登録日:2019/08/25 Sun 23:04:42
更新日:2025/04/20 Sun 23:01:32
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地上から消えた動物たちを追え!
謎のUFOの正体は…!?
ほんとうに天国ってあるの?
『ドラえもん のび太と雲の王国』とは、『映画
ドラえもんシリーズ』の第13作目及び『大長編ドラえもんシリーズ』第12作目のタイトルである。
1992年3月7日公開で上映時間は97分。
同時上映は『
21エモン 宇宙いけ!裸足のプリンセス』と『トキメキソーラーくるまによん』の2本。
ここでは原作漫画版を中心に解説する。
【概要】
雲の中にある天上人の国が舞台。
本作は『
アニマル惑星』と同様に環境問題がテーマとなっているが、本作は『アニマル惑星』以上に環境破壊に対して警鐘を鳴らしており、天上人や
動物を介して自然の怒りを描いている。
当時はまだまだ密猟問題が洒落になっていなかった時期である事も影響していたのだろう。
特に中盤の大洪水による地上文明一掃のシーンは、大長編ドラえもんシリーズの中でも屈指のインパクトがある場面であり、トラウマシーンに挙げるファンも少なくない。
藤子先生の環境破壊問題に対する本気度がうかがえる描写であるが、一方で氏はこの「雲の王国」について「あくまで『ドラえもん』はエンターテインメントであるのにこの作品ではその枠を超えてしまった。(「優れた天上人」が「劣った地上人」を断罪する、という上から目線の)お説教になってしまっていた」と反省点も述べている。
フワフワとした印象のするタイトルとは裏腹に、扱っているテーマは重い。
中心となる環境問題に加え、「行き過ぎた環境保護活動」「お互いの生存をかけた結果の戦争」「抑止力としての兵器が悪用されてしまうとどうなるか」とも取れる描写も見られる。
ただ、いち映画作品として楽しめないのかというとそんな事はなく、窮地に追い詰められながらも強大な敵に立ち向かうのびドラ達、随所に挟まれるハイセンスなギャグシーンは健在である。
本作も例年通り映画公開前から
コロコロコミックで連載されていたが、藤子先生の体調不良のために残り2回が描かれず、終盤は絵物語として掲載された。約2年後に雑誌「ドラえもんクラブ」に完結編が掲載されている。
そのため、本作の単行本は映画公開から約2年後に発刊される事となった。
過去の原作に登場していたゲストキャラが何人か再登場しているのも見所の1つ。
【あらすじ】
学校の授業で雲の事を学んでいた時に「天国はどのへんにありますか?」と質問し、皆に笑われたのび太。
ドラえもんに「天国があればとっくに見つかっている」と否定され落ち込むが、そのすぐ後にドラえもんに雲の上に自分達で天国を作ろうと提案される。
その後は仲間達と協力し、数日後に理想の国「雲の王国」を完成させた。
皆が思い思いに楽しんでいると、王国の雲が北アルプスの槍ヶ岳にぶつかってしまう。
山に下りたドラえもんとのび太は、そこで巨大なカメのような生き物に乗る少年を発見。すぐに少年を保護するが、次の日になると少年は忽然と姿を消していた。
王国内に少年はいなかったので、槍ヶ岳で少年が乗っていた生物・グリプトドンを探す事にする。
グリプトドンも見つからなかったので一旦王国に戻る事にするが、王国を探していた時に天上人の住む雲に迷い込んでしまった。
ドラえもん達は天上人のパルパルに連れられ管理施設まで行くが、彼女の仲間のグリオは彼らを歓迎しておらず、ドラえもん達も彼に不信感を抱いていた。
天上人の態度が引っ掛かったドラえもん達はすぐに脱出しようとするが、落雷によって散り散りになり、ドラえもんが故障してしまう。
静香・ジャイアン・スネ夫はすぐに天上人に保護されるも、ドラえもんとのび太の行方が掴めないまま夜は明けた。
その後、静香達は中央州へ移動する事となり、天上人の世界を見て回る。
だがそこで、天上人が計画する大洪水で地上文明を一掃する「ノア計画」の全容を知り…
【登場キャラクター】
【レギュラーキャラクター】
ご存知
