モザイク(演出)

登録日:2019/05/02 Thu 04:18:25
更新日:2025/07/02 Wed 15:22:44
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モザイクとは、

□■□■□■□■
■□■□■□■□ ※プライバシーに配慮しております

画面を隠す演出のことである。

本来は、石などの小さなかけらを集めてひとつの図案にする技法のこと。
今回説明する演出も、隠す対象を抽象化した様がそう見えることが名前の由来だと思われる。


目次


概要

処理したい部分を格子状に区切り、それぞれの区画を単色で塗りつぶす手法。
その際に各区画の色を平均化するなどの処理が行われることが多く、これにより元の画像の特徴をある程度残しつつも粗くぼやけたような状態になる。
マス目が大きいほど判別は難しくなり、逆に小さければ元の画像に近くなっていく。

主な理由

1. エロ画像など

……直球であるが、「なぜモザイクは存在するのか」を語るうえでまずこれは外せないだろう。

これは、主に日本国における刑法175条の「わいせつ物頒布(はんぷ)等の罪」によるもの。
日本ではこの法律によりわいせつ物を一般に向けて公開することは一切禁止されており、れっきとした刑務所に入れられる拘禁刑(2025年まで懲役刑)罪*1である。

…ではなぜ、アダルトビデオなりエロ本なりが(年齢制限はあるとは言え)公然と売られていたり、エロ画像がネットに溢れているのか?という疑問が当然生じることだろう。
これは、「わいせつ物」かどうかの定義が「性器が露骨に描写されているかどうか」ということで判断されているからである。
モザイクや線などで性器を隠せば、この定義に当てはまらなくなるというわけ。
なお、胸・乳首は性器ではないので、この定義においてわいせつ物には当たらない。

ただし、これは日本での法整備であり、海外においてこういった「性器が出ている、出ていない」でわいせつ性が判断されることは一切ない。
一般的なわいせつ物を所持することが罪になるかどうかも国によって分かれる。
イスラム圏は流石に厳しくわいせつ的なものは本当に所持ができない一方、キリスト教圏などでは権利として認められており一般的なわいせつ物に法的な拘束は一切ない。
そのため、エロ画像やエロ動画におけるモザイク処理も完全に日本固有で、海外では殆どの場合無修正である(その代わり、児童ポルノ関連は日本より明らかに厳しく世間的な扱いも同様だが)。

そもそも「生殖器にモザイクを入れたら乳首が出ていようが性交していようがわいせつ物でなくなる」という定義は冷静に考えれば一般的な感覚からは程遠い。
加えて言えば、この「わいせつ物かどうかは性器の描写で判断される」という話は慣例的な現場上の法解釈に過ぎず、公的な議論もなされていない。
ヘアヌード写真集は昔はダメだったのが今では無修正でよくなったりと基準も時勢によって変わる部分があり、これらの点から批判的な意見も度々挙がっている。
見栄えの悪さや修正の手間、そして憲法の中の「表現の自由」の存在から表現規制を嫌う人も非常に多い。
…ただ、「モザイク等修正があったほうが抜ける」という変わった人も中にはいるが。
なお、アナルに関しては、最近ではモザイクをかけないのが一般的。
ただし、種類に関わらず何かを入れると生殖器扱いとなりモザイクが必要となる。やっぱりよくわかんねぇな。
精液などの体液も基本的にはモザイク処理されない。

春画や裸婦画など、芸術分野における裸、性器の描写も対象外とされる。
全体として「読者の好色的興味に訴えるものであるか」が判断材料になるということが判例としてわかっている。春画は当時のエロ画像なのだがその辺は曖昧。

