第11章 ブラック2・ホワイト2編(ポケットモンスターSPECIAL)

登録日:2018/08/05 Sun 01:29:55
更新日:2025/01/11 Sat 09:09:37
所要時間:約 5 分で読めます





漫画ポケットモンスターSPECIALの第11章。ゲームのブラック2・ホワイト2版(以下BW2)の世界をベースにしている。
単行本は52~55巻。連載期間は2013年7月~2020年4月(ただし中断期間あり)。


あらすじ

伝説のポケモンを用いてプラズマ団が起こした大事件から2年後。イッシュ地方はその混乱も癒え、生態系も変化をきたしていた。
そんな中、ヒオウギシティにあるトレーナーズスクールに通うナンパ男のラクツと、そこに転校してきた少女ファイツは、ベルからポケモン図鑑をもらう。
二人は互いに秘密を隠しながら学園生活を送るが、同時に新たなリーダーを据えたプラズマ団が再び動き出す……。


主な登場人物

その他脇役は「ポケットモンスターSPECIALの脇役」の項目を参照。

◆図鑑所有者たち

ラクツ
本章の主人公。BW2の男主人公のデザインとほぼ同じ。
普段はトレーナーズスクールに通うナンパ男で、容姿・女性の扱いともに完璧でめっぽうモテる。
だがその実態は国際警察の潜入捜査官。しかも階級は警視で、ハンサムよりも上。学校での生活はすべてが演技である。
彼に下された指令は、「プラズマ団幹部・七賢人の逮捕」と「旧プラズマ団が作成したメモリーカードの確保」の二つ。
任務に対してはとても忠実で、そのための一切の出費や労苦を厭わない。バトルもとても強く、公式にすら「完璧超人」と書かれるレベルである。
しかし、任務以外で彼自身の内面を窺い知れる描写は終盤までなく、一見ストイックに見える性格の本質は…。

ファイツ
本章のヒロイン。BW2の女主人公とほぼ同じ容姿。
トレーナーズスクールに転校し、そのバトルの腕前で図鑑を勝ち取るが、なぜかその受け取りを拒絶し、幼馴染ポケモン一体だけしか傍に置こうとはしない。
その正体はプラズマ団の元団員で、性格はポケモンを守りたいと願う優しいものながら、その行動指針は今もプラズマ団の教義に捕われ「トレーナーとしての方法論」を全否定し、心にNへの激しすぎる愛と信仰心を抱き続け依存する危ういものだった。
ラクツからは積極的に距離を詰められているが、内面に踏み入ろうとする態度に不安を覚え、拒絶していた。
それでも信仰心に葛藤しつつ徐々に心を開こうとしていたが、彼の目的は先述した任務のため。
人の心を弄ぶその行いにファイツは激しく揺さぶられ更に、自らの教義が他者に与えた被害を思い知ることになるが、急転する事態とラクツの想像を絶する合理性は、彼女を否応なく決戦へと巻き込むことになる。

◆味方勢力

チェレン
トレーナーズスクールの新米教師。BW2の容姿に変わっている。
前章での戦いを経て、シャガに推薦されて教職に就く。またジムリーダーへの就職も内定している。
人格的に大きく成長し、個性豊かな生徒たちに振り回されつつも何とか学級運営は出来ている模様。
単行本に掲載された時間割によると、バトルの基本事項を教えるのは彼の担務のようだ。

●ヒュウ
BW2のライバルとほぼ同じ容姿。名前を自由につけられるライバルなのに、ソフト数の都合で図鑑所有者にはなり損ねてしまった
性格は原作通りで、トレーナーとして強くなることを重視して学校に通う。
だが周囲の危機意識の低さに常にイライラしていて、学園生活を楽しみたい女性陣から快く思われていない。
5年前に妹のチョロネコを奪ったプラズマ団を深く憎んでおり、ある手掛かりからプラズマ団が未だに暗躍していることを知る。
そして、相棒のビブラーバと共にヒウンシティにてプラズマ団との戦闘に突入するが…。

ハンサム
国際警察警部。ギンガ団の一件以降、プラズマ団の案件を担当している。
しばらく他地方まで七賢人を追っていたようだが、本章では年下であるにもかかわらず階級が上のラクツの部下として、その任務をサポートすることになった。
その言動は第8章の時とあまり変わっていないが、ラクツのことを「警視殿」と敬称で呼んでいる。

◆敵・第三勢力

プラズマ団
本章の敵組織。前章で敗北し王たるNが去った影響により、二つに分裂している。
現在プラズマ団を名乗る組織(現プラズマ団と記述)は、アクロマを首班とし制服も一新している。
「ポケモンを解放する」という教義は同じだが、ポケモンに対する愛着は薄く、暴力をふるう理屈として教義を掲げているのが実態である。
そして、その目的は「ポケモンの力を独占すること」に変質している。
一方、Nを支持する一派(旧プラズマ団とする)は、制服を昔のまま維持しポケモンを保護する方向へとシフトしている。