22世紀のネコ型ロボット。前作では四次元ポケットを奪われ、前々作では散々タヌキ呼ばわりされ何かと不遇な目に遭っていたが、今回は主役として見せ場が多く優遇気味。
「天国がないなら作ればいい」とのび太に提案。仲間達から資金を援助してもらって必要な道具を揃え、雲の王国を完成させた。
中盤、雷によってコンピューターが壊れてしまい、意味不明な行動や発言を繰り返すようになる。「アップクプーのチンチロリン」「H!」
終盤まで使い物にならなかったが、大洪水の時に頭をぶつけた衝撃でやっと元に戻っていた。
ご存知怠け者のメガネ少年。
王国を作る資金が足りず困っていた時に「株式会社」の存在を知り、世にも珍しい「株式王国」という体裁にすることで、友達からスムーズに資金を集める事を思いつく機転を見せる。
王国が完成するとドラえもんの道具で国王となるが、その直後に天上人の雲に迷い込んでしまう。
中盤は故障したドラえもんの世話に四苦八苦していた。
大洪水に巻き込まれ何とか生還すると、全てが大雨で洗い流され文明が滅亡したと絶望する。
だが翌朝に「地上世界が滅びたらドラえもんが存在するはずがない」と気づき、10日以内に天上人の計画を中止させれば地上は助かると希望を持つようになる。
ちなみに最序盤でジャイアンとスネ夫に天国の件を馬鹿にされていたが、今作では特にわだかまりもなく2人を雲の王国に誘っている。
スネ夫「おーい、のび太天国はみつかったか?」
のび太「そのうち連れてってあげるから楽しみにしてな」
※処刑宣告ではありません。
ご存知風呂好きヒロイン。
おこづかいが少なかったので、とりあえず100円で1株だけ買っていた。
最後の審判の際、天上人達の言い分も認めつつ「地球を守ろうという運動も広がっているのです」等と小学生とは思えないような発言を行う。
しずかちゃんの弁論が無ければこの裁判終わってたんじゃないだろうか……?
ちなみに彼女の数少ない欠点である「下手くそなバイオリン演奏」が披露されるシーンがある。
ご存知頼りになるガキ大将。
手持ちが50円しかなかったので半株だけ購入。
全財産出してくれる漢気。
雲の王国建国記念に恐怖の
ジャイアンリサイタル開催を宣言するが、めでたく未遂に終わった。
最後の審判の際に地上人が言いたい放題言われると、「おれ達を悪魔みたいに言いやがって!」等と喧嘩腰に反論していた。
この他にはモアに捕まって怖がるなど、所謂「漢気溢れる映画版ジャイアン」としては珍しく目立った活躍が少ない。
今作は「環境問題」「裁判」「兵器による戦い」が主で、彼の得意な肉弾戦などが少なかった事も影響したか。
ご存知イヤミなお坊ちゃま。
しかし今作ではへそくりの一部で300株を3万円で購入し王国に大きく貢献、のびドラに持てはやされていた。
その後は「建国記念ジャイアンリサイタル」開催を宣言したジャイアンに大株主として「止せよ、くだらない」「君の音痴には、皆が迷惑している!!」といつもの彼からは信じられないようなド正論の意見を浴びせかけたが、大株主の偉さなど知ったことではないジャイアンに追いかけまわされるはめになってしまった。
天上人に会うと、彼らの態度から何かを企んでいると推測。
その推測は的中してしまい、「ノア計画」の全貌を知り驚愕していた。
のび太が部屋で友達と勉強すると言い、初日はちゃんと宿題を終えていたので感心する。
だが次の日に部屋がもぬけの殻となっていたので、嘘をついてどこかに行ったと気づきカンカンになっていた。
どこでもドアの鍵が掛かっていたのでドアノブのダイヤルをいじって開けようとするが、どうやっても開かなかったので諦める。
この際にダイヤルをいじった事が、ドラえもん達が「ノア計画」を知る一因となった。
久々に訪ねてきた友人が株式会社を作る事となり、出資しないかと誘われていた。
これが「株式王国」の閃きに繋がる事となる。
冒頭の理科の授業で雲について教えていた。
【ゲストキャラクター】
CV:伊藤美紀
天上人で絶滅動物保護州管理員の若い女性。
ドラえもん達が最初に会った天上人で、彼らを歓迎した後に宿舎に案内する。
当初は他の天上人と同じく、我が物顔で地球の環境を破壊する地上人を敵視していたばかりか、小学生3人を地上人代表として「最後の審判」に出廷させる事に何の躊躇いもなかった。
