しており、キャラクターも既視感こそあるものの何を描きたいのかは伝わるため、作品としての完成度は持込君より遥かに上である。

●母親
持込君の母親。過保護な性格で、息子を「たっくん」と呼んでいる。
毎回編集部へ同行し、編集者の講評を一緒に聞きながら持込君へ容赦なくツッコミを入れる。
同行する理由は交通費の都合や編集者からのコメントをちゃんと聞かせるためでもあるが、最大の理由は、持込君が母親の付き添いなしでは他者とまともに会話できなくなるためらしい*1

●編集者
持ち込み作品の添削を担当する編集者。
持込君の漫画を冷静に分析し、角が立たないよう配慮しながら的確なアドバイスを送る。
夢野カケラの担当のようにデリカシーを欠いた発言や非常識な行動は一切しない温厚で面倒見の良い人物だが、その優しさが裏目に出て持込君の自己顕示欲を助長してしまい、深く後悔することになるのがお決まり。


【持ち込み作品一覧】

●ラフファイト!来夢(らいむ)(11巻収録「第212幕 いざ東京!持込君物語」)
記念すべき第一作目。テコンドーを使う美少女を主人公にした格闘漫画。
しかし、少年誌でありながら女性主人公である点を指摘されるところから始まり、続けて画力の低さを徹底的に問題視される。

確かに近年では『約束のネバーランド』『あかね噺』など、女性主人公の少年漫画も珍しくはない。しかし、それらは単に女性を主人公にしているだけではなく、読者から支持を得るための明確な狙いや勝算が存在する。対して持込君の場合は……。

◇問題点
  • 左向きの顔は比較的安定しているものの、右向きになると作画崩壊を起こす。
  • 少しでもアングルが変わると、首が亀のような形になる。
  • 効果線を過剰に使用しており、キャラクターが硬直したまま凄まじい勢いで動いているように見える。
  • 肝心の格闘シーンは、化け物同士が取っ組み合っているようにしか見えず、何が起きているのか伝わらない(編集者曰く「病気の時に見るのような殴り合い」)。
  • バックドロップの場面で、脈絡もなく謎の男と不思議生物が登場する。
    • 持込君曰く「アニメ化した際に女性ファンを獲得するためにはイケメンが必要」「動物キャラはグッズ化しやすい」。
  • 持ち込み作品(通常は一話完結を想定したもの)にもかかわらず、ラストを「つづく」で締める。

●鎌倉メロディ(14巻収録「第276幕 持込君物語~二作目~」)
神奈川県鎌倉市を舞台に、女子高生のガールズバンドの活動を描いた音楽漫画。
今回は取材不足や資料を参考にする姿勢の欠如が主な問題点として取り上げられる。

◇問題点
  • 扉絵に自作の煽り文を入れている。
    • しかも「今初まる(正しくは始まる)青春グラフティ」という誤字をしている。
  • 鎌倉の象徴である大仏が、女座りをしながら手を前に突き出す謎のポーズをしている。
  • 江ノ島がファミコンのような粗いグラフィックになっている。
  • 江ノ電も適当に描かれており、某クイズ番組のイラスト伝言ゲームのような状態になっている。
  • 楽器のデザインや演奏時の構え方も、資料を確認せず想像だけで描いている。
    • これに対して持込君は「何でも見て描いてたら実力がつかない」と反論するが、編集者から「建物や楽器はプロでも資料を見なければ描けない」と冷静に指摘される。
  • ライブシーンは謎の風圧で観客を盛り上げるだけで、音楽漫画としての迫力がない。
  • ライブ中に意味のないパンチラ描写を入れる。
  • 台詞が一文ごとに長すぎて読みにくい(本人曰く「セリフには一日の長がある」)。
  • アニメ化を意識して、決め台詞「ぶっちゃけはっちゃけちゃえばいいじゃん!」を4回も繰り返す。
  • しまいには、正社員でもない立場でありながら取材旅行の費用を請求してきた。

●グルメファイト明美(15巻収録「第302幕 持込君物語~第3作~」)
料理コンテストで優勝を目指す少女たちを描いたグルメ漫画
グルメ漫画では「料理をいかに美味しそうに見せるか」が重要になるが……。

◇問題点
  • 画力不足に加え、料理の描写を前後の台詞による説明だけで済ませており、読者に伝わりにくい。
  • 盛り付け用の器が深い丼になっており、料理の中身がほとんど見えない。
  • 調理台が宇宙船のコックピットのようなデザインになっている。
  • ガスコンロのが異常な勢いで燃え上がっている。
    • 持込君曰く「料理の時は火ってすごく出ることがある*2から」とのことだが、編集者からは意図的な演出と現実の調理工程を混同していると指摘される。
  • 料理コンテストで重要な工夫点が、「ミディアムにする」「オリーブオイルを入れる」といった一般的な行為になっている。
  • 審査員の感想が「ほうじゅんな〇〇が口の中に広がる」という表現ばかりで単調。
最後には「何を描くにしてもちゃんと勉強してください。知識がないなら、それを埋める努力が必要ですね」と指導され、添削は終了する。
母親が「料理のことを教えてあげるから描き直したら?」とフォローした直後、持込君はお母さんレベルの料理がマンガになると思わんといてほしい」と発言。
さらに「うちはお金持ちではないから高級店に行けていない」「僕の漫画はアニメ化した時に面白さが発揮される」「水掛け論はもう十分」と言い訳を重ね、怒ったまま帰っていった。