ちなみに『境界線上のホライゾン』世界では三次元で生殖器隠しを行えるようになっており、国のトップが全裸というアレな状況でも最後の壁は超えずに済んでいる。

透かして見る方法の研究が最も試みられているのもこの分野だ。ただし解除の方法も同法に問われる可能性があり、しかも判例もある。


2. プライバシー等への配慮

冒頭で示したように、その個人などの情報に配慮した場合に映像隠しが行われる。
個人プライバシーの場合は例えば車のナンバーや家の周辺など、無生物でも個人の特定につながるものを含む。
エロビデオだと素人もので顔が……とかいう事もあるが、こちらは普通のテレビ番組でも行われる。
例えばすりガラスなどで顔をぼかした人物がボイスチェンジャーでしゃべるのも、モザイク演出と本質は一緒である為、この「ぼかし」というのもモザイク系演出と言えるだろう。

また、番組スポンサーへの配慮だと思われるものとして、ただのペットボトルや缶などでもモザイク加工される事があるが、近年は提供クレジットが表示される時に出演者が着ているシャツのロゴなどもその対象となっている。

テレビ番組で行われる同様の演出のうち、工場見学や産業施設、自衛隊などの特殊組織への取材で画面内の機材や資料にモザイクが入る事もあるが、これは個人プライバシーやスポンサーへの配慮ではなく、同業者(軍事・産業スパイによるデータのぶっこ抜き含む)対策という意味での配慮となるので、微妙に意味が違う。
ブラタモリでは「卑猥すぎて見せられません!」とネタにしたこともあった。

また、昼のニュース等では手錠にモザイクが掛かっていることが多いが、これは逮捕された段階ではまだ犯人であると断定できないため、人権に配慮したものとされている。
逆に警察24時などではあえて手錠にモザイクを掛けないことが多い(顔にはモザイクが掛かっている)。


3. グロ画像など

一部の虫(Gとか不快害虫)やら人間のモツやら、そういったものがモロだしにならないためのもの。
映像的にお見せ出来ない、不愉快になる人が出るからダメ、という自主規制的なもの。
アニメなどでは逆に「それだけヤバいもの」と認識させるためにモザイク状になっていることもある。(ムドオンカレーのようなマズイ飯とか)
なお、「モザイクかけないと絵面的にヤバくなるだろう」との作者の判断により、編集の反対を押し切ってモザイクかけたら、むしろモザイクのせいでもっとヤバくなったという作品も存在するムクムクデカくなる様子をモザイクにすりゃそうなる

また、日テレの「世界の果てまでイッテQ!」においては、出演陣が大食い大会に参加させられたりゲテモノ料理を食べさせられたりなど嘔吐と縁が深い番組なのだが、それを逆手に取り、嘔吐物にキラキラしたファンシーな感じのエフェクトを掛けるという新手のモザイク演出が編み出され、番組関係者・視聴者両方の爆笑をかっさらった。


4. 意図的な演出

クイズ番組などで、モザイクの度合いを徐々に薄くし、なるべく早く正体を解答させる…というお題は古くから定番中の定番。
というか、モザイクという映像技術は、元々こういう使い方をするために発明されたものであるという説があり、かつてテレビ朝日で放送されていた「象印クイズ ヒントでピント」がその嚆矢とされている。

また、1990年に発売された家庭用ゲーム機・スーパーファミコンは、表示される画像にモザイクを掛ける機能が本体にデフォルトで搭載されているというのを売りにしており、それを活かした演出が多数のゲームソフトで試みられた。
『スーパーワギャンランド』シリーズでは「モザイクあて」というまんまヒントでピントなミニゲームも収録されている。
もちろん、アダルトビデオのパロディネタをしたりとかそんな使い方がされていたワケではなく、主に場面転換で画面をフェードアウト→フェードインさせるような使われ方が中心だった*2

東映の特撮ヒーロー番組「宇宙刑事ギャバン」では、主人公のギャバンの現代的かつメカニカルなイメージを演出するため、変身バンク等でモザイクが積極的に採り入れられている。
モザイクがカッコいい事のために使われているという、おそらく稀少な例。