だが実際の法廷においてあまりにもな裁判内容にまずいと思ったのかドラえもん達と交流するうちに考えを改め、静香達に優しく接するようになり、実際の「最後の審判」の内容に「不公平です!この3人は何の準備もなくここに呼ばれてきたのです!」とはっきり述べ、一時閉廷に持ち込む。
最後の審判でも地上人を弁護する側へ回っていた。
CV:村山明
天上人で絶滅動物保護州管理員の男性。
パルパルとは違い終始仮面を被っていたため素顔は不明。
パルパル以上に地上人を敵視(彼の場合パルパルと違い、既に政府から地上人の処遇に関する具体的な命令を受けていた影響もある)しており、度々無礼な態度をとってドラえもん達に「感じが悪い」と思われていた。
だがドラえもん達が夜間に動物保護区に出て行くと、彼らを心配して捜索に向かっていた。
とはいえ、その後はあくまで「脱走した地上人を追い回す天上人」としての描写しかなく、パルパルと違ってドラえもん達に心を許すことは最後まで無かった。
CV:高乃麗
無人島で父親や祖父と暮らしていた少年。
父親や祖父と漁へ出た時に嵐に遭い、太平洋の真ん中にある無人島に流れ着く。
その後、家族と共に天上人に吸い上げられ、天上世界で暮らすようになる。
天上人に対し不信感を持っており、地面に穴を掘って巢を作る習性を持つグリプトドンと友達になって天上世界から脱出しようとする。
グリプトドンが掘った穴から槍ヶ岳へ降り立つが運悪く吹雪に遭い、空腹と寒さに負けて気絶してしまう。
その後はドラえもん達に助けられるも、すぐに天上人に連れ戻されてしまった。
原作・映画共に絶滅動物保護州で別れた後の消息は不明だが、無事に故郷に返された事は間違いないだろう。
CV:松尾佳子
『ドンジャラ村のホイ』に登場した小人族の少年。
かつてドラえもん達にアマゾンの奥地に新しい村を作ってもらったが、あの後でそこにも開発の手が伸びる。
住むところに困っていた時に天上人に雲の上まで連れてきてもらい、現在は絶滅動物保護州に新ドンジャラ村を作りそこで暮らしている。
タガロとは知り合いで、ドラえもん達と再会すると彼が暮らす住居まで案内した。
その後は万能たづなをのび太に貸し、最後の審判では地上人側の証人として証言を行った。
原作・映画共に事件解決後の消息は不明である。
ネス湖に棲んでいると言われている
UMA。
そろそろ絶滅しそうだったので、天上人に保護されている。
ホイの友達で、ホイの頼みでドラえもんとのび太を湖の対岸まで乗せていった。
『ネッシーがくる』に登場するネッシーとは外見が全然違っている。
地上では既に絶滅している巨大な鳥。
現在は絶滅動物保護州にしか生息していない。
ホイの万能たづなで操縦可能となり、ドラえもんとのび太を乗せて天上世界を脱出した。
雲の王国を探して飛んでいた時、まいごさがし機「ごはんだよー」の匂いに釣られ、無事にドラえもん達を王国に送り届けた。
この動物の名前で検索しても「ドラえもん」関連しかヒットしないため、オリジナルの動物……あるいは未発見の絶滅動物なのかもしれない。
シマオオカミとのび太達に呼称された、既に地上では絶滅し保護されている
オオカミの一種。
餌は与えられているが肉食動物な為か、クァッガの群れを追いかけ回していた。
作中では「弱いものイジメをしてはダメ」とパルパルからの注意で制止されている。
狩猟本能なんだろうから飼育地域を分けてやった方が……
半分だけの
シマウマとのび太たちに呼称された、既に地上では絶滅した保護されている動物。
フクロオオカミの群れに追いかけ回され逃げていたが、
保護担当のパルパルには「時々ふざけるの」とちょっとした悪戯に対しての注意のような対応をフクロオオカミにするだけで後はスルーされた不憫な役回りの動物。
ボルネオ島の熱帯雨林に住んでいたオランウータン。
のんびり暮らしていた森が地上人によって丸裸となり、住むところを追われて仲間も散り散りになる。
その事を最後の審判で証言した。
タンザニアのサバンナで暮らしていたアフリカゾウ。
自分以外の家族を、象牙目当ての密猟者に全員殺されており、最後の審判で証言していた際に「犯人の顔は覚えている」と言って4人の密猟者を睨んでいた。
