登録日:2019/08/02 Fri 07:48:29
更新日:2024/11/16 Sat 16:06:49
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杉村升(1948年6月28日 - 2005年2月24日)とは、
日本の脚本家である。
【概要】
小川英を師匠に持ち、1974年に「杉村のぼる」名義で『
太陽にほえろ!』で脚本家デビュー。
以降、小川氏と連名という形で時代劇や刑事ドラマ、アニメなど媒体を問わず様々な作品の脚本を手掛けた。
2005年2月24日に急性心不全により死去。56歳という若さであった。
彼の死は各業界に衝撃を与え、
白倉伸一郎Pや雨宮慶太監督、フラグシップ設立者の岡本吉起氏達が自身のホームページやブログで哀悼の意を表し、
同じく東映特撮やフラグシップでそれぞれ演出家・脚本家として活躍した三ツ村鐵治氏と宮下隼一氏は葬儀で抱き合って号泣したという。
また、岡本氏(及び氏が代表を務めるゲームリパブリック)が開発に携わったゲーム『ブレイブストーリー 新たなる旅人』ではスタッフロールに「杉村升に捧ぐ」の一文が加わっている。
【作風・製作スタンス】
はっきり言えば、『思ったことは何でもやる』脚本家である。
「ご都合主義」や「超展開」と言える突拍子もない展開が描かれることが多く、特に子供向け特撮ではそれが顕著。
これは氏がかなりのアイディアマンでゲーム好きであることから起因している。
前者では1つのシナリオに多くのアイディアを盛り込んでおり、そのことを忠告すると
「別の話を書くときには違うアイディアを考えればいい」と返す、
後者はファミコンで『
三国志』や『信長の野望』にハマっていた為か、
劇中でファミコンの描写が散見したり
RPG要素を導入する程である。
その為自身の引き出しの多さが仇となり、途中で入れた新規設定によって
伏線等をスムーズに消化しきれなかったり、無理矢理な超展開が多い作風と化し、
『(本人は真面目な話を作っているはずなのに)やる事なすことが何となくズレていて天然ボケ的な面白みを視聴者に与えてしまう』こともしばしば。
そういった部分を氏の
悪癖個性として好意的に捉えるファンも多いが、大人になってから氏の担当作品を見て唖然とする人も多い。
かといって内容自体はハードなものが多く、彼が担当した作品には
『1度主役側が敵に完全敗北する』『主役側の主要キャラが死亡退場する』事がある。
特に『BLACK』と『
機動刑事ジバン』で二度も主役ヒーローが死亡するという内容の脚本を書いており、前者は
『BLACKが死亡した結果、日本が悪の組織に蹂躙され、ライダーごっこの内容がライダーが土下座して終わる程の世紀末状態』、
後者は
『悪役3人VSジバン1人の構図でリンチされ、片腕を切り落とされて死亡』という衝撃的な内容で、全国の子供達の
トラウマとなった。
しかし、どちらも後の話でパワーアップして
復活しており、不滅のヒーローの姿を描いている。
また、元々刑事ドラマ出身ということもあってか、『他人を救えても自分自身を救えない』展開も散見される。
その為か、氏の作品を長年見てきた人から『挫折の脚本家』と呼ばれる事も。
更に「家族」や「親子」が関わる事も多く、時には不器用で愛情を伝えられない家族だったり、敵対していたりと複雑な関係が絡む作品が多い。
上記のように子供向けとは思えないハードな内容も多いが、子供向け特撮番組を作るという事で
あくまで「子供の夢を守る」事を重視している。
シリアスなギャグの連発で台無しになっている部分もあるが。
その為、『ジュウレンジャー』の「ご主人さま!」のプロットで白倉Pが
「ランプの精ジンが子供の願いを叶え、子供の欲望を掻き立てる」というストーリー案を出した際には冒頭の台詞を吐いて激怒した事も。
また、
上原正三氏の紹介でフラグシップに参加した
吉田伸氏を、曽田博久氏や宮下氏達と共にしごき上げた。
徒弟制度バリバリの世代だったため、
「上っつらだけで人間を描くな!」と台本をよく床に叩き付けていたという。
その結果、吉田氏も後に杉村氏に勝るとも劣らない超展開を視聴者に見せつけるのだが……
また、『バイオハザード2』以降カプコンのゲームにも関わった杉村氏だが、それ以前からゲーム好きの作家としても有名であった。
バイオシリーズについても第1作はシナリオを非常に好んでおり、『2』では岡本氏と親交があった事から開発中止となった『1.5』からのシナリオ調整のために呼ばれる事になる。