アクロマ
現プラズマ団のリーダーを務める科学者。ポケモンを自在に制御し最大限に力を発揮させる「アクロママシーン」を開発している。
ポケモンが力を発揮することへの研究には手段を選ばず、国際警察にはその所業を「闇の科学者」としてマークされていた。
その性格は純粋で無邪気。戦闘の最中に相手の発想に感心したり、相手の至らなさを煽ったりと子供っぽい言動をとる。
だが、目的のためには殺人もいとわないなど、「純真」というわけでもない。

ゲーチス
現プラズマ団を裏から支配する存在であり、アクロマの盟友。服装はBW2のものに変わったが、余裕綽々な態度はそのまま。
自らの身勝手な野望を「夢」と言い、その実現のためにあらゆるものを傷つけ、犠牲にする。
悪事を「夢」という美しい言葉で修飾するのは、前章の主人公二人からすればこの上ない皮肉と言え、エンディングでは実際に二人に対して盛大な皮肉を突き付けるが…。

七賢人
ゲーチスを除く6人の内、ロットとアスラは旧プラズマ団につき、ヴィオは独自行動をとる。
旧プラズマ団は「アクロママシーン」を無力化する研究を進めており、そのデータが戦いの鍵となることからロットは保護に動く。
トレーナー0点ヴィオはキュレムに対する知識が深いが、それは彼自身の劣等感に起因するもので…。
ジャロはアクロマにとって邪魔だったのか、トルネロスに襲撃されていた。残りの二人は現プラズマ団の配下となっている。


作風について

2024年現在、ポケスペ初の学園モノ。*1前章がゲームの流れに対して比較的忠実に展開したのに対し、本章はかなりのアレンジを加えている。
基本的には第10章の続編なので、全体に通底する雰囲気は類似している。
だが同様に第7章の直後に展開された続編である第8章と比べて、主人公の交代などの変化が大きく単体の章としての意味合いが強い。
また、プラズマ団の暴力性が増した影響か、流血や負傷・ダイレクトアタックの頻度が上がりつつある。

また特筆する部分をあげるなら、「主人公が他人が知らない際立った性格を持つ」という点だろうか。
これまで不良系アウトロー真面目美の探究者野生児芸人志望と多種多彩なキャラがいた主人公陣だが、
この章では前半で「ファイツの熱狂的過ぎるN崇拝とトレーナーの方法論への嫌悪感」、終盤で「ラクツの先天的な特異性格」が描かれ、しかし彼らの裏面に気づくものが殆どいなかったせいか、彼らの特異さが良くも悪くもさほど変わらず終了
これに関しては連載状況の不安定さやそれに伴う尺の短さ、前章ラストに発生した問題の解決を並行して進行する必要*2があった事等が影響した可能性があり、ファイツに関しては終盤少し自省と成長が見られるが、
「主人公2人の最終的共闘理由が『共通の敵がいる』でしかなく、性格的に理解しあうことはなかった」というのはシリーズ中最も異色とも言える。



連載についての補足

第6章以降、単行本発刊の遅延・掲載誌の相次ぐ休刊と多事多難な連載状況にあったポケスペであるが、
この章では更に「世代交代のペースがそれまでの4年から3年に短縮」というメディアミックスならではの危機に直面する。
新世代に移行すればメディアミックスもそれに移行するのがポケモンの常である以上、2013年10月にX・Yが発売したことは第11章の雑誌掲載打ち切りを意味していた。

第12章を連載しつつ描き下ろしを行うべく原稿をストックしていた両先生だったが、「2巻以上単行本描き下ろし」は出版社としてもリスクが高い。
「先行版単行本」という形で12章以降の単行本化を行うという異例の事態になったものの、肝心の本章は連載も単行本化のめども立たぬまま3年が経過した。

だが、第13章を「サンデーうぇぶり」で連載し終わったことで、ようやく2016年から本章の連載は再開した。
ゲームも第七世代に突入していた中、異例のメディアミックスである。
おまけに、53巻が刊行された2017年8月以降連載は不安定になった。休載と再開を繰り返し、結果2018年2月の更新から2019年3月まで休載していた。
その結果、第14章の雑誌連載が終了してもなお本章は完結せず、第八世代と第五世代の漫画を同時並行で進める事態となった。
最終的に55巻(2020年5月発売)にてエピローグを書き下ろし、連載開始から7年弱の月日を経てようやく完結した。



 Next…X・Y

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最終更新:2025年01月11日 09:09

*1 その後、原作ゲームからして学園モノの『スカーレット・バイオレット編』が二つ目となった。

*2 これ自体に関しても前章のキャラのみで話が進んだため主人公2人が問題解決に関わる事は無かった。