ちなみに国によっては密猟対策の結果、ゾウが増え過ぎており、保護区外に出て農作物を荒らしたり、人的被害が多発するという問題が出ていたり、逆にモザンビークのゴロンゴーザ国立公園に暮らすゾウは9割が牙や食肉目当てに密猟者に殺された結果、牙を持たずに生まれてくる個体が激増したという。
『モアよドードーよ、永遠に』に登場した絶滅動物。
タイムとりもちでのび太に捕獲された後、安心して暮らせる無人島を作ってもらった。
現在は天上人に保護されているようで、最後の審判では地上人側の証人として当時の事を証言していた。
CV:
屋良有作
天上世界の大統領。
最後の審判で「ノア計画」が可決になった際には、地上に大雨を降らせるスイッチを押す事となっている。
さすがに地上文明を一度洗い流してゼロにする事には躊躇していたが、世論全体がその方向に動いていた為、悩んでいた。
天上世界は人治国家寄りだったのかも知れない。
CV:丸山詠二
大統領と重要な会談をするために地球を訪れる。
会談では「ノア計画」について検討し、地球の空気がどんどん汚れていっている事に憂いていた。
彼の正体は『さらばキー坊』に登場した進化植物「
キー坊」。
ドラえもんの道具で動けるようにしてもらった後で知性も与えられる。
そして植物星の宇宙船が地球を訪れた時に、彼らの文明を学ぶ為に留学生として地球を離れた。
現在は見違えるほど立派に成長しており、植物星大使の職に就いている。
意識不明のドラえもんを緑の光線で治した後、彼らとの再会を懐かしむ。
そして天上人達を「自然を守ろうと努力している人も増えつつあります。もうしばらくその動きを見守ってあげるわけにはいきませんか?」と説得し、「ノア計画」の中止を決定付けた。
ちなみに大山版テレビシリーズの『さらばキー坊』では、ドラえもんはキー坊を「みどりちゃん」と呼んでいたが、この話をテレビで未見の人に配慮してか、今作では劇場版も含めて、ドラえもんも「キー坊」と呼んでいる。また、当時『さらばキー坊』は映画化されていなかったので回想シーンとして実際に放送したテレビ版のアーカイブフィルム(キー坊とのお別れの場面)が挿入されている。
CV:小林清志、島香裕、山崎たくみ
ケニアの草原で象の密猟をしていた4人の男達。髭の男がリーダー。
密猟をしていた時に象の群れと共に天上人に吸い上げられ、最後の審判の際に地上人代表として座っていた。
後にパトカーを奪って逃走し、のび太の雲の王国へ迷い込む。
のび太から王冠を奪って雲の王国を乗っ取ると、絶滅動物を寄越せと天上人に要求。脅しでない証拠として雲もどしガスでエネルギー州を破壊した。
ガス砲を撃ちまくり天上世界を破壊しようとするが、ドラえもんの決死の特攻で王国は崩壊し、企みは阻止される。
その後は天上人に救出され、再び最後の審判に出席させられていた。
【用語】
地球の空一面に散らばり、本物の雲に紛れて浮かんでいる天上人達の国。
12の雲(州)から成り立つ連邦国家で、外見は普通の雲と変わらないため地上人には絶対に見つからないようになっている。
天上人の外見は地上人と殆ど変わらず、パルパル曰く「住んでいるところが違うだけ」とのこと。
だが科学技術は地上よりも遥かに高く、異星との交流も盛んに行われている。
また、地上で絶滅の危機に瀕している動物の保護も積極的に行っており、絶滅動物保護州には地上で絶滅したとされる多くの動物が平和に暮らしている。
雲の上には石炭や石油などの資源がないので、エネルギー州で太陽光発電を行い、それをマイクロ波で各州に送り出している。
また、食料は光と水と有機元素を合成させて作っている。
一見すると地球環境にとても優しい理想郷のようなところだが、
地上人が環境破壊をしているせいで空気が汚れオゾン層も破壊され続けているため、その影響で年々国全体の人口が減り続けており、他の星へ移住する者が後を絶たない。
そのため、天上人の殆どが地上人を敵視している。
また、戦いを続ける地上人が洪水で流された神話があるなど、地上で太古から変わらず争いが続いていることも地上人に対する恐怖の原因になっている。