その際、神谷英樹ディレクターに対して「前作の財産を全く引き継いでいないのではファンがつくはずがない」と進言し、シナリオ構成を1から練り直すために会議を重ねた。
「前作で名前だけ登場した
エイダ・ウォンと
ブライアン・アイアンズのキャラクター像立案」「
新主人公を
前作主人公の妹とする」といったテコ入れで作品間の繋がりを持たせ、
「警察署に美術品を利用した仕掛けを盛り込む事に説得力を持たせるため、美術館を改装したものという設定にする」など、世界観設定の根幹にも多数のアイディアを繰り出した事で神谷ディレクターは目から鱗が落ちまくったという。
ゲームシステムの都合でシナリオに変化が起きる事など、会議の場で両者が衝突する機会は多く、神谷ディレクターも『2』ラストシーンに勝手に台詞を入れて怒られた事などを語っているが、
一方で杉村氏はカプコンの若手社員に対して非常に面倒見がよく、また年下の自分達にも対等なクリエイターとして正面から接していた事に対して称賛の言葉を度々述べている。
また、こうした経験が自分のシナリオ構成の勉強になったとして、杉村氏の事は脚本家の師匠としても慕っており、没後の現在でもTwitterやブログなどで氏について語る時には常に「先生」と敬称をつけている。
他方、事故で入院した自分に見舞いとしてエロ本数冊を送ってきたという奇行も暴露しているが。
【担当作品】
太字はメイン脚本
特撮・実写
アニメ
152話「次元と帽子と拳銃と」では
「次元大介は帽子がないと弾が当たらない」という
どこからツッコめば良いか分からない設定を作り出した。
ゲーム
追記・修正は一度完全敗北を喫するが、ご都合主義や超展開を絡めた復活を経てリベンジしてからでお願いします。
- 杉村氏の書く主人公キャラはいずれも筋が通ってて好き。この人の作品観て育った世代なので個人的に最も好きな脚本家。 -- 名無しさん (2019-08-02 08:54:36)
- ライダーBLACKはRXの方にも参加してたと思うんだけどな ブラック終盤の方はここにも書かれたような展開は良い方に作用したけど逆にRXはやりたい放題すぎて最後の方これでいいんか?と作風が良くも悪くも目立ったな、って印象 -- 名無しさん (2019-08-02 19:52:21)
- ↑杉村さんが参加したのはBLACKだけ。RXには宮下さん達弟子筋が参加してた。 -- 名無しさん (2019-08-02 20:57:01)
- ジンの逸話は好き。というか、あの話自体がジュウレンジャーの中でも一、二を争うレベルで好き。 -- 名無しさん (2019-08-02 22:06:23)
- オーレンジャーの頃はさすがにネタが切れてたな -- 名無しさん (2019-08-03 06:15:04)
- バンドーラやマーシャ・カーシャ等コミカルな悪役が多い一方でシャダムやブライアン・アイアンズ等残虐で狂気じみた悪役も良く描く傾向にあるよな。ソルブレインファンのストーカーとか見ていてガチで引いた。 -- 名無しさん (2019-08-03 19:36:27)
- もしも早世しないで長期間バイオハザードシリーズのシナリオの元締めをやってたらキャラも世界観も今とは大きく異なる形になってたかも?あまり洋画っぽくなくなってたり -- 名無しさん (2019-08-03 22:08:13)
- 「SFは単に科学技術を描くだけでなく、それを扱う人間の精神の変化を描くもの」という考えを持っていたらしい。その結果ウインスペクターの広崎、ソルブレインの高岡、バイオハザード2のウィリアム・バーキン、バイオハザード0のジェームズ・マーカスみたいなみたいな「狂気の科学者」的なキャラクターができたわけね。 -- 名無しさん (2021-07-21 22:16:53)
- 単純な勧善懲悪に懐疑的だったり、細かい設定より勢いやノリを重視したり、実は白倉とスタンスが似通っているんだよね。その2人が組んで最高の形になった作品がダイレンジャー。 -- 名無しさん (2021-11-28 15:34:15)
- 起承転結の転以降になると若干地に足がついてない感ある。整合性をやたら気にする21世紀入ってからの脚本の流行りには付いていけなかったかも -- 名無しさん (2023-02-10 21:03:03)
- 良くも悪くも、906 -- 名無しさん (2024-06-29 20:50:52)
- 良くも悪くも、90年代と共に役目を終えた脚本家。ド真ん中世代だけど、ジュウレンジャー〜オーレンジャーとか色々マズいと思ったもん。 -- 名無しさん (2024-06-29 20:52:34)
最終更新:2024年11月16日 16:06