5. 上記のパロディ

このように、創作作品においてはもっと自然に隠す方法がいくらでもある※ただし完全版商法等の関係で、敢えて不自然に隠す場合でも謎の光や黒塗りの方がモザイクより容易であるわけだが、ギャグ作品においてはメタ発言めいたネタとしてわざわざモザイクが使われる場合もある。
他作品など登場してはいけないものが登場している」ことを、そのものを描かず表す場合も。

また、フジテレビのバラエティ番組「ワンナイR&R」では、深夜時代に『チョコボーイ山口』というAV男優風キャラクターによるコントがあり、別にエロくもなんともないシチュエーションにモザイクを掛けることによって、さもエロい事であるかのように表現するというネタがあった。


創作作品においての類似例


             _(こ^)、_
            〃、__ノノ、__,ヽ
              {.っ>  <っト、
            (⌒i  (千于`ー┴'─────┐
         (O人  `ー|                 |
           /⌒ヽ(^う 見せられ.      |
           `ァー─イ    ないよ!   |
           /  (0::|__________|
             /\____/
          /   /  ⌒ヽ
      ___/  / ̄ ̄`)  ノ
     (__r___ノ     (.__つ

上記のAAもまたストレートな「そういうもの」である。モザイクの代わりに看板と体で映像を見せない。

ちなみに上のAAは「ハヤテのごとく!」が元ネタであるが、こうした演出も漫画やアニメには幾らか存在する。
上のAAは作中人物と特に関係がないが、作中キャラのデフォルメ顔などを使うパターンもある。あとは下記D×Dのようなロゴ系か。

他に最近多いのは“謎の光”である。どこから出てるんじゃその光、というような強烈な光線が画面外から襲い掛かって来て乳首など局部を隠す。
謎の光という呼称は『アイドルマスター シンデレラガールズ』の「《劇場第988話》あの光みたいに」や、『艦隊これくしょん -艦これ- 4コマコミック 吹雪、がんばります!』第81話*3にて公式に使われている。

アニメによっては墨みたいなものだったり、ロゴマークだったりするが、要点は一緒。
昔のアニメでは夕方アニメでも乳首券が発行されていたのだが、現在のアニメは深夜であっても地上波ではやたらめったら濃い湯気や妙にタイミングのいい木の葉などでも隠されている。
アニメ版『ドラえもん』のように、時代が経つにつれて全く裸が描かれなくなった作品も存在している。

一方、ジョジョの奇妙な冒険等の暴力描写が比較的多い作品をアニメ化する場合、上記のグロ画像の項に倣い、人体の断面や内臓などは黒塗りやマグマのような断面*4で処理されたり、血飛沫をモザイク代わりにしたりといった手法で対処している*5
テレビアニメ北斗の拳では、吹き上がる血液を白い光のようにしてグロさを抑えており、以降バトル系アニメではこの演出が定番となった。
同じ北斗でものちの映画版では赤い血液や飛び散る臓腑を正確に描写した結果、ものすごくグロくなっている。
変わった所では「未成年者の喫煙描写」に対しても黒塗り処理が使われた事も。


追記・修正は画像変換君を用いてモザイクを見破るか、BD版を買ってからお願いします。

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最終更新:2025年07月02日 15:22

*1 これには文章や図画(二次元画像)も含まれる。ただし、文章や図画(二次元画像)の場合、わいせつ性が低いとされ初犯で懲役刑になることはほぼ無い。

*2 ハード固有の機能を利用したものであるため、後年別機種に移植された際には別の表現に差し替えられた場合もある。

*3 単行本に至っては「謎の光」の解説まで入ってる。その内容は「アニメでよく使われる謎の光。部分的に見えなくなる。」というものだった。

*4 ジョジョ2部の柱の男達に顕著。

*5 DVDなどで収録されるものでそれらが解除される事が多い。エロ方面でも湯気が薄くなったり乳首券が発行されたりなど。