たまに地上人が迷い込むと住人として生活を保証し住居を提供しているが、『
海底鬼岩城』に登場したムー連邦などと同じく、
天上世界や「ノア計画」の存在が地上に漏れないように永久禁固の方針を取っており、逃げられないように発信機つきの指輪をつけさせ行動を逐一監視している。
「ノア計画」が中止された後、地球環境が良くなるまで植物星へ移住する事となる。
事件の数日後に移民団が出発し、世界各地で「地表から空へ飛ぶあべこべの流星群」として観測されている。
ちなみに作品冒頭でのび太が「羽衣伝説」「西遊記」「ジャックと豆の木」など、世界各地に天上世界に関する民話や神話があるから天国もあると力説し、ドラえもんに笑われる描写があるが、天上世界が実在したことを踏まえるとそれらの民話のうちいくつかは事実をもとにしていたのでは、と推察される(もっとも
「西遊記」はのび太自身がモデルだが)。
まったくの余談だが、藤子漫画には
「昔は私たちも地上に住んでたけど好戦的な人間から逃げて乗れる雲を見つけてそこに移り住んだ」
「食料は食べれる雲もあるけど最近は大気汚染でまずい雲が増えた」
「皆で集まって戦争を起こす人間の兵器を破壊してやろうという結論に至った」
というような種族が登場する作品がこれ以前にあったりする。名は『オバケのQ太郎』という。
天上人が地球を守るために実行しようとしている計画。
史上空前の大豪雨を地上に降らせ、
大洪水を起こして地上文明の全てを綺麗に洗い流そうという計画で、最後の審判で可決され次第即座に実行される事となっている。
これは地上人にとってはとんでもない計画であるため、この件は天上人の間でトップ・シークレットとなっている。
地上の生物を絶滅させるつもりはなく、洪水の前にあらかじめ動植物や地上人を天上世界に吸い上げ、全てが終わった後で再び地上へ送り返す事になっている。
海底人と地底人はどうするのか…?
そのための実験が何度か行われており、タガロ達はその実験に巻き込まれて天上世界へ来る事となった。
ドラえもんが「雲もどしガス」を出した際、
小学5年生であるのび太が、ノア計画の最中である大洪水を目撃しそれが天上人の仕業であると勘付いていても、なお「そんならんぼうな!天上人はどうなるの!? 反対、反対!」と言っているのと比較すると、なんとも強引な計画なことがわかるだろう。
ジャイアンとスネ夫は始めから天上人たちに対して不信感を持っていたらしく、スネ夫は「恐ろしい計画を企てている」とノア計画について感づいており、何とかしてこの事を地上に知らせようとするも、パルパルから指輪の発信機の事を聞かされて断念している。
行きずりの小学生を地上人代表にしたり、地上人による環境破壊の証人・証拠は前もって山ほど集めておきながら、環境保護運動が行われていることは調査せずに「信用できない、証拠を見せろ」と迫っている。
そもそもが「最後の審判」などというものであり、「神気取りで地上人類に裁きを与える」構図となっていたのは間違いないだろう。
そうしたことは、天上人が現時点での環境破壊によってオゾン層破壊や大気汚染といった被害を直接的に受けているため、地上人への実績・悪感情・固定観念などにも由来している様子。
劇中では「おそるべきは核兵器です!もし、地上人が核戦争を始めれば、我々天上人を含めて地球上の全生物が消え失せてしまうでしょう」と核兵器も引き合いに出されて静香達も絶句。地上人を非常に危険視していた。
なお、現実的に考えるならば、仮に地上が洪水で洗い流されたとすれば、地上に存在するゴミや放射性廃棄物等が陸と海に垂れ流されてしまい、かえって環境汚染が悪化する可能性が高い。
これについては「汚染元である地上人の文明を洗い流せば解決するという安直な考えだった」「天上人は自分達に直接被害のある大気汚染を止める事を優先するあまり、直接被害のない土壌汚染や海洋汚染には気が回らなかった」といった説がある。
または核兵器といった天上人にも危険な文明の破壊を優先したものか。
ちなみに陸や海が汚染されると、酸素を作る植物が被害を受けるため、大気汚染にも繋がる結果になる。
無人島を対象とした実験の時点で漂流者であるタガロたちの存在がギリギリまで気付かなかったこと、