澤穂希物語(GB2巻収録「第32幕 持込君物語」)
まさかの実在人物を題材にしたサクセスストーリー。

◇問題点
  • そもそもタイアップ作品は出版社や関係者による正式な企画として制作されるものであり、持ち込み作品として個人が独断で制作するものではない*3
    • 非常識と呼ぶのも生ぬるいこの暴挙に、編集者ものっけから困惑100パーセントでのスタートとなった。
    • 持込君は「人と違う物を描かないと生き残れない」「今僕が描きたい世界を描いた」と主張するが、編集者には「普通の(まともな)人なら描かない物を狙って描いた」としか思えなかった。
  • 冒頭からWikipediaで調べた程度と思われるプロフィールを、サッカーをしながら説明する。
  • ユニフォームのボトムスがなぜかスカートになっている。
    • 持込君は「そういう部分は試合に直接関係ない」「調べるところは調べている」と反論するが、必要な情報と不要な情報の取捨選択ができていないことが露呈している。
  • 試合内容も支離滅裂で、チームプレーを無視して澤本人だけが活躍する展開になっている。
  • ゴール時には「誉れ高き穂希シュート!」「日の丸せおって澤ほ丸ってね」といった台詞を発するなど、実在の澤選手の人物像とはかけ離れた描写になっている。
  • 決勝戦では「ドリブルで相手チームを蹴散らす」といったスポーツマンシップに反する展開の末、ヘディングシュートで優勝する。
実際の選手や競技への理解がほとんどないことが明らかで、もはや澤選手に対するネガティブキャンペーン以外の何物でもない問題作。
漫画のレベル以前に、こんなものを世に送り出したら出版社は一発で大炎上だろう。
編集者は「主人公の名前さえ変えれば、全部オリジナル作品として成立しますけどね」とフォローするが、持込君は「いけちゃいます」という部分だけを拾い、採用が決まったと勘違いして、次回作の執筆に取り掛かるため即座に帰ってしまう。

編集者(いけるってそういう意味で言ったんじゃないのに……!)

ちなみにこの回では、これまでとは異なり、持込君が一人で持ち込みに訪れている。
しかし、編集者から質問をされても黙り込んだままで、まともに受け答えができず、編集者も早々に切り上げようとしていた。

ところが母親が現れた途端、それまでの様子が嘘のように普段通りの態度へ戻るという極端な変化を見せ、持込君の異常さを改めて印象付けることとなった。


【余談】

『ギャグマンガ日和』作者の増田こうすけは、持込君のような持ち込み形式ではなく、赤塚賞への投稿・受賞を経て漫画家デビューを果たしている。
しかも、そのデビューまでの流れは以下の通り。

初めて専用のペンを購入し、完成させた漫画を赤塚賞に投稿
最終選考まで残る

「あれで最終選考まで行けるなら、もっと良い作品が描けるはずだ」と考え、さらに力を入れた作品を投稿
→赤塚賞・佳作

担当編集者がついたものの、ネームを送っても反応がなかったため、再び赤塚賞への投稿を決意。
前作・前々作で「行き当たりばったり」という評価を受けたことを踏まえ、初めからストーリー構成を意識し、歴史を題材にした漫画(『ギャグマンガ日和』1巻収録「夢 -赤壁の戦い-」)を制作。
→赤塚賞・準入選

その後、担当編集者のアドバイスを受けながら制作した「なめられペリー」が連載会議を通過し、『ギャグマンガ日和』の連載が決定

驚くほど順調なステップを踏んでいる。
努力による改善と結果がしっかり結びついており、ある意味で持込君とは正反対の存在である。才能の化物……!

この経験から、本人も準入選を獲得した頃には「なぜ漫画のことだけはこんなに上手くいくのか」「もう漫画家になるしかない」と考えるようになったという。

ちなみに2020年には漫画家になるまでの経緯を描いた自伝漫画も発表しているのだが、あまりにも大きな挫折や波乱が少なく、本人が「何も事件が起きない」ことを気にするほど淡々とした成功譚になっている。
最大の挫折が「三重県から名古屋に上京後、原付の前輪を盗まれて怖くなり実家へ帰った」という、漫画家活動とはほぼ関係のない出来事だったあたりからも、その順調さがうかがえる。





編集者「ひと通り項目を見ましたが、やはり乱文が多いのがネックですね。
    こことか吐き気を催す邪悪というワードを多用しすぎてます、
    いくら非道なキャラクターでも好きな人だっていますからこのような表現は良くないと思いますよ」
母親「ほらたっくん、やっぱり読む人の気持ちをちゃんと考えたほうがいいってよ」
高志「そんな事言ったってダメなものはダメなんだよ! そのような奴は徹底的に弾糾しないといけないの!!」
編集者「とりあえずアニヲタwikiの項目は当たり障りない文章が求められていますので、文章を書く練習をもっとして下さいね」
(ガタッ)
母親「あっ! ちょっとたっくん、どこ行くの?」
高志「糞項目を叩き直す為に追記・修正するんだよ!!」
母親「今日はどうもありがとうございました、息子もああ言っていますので項目の登録をお願いしますね」

(ガチャ)


編集者「そんなこと言われても………(運営に怒られるよ~!)」

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最終更新:2026年07月30日 11:50

*1 いわゆる場面緘黙症。会話能力そのものに問題はないものの、特定の状況や環境では不安から言葉が出なくなる症状。

*2 いわゆるフランベのこと。酒類を鍋に入れ、一瞬炎上させることで香りや風味を引き出す調理技法。

*3 肖像権侵害や名誉毀損にあたる可能性があるため。