それでやった行為が「船を作ってすぐ出て行きなさい」とお告げのように警告……
と言う漂流者にどうしろと言う行為の指示。
当然ながら脱出などできなかった彼らは結局押し流されてしまい、
仕方がなく無人島ごと吸い上げられた漂流者達が客人や虜囚といった形の民家・牢屋への拘留ではなく、なんと絶滅動物保護州に収容した。
この辺りは、環境問題についてはかなり激しく「地上人が悪い!」と描写している今作だが、あくまで天上人は「(悪ではないが)敵役」「中身は所詮同じ人間である」という事も(皮肉にもパルパルがそう言っていた通り)間違いなく、「地球環境を守るという理念は立派だが、そのやり方がいくらなんでも強引過ぎる・杜撰である」という落ち度も意図して描いたものと思われる。
余談だが、タガロにドラえもんたちに密猟者と天上世界は捕えた地上人の全勢力に一度は脱走されている。
また、完全に想定外だっただろうが「ノア計画実行中に地上に戻ってきた地上人」を感知できていない。
再開された最後の審判では、ドラえもん達が見せた自己犠牲による自分たちの知らない地上人の姿を見たことと、地上人側を弁護する(ドラえもん達がかつて助けた)証人が次々と現れたことで、天上人達も心を動かされていく。
それでも「ノア計画」はまだ中止には至らなかった。
だが最後は植物星大使ことキー坊が自分の体験を交えながら天上人を説得すると共に、天上人全てを植物星に移民として受け入れることを表明してくれた事によりついに中止が決定。
事件の数日後に、天上世界から移民団が植物星へと出発していった。
のび太達の陰ながらの努力が実った形ではあるが、核戦争の危機や環境破壊については未来に委ねられる形となった。
ドラえもんの最後にして最大の武器。
雲もどしガスでエネルギー州が壊滅したと知ると、「あんなもの出したのが悪かった。ぼくの責任だァ!!」と泣き喚きながら牢屋の扉に頭突き。扉がひしゃげる。
扉を破ると、天上人を守るために雲もどしガスのタンクに頭から突っ込み、自分達が造った王国を崩壊させる事で天上世界の壊滅を阻止した。その後、ドラえもん及び地上人は救出されるが、ドラえもんは意識不明状態に。
【ひみつ道具】
お馴染みの移動手段その1。のび太が雲の王国を作る前に使用した際、例によって例のごとくバッテリー切れを起こした。「ほんとの天国行きになっちゃった!」
名前どおり雲を固める事のできるガス。
雲が固まると雪になって落ちていくはずだが、それについては
「よく気がついた。いい質問だ。しかし、その説明は長くなるからやめとこう」
という事で省かれた。
掃除機のような道具で、吸引して雲を吸い寄せる事ができる。
これを人型に固めた雲に入れてロボットにしていた。
ドラえもんの発言からソーラーバッテリー製の模様。
これ以前に『ロボッターの反乱』や『
宇宙小戦争』に登場したチップタイプのものと異なり、ロボットの骨組み状となっている。
固めた雲を整地するための道具。
雲にこのガスをかけると、浮かんだままでそこが水となる。
設計図を入れると原材料を吸引し、図面どおりの建物を作ってくれる。
文字通り。種と肥料がミックスされているのですぐに芽が出る。「花の元」「草原の元」「森の元」が登場。
薄い煙の膜を作り、膜で覆われたものを見えなくする。
ちなみに膜の中から外は透き通って見える。
雲かためガスもそうだが、天上世界にも同様の技術があるようだ。
見た目は大きな風車だが、これを刺すとかなりのスピードで進めるようになる。
太平洋の真ん中で海に潜るために取り出すが、のび太が気味悪がったので未使用で終わった。
映画版未登場。
プラモのソーラーカーを大きくするのに使用。
直接登場はしないが王国で遊んでいる時にそれらしきものが使用された。
原作では使用した事が語られている。
お馴染みの移動手段その2。
時差調節ダイヤルがついており、これを調節すれば家を出た数分後に戻る事ができる。
ママがこれを弄った事で、ドラえもんとのび太は10日後の世界で大洪水が起きる事を知る事となる。
山で保護したタガロの診察に使用。
これを使い、山で見た巨大ガメのような生物がグリプトドンだと突き止めた。
美味しそうな匂いを出し、腹ペコの人を誘い寄せる。
鼻づまりしていて匂いが感じ取れない時の責任まではとれないが、鳥にも有効であり、意外な活躍を見せた。
王冠を身につけると、雲の王国にいる間は誰も逆らわなくなる。
スカーフを身につけると、タケコプターなしで空を飛ぶ事ができる。雷で焼けるため、耐久性は微妙な模様。
宿舎から逃げ出す際に使用。
ドラえもんが壊れていた時に出した正体不明の代物。
びっくり箱のように飛び出してくるが、何に使うものかは不明。
『
ねじ巻き都市冒険記』でも同様のものが登場する(映画版ではほぼ同デザイン)。
雲かためガスで固めた雲をただの雲に戻すガス。
宮殿近くのガスタンクに貯えられており、ガス砲で発射する事が可能。
ドラえもんはこれを使い天上人の計画をやめさせようとするが、
これは抑止力として用意したもので本気で使うつもりはなかったのだが、その割には
悪役顔負けの中々の過激発言と悪い顔をするのびドラは必見。
スネ夫「使うつもりのないものなんか出すなよ!」
ドラえもんの道具ではないが便宜上記載。
ホイの所有する道具で、対象の動物にエリマキのように被せることで自由に操れるようになる。
サイズは可変のようで、巨大なムカシダイダラアホウドリの首にも巻き付き、のび太とドラえもんを天上世界から脱出させた。
【余談】
のび太のパパを演じた加藤正之氏は、映画公開から7ヶ月後に体調不良でパパ役を降板し、翌年の1993年3月に死去したため、本作は彼が最後に出演した映画となった。
追記・修正は環境保護を心がけている人にお願いします。
過度な愚痴を禁止します。
最悪、IP規制やコメントの書き込みを禁止される場合があります。
- 地上人目線で見ちゃうけど、現実には地上にのび太みたいな人間はほとんどいなくて、密猟者ほどではないが自然環境なんか知ったこっちゃない自分の欲望を最優先する人間がほとんどなんだよな…天上人が最後に去ってしまったのはこのままだとこの星に価値はなくなるという示唆なんだろうね… -- 名無しさん (2023-05-13 00:45:20)
- 疑似世界とは言え、人類が滅亡する展開になっているのが怖い。パラレル西遊記と言い、昔のドラえもんは結構ホラーだったりする。 -- 名無しさん (2023-05-20 06:11:35)
- 報告にあった荒らしコメントを削除しました。 -- 名無しさん (2023-07-05 20:12:50)
- 藤子先生の狙いとして、環境破壊だけでなく、過激な環境保護思想への戒めもあるように思える。そうでなければ天上人をもっと共感できる存在として描いてたんじゃないかな。密猟者がいなかったら完全に悪役だったのでは -- 名無しさん (2023-07-08 00:59:04)
- 天上人の気持ちも分かるがパルパルみたいにグリオとも和解して欲しかった。 -- 名無しさん (2023-08-31 20:55:25)
- 親目線だとエンタメを教育に使う事、クリエイター目線だと現実に絡むテーマを作品に込める事の難しさを感じさせる作品 -- 名無しさん (2024-01-04 10:11:41)
- 天上人とのやり取りと切り札として雲戻しガスを持ち出してくるあたり、ぶっちゃけこの作品が描いてるのって、「利害関係による国家間の軋轢」と「いったん始まってしまった戦争は簡単には収められないという現実」なんだよな。 -- 名無しさん (2024-01-31 12:04:42)
- YouTubeで漫画が掲載紙版と単行本で展開が違うことを知った。 -- 名無しさん (2024-04-17 03:06:32)
- 漫画版のパルパルは1シーンだけパンチラしているので恐らく生足。映画で何故タイツになったのだろう -- 名無しさん (2024-05-12 18:56:12)
- 地上人側になんの断りもせず全部地上のものを流して石器時代のように生活しろとかいう暴論 -- 名無しさん (2024-05-18 20:29:25)
- 昔からずっと気になってるんだけど、この作品のドラえもんの声がやけに鼻声なんだよな。大山のぶ代さんが風邪ひいて収録していたのか、それとも録音環境やマスタリングの関係でこうなったのか謎なんだ -- 名無しさん (2024-05-29 02:20:22)
- そんなことをすれば海が汚染されるぞ! -- 名無しさん (2024-06-20 11:41:39)
- 映画ではタガロが故郷に帰されたことが描かれてるって書いてるけどそんなシーン無いぞ -- 名無しさん (2024-08-04 09:37:16)
- ドラえもんのび太と交流のあったドンジャラ村の人たち、モアとドードー、○○坊が擁護してくれたり助けてくれるシーンが良い -- 名無しさん (2024-08-04 11:12:05)
- そういえば、雲戻しガスのタンクは何でできてたんだろう? -- 名無しさん (2024-10-01 23:04:28)
- 正直、天上人たちのやってることはダブスタにしか見えなかったし、密猟者たちが天上世界を攻撃した時は「いいぞもっとやれ」と思ってしまった。 -- 名無しさん (2024-10-09 15:16:19)
- あと、ノア計画の中止を要求するときののびドラが、アニメだと終始丁寧な言い回しなのに、原作だとまあまあ悪い顔なのが面白い。 -- 名無しさん (2024-10-09 15:24:11)
- この映画深くて好きなのに、天上人叩きのコメントばかりでいい加減ウンザリ -- ななし (2024-10-11 23:24:04)
- のび太が雲の王国を作る話なのにタイトルは「のび太“の”雲の王国」じゃなくて「“と”雲の王国」だから、異なる国(価値観)の相手との物語と示唆されてるんだな -- 名無しさん (2024-10-12 16:23:03)
- TV版のゲストメンバーの同窓会みたいな映画。 -- 名無しさん (2024-10-12 18:44:35)
- 天上人達のやろうとした事って、のちに劇場版ウルトラマンコスモス3作目に登場したデラシオンも似た様な事をしてたな。あっちは人類は危険と言いながら人類以外の生物も消滅させようとしてたけどね -- 名無しさん (2024-10-12 21:11:31)
- 天上人の言動を見てゾイドジェネシスの「高い所にいると自分達が偉くなったと勘違いする」という台詞を思い出す -- 名無しさん (2024-10-15 17:58:26)
- ドラえもんが特攻したシーンで不覚にも涙を溢してしまった。 -- 名無しさん (2024-11-26 02:05:46)
- ネッシーや絶滅動物保護州の動物達は植物星に移住したんだろうけど、ホッホとウギンバもそれについて行ったのかな? 地上人にも良い人がいる事は理解しただろうけど、住処や家族を奪われた地上には帰る気にはなれないだろうし -- 名無しさん (2024-12-19 21:05:34)
- 天上人が横暴だというのも分かるけど、(もうすでにやってなかったけど)空中核実験とか当時の米ソ対立とか見てたら地上人を先制攻撃で再起不能にするってのは有効な選択肢だったんじゃないか。 -- 名無しさん (2024-12-24 08:20:30)
- 天上人とかばっかり話題になるけど、この作品で一番謎なのはやっぱりドラえもん達を襲った黒い雷雲なんだよな。F先生の作風的に「ドラえもんを故障させる展開のための舞台装置・ご都合主義」でしかないだろうから伏線も完全に放棄しちゃったんだろうけど。どう見ても人工的な雲だからリメイクするんだったら、ノア計画の裏の目的のための秘密の実験だったって形で上手く掘り下げや新展開ができそう。 -- 名無しさん (2025-03-30 14:49:44)
- ただ、夢のない話だが世界中に大雨を降らせるのは100%困難なわけで……… -- 名無しさん (2025-04-02 21:08:17)
- 天上人と移民先の植物星でいさかいが起こらないといいけど。 -- 名無しさん (2025-04-02 21:23:30)
- コメントのログ化を提案します -- 名無しさん (2025-04-07 10:35:00)
- コメントをログ化しました -- (名無しさん) 2025-04-15 10:11:15
最終更新:2025年04月20日 23:01